「姦通罪」は、なぜ、消滅したのか?

「一夫一妻」という制度は、財産の分散を防ぐために編み出された制度である。前回はそんな話をしました。その「一夫一妻制」を守るために、厳しく施行されたのが「姦通罪」。しかし、「姦通」とされたのは、もっぱら、「妻の不貞」に対してでした。それはなぜか? その理由を考えてみます――。
Talker
哲雄 自ら著作を手がけるエッセイスト。当ブログの管理人です。
AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指すアラサーの美女。
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AKI 財産を守るために選ばれた「一夫一妻」という制度。でも、それは、男性の権利を守るための一方的な原則だった。前回は、そんな話をしたんですよね?
哲雄 ハッキリ申し上げると、不平等条約のようなものです。たとえば、「姦通罪」。
AKI エッ、姦通罪……? 文字面からは、何やら淫靡な臭いが漂っておりますが、「姦通」っていうのは?
哲雄 結婚した男女が、配偶者以外の異性と関係を持つことを、かつては「姦通」と呼びました。「男女が」と申し上げましたが、ほとんどの場合、その罪が適用されたのは、もっぱら「妻」。つまり、
「姦通罪」とは、「妻が夫以外の男性と性的関係を持つ罪」だった。
と言ってもいいかと思います。
AKI エーッ!! じゃ、男のほうは? 男だって、妻以外の女性と関係を持つでしょ?
哲雄 持ちますねェ。しかし、それは、ほとんどの場合、「姦通」とは呼ばれないし、したがって「姦通罪」にも問われませんでした。
AKI 「ほとんど」ということは、例外もあったわけですか?
哲雄 ハイ、ありました。既婚の男が、自分の秘書に手をつけようが、召使を手籠めにしようが、街の未婚の娘を誘惑して愛人にしようが、「姦通罪」には問われないのですが、他人の妻に手をつけると、大変なことになりました。どうしてだかわかりますか?
AKI 男の名誉を傷つけてしまうから……?
哲雄 ま、それもあるかもしれませんが、もっと重大な理由があります。それは、「所有権」の侵害にあたる――と考えられたからです。
AKI しょ、所有権? 何の?
哲雄 「妻の」です。知りませんでした、AKIクン? 西欧のキリスト教文明圏でも、イスラム世界でも、そして日本でも、中国でも、「妻」という生きものは、男の「所有物」でした。その「所有物」に手を出す行為は、殺されても文句の言えない、重大な犯罪と考えられていたんですよ。
AKI しかし、未婚の女性に手を出しても、罪には問われなかったんですよね?
哲雄 だれの所有権も侵してないからです。
AKI しかし、妻が未婚の男性と関係を持ったら、「姦通罪」。こっちだって、だれの「所有権」も侵してないんじゃありませんか?
哲雄 侵してはいませんが、夫の「所有権」を毀損すると考えられたんじゃないですか。いいですか、近世になるまで、ほとんどの世界では、こう考えられてしました。
「夫」は「妻」の「所有物」ではないから、
「妻以外の女」と何をしようが、法的には何の責めも負わないが、
「妻」は「夫」の「所有物」だから、
「夫以外の男」と関係を持つと、罪に問われる。
「所有物」である妻が、「他の男」と関係を持ってしまうと、「所有物」としての価値は下がってしまう。わかりやすい例でたとえると、せっかく手に入れた宝石なのに、調べてみたら、その宝石には「抵当権」が設定されていた――みたいな話ですね。
哲雄 ハッキリ申し上げると、不平等条約のようなものです。たとえば、「姦通罪」。
AKI エッ、姦通罪……? 文字面からは、何やら淫靡な臭いが漂っておりますが、「姦通」っていうのは?
哲雄 結婚した男女が、配偶者以外の異性と関係を持つことを、かつては「姦通」と呼びました。「男女が」と申し上げましたが、ほとんどの場合、その罪が適用されたのは、もっぱら「妻」。つまり、
「姦通罪」とは、「妻が夫以外の男性と性的関係を持つ罪」だった。
と言ってもいいかと思います。
AKI エーッ!! じゃ、男のほうは? 男だって、妻以外の女性と関係を持つでしょ?
哲雄 持ちますねェ。しかし、それは、ほとんどの場合、「姦通」とは呼ばれないし、したがって「姦通罪」にも問われませんでした。
AKI 「ほとんど」ということは、例外もあったわけですか?
哲雄 ハイ、ありました。既婚の男が、自分の秘書に手をつけようが、召使を手籠めにしようが、街の未婚の娘を誘惑して愛人にしようが、「姦通罪」には問われないのですが、他人の妻に手をつけると、大変なことになりました。どうしてだかわかりますか?
AKI 男の名誉を傷つけてしまうから……?
哲雄 ま、それもあるかもしれませんが、もっと重大な理由があります。それは、「所有権」の侵害にあたる――と考えられたからです。
AKI しょ、所有権? 何の?
哲雄 「妻の」です。知りませんでした、AKIクン? 西欧のキリスト教文明圏でも、イスラム世界でも、そして日本でも、中国でも、「妻」という生きものは、男の「所有物」でした。その「所有物」に手を出す行為は、殺されても文句の言えない、重大な犯罪と考えられていたんですよ。
AKI しかし、未婚の女性に手を出しても、罪には問われなかったんですよね?
哲雄 だれの所有権も侵してないからです。
AKI しかし、妻が未婚の男性と関係を持ったら、「姦通罪」。こっちだって、だれの「所有権」も侵してないんじゃありませんか?
哲雄 侵してはいませんが、夫の「所有権」を毀損すると考えられたんじゃないですか。いいですか、近世になるまで、ほとんどの世界では、こう考えられてしました。
「夫」は「妻」の「所有物」ではないから、
「妻以外の女」と何をしようが、法的には何の責めも負わないが、
「妻」は「夫」の「所有物」だから、
「夫以外の男」と関係を持つと、罪に問われる。
「所有物」である妻が、「他の男」と関係を持ってしまうと、「所有物」としての価値は下がってしまう。わかりやすい例でたとえると、せっかく手に入れた宝石なのに、調べてみたら、その宝石には「抵当権」が設定されていた――みたいな話ですね。
AKI なんか、余計、わからなくなっちゃった。要するに、他の男のイチモツをくわえ込んだ女なんて、もはや「妻」としては価値がない。男たちは、そう考えたってことですね?
哲雄 下品に言うと、そういうことになります。しかしね、AKIクン、なぜ、それだけで「所有物」としての価値がなくなった――と、男たちは考えたのか? 実は、そこにこそ、前々回からお話している「財産を守るため」という経済原則がはたらいているんですよ。
AKI エッ、どういうこと?
哲雄 「妻」が「夫」以外の男性と関係を持ち、その結果、妻が身ごもったとします。当然のことですが、妻は、妊娠の相手がだれであるかを、夫には隠します。そのまま、妻の不貞がバレなければ、夫は生まれた子を自分の子と信じ、その子に自分の財産を継がせることになってしまいます。
AKI そうかぁ……。結果的に、
夫は、どこのだれとも知らない男の子どもに、
自分の財産を乗っ取られてしまう

ということになるわけですね?
哲雄 ハイ、前にも申し上げたように、ほとんどの文明国では、父系制をとり、財産は長子相続というルールを守っていましたから、「妻の不貞」は、そのルールを脅かすきわめて重大な犯罪とみなされたわけです。「姦通」を犯した妻は、場合によっては「死罪」。日本でも、江戸時代まで、武家の社会では、手打ちになったりしていました。
AKI ひどーい! あまりに不公平じゃありせんか!
哲雄 そう思うでしょ。でもね、AKIクン、そんな不平等が、少なくとも近世まで、日本の場合は、なんと第二次世界大戦後の1947年まで、まかり通っていたのですよ。
AKI もう、「姦通罪」は世界から消えてしまったのですか?
哲雄 いいえ、一部の世界には残っています。アメリカの南部のいくつかの州とか、イスラム圏の国々とか、お隣の韓国も2015年に廃止されるまでは、この時代遅れな法律が残っていたんですよ。ただし、「姦通」は、男女双方に問われる罪でしたけどね。
AKI ま、しかし、よかったですね、哲ジイ。「姦通罪」が廃止された時代に生まれてきて。
哲雄 それは、キミのほうこそではありませんか。ところでね、AKIクン、いま、日本の社会で、「不倫、不倫」と騒いでいるのは、どっちかと言うと、女性のような気がするのですが……。
AKI そう言えば、そうかもしれません。
哲雄 それは、なぜか? そこにも、何かしら経済法則がはたらいているのではないか、と頭をめぐらしてみたのですが……。
AKI あまり、めぐらさないでくださいね。もう、若くはないのですから。
哲雄 失敬な。もう止めた。もう、頭めぐらさない。
AKI あら、すねちゃった。
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