「カサブランカ」の歌姫2-8 親衛隊は静かに消える

見事なアンサンブルを奏でた。しかし、
その夜以来、レイラの態度が変わった。
私を「親衛隊」呼ばわりするようになった彼女に、
私は恐怖さえ感じるようになって――。
連載 「カサブランカ」の歌姫 ファイル-2 村尾レイラ〈8〉

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どちらかと言うと小柄と言っていいレイラのヴァギナと私のペニスは、アルトサックスとストリングスのように、ほどよいテンションを保って絡み合い、軋り合い、歓喜のエンディング・コードをかけ上っていった。
「ハフ……ハフ……あ……ダ、ダ、ダ……グフ――ッ……」
歌の中では使ったこともないようなハイトーンで絶頂を示して、レイラの体から一気に力が抜けていく。脱力すると見えた括約筋が、クイ、クイッ……と、断続的に私のペニスを締め付けてくる。
心地のいいスタッカート。それは、レイラの体に残っている余韻が吐き出されているしるしだった。それでまた、私の分身は、息を吹き返した。
後ろ向きのレイラの体をクルリと返すと、レイラは、私の目を見て目じりをほころばせた。その目の中に、挑戦的な……と感じるような光があった。
「自分の女になった――なんて、思わないでね」
「思わないし、その気もないよ」
「そうなの……?」
目の中に浮かんだ挑戦的な色が、少し強くなったような気がした。
レイラは、「これでも?」とでも言うように、両腕を私の首に巻き付け、両足を私のももに絡めてきた。絡めたレイラの足は、私の両腿の裏に巻き付いて、私の腰を引き寄せるような動きを見せた。その引き寄せる先には、湧いて出た蜜と受け止めた私の射出物を、ブレンドしたままあふれさせているレイラのカントがあった。
私は、再び、その入り口に向けて、グイと腰を進めた。
「ハフ……ハフ……あ……ダ、ダ、ダ……グフ――ッ……」
歌の中では使ったこともないようなハイトーンで絶頂を示して、レイラの体から一気に力が抜けていく。脱力すると見えた括約筋が、クイ、クイッ……と、断続的に私のペニスを締め付けてくる。
心地のいいスタッカート。それは、レイラの体に残っている余韻が吐き出されているしるしだった。それでまた、私の分身は、息を吹き返した。
後ろ向きのレイラの体をクルリと返すと、レイラは、私の目を見て目じりをほころばせた。その目の中に、挑戦的な……と感じるような光があった。
「自分の女になった――なんて、思わないでね」
「思わないし、その気もないよ」
「そうなの……?」
目の中に浮かんだ挑戦的な色が、少し強くなったような気がした。
レイラは、「これでも?」とでも言うように、両腕を私の首に巻き付け、両足を私のももに絡めてきた。絡めたレイラの足は、私の両腿の裏に巻き付いて、私の腰を引き寄せるような動きを見せた。その引き寄せる先には、湧いて出た蜜と受け止めた私の射出物を、ブレンドしたままあふれさせているレイラのカントがあった。
私は、再び、その入り口に向けて、グイと腰を進めた。

肉体的には、私とレイラの相性は、申し分ないものに思えた。
この小生意気で、欲深く、わがままな小娘に振り回されながら、「あの悪妻にいいようにこき使われている亭主」という不名誉を、身から出た錆と甘んじて受け止める人生も、まんざらわるくもあるまい――という気持ちも、なくはなかった。
しかし、そうはならなかった。
その夜以来、レイラの私に対する態度は、あからさまに変わっていった。
「きょうは、Sに出演なの。来るでしょ?」
そういう電話が、週に2本も3本もかかってくるようになった。
「音出しは7時からだから、それまでに来てくれないかなぁ」
「きょうは、ホテルでビッグバンドと共演なの。譜面が多くて運ぶの大変なんだ。手伝ってよ」
まったく、あの女は――と、私は思った。
一度、肌を合わせただけで、レイラは私をまるで自分の「サポーター」とでも思い始めているようだった。
ある程度までなら、そのわがままも聞き入れてやろうと思っていたのだが、そうすればするほど、レイラの要求は、ますますエスカレートしていった。

毎週、火曜日の夜は、レイラが「カサブランカ」に出る日だった。
火曜日に私が「カサブランカ」に顔を出すことは、レイラの脳には、「当たり前のこと」として書き込まれているようだった。
仕事の都合で店に行くのが遅れると、レイラは露骨に不快な顔をして見せるようになった。
「まったく、親衛隊のくせに、来るの、遅いんだから」
ときには、そんな言葉を露骨に口にするようにもなった。
そういうつぶやきを、ハウス・バンドのメンバーも、マスターの鈴原も、そして、チカたちハウス・ボーカルも耳にすることになる。
私がやや遅めに店に顔を出すと、鈴原がニヤニヤしながら言う。
「レイラちゃん、お待ちかねですよ」
チカも、少し冷めた目で私を見るようになり、そして、チクリと言うのだった。
「荻野さん、いつから親衛隊になっちゃったの?」
「そんなこと、だれが言ってるの?」
「レイラさんが自分で言ってるよ。私の親衛隊、まだ来てないの――とかって」
この女に、これ以上、深入りしてはいけない。
レイラがみんなの前で私を「親衛隊」呼ばわりしている。それを知ったとたん、私の脳は、脳の奥からレッドカードを取り出した。私は、そのレッドカードをレイラに突き付けた。
「わるい、チカちゃん。用事を思い出した」
私は、不意に席を立った。
「エッ」という顔をしたレイラが、あわてて後を追ってきた。
「どうしたの? ステージ、これからよ」
「きょうは聴く気になれないんだ。またね」
理由は言わなかった。
たぶん、その理由を口にしても、レイラにはわからないに違いない。
それから、私は、火曜日の「カサブランカ」に顔を出さなくなった。
レイラが出演している他のクラブやライブハウスにも、足を向けなくなった。
そういう私の変化を、レイラがどう受け止めたのかは、私は知らない。それから、レイラと顔を合わせることも、言葉を交わすこともなかった。
「カサブランカ」には、火曜日以外に顔を出すようになり、そんな私の行動を、鈴原も、他のメンバー「おや?」という顔で迎えた。
いちいち説明するのも面倒なので、私は、自分の気分を歌で表した。
『Don’t Get Around Much Any More』(うろつき回るのはもう止めた)という曲だった。
「なるほどね。そういうことか……」
曲の意味を理解したのは、チカだけだった。
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