シランケンの不純愛講座

　悪意のパターン〈２〉　 　ディスカウント型　
過去の経歴や実績を過少に見積もり、評価を下げようとする

ＡＫＩ　いる、いる、このタイプ。「ひがみ」というか、「妬み」というか、人が成功したり、称賛されたりするのを見るのが、イヤなんですよね、こういう人たち？

哲雄　ハイ、おっしゃるとおり。人が自分より高い評価を得ることにガマンがならないので、このタイプは、その「評価」の素となっている過去の「経歴」や「実績」そのものの価値を、落としにかかるわけです。人気が出そうになると、その出自や過去の失敗などを暴き立てようとする『文春』などの週刊誌やワイドショーなどの手法も、このタイプの「悪意」に迎合する手法と申し上げていいかと思います。

ＡＫＩ　そう言えば、だれかが買って身に着けてきたブランドものっぽいアクセとかを、「偽物でしょ？　中国かどこかで買ってきたのよ」とけなしたりする子がいるけど、あれも、「ディスカウント型」？

哲雄　そう言っていいでしょうね。「ディスカウント型」の場合は、それでも、実際にあったことを「低く」見積もって、相手の価値を減じようとするわけですが、もっと質の悪い「悪意」もあるんですよ、それがこちら。


　悪意のパターン〈３〉　 　ねつ造型　
ありもしない事実を吹聴して、過去に泥を塗ろうとする

ＡＫＩ　エーッ！　ねつ造しちゃうの？　それ、ひど～い。

哲雄　でも、いるんですよ、そういうタイプ。たとえば、Ａ子がＢ子の耳に、「Ｃ子って、子どもおろしたことでもあるんじゃないの？」とささやきかけてきたとします。「子どもおろした」は、「事実」として語られるんじゃなくて、「あるんじゃないの」という「推測」として語られます。しかし、Ａ子に「同調」するＢ子が次のＤ子に語るときには、Ａ子が「推測」の形で語った「子どもおろした」は、「Ｃ子ってさ、子どもおろしたんだって」と、「事実」として語られてしまいます。「悪意」が伝播するときには、そんなふうに「推測」⇒「事実」として変質していくわけで、実は、それが最初に「悪意の推測」を口にしたＡ子のネライだったりするわけですね。

ＡＫＩ　ウワサって、そんなふうに尾ひれが付いて広がっていくんですね。ひどい話だわ。

哲雄　そうです。私の友人にも、過去、そんな「悪意」の犠牲になった男がいました。最初は、酒の席で交わされたこんな会話でした。


ここでＢが口にした「会社の経費でも」という「推測」のひと言が、Ａの口にかかると、「Ｃは会社の金を誤魔化して、マンションを買った」に変わってしまいました。そんな心ない「悪意のデマ」に苦しんだＣは、やがて、転職してしまうんですがね。

ＡＫＩ　確かに、Ｂの「会社の経費でも」という「推測」には、「悪意」が感じられますよねェ。

哲雄　その「悪意の推測」がさらに極端になると、特定の人物の「意図」や「心」までも、ねつ造してしまいます。まとめると、こうですね。


　悪意のパターン〈４〉　 　仮想敵型　
ありもしない「敵意」の存在を主張して、脅威をあおろうとする

ＡＫＩ　「敵意」なんて持ってないのに「敵意がある」と言ってしまうんですか？

哲雄　先日、問題になった日馬富士による貴ノ岩への暴行問題。そのきっかけになったのも、「ねつ造された敵意」だったんじゃないか――と、私は思ってるんですよ。

ＡＫＩ　確か、貴ノ岩が発した「これからはオレたちの時代」と言ったとか言わなかったというひと言、それが白鵬の耳に届いて「おまえ、最近、エラそうなこと言ってるそうじゃないか」とニラまれたっていう、あれでしょ？

哲雄　たぶん、最初は、「これからは、オレたち若い者がガンバらなくちゃ」という程度の話だったんじゃないかと思うんですよ。しかし、そこへ「悪意」が加わると、「これからはオレたちの時代――なんて、エラそうなこと言ってるらしいですよ」というふうに伝わってしまう。どこかで「敵意」がねつ造されて加えられ、伝わってしまったんじゃないかと、私はニラんでるんですがね。

ＡＫＩ　そういうの、私たちの周りにもあるかも。「気をつけな。Ａ子、あんたのカレ氏、ネラってるらしいわよ」とか、「Ｂ子って、あなたを、相当、ライバル視してるらしいわよ」って、わざわざ「敵意」を煽り立てるような言い方する人、いますもの。

哲雄　いるでしょうね。男でも、「Ｃのやつ、課長のイスを狙ってるらしいです。足元をすくわれないように気をつけたほうがいいですよ」なんぞと、ありもしない「敵意」をねつ造して、頭角を現しつつあるライバルを蹴落としにかかる人物がいたりしますから。政府だってやるんだから、一般人がやらないわけがない。

ＡＫＩ　エッ、政府もやっちゃうんですか？

哲雄　ハイ、しょっちゅうやってます。先の「イラク戦争」では、「イラクが大量破壊兵器を作っている」と「敵意」をねつ造して、ついに、戦争まで起こしてしまいました。

ＡＫＩ　結局、その大量破壊兵器は発見されなかったんですよね？

哲雄　発見されませんでした。しかし、そういうことは、国と国の間でも、民族と民族の間では、始終、行われていますからね。戦前の日本でも行われましたよ。関東大震災のときには、「朝鮮人が暴動を企てている」というデマが流されて、朝鮮人が大量虐殺されましたし、満州では、半日分子が満鉄を爆破しようとしたという事件（＝柳条湖事件）を関東軍がでっち上げて、満州侵出を正当化しようとしました。

ＡＫＩ　それも、すべて、ねつ造された「敵意」？

哲雄　そうです。だから「悪意」は危険なのであり、そういう「悪意」に簡単にうなずく「同調」という行為には、その危険性を増幅させてしまうより危険な行為となる可能性がある――と申し上げているわけです。

ＡＫＩ　「そう、そう、そう」とうなずいたり、「だよねェ」と安易にうなずいてしまってはいけないってことですね。

哲雄　ハイ。特に、相手のコメントに「悪意」が含まれている――と感じられたときには、注意が必要です。

ＡＫＩ　注意――って、どんなふうに？

哲雄　その話、ちとむずかしいので、次回、じっくりお話することにしましょう。

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