シランケンの不純愛講座

男よ、ツメを切れ！　手を洗え！

　やわらかく、しかも驚くべき伸縮性を備えた「ヴァギナ」という組織は、その性質ゆえに、弱点も持っています。
　ひとつは、本来、皮膚組織を守るためにある角質層を持ってない――ということです。
　つまり、ヴァギナの壁を構成している粘膜は、非常に傷つきやすいのです。
　もし、男性が、ツメを伸ばしたままの、よく洗いもしてないバイ菌だらけの指を挿入して、中をグチャグチャにかき回したりして、万が一、膣壁を傷つけてしまったりしたら、どうなるか？
　通常、膣の表面は、雑菌などの侵入を防ぐために酸性に保たれていますが、その表面を傷つけてしまったら、雑菌は内部に侵入し、炎症を起こしてしまいます。
　しかも、これこそ、ヴァギナという器官の偉大なところですが、その奥は「子宮」という内臓なのです。
　指をヴァギナに挿入して奥へ奥へと進んでいくと、コリッとした感触に行き当たりますが、ここが子宮の入り口（子宮頸部）。人間の内臓の中で、人が直接、手で触れることができるのは、この子宮だけです。
　しかもそこは、人類が自分たちの子孫を、10カ月以上にわたって大事に大事にはぐくむ「聖なる場所」。そんな大事な場所を、万が一にも、不潔な指で傷つけることがあってはならない。
　ついでに申し上げておくと、膣前庭には尿道口も開いています。
　これがまた、感染しやすい。
　尿道口から膀胱までの距離が短い女性は、汚れた指でその入り口あたりをさわられただけで、雑菌が侵入して、膀胱炎を起こしたり、さらには腎盂炎、腎炎を起こしたりして、けっこう重篤な事態を招くことが珍しくありません。
　指のツメは、常に短く切ってヤスリをかけ、ベッド・インの前には必ずよく手を洗う――これは、男たるものの最低限のたしなみ、と覚えておいていただきたい。これは、筆者からの切なる願いであります。


「痛い」は感じても、「気持いい」は感じない

　もうひとつの弱点。
　それは、意外と思うかもしれませんが、ヴァギナそれ自体は「感じない」ということです。
　実は、膣の壁には、接触を「気持ちいい」と感じるセンサー（＝神経端末）が存在しないのです。全身センサーだらけのようなクリトリスとの、これがいちばんの違い。
　考えてみれば、当然ですよね。もし、膣がそんな敏感なセンサーを備えていたら、出産なんていう大仕事には、とても耐えられないに違いありません。分娩しながらイキまくる、なんていう女性の話も、聞いたことがありません。
　「気持ちいい」は感じない代わりに、「痛い」は感じます。
　それを感じるのは、膣口の処女膜。なぜかここには「痛覚」のセンサーが分布していて、男の侵入を「痛い」と感じるように作られているのです。「初夜」が痛いのはそのせいですが、なぜ、わざわざそんなセンサーがここに集中しているのか、その理由は、わかりません。
　簡単に許すな――という、神様の思し召しでしょうか？

　しかし、世の中には、「ヴァギナ」への挿入とペニスの運動がたまらなく気持ちいい――と答える女性もいます。
　そういう女性の場合、ヴァギナは、どこで快感を感じているのでしょう？
　ひとつには、「Ｇスポット」（Ｇスポットについては、機会を改めて詳しく解説します）が刺激されるため――とも考えられるのですが、実は、Ｇスポットの場所は、膣のかなり浅い位置にあって、ペニスの深い挿入とスラスト運動によっては、あまり刺激されません。
　考えられるとすれば、筋肉の動きです。
　ヴァギナは、その壁の周りを骨盤底を支える筋肉群に取り囲まれています。肛門活躍筋や球海綿体筋（この筋肉は、男性の場合は射精を起こさせる筋肉ポンプとなります）という、どれも自分の意志で動かせる随意筋たちです。
　ヴァギナがペニスを受け入れると、その運動によって、これらの筋肉が伸びたり縮んだりします。筋肉には、その運動を感知するセンサーがついていて、やはりその信号が脳に送られます。それで脳が「気持ちいい」と感じるのではないか、というわけです。
　ただし、これは「触覚」や「圧覚」ではないので、やや鈍い感覚になります。


バナナを輪切り！　骨盤底筋の底力

　余談になりますが、これらの随意筋（「骨盤底筋」と総称されます）は、けっこう強い筋肉です。随意筋ですから、自分の意志で動かすこともできます。
　昔のストリッパーには、舞台の上でバナナをそこに挿入し、この筋肉を使って輪切りにしてみせる、なんていう得意ワザを披露する人もいました。「マン力ショー」なんて呼ばれたりもしたものですが、骨盤底筋の底力を思えば、そんなことはワケもないことという気がします。
　それくらいの筋肉を持っているので、使おうと思えば、セックスの最中に、そこを意識的に締めるぐらいのことは朝飯前。バカな男性の中には、「彼女は締まりがいいんだ」と自慢したりする人もいるようですが、それも、もしかしたら彼女の意識的なパフォーマンスかもしれない……というわけです。

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