「財産」を守るために選ばれた「一夫一妻」という制度

「結婚の制度」を決定するのは「経済の制度」。前回は、産業革命以降の「労働力の再生産」のために、「一夫一妻制」が広く採用されるようになった、という話をしました。しかし、人類が「一夫一妻」を選んだのには、もうひとつの「経済的理由」が存在しました。その理由とは――。
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哲雄 自ら著作を手がけるエッセイスト。当ブログの管理人です。
AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指すアラサーの美女。
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AKI 人類が「一夫一妻制」を採用するにいたったもうひとつの経済原則が存在する。前回、哲ジイはたしかそんなことをおっしゃいましたわね?
哲雄 ハイ、申し上げました。近代になって、産業革命を成功させ、膨大な労働力を必要とするようになった西欧の先進諸国が、「一夫一妻制」を社会のシステムとして定着させようとしたのは、「労働力」の再生産を確保するため――でした。この話は覚えてますよね?
AKI ハイ、しっかりと。その結果、貧乏人もそれぞれに家庭を持ち、立派に労働者を育てることができるようになった――っていう話でしたよね。
哲雄 立派かどうかはともかく、そうすることによって、西欧先進諸国は未曾有の経済成長を遂げることができました。さて、もうひとつの経済原則のほうですが、こちらは、もっともっと、はるか昔に発生した原則です。
AKI はるか昔……って、どれくらい昔?
哲雄 アバウトに言うと、人間が農業を始めた頃ですかね。農業を始めると、それまでと何が変わるかわかりますか、AKIクン?
AKI もしかして、食糧を備蓄できるようになったってこと?
哲雄 オッ、いいところに目をつけましたね。農業と言ってもさまざまな作物があるのですが、大きいのは穀物の栽培を始めたことです。穀物っていうのは、収穫した種実を貯蔵できますよね。これが、人類にとっては大きかった。
AKI 安定して食糧を確保できるようになったから?
哲雄 それもあるけど、狩猟・採集生活でも、肉を干し肉にするとか、木の実をドライフルーツにするとか、ある程度までは保存する方法を工夫してましたからね。それより大きいのは、たくさん収穫できる農民とそれほどでもない農民の間に「収穫量の差」が生まれたということです。「収穫量の差」は、すなわち「貧富の差」でもあるわけですが、収穫物を貯蔵できるということは、すなわち、その「貧富の差」も蓄積できるようになった、ということなんですよ。これが、大きい!
AKI ナルホド! 「格差」が誕生したわけですね。
哲雄 そうです。多く収穫できる農民は、農地を拡大して、さらに多くの穀物を収穫できるようになります。そうして収穫した穀物を貯蔵しておくには、倉庫や蔵が必要になります。倉庫ができると、今度は、それを盗難や強奪から防ぐために「警備」する人間が必要になる。こうして「権力」というものがこの地上に誕生していくのですが、さて、このことが「一夫一妻制」とどう関係があるのか?
AKI そこですよ、お聞きしたいのは。
哲雄 ハイ、申し上げました。近代になって、産業革命を成功させ、膨大な労働力を必要とするようになった西欧の先進諸国が、「一夫一妻制」を社会のシステムとして定着させようとしたのは、「労働力」の再生産を確保するため――でした。この話は覚えてますよね?
AKI ハイ、しっかりと。その結果、貧乏人もそれぞれに家庭を持ち、立派に労働者を育てることができるようになった――っていう話でしたよね。
哲雄 立派かどうかはともかく、そうすることによって、西欧先進諸国は未曾有の経済成長を遂げることができました。さて、もうひとつの経済原則のほうですが、こちらは、もっともっと、はるか昔に発生した原則です。
AKI はるか昔……って、どれくらい昔?
哲雄 アバウトに言うと、人間が農業を始めた頃ですかね。農業を始めると、それまでと何が変わるかわかりますか、AKIクン?
AKI もしかして、食糧を備蓄できるようになったってこと?
哲雄 オッ、いいところに目をつけましたね。農業と言ってもさまざまな作物があるのですが、大きいのは穀物の栽培を始めたことです。穀物っていうのは、収穫した種実を貯蔵できますよね。これが、人類にとっては大きかった。
AKI 安定して食糧を確保できるようになったから?
哲雄 それもあるけど、狩猟・採集生活でも、肉を干し肉にするとか、木の実をドライフルーツにするとか、ある程度までは保存する方法を工夫してましたからね。それより大きいのは、たくさん収穫できる農民とそれほどでもない農民の間に「収穫量の差」が生まれたということです。「収穫量の差」は、すなわち「貧富の差」でもあるわけですが、収穫物を貯蔵できるということは、すなわち、その「貧富の差」も蓄積できるようになった、ということなんですよ。これが、大きい!
AKI ナルホド! 「格差」が誕生したわけですね。
哲雄 そうです。多く収穫できる農民は、農地を拡大して、さらに多くの穀物を収穫できるようになります。そうして収穫した穀物を貯蔵しておくには、倉庫や蔵が必要になります。倉庫ができると、今度は、それを盗難や強奪から防ぐために「警備」する人間が必要になる。こうして「権力」というものがこの地上に誕生していくのですが、さて、このことが「一夫一妻制」とどう関係があるのか?
AKI そこですよ、お聞きしたいのは。
哲雄 問題は、相続なんですよね。
AKI エッ、そ、相続? そんなことが「一夫一妻制」の成立と関係してるんですか?
哲雄 そ、そんなことって、あーたね、そこの婚期逃しまくりのお嬢さん。ま、あーたには、一生、関わりのない問題かもしれませんがね、いったん富や権力を手に入れた人間にとって、最大の問題は、その相続なんでございますよ。そして、彼らが望むことは、自分が築いた富と力を、子々孫々にわたって、決して減ずることなく、維持したいということです。
AKI あ、そうか。第2夫人とか第3夫人とかがいて、そういう女たちにも息子がいて、自分たちにも財産をよこせなんて言い出したら、ちょっとややこしいことになりますよね。
哲雄 そういうことになったら、せっかく築き上げた富も力も分散してしまうでしょ? それは何としても防ぎたい。あのね、AKIクン、よく、西欧世界は「契約社会」だと言われてるけど、その原型となったのは、ユダヤの「律法」なんだよね。そのユダヤの律法で、きわめて重要な決まりとして重視されたのが、「長子相続」でした。
AKI 長子相続……? つまり、長男が総取りするってことですか?
哲雄 そうです。長男が死亡した場合には、その子、つまり孫息子が相続します。
AKI エッ、妻が相続するんじゃなくて?
哲雄 ハイ、妻には相続する権利がありませんでした。
父系制社会では、代々、父方の子孫に財産が受け継がれていくのですが、
そのとき、兄弟で分割したりすると、相続の度に、富も力も分散され、
権力の劣化を招きますから、「長子による総取り」を厳しく定めたんですね。
この伝統は、ユダヤ教からキリスト教世界へと受け継がれていきました。
AKI いまでも、欧州ではそうなんですか?
哲雄 いや、同じヨーロッパでも、地域によって違いがあります。「一子相続」の伝統がもっとも厳しく守られたのは、ドイツとイングランドで、いまでもイギリスの王室などでは、「長子相続」が守られています。でもね、そこらへんの違いをここで詳しく検討しても、あまり意味がありません。とにかく、相続による富と力の分割を防ぎたい――というモチベーションは、ユダヤの律法の昔から存在して、欧州世界の結婚と家族の制度を貫く原理となった、ということだけを、頭の中に入れておいていただきたいのです。
AKI その「財産の目減り」を防ぐ知恵のひとつが、「一夫一妻制」であった――と、そういうわけなのですね。
哲雄 そのとおり。結局のところ、「結婚制度」というのは、「財産の制度」でもあったということです。
AKI 日本では、どうなんですか?
哲雄 前回もお話したと思いますが、日本が「一夫一妻制」を法律的に定めたのは、明治になってからです。平安時代までの日本は「母系制」をとっていて、男は母方の家に同居し、財産も権力も、母方の血統に受け継がれていくというのがふつうだったのですが、これが武家の社会に移ると、儒教思想などが入って来て、「家=イエ」という概念が生まれ、「家督」という考え方が発生します。
AKI 家督? なんかピンと来ないんですけど……。
哲雄 「家督」というのは、「家父長」という意味です。
基本的には、嫡男が親から「家督」を受け継ぎ、
「家督」を継いだものが、その家のすべてを受け継ぐという制度が、
江戸時代になって確立しました。
考え方としては、西欧の「長子相続」とあまり変わらないんですけどね。
AKI 結局は、財産が分散することを防ぐ。西洋でも東洋でも、考え方は同じだったんですね?
哲雄 そうです。それが、「一夫一妻制」を生んだもうひとつの経済原則。ただ、この経済原則は、あくまで、富と権力を牛耳る男の側の勝手な原則なので、必ずしも、「一妻」である「妻の立場」が守られていた――とは言い難い。というより、女性にとっては、かなり不公平な制度だったと言ったほうがいいかもしれません。
AKI 相続できないから……?
哲雄 それもあるけど、男女のシステムとしてもです。
AKI 男女のシステム……? エッ、わかんない。
哲雄 「一夫一妻」とは言うものの、男には、「一妻」+「愛人」が認められていた。しかし、女には「一夫」+「愛人」は、いっさい認められていなかった。バレたら「死罪」という社会もありました。
AKI エーッ、それ、ひどいじゃないですか!
哲雄 ひどいでしょ? なぜ、そんな不平等なシステムになったのか、というと、それは「父系制社会」だからなんだけど、それについては、次回、じっくりとお話したいと思います。
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