トゥーマッチ・奈津子の男湯乱入事件

何かにつけて「やりすぎる」女性というのがいます。
ひと言で言うと「トゥーマッチ」。そんなサービス、
求めてないゾーーという彼女のやりすぎは、男たちを
恐怖に陥れていくのですが、ついにある夜ーー。
R18 このシリーズは、性的表現が中心の官能読み物です。18歳未満の方はご退出ください。
エロ 官能小説 オーガズム 不倫

世の中には、とかく、物事をやりすぎる人間というのがいる。
安アパートに引っ越しただけなのに、「転居のお祝い」なんぞと言って、巨大なベンジャミンの鉢植えを寄越すやつもいた。←部屋に入りきらず、処分させていただいた。
たかが大阪までの出張だというのに、弁当に餞別まで持って駆けつけるやつもいた。←もしかして、土産ネライ……か?
ちょっと風邪をこじらせて会社を1週間ほど休んだら、花環まで用意しちゃうやつもいた。←危うく殺されかけた。
で、本日の主役・奈津子嬢も、そんな「やりすぎ人間」のひとりなわけです。
何をやりすぎたか?
これが、数え上げたらキリがない。
あの女、何とかしろ!
彼女は、会社では、私の4期後輩。
ま、新人のうちは、電話応対とか、原稿受け取りの使いっ走りとか、その程度のことしかやらせてもらえないわけですが、その電話応対が、ちと問題。
念のために申し上げておきますが、私が当時、勤めていた会社というのは、外資の投資ファンドでもなきゃ、金持ち相手の高級ブティックでも、毛皮の輸入業者でも、宝石の通販業者でもございません。
ごくふつうの庶民を相手に、どこの女優とどこの男優がくっついたの、離れたの……などを主なニュースとして扱う、女性雑誌を発行している出版社でした。
通常、電話の受け継ぎも、
○○さ~ん、外線1番、○○さんからです。
とか、もっとざっくばらんになると、
○○ちゃん、電話だよ、1番、○○っちから。
という感じで、ま、きわめて家族的なわけです。
ところが、奈津子嬢は、そういうノリではなかった。
殺伐とした職場にはまったくもってなじまない澄んだ声を、マックスまで張り上げて、こんなふうにおやりになったわけです。
長住さま~、長住哲雄さま~、1番に、銀座『姫』の○○子さまからお電話が入っておりま~す。
ここは、病院の受付か、それとも高級美容室の待合室か?
とにかく、だれに対してもこんなふうなので、ついに、私の上司にあたる副編集長が、私に命じました。
オイ、あの女、何とかしろ。
何とかしろ――とおっしゃれても、私のプロファイル・リストの中に、この種の女性のデータは存在しません。
安アパートに引っ越しただけなのに、「転居のお祝い」なんぞと言って、巨大なベンジャミンの鉢植えを寄越すやつもいた。←部屋に入りきらず、処分させていただいた。
たかが大阪までの出張だというのに、弁当に餞別まで持って駆けつけるやつもいた。←もしかして、土産ネライ……か?
ちょっと風邪をこじらせて会社を1週間ほど休んだら、花環まで用意しちゃうやつもいた。←危うく殺されかけた。
で、本日の主役・奈津子嬢も、そんな「やりすぎ人間」のひとりなわけです。
何をやりすぎたか?
これが、数え上げたらキリがない。

彼女は、会社では、私の4期後輩。
ま、新人のうちは、電話応対とか、原稿受け取りの使いっ走りとか、その程度のことしかやらせてもらえないわけですが、その電話応対が、ちと問題。
念のために申し上げておきますが、私が当時、勤めていた会社というのは、外資の投資ファンドでもなきゃ、金持ち相手の高級ブティックでも、毛皮の輸入業者でも、宝石の通販業者でもございません。
ごくふつうの庶民を相手に、どこの女優とどこの男優がくっついたの、離れたの……などを主なニュースとして扱う、女性雑誌を発行している出版社でした。
通常、電話の受け継ぎも、

とか、もっとざっくばらんになると、

という感じで、ま、きわめて家族的なわけです。
ところが、奈津子嬢は、そういうノリではなかった。
殺伐とした職場にはまったくもってなじまない澄んだ声を、マックスまで張り上げて、こんなふうにおやりになったわけです。

ここは、病院の受付か、それとも高級美容室の待合室か?
とにかく、だれに対してもこんなふうなので、ついに、私の上司にあたる副編集長が、私に命じました。

何とかしろ――とおっしゃれても、私のプロファイル・リストの中に、この種の女性のデータは存在しません。

手をこまねいているうちに、彼女の「やりすぎ」はどんどんエスカレートしていきました。
どこかに飲みに行って、「じゃ、オレたちは行くところがあるから、ここからタクシーで」などと言うと、彼女は、パッと道路に走り出ます。
それも、センターラインまで走り出て、身を投げ出すようにしてクルマを止め、私たちの前まで誘導すると、開いたドアを手で押さえて、「どうぞ」のジェスチャー。
私たちが、乗り込み終えると、「じゃ、運転手さん、お願いしますね」と余計なひと言を発し、「きょうは、ごちそうになりました。ありがとうございました」と、体を45度ほども折って、クルマが消えてしまうまで、お見送りくださるわけです。
おかげで私たちは、どこかの組の幹部か、閣僚にでもなったような気分を、一瞬、味わったりもしたのですが、たいてのノーマルな人間は、そんなものになりたいなどとは思っていませんから、この過剰なおもてなしが気持ちわるくなってしまうわけです。
あ、気持ちわるく……ったってね、彼女自身がブサイクだとか、そういうことではありませんよ。
客観的に判断すると、なかなか美形ではあったと思います。
しかし、毎日がこんなふうですから、だれも気味わるがって、彼女に手を出そうとしないわけです。ああ、さびしきかな、やりすぎの女王――てところですか。
そして、とうとう、その事件は、起こってしまいました。

それは、会社が、毎年、春に行っている、恒例の社員旅行の夜のことでした。
そのときは、確か……伊豆の下田かどこかへ行ったように記憶しています。
夕方の宴会が終わり、飲むものは飲む、麻雀やるものは麻雀する――と、思い思いに過ごすわけですが、そのうち、だれかが「ひとっ風呂浴びてくるか?」と言い出します。
こういう場合、たいていは何人かが、「じゃ、オレも」と言い出し、2~3人、4~5人と連れ立って、大浴場または露天風呂に繰り出すことになります。
そのときは、確か、私も含めて5人程度で、地下の大浴場に出かけた――と覚えています。かなり酔ってはいましたが、決して、そこは「女湯」ではなかったし、「混浴」でもなかった。絶対に「男湯」だったと、断言できます。
湯船に浸かる前に、まず体を洗って――と、私たちが一列に並んで洗い場に腰を下ろし、タオルで体を洗い始めたそのときでした。
いきなり、ガラッと浴場の引き戸が開けられたかと思うと、

と、またもや、その場になじまない大声。
ン? どこかで聞いた声……と思った瞬間、私たちの背中を戦慄が走りました。
まさか……。
その声の主が、続けました。

出た――ッ! です。
なんと、バスタオル一枚で胸を覆った奈津子嬢が、ウオッシュ・タオルを手に、私たちのほうへしゃなりしゃなりと歩いていらっしゃるではありませんか?
想像してみてください。
もし、私たち男がこれと同じことをやったら、どうなるか?
間違いなく「チカン」として通報されてしまうでしょう。
しかし、「男湯」にチン入した女性は、そこまでのひどい扱いは受けません。中には、内心、「熱烈歓迎!」の横断幕を掲げる男だっているかもしれません。
で、そのとき、私たち5メンはどうしたか?
「お背中、お流し……」の彼女の申し出を、全員、固くご辞退申し上げたのでした。

この事件は、あっという間に社内中の知るところとなり、後日、奈津子嬢は、総務からきついお叱りを受けたのだそうです。
お叱りのほうはどうでもいいのですが、以後、男たちが奈津子嬢を見る目には、明らかに「恐れ」の色が加わるようになりました。
こいつ、何やるかわからないゾ――という懼れです。
本人としては、「よかれ」と思ってやったこと。
もしかしたら、「喜ばれるかも」と思ってやったことが、まったく裏目に出てしまったわけです。
さて、この問題の本質はどこにあるかというと、「オーバー・プレゼンス」の一語に尽きると思います。簡単に言うと、「やりすぎ」。
私の知る限り、日本の男たちは、こういう「過剰」を好みません。
昔から、言うではありませんか?
すぎたるは、及ばざるがごとし。
本日は、この教訓を胸に刻んでいただいたところで、お開きとしましょうか。
ちなみに、奈津子嬢ですが、あれから30年余。どこかのイケメンに仕留められたという話も、どこかのオヤジに引き落とされたという話も、耳にしておりません。
どうか、お幸せに――と願ってはいるのですが……。
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2015年7月発売 定価/122円
教師のビンタが支配する教室から、突如、姿を消した美少女。卒業から40年経って、ボクはその真実を知ります。
【右】 『チャボのラブレター』
2014年10月発売 定価122円
美しい養護教諭と「ボク」の、淡い恋の物語です。
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教師のビンタが支配する教室から、突如、姿を消した美少女。卒業から40年経って、ボクはその真実を知ります。
【右】 『チャボのラブレター』
2014年10月発売 定価122円
美しい養護教諭と「ボク」の、淡い恋の物語です。

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