もしも野良猫が部屋に居ついてしまったら〈下〉

部屋にやって来たその野良猫は、朝になっても
起きようとしなかった。仕方なく鍵を渡して、
「起きたらカギをかけて帰れよ」と出かけた。
しかし、仕事から帰った私が目にしたのは——。
R18 このシリーズは、性的表現が中心の官能読み物です。18歳未満の方はご退出ください。
エロ 官能小説 オーガズム 不倫
玄関の上がり框で、キラリと光っているものがあった。
な、なんだと!?
全身がゾーッとなった。
その光るものは、女が脱ぎ捨てたミュールだった。
アケミは、まだ帰らずに、この部屋に居残っているのだった。
「オイ、キミっ!」
怒鳴りつけてやろう――と、勢いよくリビングのドアを開けたが、女の姿はなかった。
トイレにも、バスルームにも、姿がない。
まさか……と思って、寝室をのぞくと……いた!!
枕を抱き、下着だけの尻を掛け布団の端からはみ出させて、女は、ヘビのように……というか、ネコのように体を丸めて眠っていた。
「オイ、起きろ!」
肩を揺すったが、「ウーン……」と寝返りを打っただけで、目すら開けない。
少々、荒っぽくはあったが、「起きろー」と叫びながら布団をはぎ取った。
裸の胸を自分の腕で抱きかかえるようにして、パンツ一枚で横たわる、しどけない姿が目に飛び込んできた。
その瞬間、ムラッときた。
いや、ムカッ……ときた。
正確に言うと、ムラッときながらムカッときた。
違う。ムカッときながら、ムラッ……ときた。
「お帰りィ~。ああ、久しぶりによく寝た」
やっと目を開けた女は、両手を私に向かって広げ、なんと、「いらっしゃい」のポーズを見せるではないか。
何なのだ、この図々しさは――と、無性にハラが立った。
ハラが立つと、体の他の部位も、連鎖的に立つ。
悲しいことだが、人間の体は、そういうふうに作られている。
クソーッ、この女、完全に頭がイカれてる!!
こういう場合、こちらもイカれないと、バランスがとれない。
仕方ないので、ほんとに……仕方がないので、バランスをとるためにパンツを脱いで、彼女の上に重なった。
イカれた女のイカれたカントは、なまこのようなヌルヌルで私のイカれたウインナーを絡め取り、奥へ奥へといざなって、「自由にお使いください」と病院に置いてある血圧計みたいな絶妙(?)な力で、ウインナーを締め上げた。
「出して! いっぱい、出して!」
体を網の上のクルマエビみたいにのけぞらせた女の、なんとも直接的な言葉に導かれて、私はまたも、彼女の粒々ゼリーの上にホイップクリームを撒き散らしたのであった――。
な、なんだと!?
全身がゾーッとなった。
その光るものは、女が脱ぎ捨てたミュールだった。
アケミは、まだ帰らずに、この部屋に居残っているのだった。
「オイ、キミっ!」
怒鳴りつけてやろう――と、勢いよくリビングのドアを開けたが、女の姿はなかった。
トイレにも、バスルームにも、姿がない。
まさか……と思って、寝室をのぞくと……いた!!
枕を抱き、下着だけの尻を掛け布団の端からはみ出させて、女は、ヘビのように……というか、ネコのように体を丸めて眠っていた。
「オイ、起きろ!」
肩を揺すったが、「ウーン……」と寝返りを打っただけで、目すら開けない。
少々、荒っぽくはあったが、「起きろー」と叫びながら布団をはぎ取った。
裸の胸を自分の腕で抱きかかえるようにして、パンツ一枚で横たわる、しどけない姿が目に飛び込んできた。
その瞬間、ムラッときた。
いや、ムカッ……ときた。
正確に言うと、ムラッときながらムカッときた。
違う。ムカッときながら、ムラッ……ときた。
「お帰りィ~。ああ、久しぶりによく寝た」
やっと目を開けた女は、両手を私に向かって広げ、なんと、「いらっしゃい」のポーズを見せるではないか。
何なのだ、この図々しさは――と、無性にハラが立った。
ハラが立つと、体の他の部位も、連鎖的に立つ。
悲しいことだが、人間の体は、そういうふうに作られている。
クソーッ、この女、完全に頭がイカれてる!!
こういう場合、こちらもイカれないと、バランスがとれない。
仕方ないので、ほんとに……仕方がないので、バランスをとるためにパンツを脱いで、彼女の上に重なった。
イカれた女のイカれたカントは、なまこのようなヌルヌルで私のイカれたウインナーを絡め取り、奥へ奥へといざなって、「自由にお使いください」と病院に置いてある血圧計みたいな絶妙(?)な力で、ウインナーを締め上げた。
「出して! いっぱい、出して!」
体を網の上のクルマエビみたいにのけぞらせた女の、なんとも直接的な言葉に導かれて、私はまたも、彼女の粒々ゼリーの上にホイップクリームを撒き散らしたのであった――。

「心配してるかもしれないけどさ……私、ビョーキとか持ってないからね。そこまでワルい女じゃないよ。頭は、バカだけど……」
後悔に苦々しくゆがむ私の顔を見ながら、彼女はケロリと言ってくれるのだった。
確かに、バカではあるけど、その「バカ」は、「頭がわるい」という「バカ」ではなくて、「頭がおかしい」ほうの「バカ」だった。
「キミ、もしかして、何かクスリとかやってる?」
「そう見えるらしいけど、やってないよ。ほんとは、私ね……」
ゆるゆると語ってくれたところによると、彼女は、一応、ミュージシャン志望のフリーターだったらしい。
ギター・ケースを抱えて渋谷の街をブラブラしているところを、フーゾク専門のスカウトに引っかかって、この業界に引き込まれた。
「ちょっとエッチなマッサージをやるだけ」という話だったが、始めてみると、たいていの客がそれではすまないことがわかった。
「ま、いいか……」と思ったが、問題は、彼女をスカウトした男だった。
その男は、ただのスカウトではなくて、自分がスカウトした女の子のドライバーを引き受けることで収入を得る、という、半分、ヒモみたいな生活を送っている男だった。
何人か抱えている女の子を、効率よく回転させるほど、自分の収入も増えるので、ムリな注文も受けてしまう。女の子が、「あのお客さんはブラックにして」と頼んだ客のところにも、「おまえ、そんな選り好みしてると、このギョーカイで生きていけないぞ」と脅して、送り込んでしまう。
それもイヤだったが、もっとガマンがならなかったのは、男が自分に手を伸ばしてくることだった。
どうやら、彼女は、男の好みのタイプだったらしく、空き時間ができると、「次の仕事、ラブホのお客さんだから」などと偽って、彼女をホテルに連れ込み、強引に関係を迫ったりもするようになった。
男の行動は次第にエスカレートしていった。
客のところからクルマに戻ってきた彼女に、根掘り葉掘り、客との一部始終を話させようとする。それを聞きながら、彼女の体に手を伸ばし、ときにはそのまま行為に及ぼうとする。拒むと、手を挙げられることもあった。
ショーバイものに手を出さない――は、この世界で生きる男の不文律だ。
それさえも守れない、最低の男。とうとう、ガマンできなくなった彼女は、男のクルマから逃げ出し、タクシーを拾った。
それが、前夜のことだった――。

同情すべき話ではあった。
しかし、多かれ少なかれ、なんらかの事情を抱えて仕事をしている、この業界の女性たちの身の上に、ひとつひとつ同情していたのでは、こちらの身が持たない。
「それで、殴られたんだ?」
「逃げ出すときにね。でも、殴られるぐらいのことは何でもないから……」
「もう落ち着いた?」
「ウン。久しぶりにグッスリ寝かせてもらったし……」
「まさか……あれからずっと寝てた? 何も食べずに?」
「途中で、コンビニでおにぎり買って食べたから、大丈夫。あ……あのね、冷蔵庫におにぎり2つと、お茶のペット・ボトル入れといたよ。おなかすいてたら、食べて」
何だろ、この不思議な感覚。
ヤバイ――と思った。
彼女が買っておいてくれた、というおにぎりに口をつけ、万が一にも「女将さん、こんなオイラのためにすまねェ」なんて思った日には、私は、まんまとこのノラネコの術中にはまってしまうことになるだろう。
次の日には、おにぎりが肉じゃがとかになり、その次の日には、トイレに花が飾られていたりするようになり、そのうち、「ねェ、私、できたらしいの……」なんて告白を聞かされるハメになるに決まっている。
そんなナリユキまかせの人生も、わるくはないが、しかし、好んで選びたくはない。
ハラは減っていなくもなかったが、「あ、メシは外で食ってきたから」とウソを言って、「もう、そろそろ起きようか」と、彼女の体を引っ張り起こした。
「こんな時間だから、きょうひと晩は泊めてあげるけど、明日になったら帰るんだよ」
起きてきた彼女とバーボンを飲みながら、私は心のモードを「クール」に切り替えた。
いいじゃないか。このまま、このノラネコを拾っちまえば――とささやきかけるもうひとりの自分の声を、クール・トーンで封じ込めた。
彼女は、コクリとうなずいて、「あ、そうだ」とバッグの中を引っかき回し始めた。
「これ、聴いてみない?」
彼女が取り出したのは、一枚のCDだった。ジャケットに大きく「UA」と書いてある。
「ユー、エー……?」
「ウーアっていうの。エッ、知らなかった? ちょっと意外だね。ジャズを聴いてる人だから、とっくに聴いてるかと思ったんだけど……」
音を出してみて、ホーッと思った。
好きか嫌いかは別にして、確かに味わいのある音ではある。それを「聴いてみて」と差し出した女のセンスを、ちょっとだけ見直した。
その夜は、彼女の差し出したCDを聴きながらバーボンのグラスを傾け、ほどほどに酔ったところでベッドにもぐり込んだ。
そのまま、眠りにつくつもりだったが、布団の中で彼女の手が私のパンツの中にもぐり込んでくると、不覚にも、再び反応してしまった。

さて、そのノラネコと私の翌朝は、どうなったか?
またも、前日の朝と同じことになった。
いくら揺り起こしても、彼女は起き上がろうとしない。
「お昼になったら、起きて帰るから」という彼女を、再び部屋に残して、仕事に出ることになってしまった。
あの女、あのまま、居ついてしまう気じゃないだろうか――。
その日も、一日、そんな懼れが頭を支配して、仕事が手につかなかった。
ノラネコも
三日居つけば
情が湧き
ヘタな川柳を頭に思い浮かべては、ブルブルと頭を振った。
その夜は、仕事が長引き、部屋に戻ったのは、夜の11時を過ぎていた。
頼むから、おとなしく帰っていてくれよ――と念じながら、ドアを開けた。
女のミュールは、消えていた。
ホッ……と胸をなでおろした。
なでおろしたとたん、ちょっと変な気分になった。
案外、簡単にあきらめたんだな。
ノラネコにしては、根性のないやつだ。
あいさつぐらいして帰れよ……な。
リビングに入ると、テーブルの上に、何かが置いてあるのが見えた。
前夜、彼女のすすめで聴いたCDだった。その横に、ノートを破いて書いたメモが添えてあった。
《3日間、ありがとう。
こんなに静かな、心落ち着く時間を過ごしたの、
わたしにとっては初めてだったので、
つい、長居をしてしまいました。ごめんネ。
3日間のお礼に、きのう聴いてもらったCD、置いていきます。
もし、また聴く機会があったら、わたしのことを思い出してくださいね。
わたしのほんとの名前、下のほうだけ教えとくね。
ほんとは、ケイっていうの。
じゃ、行きますね。
あ、きのうのおにぎり食べちゃったから、新しいの、入れときました。
さよなら。たぶん、永久に――。 10:25 p.m. ケイ》
こんなに静かな、心落ち着く時間を過ごしたの、
わたしにとっては初めてだったので、
つい、長居をしてしまいました。ごめんネ。
3日間のお礼に、きのう聴いてもらったCD、置いていきます。
もし、また聴く機会があったら、わたしのことを思い出してくださいね。
わたしのほんとの名前、下のほうだけ教えとくね。
ほんとは、ケイっていうの。
じゃ、行きますね。
あ、きのうのおにぎり食べちゃったから、新しいの、入れときました。
さよなら。たぶん、永久に――。 10:25 p.m. ケイ》
冷蔵庫を開けると、新しいおにぎりが2つと、ペットボトルのお茶、それに、なぜかヨーグルトが1カップ、入っていた。
つい、数十分前まで、彼女はここにいて、もしかしたら、帰ってくる私に「さようなら」でも言うつもりだったのだろうか――。
しかし、私がなかなか帰ってこないので、あきらめて部屋を出た。
あまりに悲しい「置き土産」を残して……。
冷蔵庫のおにぎりをひとつ取り出して、かぶりつきながら、もう一度、メモに目を通した。
文面のたどたどしい文字を追っているうちに、文字がにじみ、口の中のメシ粒がしょっぱくなった――。

つまらない話におつきあいいただき、ありがとうございました。
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管理人は、常に、フルマークがつくようにと、工夫して記事を作っています。
みなさんのひと押しで、喜んだり、反省したり……の日々です。
どうぞ正直な、しかしちょっぴり愛のこもった感想ポチをお願いいたします。



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