「強欲」を「抑制」する思想と「野放し」にする思想

「獲得」に走る男たちの「強欲」を野放しにしておくと、世の中には戦争や略奪がはびこります。世界には、「それでもいい」とする思想もあれば、それを抑制しようとする思想も存在します。抑制する思想の代表は、マルクスらの唱えた「共産主義」と、ケインズが唱えた「修正資本主義」でした――。
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哲雄 自ら著作を手がけるエッセイスト。当ブログの管理人です。
AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指すアラサーの美女。
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AKI 「獲得」に走ろうとする男たちの「獲得性」がわるく発揮されると、それは、ときに「強欲」となって現れ、世の中に戦争や略奪などの災厄をもたらすことがある。前回はそんな話をしたんですよね。しかし、人類は、そういう「強欲」にブレーキをかけようともした。
哲雄 しました。19世紀以降、この世界には、大きく分けると、2つの考え方がありました。ひとつは、
「いいじゃないか、強欲でも」という考え方。
どんなに「強欲」に「獲得」に走る人間や組織が現れても、
やがてそれは、「見えざる手」によって「調和」される
という考え方。経済学で言うと、「古典派」や「新古典派」の考え方がそれで、その根底に流れているのは、19世紀の「自由主義」です。現在でも、「市場原理主義」を唱える人たちの考え方の根底には、そういう思想が流れている――と申し上げました。
AKI でも、それじゃダメでしょ、という考え方も登場したんですよね?
哲雄 19世紀末には、カール・マルクスやエンゲルスらが現れて、
「共産主義革命」によってこそ、
労働者階級(プロレタリアート)は自らを解放することができる。
と説きました。資本家が強欲に利益を追求するために、労働者を搾取するのなら、労働者は団結してそれに対抗しなければならない。共産党という労働者の党のもとに結集して政府を樹立し、私有財産に制限を加え、完全に平等な社会を実現しようとしたんですね。
AKI うまくいったんですか、それ?
哲雄 20世紀の初めには「ロシア革命」が起こって、世界で初めて、共産党の一党独裁による社会主義国家「ソビエト連邦」が誕生するのですが、残念ながらこの国家は、後に現れて実験を握ったスターリンの強権による独裁政治が続いて、官僚機構ばかりが権力を握る国家となり、次第に活力を失って、後のソ連邦崩壊へとつながりました。
AKI あ、そこから先の話は、私も知ってます。「ベルリンの壁」が崩壊したりした時代ですよね?
哲雄 そうです。アメリカでも、強欲な資本主義に修正を加えようという動きが生まれました。
AKI ヘーッ、あったんですか、そんな動きが?
哲雄 あった――というか、いまもあるんですけど、キミはケインズという名前を聞いたことがありますか?
AKI よくテレビに出たりしてた人ですよね?
哲雄 それはケント! ケインズというのは、20世紀前半に現れたアメリカの経済学者なんですけど、この人が言ったことは、ひと言で言うと、政府の力で「資本主義」に修正を加えよう――ということなんですね。AKIクンは「大きな政府」「小さな政府」という言葉をご存じですか?
AKI エーッと、政府の建物を立派にするとか、小さくするとか……?
哲雄 訊いた私がバカでした。簡単に言うと、経済に政府が干渉するかどうか、その程度をどれくらいにするか――って話なんだけど、「大きな政府」というのは、その干渉の程度を大きくしようとする考え方、「小さな政府」というのは、それを最小限度にとどめようとする考え方なんですよね。どちらかと言うと、前政権のオバマに代表される民主党は、伝統的に「大きな政府」という考え方で経済をコントロールしようとし、いまのトランプに代表される共和党は、伝統的に「小さな政府」という考え方で経済を野放しにしておこうとします。
AKI 「野放し」ですか? つまり、勝手にやってろ――ってこと?
哲雄 ま、そんなところですかね。
哲雄 しました。19世紀以降、この世界には、大きく分けると、2つの考え方がありました。ひとつは、
「いいじゃないか、強欲でも」という考え方。
どんなに「強欲」に「獲得」に走る人間や組織が現れても、
やがてそれは、「見えざる手」によって「調和」される
という考え方。経済学で言うと、「古典派」や「新古典派」の考え方がそれで、その根底に流れているのは、19世紀の「自由主義」です。現在でも、「市場原理主義」を唱える人たちの考え方の根底には、そういう思想が流れている――と申し上げました。
AKI でも、それじゃダメでしょ、という考え方も登場したんですよね?
哲雄 19世紀末には、カール・マルクスやエンゲルスらが現れて、
「共産主義革命」によってこそ、
労働者階級(プロレタリアート)は自らを解放することができる。

と説きました。資本家が強欲に利益を追求するために、労働者を搾取するのなら、労働者は団結してそれに対抗しなければならない。共産党という労働者の党のもとに結集して政府を樹立し、私有財産に制限を加え、完全に平等な社会を実現しようとしたんですね。
AKI うまくいったんですか、それ?
哲雄 20世紀の初めには「ロシア革命」が起こって、世界で初めて、共産党の一党独裁による社会主義国家「ソビエト連邦」が誕生するのですが、残念ながらこの国家は、後に現れて実験を握ったスターリンの強権による独裁政治が続いて、官僚機構ばかりが権力を握る国家となり、次第に活力を失って、後のソ連邦崩壊へとつながりました。
AKI あ、そこから先の話は、私も知ってます。「ベルリンの壁」が崩壊したりした時代ですよね?
哲雄 そうです。アメリカでも、強欲な資本主義に修正を加えようという動きが生まれました。
AKI ヘーッ、あったんですか、そんな動きが?
哲雄 あった――というか、いまもあるんですけど、キミはケインズという名前を聞いたことがありますか?
AKI よくテレビに出たりしてた人ですよね?
哲雄 それはケント! ケインズというのは、20世紀前半に現れたアメリカの経済学者なんですけど、この人が言ったことは、ひと言で言うと、政府の力で「資本主義」に修正を加えよう――ということなんですね。AKIクンは「大きな政府」「小さな政府」という言葉をご存じですか?
AKI エーッと、政府の建物を立派にするとか、小さくするとか……?
哲雄 訊いた私がバカでした。簡単に言うと、経済に政府が干渉するかどうか、その程度をどれくらいにするか――って話なんだけど、「大きな政府」というのは、その干渉の程度を大きくしようとする考え方、「小さな政府」というのは、それを最小限度にとどめようとする考え方なんですよね。どちらかと言うと、前政権のオバマに代表される民主党は、伝統的に「大きな政府」という考え方で経済をコントロールしようとし、いまのトランプに代表される共和党は、伝統的に「小さな政府」という考え方で経済を野放しにしておこうとします。
AKI 「野放し」ですか? つまり、勝手にやってろ――ってこと?
哲雄 ま、そんなところですかね。
AKI でもさ、哲ジイ。野放しなんかにしてると、強欲な人たちは、自分たちの利潤を上げるために、どんどんあこぎなことやっちゃうんじゃありません?
哲雄 それでも、時間が経てば、「見えざる手」によって「調和」されて、経済は落ち着くべきところに落ち着くはずだ。「小さな政府」を主張する人たちは、そう考えるんですね。しかし、AKIクン、そうは言ってられない事態も訪れる。1929年には「大恐慌」がアメリカ経済を襲って、アメリカ国民の4人に1人が失業するという、異常な事態を招きました。それじゃいかん――というので、ケインズたちが主張したのは、政府が経済に介入する政策でした。
AKI どんなふうに介入したんです?
哲雄 いろんなことが指摘されているのですが、大きかったのは、大規模に金融を緩和し、公共事業などの政府支出を増やして、雇用を創出したことじゃないでしょうか。同時に、企業に生産調整を要請するとともに、最低賃金を保証し、労働者の団結権を認めて、賃金UPも図りました。それによって、消費を回復させることにも成功しました。
AKI 強欲な企業側にしてみれば、余計なことをするなと思ったでしょうね?
哲雄 ここは自由の国だ。好きに稼がせろよ――ってね。トランプさんの会社とかが、もしその時代にあったら、真っ先にそういう声を挙げただろうと思います。
AKI 日本ではどうだったんですか?
哲雄 日本は、「官主導」で近代化を進めた国だったので、どちらかと言うと「大きな政府」型の社会だったと思います。ただし、日本の「大きな政府」は、戦前までは「政財癒着」「軍産複合」の構造を生み出し、ひたすら軍事化の道を歩んだので、社会福祉の充実とか賃金の上昇という結果には結びつかなかったんですけどね。戦後になると、池田内閣の「所得倍増計画」などもあって、今度は、官民一体となって高度成長に取り組みました。
AKI その結果は?
哲雄 日本は未曾有の繁栄を遂げ、1970年代には、「1億総中流」などと呼ばれる時代を迎えました。調子こいた当時の指導者たちは、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと浮かれまくるのですがね……。
AKI あ、知ってる。それ、本にもなったんですよね。書いたのは、確か……。
哲雄 当時の東京都知事、石原慎太郎です。しかし、それはほんの束の間のことでした。しこたま利潤を貯め込んだ日本企業は、そのストックを不動産投資などに注ぎ込んだため、いわゆる「バブル景気」をもたらすんですねェ。
AKI 「ストック」っていうのは?
哲雄 預貯金とか証券とか不動産という「資産」のことです。対して、賃金として支払うお金とか、原材料を買い付けるお金とか、設備の購入・維持に当てるお金という「費用」は、「フロー」と呼ばれます。
AKI その「ストック」を不動産投資などに回すと、どうなるんですか?
哲雄 不動産価格は上昇し、株価も金利も上がります。2000万で購入した不動産が、3000万とか4000万とかで売れたりするものだから、だれもが、このマネーゲームに没入していきます。
AKI だれもが……って言っても、元になるお金がないと参加できませんよね?
哲雄 そうなんです。
お金でお金を生み出すというこのゲームに参加できたのは、
資金に余裕のある富裕層や、社内に剰余金を貯め込んだ大企業だけでした。
その結果、どうなったか?
富める者はますます富み、持たざる者はますます困窮するという、
格差の拡大が起こりました。
多くの企業が、本来、「モノづくり」に回すべき資金を固定資産の売り買いに回したため、生産活動は停滞しました。そうして、「汗かいて働くばかりが能じゃない」というマインドが、日本中に広がっていった時代でもありましたね。
AKI 私には、女の子がボディコンで派手に踊りまくっていた時代――っていう印象しかないんですけど。
哲雄 お金だけが余っているという時代でしたからね。女の子たちは、当時、流行っていたワンレン・ボディコンに身を包んで、そのお金に群がっていましたね。
AKI お金に群がる――って、どんな風に?
哲雄 その頃、お金をバラ撒いていたのは、不動産や金融業などの会社やそこに勤務するオフィスワーカーたちでした。そういう企業は、大した仕事もないのに、新人を大量に採用して給与やボーナスを大盤振る舞いするということをやったので、いまでも、当時の「バブル採用組」が企業のお荷物になったりしているのですが、それだけじゃなくて、そういう業種の経営者や管理職などは、飲み屋やクラブなどでもバンバン金を落としました。
AKI お水系の女の子たちには、おいしい時代だったんですねェ。
哲雄 そういうところでチョイと働くだけで、リッチな生活が送れましたからね。なにしろ、チップが飛び交っていた時代でしたから、まともに働こうなんていう気にはならなかっただろうと思いますよ。お水系だけじゃありません。タクシーの運転手だって、客がどんどんチップをはずんだりするんで、けっこうおいしい思いをしたはずです。ワンメーターの客なんて無視されて、「乗車拒否」が社会問題になったりもしました。
AKI いやな時代ですねェ。
哲雄 ハイ、嫌な時代でした。でも、そんな時代が長続きするはずがない。バブルはあっという間に崩壊してしまいます。「強欲」に走ったツケは大きかったんですよ。バブル崩壊後の日本は、どうなったか?
AKI それ、知りた~い!
哲雄 では、次回、この続きをお話しましょう。
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管理人は常に、下記3つの要素を満たせるように、脳みそに汗をかきながら、記事をしたためています。
あなたの押してくださったポイントを見ては、喜んだり、反省したりの日々です。
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