第58夜☆拒否された欲望はどこへ消えるのか?
第58夜
「愛とは何か?」をめぐって、管理人・哲雄がパートナー・AKIを相手に展開する、オヤジ・ギャグ風+ちょっぴりアカデミックおしゃべり。今回は、欲望を意識の奥に閉じ込める「抑圧」という話について――。
哲雄 AKIクンは、男にふられたとき、いつもどうしてる?
AKI 「いつも…」って、なんか引っかかるなぁ……。
哲雄 おや、「いつも」じゃなかったっけ?
AKI ハイ、数えるほどしかございませんのよ。
哲雄 でも、数えられるんだ。片手? 両手? 足の指も加える? それとも、歯ブラシの毛の数ぐらい?
AKI ノーコメント! でも、歯ブラシの毛ほど多くはありませんよ。それに、私、立ち直りが早いし。
哲雄 どうやって立ち直るのか、聞きたいもんですね。実は、それが、きょうのテーマでもあるわけだけど。
AKI 簡単ッすよ。Aがダメなら、Bにしよう。これしかないッす。
哲雄 念のためにお尋ねしますが、その「B」ってのは、やっぱり男?
AKI そりゃそうですよ。男しかないじゃありませんか。
哲雄 そうやって、AがダメならB、BがダメならC……と、キミは男をわたり歩いていく。まるでダメンズ・ウオーカー。進歩のない女だねェ。
AKI もォーッ、バカにしてるゥ!
哲雄 いやいや、決してバカにしてるわけじゃない。きわめて健全だと言ってるんです。つまり、AKIちゃんのリビドーは、Aという対象によって拒否されたけれど、キミはAの代わりにBという対象を見つけることによって、そのリビドーを維持し、そのハケ口を確保してきたわけだ。「進歩がない」ってことは、「健全だ」ということでもあるわけですよ。
AKI なんか……ホメられてるような、けなされてるような。ねェ、こないだからたびたび「リビドー」っていう言葉が出てくるんですけど?
哲雄 前にもチラと説明したと思うけど、フロイトの考え方を理解するには、ものすごく重要な言葉だから、もう一度、説明しとくね。「リビドー」っていうのは、「性的欲動」のこと。人間が生まれたときから持っていて、その意識的活動の源になるエネルギーのようなものだと思えばいいんじゃないかな。
AKI ヘーッ、生まれたときから持ってるんだ。
哲雄 こないだ、図にして説明した(弟56夜☆男の子がおチンチンの快感に目覚める日参照)けれど、このリビドーは、段階を追って発達し、その段階に応じて、快感を感じる部位と欲求の向かう対象が変わっていく。もう一度、整理しておくと、こんな具合だね。
AKI しかしさぁ、どうしてこんな段階を追うんだろうね。最初から「性器期」になってれば、人生2倍ぐらい、楽しめそうな気がするんですけど……。
哲雄 ひとつは、体の準備が間に合わない。つまり、体の態勢が整っていくのに従って、意識のほうも発達していく、ということだよね。もうひとつ、これはフロイトが言ってるんだけど、人間の心と体は、こうして進化の足跡をたどっている。
AKI 進化の歴史?
哲雄 原始的な動物だと、口と生殖器官が一緒。次の段階では、排泄器官と生殖器官が一緒になってる。その発生の歴史をたどってるんではないか、というわけです。
AKI よかった、私、ミミズの段階とかじゃなくて……。
哲雄 ときどきミミズになってるけどね。
AKI エッ!? ウソでしょ?
哲雄 ウソです。でね、順調に発達していくと、リビドーはこの順序で発達していくんだけど、どこかの段階で、リビドーがその対象によって拒否されたり、何らかの理由で自我によるブレーキがかかったりすると、リビドーがその段階にとどまってしまって、次の段階に進めなくなってしまう。これを、フロイトは「固着」と言ってるんだよね。
AKI じゃ、あれですか? マザコンとかファザコンとか、SとかMとかも、そういう「固着」の結果だと?
哲雄 たとえば、キミがかわいい女の子であった頃のことを思い出してみよう。
AKI 私、いまでもかわいい女の子ですけど……。
哲雄 言ってなさい。たとえば、お父さんに甘えたくてしょうがないキミは、お父さんの布団に潜り込んだり、お父さんのニオイの染み付いた枕を抱きしめたり……ってことをしたかもしれない。
AKI 覚えてないっす。
哲雄 いいんです。たいてい、この時期のことは、みんな覚えてない。ところがそのとき、お母さんが、そんなキミをこっぴどく叱ったとしよう。「ほんとに、この子はいやらしいんだから」と叱って、お父さんのものに手を触れたりすることを、厳しく禁止したとしよう。するとキミの自我は、リビドーに対してどういう処理をほどこすか?
AKI そういう気持ちを隠そうとするかもしれない。
哲雄 どこへ?
AKI この小さな胸の奥に。
哲雄 確かに胸は小さいよね……って、あ、ジョーダンだよ、ジョーダン。そんな怖い目でニラまないで。その「胸の奥」ってどこだろう?
AKI 秘密の小部屋。
哲雄 秘密の……? そんなものあったんだ、キミにも。
AKI 失礼なッ! だれにも見せないけど、ありますよ、それくらい。
哲雄 見せないっていうか、見せられないんだね。自分でも意識することのできない世界だから。一般的には、「無意識」と呼ばれてる世界。その闇の中に閉じ込めてしまうことを「抑圧」というんだ。
AKI もしかしたら、私、いろんなことを抑圧してるかもしれない。
哲雄 きっと、胸も抑圧しちゃったんだね……って、あ、また怖い顔してる。
AKI もう一回言ったら、絶好ですからね。
哲雄 わかった、わかった。もう二度と言いません。それでね、いったん「抑圧」が行われて無意識の世界に閉じ込められてしまうと、キミは自分でも、かつて自分が父の愛を求めたことなど、忘れてしまう。しかしね、その記憶は無意識の中にしっかり残ってるから、「意識の検閲」がゆるくなると、ふと、意識の中に顔を見せることがある。
AKI 「意識の検閲」? 何ですか、それ?
哲雄 無意識と意識の境界には、常に、門番役の意識が立ちはだかってて、封印した欲望などが意識の中に立ち戻ってこないように見張ってるんだ。ところが、睡眠中とか、意識が朦朧としている状態だと、この門番も眠ってる。
AKI わかった。夢の中とかに出てくるんだ。
哲雄 この話、第54夜にもしたよね。私が「父親を殺す夢を見た」って話。AKIちゃんも、すごくいやらしい夢を見たりすること、あるでしょう?
AKI ま、ないとは言えないですけど……。
哲雄 抑圧を受けた欲望は、単に生殺しされてるだけだから、そういうふうに何かの拍子に顔を出すことがあるんだね。でもね、「抑圧」は、リビドーの固着に対してとる自我の行動のひとつにすぎない。実は、他にもパターンがいくつかあって、そっちのほうが一般的だったりするんだね。
AKI それ、知りたいかも。
哲雄 それをキミの恋愛行動に沿って説明しようと思うんだけど、それは次回にね。
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AKI もォーッ、バカにしてるゥ!
哲雄 いやいや、決してバカにしてるわけじゃない。きわめて健全だと言ってるんです。つまり、AKIちゃんのリビドーは、Aという対象によって拒否されたけれど、キミはAの代わりにBという対象を見つけることによって、そのリビドーを維持し、そのハケ口を確保してきたわけだ。「進歩がない」ってことは、「健全だ」ということでもあるわけですよ。
AKI なんか……ホメられてるような、けなされてるような。ねェ、こないだからたびたび「リビドー」っていう言葉が出てくるんですけど?
哲雄 前にもチラと説明したと思うけど、フロイトの考え方を理解するには、ものすごく重要な言葉だから、もう一度、説明しとくね。「リビドー」っていうのは、「性的欲動」のこと。人間が生まれたときから持っていて、その意識的活動の源になるエネルギーのようなものだと思えばいいんじゃないかな。
AKI ヘーッ、生まれたときから持ってるんだ。
哲雄 こないだ、図にして説明した(弟56夜☆男の子がおチンチンの快感に目覚める日参照)けれど、このリビドーは、段階を追って発達し、その段階に応じて、快感を感じる部位と欲求の向かう対象が変わっていく。もう一度、整理しておくと、こんな具合だね。
口唇期 ――口、唇――異性の親
↓
肛門期 ――肛門――異性の親→同性の親
↓
男根期 ――ペニス、クリトリス――同性の親→同性の仲間
↓
潜伏期 ――ペニス、クリトリス――同性の仲間→異性の仲間
↓
性器期 ――性器――異性の仲間→特定の異性
↓
肛門期 ――肛門――異性の親→同性の親
↓
男根期 ――ペニス、クリトリス――同性の親→同性の仲間
↓
潜伏期 ――ペニス、クリトリス――同性の仲間→異性の仲間
↓
性器期 ――性器――異性の仲間→特定の異性
AKI しかしさぁ、どうしてこんな段階を追うんだろうね。最初から「性器期」になってれば、人生2倍ぐらい、楽しめそうな気がするんですけど……。
哲雄 ひとつは、体の準備が間に合わない。つまり、体の態勢が整っていくのに従って、意識のほうも発達していく、ということだよね。もうひとつ、これはフロイトが言ってるんだけど、人間の心と体は、こうして進化の足跡をたどっている。
AKI 進化の歴史?
哲雄 原始的な動物だと、口と生殖器官が一緒。次の段階では、排泄器官と生殖器官が一緒になってる。その発生の歴史をたどってるんではないか、というわけです。
AKI よかった、私、ミミズの段階とかじゃなくて……。
哲雄 ときどきミミズになってるけどね。
AKI エッ!? ウソでしょ?
哲雄 ウソです。でね、順調に発達していくと、リビドーはこの順序で発達していくんだけど、どこかの段階で、リビドーがその対象によって拒否されたり、何らかの理由で自我によるブレーキがかかったりすると、リビドーがその段階にとどまってしまって、次の段階に進めなくなってしまう。これを、フロイトは「固着」と言ってるんだよね。
AKI じゃ、あれですか? マザコンとかファザコンとか、SとかMとかも、そういう「固着」の結果だと?
哲雄 たとえば、キミがかわいい女の子であった頃のことを思い出してみよう。
AKI 私、いまでもかわいい女の子ですけど……。
哲雄 言ってなさい。たとえば、お父さんに甘えたくてしょうがないキミは、お父さんの布団に潜り込んだり、お父さんのニオイの染み付いた枕を抱きしめたり……ってことをしたかもしれない。
AKI 覚えてないっす。
哲雄 いいんです。たいてい、この時期のことは、みんな覚えてない。ところがそのとき、お母さんが、そんなキミをこっぴどく叱ったとしよう。「ほんとに、この子はいやらしいんだから」と叱って、お父さんのものに手を触れたりすることを、厳しく禁止したとしよう。するとキミの自我は、リビドーに対してどういう処理をほどこすか?
AKI そういう気持ちを隠そうとするかもしれない。
哲雄 どこへ?
AKI この小さな胸の奥に。
哲雄 確かに胸は小さいよね……って、あ、ジョーダンだよ、ジョーダン。そんな怖い目でニラまないで。その「胸の奥」ってどこだろう?
AKI 秘密の小部屋。
哲雄 秘密の……? そんなものあったんだ、キミにも。
AKI 失礼なッ! だれにも見せないけど、ありますよ、それくらい。
哲雄 見せないっていうか、見せられないんだね。自分でも意識することのできない世界だから。一般的には、「無意識」と呼ばれてる世界。その闇の中に閉じ込めてしまうことを「抑圧」というんだ。
AKI もしかしたら、私、いろんなことを抑圧してるかもしれない。
哲雄 きっと、胸も抑圧しちゃったんだね……って、あ、また怖い顔してる。
AKI もう一回言ったら、絶好ですからね。
哲雄 わかった、わかった。もう二度と言いません。それでね、いったん「抑圧」が行われて無意識の世界に閉じ込められてしまうと、キミは自分でも、かつて自分が父の愛を求めたことなど、忘れてしまう。しかしね、その記憶は無意識の中にしっかり残ってるから、「意識の検閲」がゆるくなると、ふと、意識の中に顔を見せることがある。
AKI 「意識の検閲」? 何ですか、それ?
哲雄 無意識と意識の境界には、常に、門番役の意識が立ちはだかってて、封印した欲望などが意識の中に立ち戻ってこないように見張ってるんだ。ところが、睡眠中とか、意識が朦朧としている状態だと、この門番も眠ってる。
AKI わかった。夢の中とかに出てくるんだ。
哲雄 この話、第54夜にもしたよね。私が「父親を殺す夢を見た」って話。AKIちゃんも、すごくいやらしい夢を見たりすること、あるでしょう?
AKI ま、ないとは言えないですけど……。
哲雄 抑圧を受けた欲望は、単に生殺しされてるだけだから、そういうふうに何かの拍子に顔を出すことがあるんだね。でもね、「抑圧」は、リビドーの固着に対してとる自我の行動のひとつにすぎない。実は、他にもパターンがいくつかあって、そっちのほうが一般的だったりするんだね。
AKI それ、知りたいかも。
哲雄 それをキミの恋愛行動に沿って説明しようと思うんだけど、それは次回にね。

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