第65夜☆封印された「女」に火が点くと怖い?
第65夜
「愛とは何か?」をめぐって、管理人・哲雄がパートナー・AKIを相手に展開する、オヤジ・ギャグ風+ちょっぴりアカデミックおしゃべり。今回は、欲望が「抑圧」を受けた結果、「女(男)を捨てる」に走る傾向について語ります――。
哲雄 突然なんだけど……。
AKI ハイ、何でしょう?
哲雄 AKIクンは、女を捨てようと思ったことある?
AKI な、なんですか、いきなり?
哲雄 だからね、これまでの人生のどの段階でもいいんだけど、自分が女であることを忘れようと思ったことは?
AKI ありませんよッ、そんな!
哲雄 ということは、キミのリビドーは「抑圧」しなければならないほどの危機に直面せずにすんだ、ってことなんだな。
AKI ね、その「抑圧」しなければならないほどの「リビドーの危機」って、どういうことで訪れるの? たとえば、ものすごい片思いに苦しんだ……とか?
哲雄 そう。いくら口説いてもAKIクンはやらせてくれないし、いっそ、男捨ててしまおうか……とかね。
AKI 私、マジメに訊いてるんですけど……。
哲雄 残念ながら、ふつうの失恋程度では、そういうことにはならない。キミなんかは変わり身が早いから、すぐ次のターゲットを見つけるだろうし……。
AKI 失礼な! 私、こう見えても、けっこう一途ですよ。
哲雄 だいたい、思春期以降のリビドーの危機なんてのは、これまで説明してきたように、他の欲望を満たすことで回避しようとしたり(=代償)、自分のリビドーのレベルを幼児期レベル程度にまで落とすことで苦痛から逃れようとしたり(=退行)、リビドーのもつエネルギーをもっと高位の欲望実現のために注ぎ込むことによって解消しようとしたり(=昇華)――という方法で、なんとか決着がつくものです。しか~し!
AKI ワッ! ビックリしたから驚いちゃった。
哲雄 まだ自我の成長が未熟な幼児期ぐらいの段階で、リビドーが強い否定に遭うと、どうなるか?
AKI それって、もしかして親とかが関係する?
哲雄 大いに関係します。この話、第58夜『拒否された欲望は、どこへ消えるのか?』でもしたと思うんだけど、たとえば、幼いキミがオナニーしてるところを、お父さんなりお母さんなりに見つかったとしよう。
AKI エーッ!? 私、そんな頃からオナニーなんてしてませんけど……。
哲雄 でも、それと知らずにやってたかもしれないじゃないか。たとえば、ぬいぐるみを股間にはさんでこすりつけると気持ちいいので、親の前でもそういうことをしてたとか。
AKI 覚えてませんッ、そんな昔のことは……。
哲雄 ホラ、赤くなってる。ま、いいや。でね、幼いキミには、まだ、オナニーの意味なんてわかってなかっただろうけど、お母さんの目から見れば、それが「いけない行為」であることは、一目瞭然。もしかしたら、こっぴどく怒ったかもしれない。
AKI そうなのかなぁ……。
哲雄 キミの手からぬいぐるみを取り上げ、おシリをピシャピシャ引っぱたいて、「まったくいやらしい子ねェ。二度とこんなことしたら、お手々、縛っちゃうからね」などと脅かしたかもしれない。すると幼いキミは、どう思うか?
AKI 「いやらしい自分」は隠さなくちゃ……?
哲雄 「いやらしい」というか「気持ちよくなる自分」は隠さなくちゃ……と思うだろうね。そうして「抑圧」という操作が行われる。「抑圧」とは、そういう欲望を無意識の中に押し込めて、意識の表面に表れてこないようにフタをする意識の働きだったよね。で、そのためには、常に見張りを立てておかないといけないから、意識は「道徳」という武器を手に持って、無意識の出口を厳しく監視することになる。前回までは、そういう話だったよね。
AKI 「道徳」で武装した意識は、他人にも厳しい目を向けて、極端な場合には、それがヒステリー症状として表れる場合もある、とお聞きしました。
哲雄 実は、「抑圧」の結果、行われる操作には、もうひとつの側面があるんだ。それが「女を捨てる」「男を捨てる」という操作。
AKI エーッ、捨てちゃうのォ? どうやって?
哲雄 ひとつの方法は、「出家」。
AKI 「出家」って、あの、尼さんとかになっちゃうやつ?
哲雄 子どもが尼さんになるわけにはいかないけど、精神的にはそれに近いだろうね。「清い」にあこがれるというか、「清らか」であることに人生の最大の価値を置いて、そのとおりの生き方をしようとしたりする。
AKI つたの絡まるチャペルで~♪ っていうあれですね。もうひとつは?
哲雄 女の子だと、男のフリをする。実は、これがけっこう多い。
AKI エッ、男装したり……とか?
哲雄 いや、そういうトランス・ジェンダーっぽいのではなく、ユニセックスっぽくなる。オフィスとかだとよくいるタイプだと思うけどなァ。「私、女、捨てました」なんて公言して、髪ふり乱して働くタイプとか、「男? キョーミありません」という顔して、化粧っけもなく、ただ黙々と仕事に打ち込むタイプとか……。
AKI そう言えば、昔、派遣社員で働いてた職場にもいました、そういう方が。日経新聞で株をチェックするのが朝一番の仕事で、夕ご飯はだいたいホルモンか焼き鳥で、日曜日の楽しみは競輪、競馬に競艇。目下の男性社員なんて、「ちょっと、長住ィ」なんて呼び捨てするし……あれは、確かに、女捨ててました。
哲雄 近頃、多いみたいだね。そういうタイプ。ま、こういうのは、環境ホルモンの影響なんかもあるのかもしれないけど、幼児期に自分の「女性性」を「抑圧」したってケースも、かなりあるんじゃないかと思いますよ。
AKI ねェ、哲ジイ、そういうふうに自分の「女としての欲望」にフタをしちゃった人たちって、ずっと、フタをし続けたまま、一生を過ごすのかなぁ。
哲雄 もし、フタをしたままだとしたら、世の中に恋愛文学というものが成立しなくなるでしょうね。
AKI また、スケベなこと考えてる、このおっさん。
哲雄 洋の東西を問わず、今と昔を問わず、官能文学の「官能」たるゆえんは、「禁」のトビラをどうこじ開けるか――にかかっていると言っていい。それがなきゃ、つまらないでしょ。「やりたい」と思ってる同士の男と女が、いくら濡れ場を見せてくれても、このおっさんなんぞは、何も感じない。しかし、ご安心めされよ、姫。こうして閉ざされ、かんぬきをかけられた欲望には、必ず出口があります。
AKI ホーッ。お聞きしたいものです。
哲雄 いや、別に、私は、それが趣味ってわけじゃありませんから。
AKI でも、でも、たとえば、さっきのホルモン晩メシに日曜は競艇なんておばさん上司に、もし哲ジイが「おい、長住」なんて呼びつけられて、「なんだよ、この仕事は……」なんて、ガミガミ言われたら、どうします?
哲雄 長いものには巻かれろ!
AKI エーッ!? それだけェ?
哲雄 そりゃ、こっちだって生活かかってるもの。ご説ごもっとも……と、おとなしく話を聞きますよ。ま、お聞きしたあとで、最後にひと言、ささやくかもしれませんけどね。
AKI な、なんて?
哲雄 「きょうの下着、ステキですよ」とかね。
AKI やっぱ、スケベだ、このおっさん。でも、それって、やばくないですか? ヘタしたらセクハラですよ。
哲雄 愛には、キケンがつきものです。でも、そのキケンより、私は、別のキケンのほうが怖い。
AKI なんですか、それ?
哲雄 長い間、封印されてきた欲望のトビラを開けてしまうと、どうなるか? そっちのほうが怖いです。安珍と清姫みたいになったら、どうしよう……とかね。
AKI アンチンしなさい。いくら欲望のトビラを開けたとしても、ゾンビに発情するモノ好きはいませんから。
哲雄 ゾ、ゾンビ? フー・イズ・イット?
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哲雄 残念ながら、ふつうの失恋程度では、そういうことにはならない。キミなんかは変わり身が早いから、すぐ次のターゲットを見つけるだろうし……。
AKI 失礼な! 私、こう見えても、けっこう一途ですよ。
哲雄 だいたい、思春期以降のリビドーの危機なんてのは、これまで説明してきたように、他の欲望を満たすことで回避しようとしたり(=代償)、自分のリビドーのレベルを幼児期レベル程度にまで落とすことで苦痛から逃れようとしたり(=退行)、リビドーのもつエネルギーをもっと高位の欲望実現のために注ぎ込むことによって解消しようとしたり(=昇華)――という方法で、なんとか決着がつくものです。しか~し!
AKI ワッ! ビックリしたから驚いちゃった。
哲雄 まだ自我の成長が未熟な幼児期ぐらいの段階で、リビドーが強い否定に遭うと、どうなるか?
AKI それって、もしかして親とかが関係する?
哲雄 大いに関係します。この話、第58夜『拒否された欲望は、どこへ消えるのか?』でもしたと思うんだけど、たとえば、幼いキミがオナニーしてるところを、お父さんなりお母さんなりに見つかったとしよう。
AKI エーッ!? 私、そんな頃からオナニーなんてしてませんけど……。
哲雄 でも、それと知らずにやってたかもしれないじゃないか。たとえば、ぬいぐるみを股間にはさんでこすりつけると気持ちいいので、親の前でもそういうことをしてたとか。
AKI 覚えてませんッ、そんな昔のことは……。
哲雄 ホラ、赤くなってる。ま、いいや。でね、幼いキミには、まだ、オナニーの意味なんてわかってなかっただろうけど、お母さんの目から見れば、それが「いけない行為」であることは、一目瞭然。もしかしたら、こっぴどく怒ったかもしれない。
AKI そうなのかなぁ……。
哲雄 キミの手からぬいぐるみを取り上げ、おシリをピシャピシャ引っぱたいて、「まったくいやらしい子ねェ。二度とこんなことしたら、お手々、縛っちゃうからね」などと脅かしたかもしれない。すると幼いキミは、どう思うか?
AKI 「いやらしい自分」は隠さなくちゃ……?
哲雄 「いやらしい」というか「気持ちよくなる自分」は隠さなくちゃ……と思うだろうね。そうして「抑圧」という操作が行われる。「抑圧」とは、そういう欲望を無意識の中に押し込めて、意識の表面に表れてこないようにフタをする意識の働きだったよね。で、そのためには、常に見張りを立てておかないといけないから、意識は「道徳」という武器を手に持って、無意識の出口を厳しく監視することになる。前回までは、そういう話だったよね。
AKI 「道徳」で武装した意識は、他人にも厳しい目を向けて、極端な場合には、それがヒステリー症状として表れる場合もある、とお聞きしました。
哲雄 実は、「抑圧」の結果、行われる操作には、もうひとつの側面があるんだ。それが「女を捨てる」「男を捨てる」という操作。
AKI エーッ、捨てちゃうのォ? どうやって?
哲雄 ひとつの方法は、「出家」。
AKI 「出家」って、あの、尼さんとかになっちゃうやつ?
哲雄 子どもが尼さんになるわけにはいかないけど、精神的にはそれに近いだろうね。「清い」にあこがれるというか、「清らか」であることに人生の最大の価値を置いて、そのとおりの生き方をしようとしたりする。
AKI つたの絡まるチャペルで~♪ っていうあれですね。もうひとつは?
哲雄 女の子だと、男のフリをする。実は、これがけっこう多い。
AKI エッ、男装したり……とか?
哲雄 いや、そういうトランス・ジェンダーっぽいのではなく、ユニセックスっぽくなる。オフィスとかだとよくいるタイプだと思うけどなァ。「私、女、捨てました」なんて公言して、髪ふり乱して働くタイプとか、「男? キョーミありません」という顔して、化粧っけもなく、ただ黙々と仕事に打ち込むタイプとか……。
AKI そう言えば、昔、派遣社員で働いてた職場にもいました、そういう方が。日経新聞で株をチェックするのが朝一番の仕事で、夕ご飯はだいたいホルモンか焼き鳥で、日曜日の楽しみは競輪、競馬に競艇。目下の男性社員なんて、「ちょっと、長住ィ」なんて呼び捨てするし……あれは、確かに、女捨ててました。
哲雄 近頃、多いみたいだね。そういうタイプ。ま、こういうのは、環境ホルモンの影響なんかもあるのかもしれないけど、幼児期に自分の「女性性」を「抑圧」したってケースも、かなりあるんじゃないかと思いますよ。
AKI ねェ、哲ジイ、そういうふうに自分の「女としての欲望」にフタをしちゃった人たちって、ずっと、フタをし続けたまま、一生を過ごすのかなぁ。
哲雄 もし、フタをしたままだとしたら、世の中に恋愛文学というものが成立しなくなるでしょうね。
AKI また、スケベなこと考えてる、このおっさん。
哲雄 洋の東西を問わず、今と昔を問わず、官能文学の「官能」たるゆえんは、「禁」のトビラをどうこじ開けるか――にかかっていると言っていい。それがなきゃ、つまらないでしょ。「やりたい」と思ってる同士の男と女が、いくら濡れ場を見せてくれても、このおっさんなんぞは、何も感じない。しかし、ご安心めされよ、姫。こうして閉ざされ、かんぬきをかけられた欲望には、必ず出口があります。
AKI ホーッ。お聞きしたいものです。
哲雄 いや、別に、私は、それが趣味ってわけじゃありませんから。
AKI でも、でも、たとえば、さっきのホルモン晩メシに日曜は競艇なんておばさん上司に、もし哲ジイが「おい、長住」なんて呼びつけられて、「なんだよ、この仕事は……」なんて、ガミガミ言われたら、どうします?
哲雄 長いものには巻かれろ!
AKI エーッ!? それだけェ?
哲雄 そりゃ、こっちだって生活かかってるもの。ご説ごもっとも……と、おとなしく話を聞きますよ。ま、お聞きしたあとで、最後にひと言、ささやくかもしれませんけどね。
AKI な、なんて?
哲雄 「きょうの下着、ステキですよ」とかね。
AKI やっぱ、スケベだ、このおっさん。でも、それって、やばくないですか? ヘタしたらセクハラですよ。
哲雄 愛には、キケンがつきものです。でも、そのキケンより、私は、別のキケンのほうが怖い。
AKI なんですか、それ?
哲雄 長い間、封印されてきた欲望のトビラを開けてしまうと、どうなるか? そっちのほうが怖いです。安珍と清姫みたいになったら、どうしよう……とかね。
AKI アンチンしなさい。いくら欲望のトビラを開けたとしても、ゾンビに発情するモノ好きはいませんから。
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