西暦2072年の結婚〈19〉 愛のローテーション

この小説には性的表現が含まれます。18歳未満の方はご退出を。
ハネムーン明けのこれから、
麻衣の部屋に通う順番をどうしようか?
男3人で額を寄せ合っているところへ、
麻衣が顔を出した。その口からは——。
連載 西暦2072年の結婚
第19章 愛のローテーション

最初から読みたい方は、こちら から、前回から読みたい方は、こちら からどうぞ。
これからの話……?
まさか、夜の生活にまで「当番制」を作ろうというのか?
最初はそう思った。しかし、山辺俊介の話は少し違った。
「麻衣は、これで、オレたち3人の共同の妻ってことになったわけですが……」
俊介は、言いにくそうに、テーブルの上で両方の指を組み合わせたり、解いたりして、それから目を真弓の目に向けた。
「これまでは、オレと次郎さんのどちらかが、気が向いたときに彼女の部屋を訪ねて、麻衣さんが迎え入れてくれれば、夜を一緒に過ごす……っていう形をとってたんですけどね」
「気が向いたとき……ですか? どれくらいの頻度で気が向いてました?」
「ハァ……?」と、俊介と次郎がふたりそろって声を挙げた。
「それ、訊くんですか?」
「一応、参考までに……」
「参考されちゃう?」と俊介が次郎の顔を見る。
「いいッすよ。というか、ボクの場合、あんまり参考にならないと思いますけど……」
そう言って、次郎はポリポリと頭を掻いた。
「あ、この人の場合はね」と、横から俊介が口を出した。
「気が向くのは、麻衣ちゃんのほうだから」
「ヘーッ、モテモテじゃないですか、次郎さん」
「い、いや、そういうんじゃなくて……」
しどろもどろになる草川次郎に、俊介が助け舟を出した。
「草食系なんですよ、次郎さんは。自分からは求めないので、じれた麻衣ちゃんが『いらっしゃい』って招き入れるちゃうんだけど、どうだろ? それ、週1ぐらいはあった?」
「そんなにあったかなぁ……いや、よく覚えてないッす」
「これだもん」と、俊介が両手を広げて見せた。
「そういう俊介さんはどうなんですか?」
俊介は、「ウーン……」とひと唸りした後、おもむろに口を開いた。
「気だけなら、毎日でも向くんですが、実際に部屋に訪ねていくのは、週に一度か二度でしたかねェ。努が生まれてからは、だいたい週一になってました」
「そんなもんですか?」
「そんなもんです。あ、でも、立花さんは、もっと気が向いてくれなくちゃダメなんですよ」
「ハッ……?」
「ハッ……じゃないですよ。立花さんは、子どもを作らなくちゃいけないんですからね。麻衣ちゃんは、30歳前半までに子づくりを終えたいって思ってるみたいだから。時間ないですよ、立花さん」
「そんなにプレッシャーかけないでよ」
真弓が首筋を撫でていると、「それでなんですがね」と、俊介が声を潜めた。
まさか、夜の生活にまで「当番制」を作ろうというのか?
最初はそう思った。しかし、山辺俊介の話は少し違った。
「麻衣は、これで、オレたち3人の共同の妻ってことになったわけですが……」
俊介は、言いにくそうに、テーブルの上で両方の指を組み合わせたり、解いたりして、それから目を真弓の目に向けた。
「これまでは、オレと次郎さんのどちらかが、気が向いたときに彼女の部屋を訪ねて、麻衣さんが迎え入れてくれれば、夜を一緒に過ごす……っていう形をとってたんですけどね」
「気が向いたとき……ですか? どれくらいの頻度で気が向いてました?」
「ハァ……?」と、俊介と次郎がふたりそろって声を挙げた。
「それ、訊くんですか?」
「一応、参考までに……」
「参考されちゃう?」と俊介が次郎の顔を見る。
「いいッすよ。というか、ボクの場合、あんまり参考にならないと思いますけど……」
そう言って、次郎はポリポリと頭を掻いた。
「あ、この人の場合はね」と、横から俊介が口を出した。
「気が向くのは、麻衣ちゃんのほうだから」
「ヘーッ、モテモテじゃないですか、次郎さん」
「い、いや、そういうんじゃなくて……」
しどろもどろになる草川次郎に、俊介が助け舟を出した。
「草食系なんですよ、次郎さんは。自分からは求めないので、じれた麻衣ちゃんが『いらっしゃい』って招き入れるちゃうんだけど、どうだろ? それ、週1ぐらいはあった?」
「そんなにあったかなぁ……いや、よく覚えてないッす」
「これだもん」と、俊介が両手を広げて見せた。
「そういう俊介さんはどうなんですか?」
俊介は、「ウーン……」とひと唸りした後、おもむろに口を開いた。
「気だけなら、毎日でも向くんですが、実際に部屋に訪ねていくのは、週に一度か二度でしたかねェ。努が生まれてからは、だいたい週一になってました」
「そんなもんですか?」
「そんなもんです。あ、でも、立花さんは、もっと気が向いてくれなくちゃダメなんですよ」
「ハッ……?」
「ハッ……じゃないですよ。立花さんは、子どもを作らなくちゃいけないんですからね。麻衣ちゃんは、30歳前半までに子づくりを終えたいって思ってるみたいだから。時間ないですよ、立花さん」
「そんなにプレッシャーかけないでよ」
真弓が首筋を撫でていると、「それでなんですがね」と、俊介が声を潜めた。

すでに麻衣との間に子どもをもうけている自分たちは、週に一度も通えれば十分だ。しかし、これから子づくりに励まなければならない真弓は、それじゃすまない。なので、自分たちとしては、真弓に週2回のアドバンテージを与えたいと思うのだが、どうだろう?
山辺俊介の話は、おおむね、そんなところだった。
とはいえ、おたがいの「気が向く」がバッティングすることがあるかもしれない。どうするか、という話になった。
「立花さんって、公休は決まってるんですか?」と訊いてきたのは、草川次郎だった。
「いまのところ、月曜と木曜だけど……」
「じゃ、日曜の夜と水曜の夜は、優先的に立花さんが使うってことにしませんか?」
「いいね。じゃ、オレは金曜日にするかな。土曜日は、ガキの相手とかしなくちゃなんないから忙しいし」と、俊介が応じた。
「残りは、月・火・木・土ですか? でも、土曜日は、麻衣さん、家事のほうが忙しいみたいだから、ボクは、月か火、どちらかにします――つか、しないかもしれないし」
「でもさ、それ、義務じゃないですからね。その日には、他の者は声をかけないので、ご自由にどうぞってだけの話ですから」
「しかしなぁ……」と真弓は頭をひねった。
「そんなこと、男だけで決めちゃっていいのかなぁ」
「そこなんだよねェ」と、俊介も次郎も、頭を抱え込んだ。
そこへ、子どもたちを寝かしつけた麻衣が、エプロンのひもを解きながらやって来た。

「男同士で、何をむずかしい顔して話してるの?」
「あ、いや……」と、俊介と次郎はたがいの顔を見合わせた。
麻衣が「エッ、何?」という目を向けてくるので、真弓は、「実はね……」と口を開いた。
「愛のローテーションについて話してたんですよ」
「愛の? ローテーション……?」
「エーとね、一応、3人で話し合ったんだけど、麻衣ちゃんと愛し合いたいっていう気持ちが、ガッチャンコしちゃうと何かと大変でしょ? だから、優先的に声をかける日を決めようかって話になったんだよね。日曜日と水曜日は立花さんが、金曜日はオレが、そして、月曜日と火曜日のどちらかを次郎さんが――って、いまのところ、そんな話になってるんだけどさ」
「エーッ」と麻衣が声を挙げた。
「そんなこと、男3人だけで決めてたの?」
「決めたっていうより、ま、一種の紳士協定みたいなもんなんだけど……」
「まるで、ペルシャの奴隷市場に売りに出された女奴隷みたいな気分だわ。女であるわたしの気分は、どうなっちゃうわけ?」
麻衣は、プーと頬をふくらませている。しかし、怒っているというふうでもない。どこかで、それをゲームとして楽しもうと思っているのかもしれない。しかし、その口から飛び出した言葉は、ちょっと意外だった。
「昔は、どうしてたんだろうね?」
「エッ、昔……って?」と、俊介と次郎が声をそろえた。
「万葉集とかの時代ってさ、通ってくる男が複数いたりしたわけでしょ? どうしてたんだろうね?」
「言問い方式でしょ」
真弓が答えると、今度は、麻衣と俊介と次郎が「エッ?」と声を挙げた。
⇒続きを読む
筆者の最新小説、キンドル(アマゾン)から発売中です。絶賛在庫中!

一生に一度も結婚できない「生涯未婚」の率が、男性で30%に達するであろう――と予測されている「格差社会」。その片隅で「貧困」と闘う2人の男と1人の女が出会い、シェアハウスでの共同生活を始めます。新しい仲間も加わって、築き上げていく、新しい家族の形。ハートウォーミングな愛の物語です。
「Kindle」は、「Amazon.com」が世界中で展開している電子本の出版・販売システム。「Kindle専用端末」があればベストですが、なくても、専用のビューアーをダウンロード(無料)すれば、スマホでも、タブレットでも、PCでも読むことができます。
下記タイトルまたは写真をクリックして、ダウンロードしてください。
2016年3月発売 定価:342円 発行/虹BOOKS
妻は、おふたり様にひとりずつ (小説)
既刊本もどうぞよろしく タイトルまたは写真をクリックしてください。



【左】『聖少女~六年二組の神隠し』
2015年7月発売 定価/122円
教師のビンタが支配する教室から、突如、姿を消した美少女。卒業から40年経って、ボクはその真実を知ります。
【右】『『チャボのラブレター』
2014年10月発売 定価122円
中学校の美しい養護教諭とボクの、淡い恋の物語です。
「Kindle」は、「Amazon.com」が世界中で展開している電子本の出版・販売システム。「Kindle専用端末」があればベストですが、なくても、専用のビューアーをダウンロード(無料)すれば、スマホでも、タブレットでも、PCでも読むことができます。
下記タイトルまたは写真をクリックして、ダウンロードしてください。
2016年3月発売 定価:342円 発行/虹BOOKS
妻は、おふたり様にひとりずつ (小説)
既刊本もどうぞよろしく タイトルまたは写真をクリックしてください。
2015年7月発売 定価/122円
教師のビンタが支配する教室から、突如、姿を消した美少女。卒業から40年経って、ボクはその真実を知ります。
【右】『『チャボのラブレター』
2014年10月発売 定価122円
中学校の美しい養護教諭とボクの、淡い恋の物語です。

管理人は、常に、フルマークがつくようにと、工夫して記事を作っています。
みなさんのひと押しで、喜んだり、反省したり……の日々です。
どうぞ正直な、しかしちょっぴり愛のこもった感想ポチをお願いいたします。



→この小説の目次に戻る トップメニューに戻る
- 関連記事
-
- 西暦2072年の結婚〈20〉 夫3人、言問いの夜 (2017/12/07)
- 西暦2072年の結婚〈19〉 愛のローテーション (2017/11/29)
- 西暦2072年の結婚〈18〉 結ばれる形 (2017/11/21)