第64夜☆不倫を排除する文化は、戦争を賛美する文化


 第64夜  
「愛とは何か?」をめぐって、管理人・哲雄がパートナー・AKIを相手に展開する、オヤジ・ギャグ風+ちょっぴりアカデミックおしゃべり。今回は、終戦記念日特別バージョン。「抑圧」の心理システムが、人の心を戦争へ駆り立てるメカニズムについて語ります――。

哲雄 きょうは何の日だか知ってる?

AKI 私の誕生日じゃないことは確かです。

哲雄 終戦記念日です!

AKI なんできょうなんですか?

哲雄 昭和天皇がポツダム宣言の受諾を国民に伝えた「玉音放送」が行われた日だから。ほんとは、ポツダム宣言受諾の署名が行われた9月2日を「終戦の日」とすべきという意見もあるんだけど、ま、それは置いといて、とにかく、いまから64年前のきょう、第二次世界大戦が終結したわけです。

AKI それで、2夜連続のトーク? じゃ、これは、終戦記念日特別バージョンってこと?

哲雄 別に、戦争について語り合いましょう――ってわけじゃないよ。たまたま、話の流れが「リビドーの抑圧」ということになって、そこで「意識の門番」という話が出てきて、「ヒステリー」の話が出たりしたから、ぜひ、この際、話しておかなくちゃ……と思ったわけです。

AKI そのヒステリーの話と戦争が、何か関係あるんですか?

哲雄 大アリ! だから、きょうはエロはなし。きょうの話は、私が学問的良心、市民的良心にかけてする話だから、AKIちゃんにもマジメに聞いてもらいたい。

AKI ハイ、じゃ、ヘタなツッコミは入れないようにします。

哲雄 前回の話では、自分の欲望を無意識の闇に閉じ込めようとする人は、強力な「意識の門番」を必要とする、という話をしたよね。

AKI ウン、確か、そういう人たちの意識は「道徳」を旗印にすることが多い――と。

哲雄 こういう旗印を立ててしまうと、この門番は、自分の無意識の中から「よからぬ欲望」(と本人は思っている)が顔を出さないように、自分の無意識の境界線を見張るだけでなく、外部に対しても攻撃的な目を向けるようになる。気をつけろ、人を見たら、ドロボーと思え――てなもんですよ。

AKI だから、「不倫なんてとんでもない」と目クジラを立てるし、人を「ドロボー猫」呼ばわりしたりするようになる、という話でした。

哲雄 中絶する女や性犯罪を犯す男たちは死刑にしろ――なんて叫ぶ人たちもいるよね。

AKI ブログでも、そんなことを叫んでいる人たちがいます。

哲雄 これは、「ヒステリー」と呼ばれる精神症状だと、前回、お話しました。ところがね、このヒステリー症状は、ときに集団感染することがあるんです。

AKI エーッ!? 集団でヒステリー

哲雄 特に、私たち日本人とか、お隣の朝鮮半島の人たちとかは、この集団ヒステリーを起こしやすい民族だと言われてる。私に言わせれば、アメリカだって中国だって、似たようなところがあると思うんだけど、戦前の日本のそれはひどかった。

AKI 国民全体が、ヒステリー状態になっちゃったんですか?

哲雄 なっちゃった……というより、させちゃった、そういうふうに誘導した――と言ったほうがいいだろうね。

AKI どうやって?

哲雄 明治維新で世の中が変わったとき、日本の社会にはいろんな不満がくすぶってて、あちこちで不満分子が騒動を起こしたりしてたんだけど、まずそういう不満を抱えた国民の目を、朝鮮半島や大陸に向けさせた。そして、内部的には、「天皇を神に仕立てる」という精神操作をやりました。

AKI それって、つまりは……天皇を「意識の門番」にしようとしたということですか?

哲雄 精神分析的に言うと、そういうことになるね。ほんとうは、日本という国は、古代から「八百万の神々」が支配する国と思われてきたんだけど、明治政府は、「天皇以外の神は祭ってはいけない」という布告を出して、全国の鎮守の森に祭られていた「産土(うぶすな)の神=氏神」を焼き払ったりした。仏教もけしからんというので、「神仏分離令」を出して、「廃仏毀釈」の運動を誘発したりした。

AKI まるで「一神教」の世界みたいですね。

哲雄 そうなんだ。実は、明治から戦前までの天皇制は、西洋の「一神教」を真似て作られたといっても過言じゃない。明治を作ったリーダーたちは、考えたんだね。「西欧列強の強さの秘密は何だろう?」ってね。その結果、「どうもこれは、彼らが一神教の神を信奉しているかららしい」という結論に達した。

AKI それで、日本も一神教にしちゃえばいいじゃないか……と思ったわけ?

哲雄 じゃ、日本で「一神教の唯一神」に相当するものは?

AKI 天皇……?

哲雄 そのとおり。だけどさ、これってちょっとムリがあるよね。天皇というのは、日本の伝統と文化を象徴する存在だよ。その天皇に、西洋式の軍服を着せて、白馬にまたがらせて、「ご真影」と称して各戸に飾らせたりした。これ
って、どう考えてもおかしい。古来から日本人が抱いてきた天皇を敬愛する気持ちからしても、ずいぶん違和感があったと思うんだよね。でも、明治政府は、それを強引に推し進めた。それでね、ここからがすごいんだけど……。

AKI ナニ、ナニ?

哲雄 国民はみな、天皇の赤子である――という理論を組み立てた。というのもね、日清戦争以降、跡取りを兵隊に取られて戦死させられた農家などを中心に、不満の声がくすぶり始めてたんだけど、ここに、「あなたの息子さんは、天皇の赤子なんだ。子どもを戦地に赴かせるのは、その赤子を天子さまにお返しすることなんだから、名誉なことなんだよ」と思わせるようにしたんだ。

AKI これは、すごい。そう言われると、「イヤだ」とは言えなくなりますよね。

哲雄 エーッと、第8夜で『大きな愛は小さな愛を奪う』という話をしたよね。

AKI 確か、部族全体の愛のためなら、家族の愛は犠牲にする、国家のためなら、部族の愛は犠牲にする……っていうアレですね?

哲雄 そうそう。よく覚えていてくれました。「国民は天皇の赤子」という理論を持ち出すことによって、家族への愛よりも天皇への愛のほうが優先される、という「価値の序列」を組み上げてしまったわけです。仕上げが、靖国神社です。

AKI 戦死した人たちを「英霊」として祭るという神社ですよね。

哲雄 あのね、この「英霊」という言葉自体が、当時の発明品なんだ。この「英霊」理論によると、戦死したら即「英霊」になって靖国神社に祭られるんだけど、日本の伝統的な神道の教義のどこを探しても、そんな「御霊(みたま)」理論は存在しない。日本の神道の考え方では、死んだ人間は、長い長い年月をかけて浄められ、あら御霊→きよ御霊を経て、最後に祖霊となるんだけど、「英霊」はインスタント。死ねば即、「御霊」になってしまう。

AKI どうして、そんな教義を作っちゃったの?

哲雄 長い年月をかけて「御霊」になる――なんてことをやってたんじゃ、兵隊の補給が間に合わないからですよ。戦死した人間には即時、「英霊」という名誉を与えて、次々に兵隊を戦地に送らないと、戦争を維持できないでしょ。

AKI でもさぁ、そういうことって、だれか「これはおかしい」と声を挙げなかったのかなぁ? 当然、疑問を感じる人たちだっていたわけでしょう?

哲雄 それが、集団ヒステリーの恐ろしいところ。そんなことをひょいとでも口にしたら、「非国民」とか「アカ」とかいうレッテルを貼られて、周りじゅうから袋だたきにされてしまう。しかも、本来、冷静であるべきマスコミ(当時は新聞)までが先頭に立って、「神国=日本」のキャンペーンを繰り広げてたからね。

AKI つまり、哲ジイは、あの戦争を引き起こしたのは、そういう国民レベルのヒステリーであった、と言いたいわけですね。

哲雄 イヤ、そうじゃない。戦争というものは、主には、政治的・経済的理由から起こるものだけど、少なくともそういう戦争を支える「気分」には、このヒステリー状態が大きく影響したかもしれない……と思っているわけです。もし、みんなが横一列でヒステリー状態にならなければ、もう少し冷静な声も挙げられたのではないか――と、それが残念なんですね。

AKI ね、思うんだけど、そういうときには、いつも「道徳」が旗印に使われますよね。

哲雄 使われます。別に、私は道徳が嫌いってわけじゃないよ。ただね、大事なことがひとつある。

 道徳は、あくまで「自らを律するため」に使われるべきもの

であって、絶対に人を責めたり、攻撃したりするために使われるべきものではない。

AKI 「不倫するやつなんか人間のクズ」みたいな使い方は、すべきじゃないってことですね?

哲雄 やっと、話がそこへ戻ってきたね。私が、きょう、この話を終戦記念日の話題として取り上げたのは、「道徳を声高に叫ぶ」という精神的態度の中に、かつて国民をまるごと戦争に突き進ませたような、「危険な精神構造」を見るからなんです。

AKI ホント、きょうはマジメですね、哲ジイ。

哲雄 だから、きょうはエロはなし、と言ったでしょう。最後に、これだけは、言っておきたい。人間という生きものは、ドロドロとした欲望を胸のうちに抱えて生きている生き物です。この「ドロドロ」にフタをして、「自分は清らか」とか「自分は純粋」と主張する人間の精神の中では、必ず「抑圧」の装置が働いていて、その装置は他者への攻撃に向けられる。

AKI それが社会全体にも広がると、集団ヒステリー状態になるってことですね。

哲雄 そうです。そして、こういう精神が社会に充満すると、たとえば「民族浄化」を叫んで、異民族の排除や虐殺……なんてことを始めたりもする。こういう社会は、自己破綻へと向かって突き進むしかなくなります。私は、そういう社会にならないことを心から願っている。そのことを伝えたくて、本日、特別にこのトークの場を作らせていただきました。

AKI みなさん、「清」も「濁」も、ともに受け入れた上で、ぜひ、ステキな愛を追求してくださいね。

哲雄 戦争で犠牲になられた先輩たちの尊い犠牲に、心からの哀悼を!421

13 あなたの感想をClick Please!
(無制限、押し放題! つまらなかったら、何も幼いでくださいネ)
→この記事は役に立った(FC2 恋愛/モテ)
→この記事に感銘した(にほんぶろぐ村 恋愛/恋愛観)
→この記事は面白かった(人気ブログランキング 恋愛・結婚)

 →このテーマの記事一覧に戻る       →トップメニューに戻る  


関連記事
拍手する

テーマ : 恋愛と心理学
ジャンル : 恋愛

コメントの投稿

非公開コメント

Re: こちら韓国では…

コヤさま
はるばる韓国からのコメント、ありがとうございます。

> 韓国はいまだに「姦通罪」が残っていて、不倫をして配偶者に訴えられると罰せられますが、だからといって不倫がないわけではありません~v-14
↑もちろん、これ、不倫した男のほうも罰せられるのでしょうね。
そうでないと、ただ、「妻の座」は「財産権」ということになってしまいます。

日本では、いま、不倫するのは妻の側で、
相手は「年下の男」というケースが多いようです。
もっとも、これには、夫婦の「セックスレス」の問題などが絡んでいるようですが…。

不倫されたり、したりしないよう、
ご用心くださいませ。

こちら韓国では…

こちら韓国では8月15日は「光復節」という祝日でした。
日本の支配から解放された記念日です。

韓国はいまだに「姦通罪」が残っていて、不倫をして配偶者に訴えられると罰せられますが、だからといって不倫がないわけではありません~v-14

むしろステイタス的な部分があるような気がしますv-237
(女を囲うだけの余裕がある、というような…)

女性側も、日本でありがちな「好きな人に奥さんがいただけ」とかいうよりは完全に金目当てです(笑)

やはり抑圧するほどにはびこるものかも。。。

ご訪問ありがとうございます
現在の閲覧者数:
Profile
プロフ画像《当ブログの管理人》
シランケン・重松シュタイン…独自の人間関係論を元に、長住哲雄のペンネームで数々の著書を刊行してきたエッセイスト&編集者。この度、思うところあって、ペンネームを変えました

    姉妹サイト    

《みなさんの投票で恋愛常識を作ります》
★投票!デート&Hの常識

《管理人の小説をこちで保管》
おとなの恋愛小説倶楽部

Since 2009.2.3


 このブログの読者になってくださる方は 

不純愛講座 by 長住哲雄 - にほんブログ村


管理人の近著
 シランケン重松としての著書 


『初夜盗り
物語』


2022年8月発売
虹BOOKS


かつて、嫁ぐ娘の
初夜権は、土地の
権力者がものにして
いた――。
定価:650円


『裏タイプ~
あなたは人の目には「こんなタイプ」に見えている



2022年8月発売
虹BOOKS

人の目に映るあなたは
期待したタイプでは
ない。その理由。
定価:1500円

『盆かか
三日間だけの交換妻


2020年9月発売
虹BOOKS

盆が来ると、新妻の妙は
三日間、あの男の
「かか」になる――。
筆者初の官能小説。
定価:200円

お読みになりたい方は、下記よりどうぞ。
★Kindle版で読む
★BOOK☆WALKER版で読む



『好きを伝える技術』

2019年発売11月発売
虹BOOKS


「好き」「愛してる」と口にするより
雄弁にあなたの恋を語ってくれる
メタメッセージ。
勇気がなくても、口ベタでも、
これならあなたの想いは
確実に伝わる!
定価:600円




 長住哲雄としての著書です 


写真をクリックすると、詳細ページへ。

長編小説

『妻は、おふたり様にひとりずつ』

2016年3月発売
虹BOOKS


3人に1人が結婚できなくなる
と言われる格差社会の片隅で、
2人の男と1人の女が出会い、
シェア生活を始めます。
愛を分かち合うその生活から
創り出される「地縁家族」とは?
定価:342円



シリーズ
マリアたちへ――Vol.2

『「聖少女」
6年2組の神隠し』

2015年7月発売
虹BOOKS

ビンタが支配する教室から
突然、姿を消した美少女。
40年後、その真実をボクは知る…。
定価:122円



シリーズ
マリアたちへ――Vol.1

『チャボの
ラブレター』

2014年10月発売
虹BOOKS

美しい養護教諭・チャボと、
中学生だった「ボク」の淡い恋物語です。
定価:122円

  全国有名書店で販売中  

写真をクリックすると、詳細ページに。

『すぐ感情的に
なる人から
傷つけられない本』

2015年9月発売
こう書房
定価 1400円+税

あなたを取り巻く
「困った感情」の毒から
自分を守る知恵を網羅!



『これであなたも
「雑談」名人』


2014年4月発売
成美堂出版
定価 530円+税

あなたの「雑談」から
「5秒の沈黙」をなくす
雑談の秘訣を満載!


30秒でつかみ、
1分でウケる
『雑談の技術』


2007年6月発売
こう書房
定価 1300円+税

「あの人と話すと面白い」
と言われる
雑談のテクを網羅。

★オーディオブック(CD)も、
好評発売中です!


――など多数。
ランキング&検索サイト
  総合ランキング・検索  

FC2ブログ~恋愛(モテ)
にほんブログ村~恋愛観
にほんブログ村~恋愛小説(愛欲)
人気ブログランキング~恋愛



 ジャンル別ランキング&検索 

《Hな体験、画像などの検索サイト》
愛と官能の美学愛と官能の美学


《当ブログの成分・評価が確認できます》


おすすめ恋愛サイトです
いつも訪問している恋愛系ブログを、
独断でカテゴリーに分けてご紹介します。

悪魔
勉強になります
「愛」と「性」を
究めたいあなたに


《性を究める》
★性生活に必要なモノ
★セックスにまつわるエトセトラ
★飽きないセックスを極める
★真面目にワイ談~エロ親父の独り言



《性の不安に》
★自宅でチェック! 性病検査



女の子「男と女」はまるで劇場
いろいろな愛の形
その悦びと不安


《不倫》
★幸せネル子の奔放自在な日々

《MとSの話》
★M顔で野生児だった私の半生

《国際結婚》
★アンビリーバブルなアメリカ人と日本人

《障害者とフーゾク》
★KAGEMUSYAの裏徒然日記

妻くすぐられます
カレと彼女の
ちょっとHな告白


★嫁の体験リポート
★レス婚~なんだか寂しい結婚生活

女王写真&Hな告白
赤裸な姿を美しく
大胆に魅せてくれます


《美しい自分を見せて、読ませてくれます》
★Scandalous Lady

音楽女
ちょいエロなサイトです
他人の愛と性を
のぞき見


《Hな投稿集》
★人妻さとみの秘密の告白
★エッチな告白体験談ブログ


上記分類にご不満のブログ運営者さまは、管理人までご連絡ください。
創作系&日記系☆おすすめリンク
読むたびに笑ったり、感動したり、
勉強になったりするサイトです。

女の子ヘッドホン

読む悦び、見る愉しみを!
小説&エッセイ&写真

《官能小説》
★~艶月~
★愛ラブYOU

《おとなのメルヘン&ラブストーリー》
Precious Things

《ミステリー》
★コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

《書評・レヴュー・文芸批評》
★新人賞を取って作家になる
★頭おかしい認定ニャ
★読書と足跡
★緑に向かって New

《写真&詩、エッセイ、日記》
★中高年が止まらない New
★質素に生きる
★エッチなモノクローム
★JAPAN△TENT
★いろいろフォト

傘と女性ユーモアあふれるブログです
いつもクスリと
笑わせられます


スクーター
社会派なあなたへ
政治のこと、社会のこと

《政治批評&社会批評》
★真実を探すブログ
★Everyone says I love you!

  素材をお借りしました   

★写真素材・足成
★無料画像素材のプロ・フォト
★カツのGIFアニメ
★無料イラスト配布サイトマンガトップ

上記分類にご不満のブログ運営者さまは、
管理人までご連絡ください。
にほんブログ村ランキング
にほんブログ村内の各種ランキング、 新着記事などを表示します。
アクセスランキング
リンク元別の1週間のアクセス・ランキング。

検索フォーム
QRコード
QR