西暦2072年の結婚〈24〉 家政夫と4人の雇用主

この小説には性的表現が含まれます。18歳未満の方はご退出を。
リフォームを終えた向かいの戸建てに、
次々と妻たちが引っ越してきた。
最後に大きなトラックで共有の家具と
家政夫の荷物が届いた。その家政夫は、
想像とは違うタイプの男だった。
連載 西暦2072年の結婚
第24章 家政夫と4人の雇用主

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それから2カ月ほどの間、向かいの戸建てには、毎日のように小型トラックがやって来て、木材などの資材を運び入れ、チェーンソーの音が鳴り響き、トンカンと何かを打ち付ける音が響いた。
「AISM」の鈴木氏によれば、5LDKだった家屋の1階部分を増築して、全部で7LDKにリフォームすると言う。
LDKを除く7室のうち、4室は母子のための個室。残り3室のうち、1室が「家政夫」である夫の寝室、1室が保育ルームに当てられ、もう1室は、学童期に達した子どもたちの「子ども部屋」に充てられる。
鈴木氏の話から、向かいに越してくる一家の家族構成が見えてきた。
住むのは、1人の「家政夫」と4人の妻、そして彼女たちの4人の子どもたち。総勢12人のファミリーだ。
「ちょっと、にぎやかになるかもね、このあたりも」
鈴木氏の話を聞いて、麻衣は少しうれしそうでもある。
山辺俊介は、新しいファミリーの子どもたちが気になる様子だ。
「一緒に遊べる子たちが来るといいなぁ。な、努」
そう言って俊介が努クンの頭をなでると、努クンは「ウン」とうなずいて、サッカーボールを足先でポンと蹴った。

桜の季節が終わり、街路樹が新緑の鮮やかな緑に覆われ、太陽がギラギラと照り付け始める頃になって、リフォームなった向かいの戸建て住宅には、次々と引っ越しのトラックがやって来た。
最初にやって来たのは、妻たちの荷物を運び込むトラックだった。と言っても、荷物は、妻とその子、2人分の夜具と衣類、チェストにベッドに子ども用の勉強机ぐらいのものだから、せいぜい、1トン車程度ですむ。その荷物の到着を待つ妻と子どもの姿を、麻衣と由愛と努が目撃した。
真弓たちは、麻衣を通して、「きょうもひと組、入居してきたわよ」と報告を受けるしかない。
麻衣のレポートによると、向かいの複婚ファミリーの妻たちは、みんな、バリバリに仕事をしていそうな、活発な感じの女性たちだと言う。
「どうよ、それで?」と俊介が訊き、次郎も身を乗り出した。
「どうよ———って、何が?」
「奥さんたち、美人だった?」
「そっちかい?」と、麻衣は、あきれたように手を広げた。
「そのうち、わかるんじゃない? 今度の日曜、みなさんでごあいさつにみえるそうだから」
ちょっとだけ、日曜日が楽しみになった。
「AISM」の鈴木氏によれば、5LDKだった家屋の1階部分を増築して、全部で7LDKにリフォームすると言う。
LDKを除く7室のうち、4室は母子のための個室。残り3室のうち、1室が「家政夫」である夫の寝室、1室が保育ルームに当てられ、もう1室は、学童期に達した子どもたちの「子ども部屋」に充てられる。
鈴木氏の話から、向かいに越してくる一家の家族構成が見えてきた。
住むのは、1人の「家政夫」と4人の妻、そして彼女たちの4人の子どもたち。総勢12人のファミリーだ。
「ちょっと、にぎやかになるかもね、このあたりも」
鈴木氏の話を聞いて、麻衣は少しうれしそうでもある。
山辺俊介は、新しいファミリーの子どもたちが気になる様子だ。
「一緒に遊べる子たちが来るといいなぁ。な、努」
そう言って俊介が努クンの頭をなでると、努クンは「ウン」とうなずいて、サッカーボールを足先でポンと蹴った。

桜の季節が終わり、街路樹が新緑の鮮やかな緑に覆われ、太陽がギラギラと照り付け始める頃になって、リフォームなった向かいの戸建て住宅には、次々と引っ越しのトラックがやって来た。
最初にやって来たのは、妻たちの荷物を運び込むトラックだった。と言っても、荷物は、妻とその子、2人分の夜具と衣類、チェストにベッドに子ども用の勉強机ぐらいのものだから、せいぜい、1トン車程度ですむ。その荷物の到着を待つ妻と子どもの姿を、麻衣と由愛と努が目撃した。
真弓たちは、麻衣を通して、「きょうもひと組、入居してきたわよ」と報告を受けるしかない。
麻衣のレポートによると、向かいの複婚ファミリーの妻たちは、みんな、バリバリに仕事をしていそうな、活発な感じの女性たちだと言う。
「どうよ、それで?」と俊介が訊き、次郎も身を乗り出した。
「どうよ———って、何が?」
「奥さんたち、美人だった?」
「そっちかい?」と、麻衣は、あきれたように手を広げた。
「そのうち、わかるんじゃない? 今度の日曜、みなさんでごあいさつにみえるそうだから」
ちょっとだけ、日曜日が楽しみになった。

妻たちの引っ越しがひととおり片付くと、最後にひと回り大きなトラックがやってきた。
おそらくは、それがメインの荷物だ。みんなで使う家具やキッチンの道具や食器、それに共通の家電などが積んであり、「家政夫」である男の荷物も積んであるらしかった。
真弓たちが驚いたのは、ひと際巨大と思われる冷蔵庫だった。
12人分の食事をまかなうとなると、それくらいの冷蔵庫が必要なのかもしれない。そして、その冷蔵庫に全部で12人分の食材を常備し、料理の腕を振るうのは、「家政夫」である男の仕事だ。
どんな男なのだろう――と、麻衣も、真弓も、俊介も、次郎も興味を持った。
4人の妻たちを相手にするのだから、よほど体力に自信のある、精力的な男なのではないか?
真弓たちはそんな想像をめぐらしたが、日曜日に、4人の妻たちを伴って吉高家にやって来た「家政夫」は、ひと目見るなり、そんな真弓たちの想像を見事に覆した。
「こんにちは。今度、お向かいに越してきた日暮と申します」
「日暮」と書いて「ひぐらし」と読むと言う。
声がやさしく、甲高くて、か細い。飲食店でバイトする接客要員のような声だ。
体つきも、どちらかと言うとヒョロッとしていて、筋骨隆々という感じではない。精力にあふれた野性味たっぷりの男を描いていた真弓たちの想像は、完全に裏切られた感じだった。
次に男が語った男の言葉に、全員が口あんぐりとなった。
「こちらの彼女たちが、私の雇用主です」
「エッ、こ、雇用主?」
「ハイ、私は、彼女たちに雇用されている夫なんですよ」
麻衣と真弓が顔を見合わせ、俊介と次郎がおたがいの肩を小突き合った。
その様子を見て、今度は、妻たちがおたがいの顔を見てクスリと笑った。
「私が妻1号のなつみです。そして、これが娘の楓です」
「私が妻2号のさやかで、これが息子の健斗」
「あ、すみません。妻3号の朋美と申します。そして、こちらは、息子の聡です」
「最後に、妻4号の静香です。この子は、娘の菊華」
言い終えると、静香はペロッと舌を出した。
「何しろ、女が4人と子どもが4人もいますので、何かとうるさくなろうかとは思いますが……」と、日暮氏が申し訳なさそうに言うので、麻衣が、「そんなこと、ちっとも。にぎやかになるの、私たちとしては歓迎なんですよ」と応じた。
「うちの子たちも、友だちができるって楽しみにしてるんですよ」
俊介が口を添えると、4人の妻たちは、「あら、それはいいわ」と顔をほころばせた。
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2015年7月発売 定価/122円
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【右】『『チャボのラブレター』
2014年10月発売 定価122円
中学校の美しい養護教諭とボクの、淡い恋の物語です。
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2015年7月発売 定価/122円
教師のビンタが支配する教室から、突如、姿を消した美少女。卒業から40年経って、ボクはその真実を知ります。
【右】『『チャボのラブレター』
2014年10月発売 定価122円
中学校の美しい養護教諭とボクの、淡い恋の物語です。

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