なぜ、日本では、「王朝の交代」が起きなかったのか?

Talker 哲雄 人間関係についての著作を手がける、エッセイスト。本ブログの管理人です。
with AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指す推定年齢アラサーの美女。
第361夜 【本日のテーマ】 なぜ、日本では、「王朝の交代」が起きなかったのか?
前回、「市民革命」を経験してない日本には、「近代以前」が色濃く残っている、という話をしました。なぜなのか? その理由のひとつに、かつて一度も、日本では「王朝の交代」が起きてない、経験してないから――という理由が挙げられます。政治の「長」は代わっても、シャーマン=祭祀の「長」は、変わらない。その日本的精神の背景にあるものは――。
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AKI 日本人は、一度も、市民や農民や労働者といった被支配層が、自分たちの力で「主権」を奪い取った経験がない。精神的には、いまだに「近代以前」なんじゃないか。前回は、そんな話をしたんですよね?
哲雄 ハイ、そう申し上げました。政権の交代はあったけれど、それはすべて、支配層の間での「コップの中の嵐」であったに過ぎません。
AKI コップの中の嵐……ですか?
哲雄 ハイ、「コップの中」です。コップの中にミルクが入っているとしましょうか。そのミルクがホットになったり、アイスになったり、シロップ入りになったり、ノン・シュガーだったり……はするけれど、ミルクがまるごとフレッシュジュースに入れ替わったりはしてないんですね、一度も。世界的に見ると、とても稀有なことです。
AKI 稀有なんですか?
哲雄 稀有です。右翼の政治家などは、これを「国体」が維持されている――というふうに表現したりするのですが、この「国体」という言葉は、日本でだけ使われる言葉で、他の国に持っていっても、まるっきり通用しません。
AKI 国体……? それ、どういう意味ですか?
哲雄 ひと言で言うと、「天皇に支配される国土とその民」というような意味でしょうかね。その天皇が「万世一系」であると言う。つまり、開闢以来、一度も、その血統が絶えることなく、この国の首長であり続けている。こんな国は他にないだろう――というわけです。
AKI 他にはないんですか?
哲雄 王政をとっている国も、とっていた国もありますが、たいていの場合、その王権が別の一族に代わったりして、支配者の血統が交替したりしています。たとえば、お隣の中国でも、秦⇒漢⇒隋⇒唐⇒宋⇒元⇒明⇒清――というふうに、王朝が交替しています。イギリスでも、ノルマン⇒プランタジネット⇒ランカスター⇒ヨーク⇒テューダ⇒ステュアート⇒ハノーヴァー⇒ウィンザー――と、目まぐるしく入れ替わっています。
AKI 日本では、それがなかったんですね?
哲雄 なかったんですねぇ。平安時代以降は、鎌倉時代の源⇒北条、室町時代の足利、安土桃山の豊臣、江戸時代の徳川――と、政治の実権を握る一族は代わりましたが、その間も、「帝」は「帝」のまま、「棚上げ」されてきたわけです。
AKI どうして、帝ごと交替――ってならなかったんですかねェ?
哲雄 それが、日本人の不思議なところ。おそらくですが、それは、日本人の宗教観と関係してるのではないか――と、私は思っています。
AKI 宗教ですか? どんな……?
哲雄 自然崇拝とでも言ったらいいでしょうか。古代日本人の「神」は、自然と一体化して考えられていました。「天皇」は、原初、その「神」との交流を司るシャーマン的な存在だったんじゃないか――と想像されています。そのシャーマンがコロコロ変わったんじゃ、「神」の機嫌を損ねてしまうかもしれない。それじゃ、具合がわるかろう、というわけです。
AKI あ、そうか。それで、
政権が代わっても、天皇は、そのまま据え置く――
という構造ができ上がっちゃったんですね。
哲雄 南米の未開なインディオの部落などでは、宗教的な権威を有するシャーマンと部族の政治的リーダーである首長(族長など)とは、厳密に区分されています。首長の仕事は、もっぱら部族の成員間の利害の調節に当たったり、もめごとの調整に当たったりすることで、シャーマンはそういう場面には絶対に顔を出さない。
AKI シャーマンのほうは何をしてたんですか?
哲雄 部族の間に病人が出ると祈祷などでその治癒を祈り、人が死んだらそれを弔い、誕生したら祝福する。収穫を祈ったり、感謝を捧げたり……というのも、もっぱら、シャーマンの仕事だったようですね。
AKI 人の生死と収穫かぁ……? つまり、自然界と関わる仕事――ってことですね?
哲雄 オッ、するどい! でもね、いざ、この部族が他の部族と戦争をおっ始めるなんてことになると、ちょっと、面白いことが起こるんですよ。
AKI 面白いこと? もしかしてシャーマンが逃げ出す……とか?
哲雄 いいえ。逃げ出すのは、族長とか村長。つまり、首長のほうです。逃げ出すというより、一族の戦士たちを指揮する権利を首長は行使せず、闘いの間、自分は奥に引っ込んで、別のだれかを「将軍」に仕立てて闘わせます。
その「将軍」が手を結ぶのは、「首長」ではなく「シャーマン」なんですよね。
AKI エッ、エッ! それって、何かヘン。
哲雄 ヘンでしょ? でね、戦争の間は、この「将軍&シャーマン」のタッグチームが、戦士の士気を鼓舞し、闘いを指導します。そして闘いが終息すると、「将軍」は指揮権を返上して姿を隠し、シャーマンも奥に引っ込みます。今度は、首長が再び表に出てきて、部族に平和を説くわけです。
AKI それって、どこかで聞いたような話。
哲雄 そうなんですよ。どこかで聞いたような話ですよねェ。そう遠くない昔、私たちの住んでるこの国でも……。
AKI シャーマンって、そんなときには、利用されちゃうんですね、その霊力を。
哲雄 ま、実際に霊力を備えているかどうかは別として、
その象徴性や神秘性を利用しようと思う人間が現れることは、容易に想像できます。
そのためにも、シャーマンには、
世俗の情勢に左右されない正当性を保っておいてもらう必要があります。
それがコロコロ変わったんじゃ、都合がわるいわけです。
AKI 日本で王朝の交代が起こらなかったのも、その正当性を保つためではないか――と、哲ジイはそう考えているわけですね?
哲雄 日本の「天皇」が、ここまで触れてきた「シャーマン」に当たるかどうかは、かなりビミョーな問題だと思っております。天皇の公務の中には、「新嘗祭」を執り行うなど、シャーマン的な務めも多く含まれていますが、一方で、国民の融和の象徴として、災害地を訪問したり、国民的行事に参列するなど、族長的な務めも含まれています。私の個人的な感覚で申し上げるなら、日本の「天皇」は、「シャーマン的性格と族長的性格を併せ持ったような存在」というところでしょうか。
「シャーマン的な性格」を維持しようとしたら、
血統の交代は、極力、避けたい。
そういう意識が強く働いたであろうことは、否定できないと思います。
AKI なるほど。それでね、哲ジイ、最初のテーマに戻りますけど、私たち日本人が、自分たちの力で「主権」を手に入れるということができなかったというのは、ひとつには、そういう「天皇制」の在り方とも関係してるんじゃないか――と、哲ジイはそう思っているんですか?
哲雄 少なくとも、戦前までの日本は、そうだった――と言っていいかと思います。
AKI で、いまは……?
哲雄 いまは、曲がりなりにも民主主義国家ですからねェ。選挙で政権をひっくり返すことぐらいは、できると思いますよ。しかし、メンタル的にはどうなのか?
AKI メンタル……ですか? それって、どういうメンタル?
哲雄 市民として自立できない――というメンタルです。自分が幸せでいられるのは「お上のおかげ」、不幸になるのも「お上のせい」。いいことも、わるいことも「上のせい」にしてしまうという精神構造が、日本人のメンタリティにはでき上がってしまっているんですね。
AKI それも、ずっと血統が変わらない「天皇」が上にいるから?
哲雄 それも、理由のひとつだと思います。「お上が何とかしてくれる」という依存心が、日本人の場合、他の、特に大陸系の民族に比べて、強いような気がするんですよね。しかし、それだけじゃない。どうも、日本人の遺伝子の中には、もともと、他者に依存するという性質が、他の民族よりも強く記憶されているのではないか?
AKI エッ、ほんと?
哲雄 その話については、次回、じっくり検討してみたいと思います。
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