第66夜☆「純愛」と「ストーキング」は、その差、紙一重?
第66夜
「愛とは何か?」をめぐって、管理人・哲雄がパートナー・AKIを相手に展開する、オヤジ・ギャグ風+ちょっぴりアカデミックおしゃべり。今回は、リビドーの「固着」が生む「純愛」と「ストーキング」の違いについて語ります――。
哲雄 みなさん、おひさしぶりです。ゾンビ長住です。
AKI あ~あ、とうとうゾンビになっちゃった。
哲雄 キミがそう言ったのではありませんか。(←前回の『封印された「女」に火が点くと怖い?』を参照)
AKI おお、おお。かわいそうなゾンビちゃん。こんなにひからびちゃって……。
哲雄 ええ、もうすぐ化石になりますって……ほっとけ! ところで、化石と言えば……。
AKI エッ!? 何か発見したんですか?
哲雄 ウン、実はね、「化石化するリビドー」ってのもあるんじゃないか――と、最近、思い始めてるんだ。
AKI リビドーが化石に? それって何千年、何万年もかかるんじゃありませんか?
哲雄 頭が固いなぁ、キミも。もののたとえです。化石でなければ、「ミイラ化」または「ゾンビ化」と言ってもいいでしょう。
AKI みなさま、ご覧くださいませ。こちらが長住哲雄のリビドーのミイラでございます。ご覧のように、このリビドーは、はるか20世紀の彼女に想いを寄せたままの形で、完全にミイラ化しております。あ、お手を触れないようにお願いいたします。伝染りますのでね。
哲雄 失敬な! 私のリビドーはまだアクティブです! しっかし……うまいこと言うなぁ。
AKI でしょ、でしょ。で、哲ジイのリビドーは、どこらへんでミイラ化し始めたの?
哲雄 だから、まだアクティブなんだって! それより、いま気がついたけど、「ミイラ化」と「ゾンビ化」とはけっこう違う。
AKI わかった! ミイラは動かないけど、ゾンビは動く!
哲雄 なんか、きょうはさえてるね、AKIクン。そうなんだ。まさにそう! ウン、この発見は、「ノーベル恋愛賞」に値する。
AKI そんな賞、ありましたっけ?
哲雄 なければ、作ったらいい。つまり、こういうことだよ、AKIクン。仮に私のリビドーが「AKI」という対象に向けられたとする。しかし、この「AKI」という対象は、人の血の通わない氷のような存在で、私のリビドーの要求に一向に応えようとしない。
AKI なんか、ちょっと気持ちがわるくなってきたんですけど、仮の話ですよね。ハイ、どうぞ続けてください。
哲雄 私がその想いだけを、10年も20年も、風化するまで抱き続けたとすれば、それは「ミイラ化」と呼ばれ、そして人々はそれを「ハチ公にも劣らぬ忠節の心」としてホメ讃えるであろう。
AKI 単に、「あきらめのわるいおっさんだ」と、思うだけだと思いますけど。
哲雄 しかし、私がその想いを行動に移し、キミに毎日毎日、電話をかける、メールを送る、家の前で待ち続けるなどの行動をとり続けると、私のリビドーは「ゾンビ化」したと、人々から非難されることになる。
AKI それ、ストーカーじゃないですか。
哲雄 そう、まさにそう! おっしゃるとおり、これは「ストーキング」と呼ばれる行為にあたります。つまり、こういうことですよ、AKIクン。「純愛」と「ストーキング」は、実に紙一重である。
AKI そ、そう言えば、そうですよねェ。てことは、「ミイラ化」と「ゾンビ化」も紙一重かぁ。で? 哲ジイの、その、20世紀の彼女への想いは、もう「ミイラ化」しちゃったんですか? それとも「ゾンビ化」して、まだそこらをうろついているんですか?
哲雄 すでに化石となって、私の「恋愛ギャラリー」に展示されてます。
AKI 早ッ! もう化石に?
哲雄 英語に「haunt(ホーント)」って言葉があるんだよね。これ、ラブ・ソングにはしょっちゅう出てくる重要な単語なんだけど、日本語に訳すと、「つきまとって悩ます」とか「脳裏を去らない」ぐらいの意味かな。たとえば、「あなたの記憶がいつまでも私の頭から離れない」なんてときに使われる、実に美しい言葉です。
AKI 20世紀の彼女が、私を「haunting」してる――みたいに使うわけですね。
哲雄 もうひとつは、「stalk(ストーク)」。こっちは知ってるよね。「ストーキング」の「stalk」です。で、こちらの意味は「忍び寄る」とか「こっそり近づく」という意味。日本語でよく「つきまとい」と訳されてるけど、ちょっとニュアンスが違うような気がするんだな。ま、それは置いといて……。
AKI こういうことでしょ? どちらも「つきまとう」けど、「haunt」するのは記憶や想いであって、「stalk」するのは行動だと……?
哲雄 やっぱり、きょうのAKIクンはさえてる。そのとおり。そしてこれが、「ミイラ化」と「ゾンビ化」を区別する大きな違いだってことです。少しむずかしく言うと、かたや「定性的」であり、かたや「定量的」である――。
AKI オッ、またややこしい言葉が出てきました。
哲雄 たとえば、私がAKIという女の冷たい仕打ちに遭って、リビドーが行き場を失ったとしよう。しかし、私のリビドーはそこにとどまる。つまり、AKIへの想いを断ち切ることができない。これを、「リビドーの固着」と言うんだけど、この固着が「定性的」であれば、私の中には、「AKIをこのように好きであった」という性質だけが残って、私はそれを世にも美しい文学に紡いだりすることができる。『冬ソナ』なんかは、その典型ですね。
AKI 紡いで、紡いで!
哲雄 まったく強欲な女だ。そういうとき、ふつうは、「ああ、私って、あのやさしいお方に、なんてひどい仕打ちをしてしまったんだろう」なんて、多少なりとも罪の意識とかを感じたりするものだと思うんだけどね。
AKI だって、私、冷たい仕打ちとかしてないもん。
哲雄 ハイハイ。ま、仮の話だからいいでしょう。で、もうひとつのほう。もしも、「固着」が「定量的」に起こってしまったらどうなるか?
AKI それが知りたいです。
哲雄 ああ、オレはAKIのために、牛丼を何回おごっただろう。ドトールのコーヒーを何杯おごっただろう。そのために、オレの貴重な青春の時間を、いったいどれだけ費やしただろう。そうだ。メールも数え切れないほど打ったゾ。全部、保存してあるんだ。そうそう、このときは、メールだけじゃなくて、電話で5時間ぐらい話をしたんだっけ……。あの月のauの請求、高かったよなぁ――というふうに、想いの量だけが残ってしまう。
AKI あの……もしもし、「想いの量」って、それ、ずいぶんせこいんですけど。
哲雄 それは、キミがそれ以上のことをさせてくれなかったからです。でね、この「定量的量」な固着が起こってしまうと、このリビドーの持ち主はどうするか?
AKI 「全部、返せ!」と言う?
哲雄 オーッ! もしかしてAKIちゃん、言われたことあるんじゃない?
AKI ありませんよッ! でも、友だちで、そんなこと言われた子がいた。オレがやった時計とか、バッグとか、指輪とか、全部返せ! おごったメシ代も全部返せ――なんて言われたって、キレまくってた。
哲雄 ひどい男だけど、そのほうがまだいい。もうひとつのタイプは、ここで止めたら、まる損じゃないかと思う。ギャンブルと同じだね。せめて元をとるまではガンバるゾ――と、同じ「量」を投資し続ける。だから、メールも送り続ける、声もかけ続ける。これはやっかいです。
AKI ねェ、「元」って何だろうね?
哲雄 わかりません。せめて1回でもやらせてもらえば、「元」が取れたと思うのか、それとも、自分とつき合う関係になれば、満足するのか――そこから先は、残念ながら、専門ではないので。
AKI でも、いやですね、そういう「固着」は……。
哲雄 いやです。だから、私も固着しないことにしました。
AKI ハ、ハイ? 何に?
哲雄 20世紀の彼女に。これからは……(チラッ
)。
AKI いい加減にしなはれ。
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哲雄 だから、まだアクティブなんだって! それより、いま気がついたけど、「ミイラ化」と「ゾンビ化」とはけっこう違う。
AKI わかった! ミイラは動かないけど、ゾンビは動く!
哲雄 なんか、きょうはさえてるね、AKIクン。そうなんだ。まさにそう! ウン、この発見は、「ノーベル恋愛賞」に値する。
AKI そんな賞、ありましたっけ?
哲雄 なければ、作ったらいい。つまり、こういうことだよ、AKIクン。仮に私のリビドーが「AKI」という対象に向けられたとする。しかし、この「AKI」という対象は、人の血の通わない氷のような存在で、私のリビドーの要求に一向に応えようとしない。
AKI なんか、ちょっと気持ちがわるくなってきたんですけど、仮の話ですよね。ハイ、どうぞ続けてください。
哲雄 私がその想いだけを、10年も20年も、風化するまで抱き続けたとすれば、それは「ミイラ化」と呼ばれ、そして人々はそれを「ハチ公にも劣らぬ忠節の心」としてホメ讃えるであろう。
AKI 単に、「あきらめのわるいおっさんだ」と、思うだけだと思いますけど。
哲雄 しかし、私がその想いを行動に移し、キミに毎日毎日、電話をかける、メールを送る、家の前で待ち続けるなどの行動をとり続けると、私のリビドーは「ゾンビ化」したと、人々から非難されることになる。
AKI それ、ストーカーじゃないですか。
哲雄 そう、まさにそう! おっしゃるとおり、これは「ストーキング」と呼ばれる行為にあたります。つまり、こういうことですよ、AKIクン。「純愛」と「ストーキング」は、実に紙一重である。
AKI そ、そう言えば、そうですよねェ。てことは、「ミイラ化」と「ゾンビ化」も紙一重かぁ。で? 哲ジイの、その、20世紀の彼女への想いは、もう「ミイラ化」しちゃったんですか? それとも「ゾンビ化」して、まだそこらをうろついているんですか?
哲雄 すでに化石となって、私の「恋愛ギャラリー」に展示されてます。
AKI 早ッ! もう化石に?
哲雄 英語に「haunt(ホーント)」って言葉があるんだよね。これ、ラブ・ソングにはしょっちゅう出てくる重要な単語なんだけど、日本語に訳すと、「つきまとって悩ます」とか「脳裏を去らない」ぐらいの意味かな。たとえば、「あなたの記憶がいつまでも私の頭から離れない」なんてときに使われる、実に美しい言葉です。
AKI 20世紀の彼女が、私を「haunting」してる――みたいに使うわけですね。
哲雄 もうひとつは、「stalk(ストーク)」。こっちは知ってるよね。「ストーキング」の「stalk」です。で、こちらの意味は「忍び寄る」とか「こっそり近づく」という意味。日本語でよく「つきまとい」と訳されてるけど、ちょっとニュアンスが違うような気がするんだな。ま、それは置いといて……。
AKI こういうことでしょ? どちらも「つきまとう」けど、「haunt」するのは記憶や想いであって、「stalk」するのは行動だと……?
哲雄 やっぱり、きょうのAKIクンはさえてる。そのとおり。そしてこれが、「ミイラ化」と「ゾンビ化」を区別する大きな違いだってことです。少しむずかしく言うと、かたや「定性的」であり、かたや「定量的」である――。
AKI オッ、またややこしい言葉が出てきました。
哲雄 たとえば、私がAKIという女の冷たい仕打ちに遭って、リビドーが行き場を失ったとしよう。しかし、私のリビドーはそこにとどまる。つまり、AKIへの想いを断ち切ることができない。これを、「リビドーの固着」と言うんだけど、この固着が「定性的」であれば、私の中には、「AKIをこのように好きであった」という性質だけが残って、私はそれを世にも美しい文学に紡いだりすることができる。『冬ソナ』なんかは、その典型ですね。
AKI 紡いで、紡いで!
哲雄 まったく強欲な女だ。そういうとき、ふつうは、「ああ、私って、あのやさしいお方に、なんてひどい仕打ちをしてしまったんだろう」なんて、多少なりとも罪の意識とかを感じたりするものだと思うんだけどね。
AKI だって、私、冷たい仕打ちとかしてないもん。
哲雄 ハイハイ。ま、仮の話だからいいでしょう。で、もうひとつのほう。もしも、「固着」が「定量的」に起こってしまったらどうなるか?
AKI それが知りたいです。
哲雄 ああ、オレはAKIのために、牛丼を何回おごっただろう。ドトールのコーヒーを何杯おごっただろう。そのために、オレの貴重な青春の時間を、いったいどれだけ費やしただろう。そうだ。メールも数え切れないほど打ったゾ。全部、保存してあるんだ。そうそう、このときは、メールだけじゃなくて、電話で5時間ぐらい話をしたんだっけ……。あの月のauの請求、高かったよなぁ――というふうに、想いの量だけが残ってしまう。
AKI あの……もしもし、「想いの量」って、それ、ずいぶんせこいんですけど。
哲雄 それは、キミがそれ以上のことをさせてくれなかったからです。でね、この「定量的量」な固着が起こってしまうと、このリビドーの持ち主はどうするか?
AKI 「全部、返せ!」と言う?
哲雄 オーッ! もしかしてAKIちゃん、言われたことあるんじゃない?
AKI ありませんよッ! でも、友だちで、そんなこと言われた子がいた。オレがやった時計とか、バッグとか、指輪とか、全部返せ! おごったメシ代も全部返せ――なんて言われたって、キレまくってた。
哲雄 ひどい男だけど、そのほうがまだいい。もうひとつのタイプは、ここで止めたら、まる損じゃないかと思う。ギャンブルと同じだね。せめて元をとるまではガンバるゾ――と、同じ「量」を投資し続ける。だから、メールも送り続ける、声もかけ続ける。これはやっかいです。
AKI ねェ、「元」って何だろうね?
哲雄 わかりません。せめて1回でもやらせてもらえば、「元」が取れたと思うのか、それとも、自分とつき合う関係になれば、満足するのか――そこから先は、残念ながら、専門ではないので。
AKI でも、いやですね、そういう「固着」は……。
哲雄 いやです。だから、私も固着しないことにしました。
AKI ハ、ハイ? 何に?
哲雄 20世紀の彼女に。これからは……(チラッ

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