西暦2072年の結婚〈35〉 サポートSEX

この小説には性的表現が含まれます。18歳未満の方はご退出を。
吉高家の俊介と日暮家の朋美の情事。
それをどちらのファミリーの主人も、
承知しているようだった。その情事は、
妊娠中の麻衣を救うだけでなく、
4人の妻を持つ修一氏をも救った——。
連載 西暦2072年の結婚
第35章 サポートSEX

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真弓の顔を見ると、日暮修一は「やぁ、どうも」とフレンドリーに声をかけてくる。
子どもたちのサッカー遊びにつき合って以来、単なる向かいに住む住人という以上の親近感を、真弓に対して示してくるようになっていた。
「桜、散り始めましたねェ。これからは、新芽の季節ですか……」
「そうですね」とあいまいな返事を返すと、修一が言った。
「麻衣さんと立花さんの新芽も……あ、失礼、お子さんも、順調に育っているようですね?」
「ええ、お陰様で。予定では、7月の初めあたりになるようですよ。日暮さんにも、朋美さんにも、すっかり、お世話になってしまって……」
「いやいや、あれは……本人が好きでやってることですから」
「好きで……ですか?」
最初は、「料理することが……?」と思ったが、修一の口ぶりには、どうもそうではないニュアンスが感じられた。
「余計なことかも……と思ったんですがね、麻衣さんもちょっと心配してたものですから」
「麻衣が心配……? 何を心配してたんですか?」
「俊介さんのこととかね、少し、気にしてたようですよ。しばらく相手をしてあげられないけど、大丈夫かな……って」
麻衣は、そんなことまで修一に話していたのか……?
少し意外な気がした。しかし、修一が発した次の言葉は、さらに真弓を驚かせた。
「そんな話をしていると、うちの朋美が言い出しましてね。俊介さんの面倒だったら、私がみてあげてもいいよ……って」
「エッ、そ、それ……朋美さんが言い出したんですか?」
「そうです。そしたら、麻衣さんも、ワァ、それ助かるゥ~なんて言い出して……」
吉高ファミリーも、日暮ファミリーも、複婚ファミリーだ。「複婚」である以上、配偶者に対する独占欲や嫉妬などという感情は、端から持ち合わせてない。
しかし、ファミリーとファミリーの境界を守ろうという節度は、どちらのファミリーにもあった。その垣根を取っ払ってしまうと、社会の最小単位としてのファミリーはその存在意義を失い、社会は乱婚状態となってしまう。
「日暮さんとしてはどうなんですか?」と、真弓は修一の顔を窺うように見た。
「私ですか?」
日暮修一は、すっとぼけた顔で真弓の顔を見返した。
子どもたちのサッカー遊びにつき合って以来、単なる向かいに住む住人という以上の親近感を、真弓に対して示してくるようになっていた。
「桜、散り始めましたねェ。これからは、新芽の季節ですか……」
「そうですね」とあいまいな返事を返すと、修一が言った。
「麻衣さんと立花さんの新芽も……あ、失礼、お子さんも、順調に育っているようですね?」
「ええ、お陰様で。予定では、7月の初めあたりになるようですよ。日暮さんにも、朋美さんにも、すっかり、お世話になってしまって……」
「いやいや、あれは……本人が好きでやってることですから」
「好きで……ですか?」
最初は、「料理することが……?」と思ったが、修一の口ぶりには、どうもそうではないニュアンスが感じられた。
「余計なことかも……と思ったんですがね、麻衣さんもちょっと心配してたものですから」
「麻衣が心配……? 何を心配してたんですか?」
「俊介さんのこととかね、少し、気にしてたようですよ。しばらく相手をしてあげられないけど、大丈夫かな……って」
麻衣は、そんなことまで修一に話していたのか……?
少し意外な気がした。しかし、修一が発した次の言葉は、さらに真弓を驚かせた。
「そんな話をしていると、うちの朋美が言い出しましてね。俊介さんの面倒だったら、私がみてあげてもいいよ……って」
「エッ、そ、それ……朋美さんが言い出したんですか?」
「そうです。そしたら、麻衣さんも、ワァ、それ助かるゥ~なんて言い出して……」
吉高ファミリーも、日暮ファミリーも、複婚ファミリーだ。「複婚」である以上、配偶者に対する独占欲や嫉妬などという感情は、端から持ち合わせてない。
しかし、ファミリーとファミリーの境界を守ろうという節度は、どちらのファミリーにもあった。その垣根を取っ払ってしまうと、社会の最小単位としてのファミリーはその存在意義を失い、社会は乱婚状態となってしまう。
「日暮さんとしてはどうなんですか?」と、真弓は修一の顔を窺うように見た。
「私ですか?」
日暮修一は、すっとぼけた顔で真弓の顔を見返した。

修一は何を訊かれているのかわからない、という表情だった。
「つまり……ですね、日暮さんとしては、自分の妻がよそのファミリーの男と情を交わしても平気なのか――と、そういう質問をしたつもりなんですが、あ、愚問でしたかね、これ?」
「情を交わすですか? さぁ、どうなんでしょう? 自分では、だれかと情を交わしたなんて経験が、あんまりないもんでね。ピンと来ないんですよ」
今度は真弓が、わけがわからないという顔をする番だった。
「情、交わしてないんですか、4人の奥さんたちと?」
「あんまり……というか、私にとって主夫業は、職業ですから」
職業としての「主夫業」の中には、日暮氏の場合、「情で相手をつなぎとめる」までは含まれてないようだ、と判断できた。
しかし、求められれば応じる。そして、相手の求める「情」が満たされるように努める。そこまでは「夫としてのつとめ」だ――と言ったあとで、氏は、ため息交じりに言うのだった。
「しかしね、立花さん。ショージキ言うと疲れるんですよ」
「エッ……!?」と、真弓は思わず訊き返した。
「家事なんてのは、大したことないのですが、情のほうはどうもね。あ、誤解しないでくださいね。愛情そのものは……たっぷりあるんですよ。しかし、その愛情は、みんなが安心して働きに出られるように……と、心を込めて家事をこなすことで示すしかない。それが、私の仕事だと思ってるんです。ただねェ、情を交わすってなると……」
そう言って頭をかく。日暮修一という男は、思った以上に淡泊なのかもしれない、と真弓は思った。そういう男だからこそ、女たちは安心して、その妻のひとりになったのかもしれない。
「ま、わかるような気もします」
「なにしろ、妻が4人もいますからね。その4人を性的に満たすっていうのはね、立花さん、けっこうハードワークなんですよ。そういうわけなんで、実は、私としては、俊介さんにはむしろ感謝してるんです」

あ~あ、と真弓は思った。
俊介さん、感謝されちまったよ。
俊介と朋美の情事は、妊娠中の麻衣を救うと同時に、性的負担を軽減したいと願う修一を助けるサポートSEXとも言えた。この関係は、もしかしたら後を引くかもしれない。
真弓がそれを心配していると、4人の妻を持つ男は、こともなげに言ってのけた。
「年齢が離れているせいもあるかもしれませんが、彼女たちは私にとって、娘のように感じられることがあるんです。私は、あの子たちの父親。みんな、幸せになるんだゾ――ってね、そんな気分で彼女たちを見守っていることもある。変な話ですけどね、その中には、いい男と結ばれるんだゾっていうのが、含まれていることもあるんです」
ヘェ、そんなもんか――と、真弓は思った。
麻衣は、どうなんだろう?
真弓は、それを麻衣に訊いてみたくなった。
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2014年10月発売 定価122円
中学校の美しい養護教諭とボクの、淡い恋の物語です。
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