燃える女は、「3本目の手」を識別できない…!?

「哲ちゃん、見てみなよ」と勧められて双眼鏡に
目を当てると、そこに映し出されていたのは、
公園のベンチでイチャつくカップルの姿だった。
夜ごとその痴態をのぞくのが趣味になった彼は…。
R18 このシリーズは、性的表現が中心の官能読み物です。18歳未満の方はご退出ください。
エロ 官能小説 オーガズム 不倫


龍さんから電話が入ると、私は、黒いズボンに黒いセーター、全身黒ずくめの服に着替えて、出かけなくてはならない。

それが、龍さんのリクエストだからだ。
もちろん、理由は……ある。
あまり、おおっぴらにはできない理由だった。

龍さんのマンションは、西新宿の、眼下に「新宿中央公園」を見下ろす位置に建っていた。
11階建ての9F。夜になると、向かいの高層ホテルの客室に一斉に明かりが灯り、公園の水銀灯にも灯が点る。
私が受け取りに行くと、イラストは連載1週間分がきれいに描き上げられて、袋に入れてあり、龍さんは、私の点検が終わるのをもどかしそうに待ち受ける。


私の「OK」の声を待ちかねたように、龍さんは部屋の灯りをすべて消し、そして、押し入れにしまってあった例のものを取り出す。
例のもの――。
それは、高倍率の双眼鏡と、それを固定するための三脚。
三脚に双眼鏡を固定して、照準を眼下の公園に並ぶベンチに合わせる。
のぞき。それが、龍さんの週末の、唯一と言っていい愉しみだった。私に「黒い服を着てこい」と要求するのも、のぞいている姿を下から発見されにくくするための配慮だった。

その頃の「新宿中央公園」は、アベックのメッカになっていた。
週末の夜ともなると、公園のベンチはアベックで埋め尽くされる。
あっちのベンチでもこっちのベンチでも、若いカップルが体を寄せ合い、濃厚なキスを交わし、たがいの体をまさぐり始める。中には、かなりヘビーなペッティングを始めるカップルもいたし、龍さんに言わせると、「あれは絶対にやってるよ」というカップルもいた。
そんな様子を、9Fのその部屋からは、手に取るように眺めることができた。

龍さんに連載のイラストを頼むようになって、1カ月ほど経った頃だった。
渡された双眼鏡に目を当ててみると、ベンチの上で片足を男のももに上げた女が、男に手をモモの奥に突っ込まれ、下着も露わにもだえている姿がレンズの奥に浮かび上がった。


「これ、連載で記事にしようよ」と言い出したのは、私のほうだった。
その場の思いつきで決まった『新宿西口公園のぞき日記』は、龍さんのイラスト・ルポという形で、スポーツ新聞の最終面に3カ月間、連載された。

龍さんがそんなことを言い出したのは、連載が始まって1カ月ほど経った頃だった。

龍さんの観察によると、公園には、やって来るアベックの数に負けないくらい、それをのぞきに来る男たちがいる。
そういう連中の間では、ひとつだけ、暗黙のルールのようなものがある。
だれかが張り付いたターゲットには、絶対に近づかない。
つまり、人のお愉しみは決して妨害しない――というルールだ。
それを知らずに、だれかが観察中のターゲットにうかつに忍び寄ったりすると、トラブルが発生する。ときには、「てめェ、このヤロー」とどつき合いになることもあるのだそうだ。
「それに」と、龍さんが目を輝かせた。



龍さんがセッティングした双眼鏡に目を当てると、ベンチには、まだ20歳そこそこと思われるミニスカートの女性が座り、その肩を隣の男が左手で抱き寄せていた⇒カップルの男の左手は、女の肩にある。
そして、男の右手は、女のももに。ミニスカートの裾から差し込んだ男の手は、すでにかなり露わとなった女の太ももをさらにその奥へとたどり、女は太ももをほとんどその付け根近くまで、人目にさらす形となっている⇒カップルの男の右手は、女のももの奥にある。
あれは、たぶん……さわってるな、あそこに――と思いながら見ていると、
エッ!? じゃ、あれは……?
そう、計算が合わないのだ、手の数の計算が!
さっきから、女の胸を下からもみ上げている、もうひとつの手。
では、あれは……だれの手?

目を凝らすと、ベンチの裏をうごめく黒い影が見えた。
その黒い影が、ベンチの座面と背もたれの間のスキ間から、手を差し込み、その手を女の胸に伸ばしていたのだ。
しかし……である。
さわられているほうの女は、気づかないのだろうか?
自分の体に触れる手の数が何本あるかぐらい、わからないのだろうか?

ほんとかな――と半信半疑の私に、龍さんは恐ろしい提案をするのだった。






いや、あの……「ジャーナリスト」っていうのは、そんなとこで使う言葉じゃないんですけど――としり込みしていると、

言い出したら聞かない龍さんは、私の返事も待たずに、靴に足を通している。
仕方ないので、私もその後に従った。
9Fから目星をつけていたカップルが1組いた。
頭が薄くなりかけたオヤジと、30代と思われる女の、龍さんに言わせると「あれは、ゼッタイ、社内不倫」というカップル。
若くない組み合わせのせいか、そのふたりのベンチは、まだ、だれのナワバリにもなっていなかった。
「シッ!」と注意を促す龍さんに従ってベンチの背後に忍び寄ると、ふたりは、「ンフッ、ンフッ……」と荒い息を吐きながら、おたがいの口を吸い合っているところだった。
ちょっとキスする、なんてレベルじゃない。おたがいの舌を、「ブチャ、ブチャ……」と音を立てながら吸い合う激しいキスだ。
上気した女の髪は乱れに乱れ、その乱れた髪をなおもかき乱そうと、男の右手が女の頭をかきむしっている。確かに、若くはないが、悶える女の横顔は、日活ロマンポルノ(AV登場以前のポルノ映画のブランドでした)の団地妻程度には、色っぽく見えた。
完璧に「おふたりさんモード」に入っているらしいふたりには、背後に忍び寄ったわれわれの気配に気づく余裕など、まったくなさそうだ。
男の左手は――と見ると、女の腰から、コートをかぶせて隠した下腹部あたりへと伸びている。その腕が、小刻みに動いている。
女は、その動きに呼応するように、腰の左側を浮かせ、浮かせた左ももを右のももに重ねるような動きを見せた。
これは、何かやってるな……。
そう思ってみていると、龍さんが、私の顔を見て、シッ……と、唇に指を当てた。
や、止めなよ――と止める間もなく、龍さんは、ベンチのスキ間から女のシリに向かって手を伸ばした。
ウソ! そんな大胆なこと、するわけ?
龍さんの手は、女のシリを覆っていたスカートの中に忍び込み、浮いた左の尻の下に潜り込んでいく。
その瞬間、女が「あっ……」と小さく叫び声を上げた。
首に巻きつけていた腕で男にしがみついて上体を預け、さらに腰の左側を浮かして、浮かせた脚を男のももに重ねようとするようにもがき始めた。
龍さんの手も、小刻みに動き始めた。
女の息は、「ハッ、ハッ」と荒くなり、そして、私は確かに、耳にした。

女が熱い息とともに、小さな声で男の耳にそうささきかけるのを。
女がその声を発すると同時に、龍さんは女の尻の下にもぐらせていた手を抜き取り、私に目配せして、ベンチの裏を忍び足で撤収した。

龍さんが私の目の前に突き出したのは、ヌルリと粘液状のものを付着させた人差し指だった。

それからの龍さんのイラスト・ルポが、一段とリアルさを増し、迫力を増したのは、言うまでもない。
しかし、それからも龍さんが肉弾ルポを続けたのかどうかは、残念ながら私は知らない。
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