西暦2072年の結婚〈34〉 「合意」された裏切り

この小説には性的表現が含まれます。18歳未満の方はご退出を。
吉高一家の俊介と日暮一家の朋美。
そのふたりが電柱の陰でむつみ合う姿を
目撃した真弓は、それを秘密として
封印しようとした。しかし、両家の主人は、
その事実を知っているようだった——。
連載 西暦2072年の結婚
第34章 「合意」された裏切り

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一家が顔をつき合わせて暮らしているハウスからほど遠くない暗がり。
その街灯の陰で、腰を振っていた男は、吉高ファミリーの夫第1号・山辺俊介だった。
では、スカートを捲り上げられてそのペニスを受け入れていた、白い尻の持ち主は?
女は、バッグから何かを取り出して、その手をスカートの下に忍ばせている。よくはわからないが、真弓には、何かを拭き取っている動作のように見えた。
その動作が終了すると、女は再び、バッグから何かを取り出して、今度は、男の前にひざまずいた。手にした白いものを男の下半身にあてがって、やはり何かを拭き取るようなしぐさを見せている。
何をしているのか、すぐにわかった。
女が手にしていたのはティッシュで、彼女はそのティッシュで自分の体に飛び散った男の体液を拭き取り、自分の愛液にまみれた男の体を始末しているのだった。
拭き取ったティッシュをバッグにしまい込むと、女は口を男のそれに近づけた。いまだ屹立したままのペニスを手で支え持ち、その頭に軽く口づけして、それから頭を上げた。
男の顔を見上げて、ニコリとほほ笑んでいるように見える女の顔。
街灯の中に浮かび上がったその顔に、見覚えがあった。
日暮ファミリーの4人の妻たちのひとり。
俊介の息子・努と、よく、サッカーボールを蹴って遊んだりしている聡クンの母親。確か……朋美とかいう名前だった。
見てはいけないものを見てしまったのかもしれない。
真弓は、自分が目にした光景を、封印しようと心に決めた。
その街灯の陰で、腰を振っていた男は、吉高ファミリーの夫第1号・山辺俊介だった。
では、スカートを捲り上げられてそのペニスを受け入れていた、白い尻の持ち主は?
女は、バッグから何かを取り出して、その手をスカートの下に忍ばせている。よくはわからないが、真弓には、何かを拭き取っている動作のように見えた。
その動作が終了すると、女は再び、バッグから何かを取り出して、今度は、男の前にひざまずいた。手にした白いものを男の下半身にあてがって、やはり何かを拭き取るようなしぐさを見せている。
何をしているのか、すぐにわかった。
女が手にしていたのはティッシュで、彼女はそのティッシュで自分の体に飛び散った男の体液を拭き取り、自分の愛液にまみれた男の体を始末しているのだった。
拭き取ったティッシュをバッグにしまい込むと、女は口を男のそれに近づけた。いまだ屹立したままのペニスを手で支え持ち、その頭に軽く口づけして、それから頭を上げた。
男の顔を見上げて、ニコリとほほ笑んでいるように見える女の顔。
街灯の中に浮かび上がったその顔に、見覚えがあった。
日暮ファミリーの4人の妻たちのひとり。
俊介の息子・努と、よく、サッカーボールを蹴って遊んだりしている聡クンの母親。確か……朋美とかいう名前だった。
見てはいけないものを見てしまったのかもしれない。
真弓は、自分が目にした光景を、封印しようと心に決めた。

その朋美と麻衣が、近頃、よく話をしている。
夜の仕事をしている朋美は、昼の間は、家で過ごすことが多い。ゴミの集積場で立ち話をしている姿や、玄関前で世間話に興じている姿を見かけることはよくあったが、最近は、公休日などに、その姿を部屋の中でも見るようになった。
吉高家にやって来た朋美が、キッチンやリビングで何やら親密そうな話をしている姿を見かけることがあったが、どうも、その内容は、料理の作り方などではなさそうだし、芸能人のスキャンダルなどでもなさそうだ。もっと親密な、秘密めいた話をしているように見えた。
あのふたりは、気が合うんだろうか?
最初は、そう思ったが、ちょっと違うようだった。
「エーッ!? アウトドア?」
聞くとはなしに聞いている真弓の耳に、断片的に麻衣の発する声が飛び込んでくる。
「大胆ねェ。それ……さんは知ってるの?」
「……さん」の部分は、麻衣が声をひそめたので、聞き取れない。真弓は、そこにいろんな男の名前をあてはめて、パズルを解くように、麻衣の言葉の意味を推理した。
しかし、どう考えても、そこにあてはめて文脈が完成する名前は、ひとりしか思いつかなかった。
日暮修一。朋美の夫である日暮ファミリーの主人、その人の名前だ。
「知ってるわよ。だってね、それ……したのは、……さんなのよ」
朋美が声をひそめて「それ……したのは」と語った部分も、「……さんなのよ」と語った部分も、残念ながら聞き取れなかった。ただ、想像するしかない。
その想像が、もし、真弓が頭の中で描いたとおりであれば、吉高ファミリーと日暮ファミリーの間に保たれていた節度は、音を立てて崩れてしまう。
真弓は、その想像を胸の中で眠らせることにした。

麻衣のおなかは、日に日に大きくなっていった。
いままでのように、麻衣ひとりに家事をまかせるというわけにはいかなくなる。
吉高ファミリーの夫たちは、相談して、掃除などは分担して担当することにした。洗濯物は、洗濯機に放り込んでおけばいいのだが、干すという作業は身重の体には負担がかかるので、各自の物は各自が干そうということにした。
問題は、炊事だった。山辺俊介にも、草川次郎にも、料理の素養はない。真弓には、自炊の経験があったが、子どもたちも含めた家族全員の食事を支度できるかというと、それほどの腕も、自信も、時間もなかった。
そこへ、救いの手が差し伸べられた。
日暮ファミリーの主夫・修一が、「うちと同じメニューでよかったら、夕食だけですけど、吉高さんのみなさんの分も、一緒に作りましょうか?」と提案してきたのだ。昼間、手が空いている朋美が、修一の作業を手伝うという。
それは、奇妙な協力関係だった。
俗な言い方をすると、自分の夫と浮気した女と浮気された側の夫を家に迎え入れて、家事を手伝ってもらう妻。それを世間はどう表現するのだろうか?
《奇妙な複婚。
夫を寝取られた妻と寝取った女が、妊娠協力》
三流週刊誌風に書くと、そんな見出しになるのかもしれない。
しかし、麻衣と朋美の間には、屈折した心理の葛藤などは、微塵も見えない。むしろ、その状況を楽しんでいるようにさえ見える。
その理由が、真弓にはわからなかった。日暮修一からその話を聞くまでは――。
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【左】『聖少女~六年二組の神隠し』
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【右】『『チャボのラブレター』
2014年10月発売 定価122円
中学校の美しい養護教諭とボクの、淡い恋の物語です。
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