息子にオナニーを見られた「父の立場」

見返り美人 性的な人々-06 

父親の威厳を保つためにも、特に息子には、
決して見られてはいけない姿がある。
そのひとつが、オナニー。それを見られてしまった
バカオヤジ・K氏の「父としての立場」は……?


 R18  このシリーズは、性的表現が中心の官能読み物です。18歳未満の方はご退出ください。

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 登場する人名、店名などは、すべて仮名です。実在の人物・店舗には、いっさい関係がありません。

 Kは、もの書きの端くれである。
 「端くれ」と言うと本人は怒るが、名前を名乗っても、「え、どちらの?」と訊かれてしまうほどの知名度……というか無名度だから、やっぱり「端くれ」である。
 もの書きだからして、当然、仕事場は自宅ということになる。「端くれ」だから、どこかに気のきいた「アトリエ」を構えるなんて身分でも、全然、ない。
 Kがものを書くのは、たいてい夜である。
 仕事が立て込んでいれば、昼夜ぶっ通しで執筆に専念することになるのだが、私が知る限り、そういう姿を見ることは、年に数えるほどしかない。
 つまり、ヒマなのである。

 ふつうにヒマなときは、氏は、昼近くまで寝ている。
 パートに出ている細君に頼まれたゴミ出しぐらいはやるが、それがすむと、また、ベッドに潜り込む。
 昼近くになって起き出してくると、あり合わせのもので昼飯をすませ、手持ちぶさたな午後を過ごす。
 今年、高校3年になった息子は、部活だなんだと忙しいらしく、帰ってくるのは、たいてい5時過ぎになる。パートに出た妻も、30分でチャチャッ……と作る亭主の晩飯の支度に何とか間に合う時間にならないと、帰って来ない。
 息子が一人前になったら、囲碁でも教えて、酒の味のひとつも覚えさせて、「いいか、芳樹、女てのはな……」と、女の口説き方の講釈でも垂れてやるか――と、理想的(?)な父と息子の姿なんてものを想い描いたりしていたKだが、息子のほうには、そんなオヤジの話し相手にでもなってやるか、という素振りのひとつも見えない。
 見えない……どころか、ろくろくKと目を合わせようとさえしない。
 やれやれ……。
 Kは、最近、やたらかゆくなったチ×チ×をボリボリとかきながら、だれもいない部屋の中を見回してみるのだが、部屋の中には、K氏の無聊を満たしてくれそうなものは、何も見当たらない。

  そうだ、あれでも見るか……。

 Kは、つい数日前に、仕事仲間のN(私ではありませんよ、念のため)から無修正のエロ動画を借りていたのを思い出した。
 その種のものは、いつもだったら、家人の寝静まった夜、自室(一応、「書斎」ということになっている)のPCで音量をミニマムに絞って見るのだが、どうせだれもいない昼下がり。居間のソファでドーンと足を投げ出して、ホームシアター感覚で見るのもオツではないか――と考えた。
 DVDをプレーヤーにかけると、Kはパンツも下着も脱ぎ、だれはばかることもなく股を大開きにして、広げた足をリビング・テーブルの上に乗っけて、プレーヤーの音量を上げた。
 いつもは、聞こえるか聞こえないかの音量で聞いているのだが、なに、こんなものは、大音量で聞いたほうが燃えるに決まっている。
 画面では、タイトルが映し出されていた。

 『生撮り! 女子高生、陵辱の教室~5人の暴漢がその青い芽を容赦なく貪った』

 いいね、いいね。
 そうして、K氏のひそかな、だれにもジャマされない、恍惚の午後が始まったのだった。

             

 動画は、放課後、ひとり教室に残った女子高生に5人のワルな高校生たちが襲いかかり、5人がかりでその体を押さえつけて、次々に犯していく――という、ストーリーもくそもない単純なものだったが、女子高生役の女優が、どことなくあどけなさの残る素人っぽい女で、その演技には「これ、ほんとに演技か?」と思わせる部分もあり、それだけで、K氏のエロ・モードは全開となった。
 男たちは、4人の男が女子高生の腕と足を一本ずつ押さえつけ、残った1人が、「止めて、止めて!」と泣き叫ぶ女子高生の下着をはぎ取り、その股間を指や口でいたぶったのち、そそり立ったものをブチ込む――という形で進行するようだった。
 女の子が、教室の机の上に押さえつけられ、下着をはぎ取られただけで、早くもKのそれはマックスにいきり立ったのだが、そこでKは「待てよ」と考えた。

5人が――てことは、5回、クライマックスがやってくるわけだよな。
こんなところでブッ放したのじゃ、あとがもたない。
発射のタイミングを考えなくちゃ……だよな。

 さすが、もの書き(の端くれ)。
 プロット(筋書き)の読みにも、スルドいものがある。
 しかもKは、「速筆」で鳴るライターだった。
 つまり、原稿は粗いが、「かく」のは、速い!!!
 それを自分でも自覚しているのかどうか、Kは、いまは「かくべきタイミング」ではない――と、ナニに添えた手を動かすのを一時停止した。
 やがて、画面は、男のひとりが、猛々しくそそり立ったイチモツを手で支え持ち、それをいやがる女子高生のそこに突き立てようとするシーンになった。
 そこまで来て、Kは、気がついた。
 この女優、やたら、声がでかい!
 「イヤ――ッ、やめてェ――ッ! 助けてェ――ッ!」
 ちょ、ちょっと待てよ。
 この声、いくらなんでも大きすぎないか……?
 これ、隣ん家まで、聞こえちゃうんじゃないか……?
 あの、いつも、ゴミの出し方がどうの――と口うるさい、隣のババァの耳に届いたらどうなる?
 「隣のご主人が、女性に乱暴してるみたいです」なんて、110番通報だってしかねないゾ。
 まずいな……。
 ボリューム下げるか……。
 あれ、リモコンは……?
 ナニを握り締めたまま、ソファの周りを見渡したKは、「あっ、そうだ。ラックの棚に置いたんだった」と思い出した。
 ラックは、ソファの後ろの壁際にある。
 しかし、ナニはもう、いまにも暴発しそうなほどにはちきれている。
 仕方ないので、Kは、発射しそうなそれの先端を手で押さえたまま、床を這うようにして、ラックの前まで行こうとした――そのときだった。

             

 「ウワ――ッ!」
 今度は、Kが悲鳴を挙げる番だった。
 這って前進しようと思ったKの視界に、スリッパを履いた人の足が見えたからだ。
 おそるおそる顔を上げ、視線をパーンしていくと、スリッパを履いてそこに突っ立っていたのは、息子の芳樹クンだった。
 そんな時間に帰ってくるはずのない息子が、何か用でもあったのか、家に戻ってきたのだった。
 ホームシアター並みの音量で不適切な画像を楽しんでいたKは、玄関が開けられた音にも、廊下を人が歩いてくる音にも、気がつかなかったのだ。
 一生(一笑)の不覚……というべきであろう。
 「ナニ、してんの?」
 こっけいで無様な父親の姿を見下ろした息子の冷たい視線を、Kは、いまでも忘れることができない、と言う。
 「バッカじゃね」
 息子は、ひと言だけ発すると、手にした洗濯に回す運動着の入ったザックを、居間の隅のランドリーボックスに放り込んで、そのまま2階へ上がっていってしまった。
 終わった――。
 すべて、終わってしまった。

 いつの日か、男同士で酒を酌み交わしながら、
 「芳樹、女ってやつはな……」と語って聞かせる
 「話のわかるオヤジ」という偶像も、
 「何度やっても、オヤジには勝てねェ」とシャッポを脱がせる予定だった
 親子囲碁対決の夢も、
 すべてが水泡と消えてしまった――。

 そして、その日以来、息子・芳樹クンが父親のKを見つめるまなざしには、どこか侮蔑の色がにじむようになった。
 少なくとも、Kは、そう感じていた。

             

 さて、その後、Kとそのご子息との関係がどうなったのか、相変わらず、Kはご子息にとって「唾棄すべき存在」であり続けているのか――については、残念ながら、私には知る機会がなかった。
 ただ、こんなことがあった。
 それから数ヵ月後、Kの50何回目かの誕生日のことだった。
 Kが外で飲んで帰ってくると、書斎の机の上に見慣れない手提げ袋が置いてあった。上に、ふた代わりのコピー用紙が貼り付けられていて、何か書いてある。
 《ばかオヤジへ》
 ただ、それだけだった。
 紙を取り除いてみると、中に入っていたのは、全部で10本近くはあろうかというDVDだった。
 それを見て、Kは、一瞬、恐怖に顔が引きつった。
 それは、すべて、『実録○○○○』だの『消し忘れ○○○』だの『女子高生のマル秘○○○』だのといった、エロ・ビデオだった。しかも、オヤジ・Kのいかにも好みそうな……。
 最初、Kは、それらの贈り物は、「ホラ、エロ・オヤジ。てめェの喜びそうなやつ、集めてやったぜ!」と、その愚かな趣味を嘲笑うか、または責めるつもりで芳樹クンがコレクションしてきたのだろう――と思った。なので、恐怖心を感じた。
 しかし、だとしたら、やつはどこでそれを集めたのか――?
 それとも、これは、「オヤジ、オレもほんとは、こういうの、やってんだぜ」と親近感を示すために置いたのか?
 「芳樹、こないだ、おまえが誕生日にくれたアレだけどさ……」
 Kは、いつか息子に訊いてみようと思うのだが、いまだ、その勇気が持てないでいる。

             

 ところで、もし私がKの立場だったらどうするか?
 私には子どもがいないので、あくまで無責任なことしか言えないのだが、たぶん、しばらく時間を置いたのちに、こんな風に切り出すのではないかと思う。
 「そう言えば、こないだは、大胆なプレゼントくれたなぁ、おまえ。母さんの手前、あんまりおおっぴらに礼を言うわけにもいかなかったけど、ありがとな」
 「ああ……」
 「しっかしなぁ……」
 「何だよ!」
 「おまえ……ちょっと、女の趣味、わるすぎるゾ」
 こうして、「父と息子」は、「男と男」になるのであった――なんてね。
 Kとご子息の関係が、そんな具合に進んでくれることを願いつつ、今回は、お開きといたします。



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