「大きな政府」と「小さな政府」。どっちが国民を幸せにする?

Talker 哲雄 人間関係についての著作を手がける、エッセイスト。本ブログの管理人です。
with AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指す推定年齢アラサーの美女。
第359夜 【本日のテーマ】 「大きな政府」か、「小さな政府」か?
経済活動が「国境」という壁を越えてしまっている現代社会には、2つの大きな流れがあります。ひとつは、国境を開いて「グローバル」な世界を実現しようという動き。もうひとつは、国境を強化して国家を小さくまとめようとする動き。こうなると問われるのは、「国とは何か?」ということです。今回は、その問題に切り込んでみます――。
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哲雄 経済の単位という意味での「国家」は、もう、意味を失いつつある。それなのに、ここへ来て、ネオナチのように「国家主義的」な主張をする人たちが、世界的に増えている。それは、どういうことか――という話を、前回はしたんですよね。たぶん、その背景には、大衆の貧困化があるか……と。
AKI 何となく、そこまでは覚えています。哲ジイは、働く人間が二極分化してるようなことをおっしゃってたような気がするんですが……。
哲雄 「気がする」じゃなくて、ハッキリ、そう申し上げたんです。片や、グローバルな企業に身を置いて「ゼネラリスト」や「スペシャリスト」として活躍する人材。対するは、いつでも「取り替え可能」な「労働者」としてオフィスや工場などで働き、常に「コスト」として削減されることに脅かされる人材。両者の間には、埋めようのない「格差」が生じて、それが全世界的に問題となっている――と、申し上げました。
AKI 哲ジイが気にしているのは、「取り替え可能な労働者」のほうなんですね?
哲雄 ハイ。彼らの不満は、アメリカでも、ドイツやフランスでも、そして日本でも、相当程度、溜まっていると思うのです。その不満は、どこへ向かうでしょう?
AKI 大企業や政府……?
哲雄 それもあるでしょうね。アメリカの大統領予備選で、社会主義者を名乗るサンダース候補が善戦を見せているのも、そのひとつの現れと言っていいかと思います。しかし、トランプ氏支持に回る人たちなどは、ちょっと違う。
AKI トランプさんは、「偉大なアメリカを取り戻そう」とか言ってるんでしょ?
哲雄 言ってますねェ。たぶん、サンダース氏を支持する人たちと、トランプ氏を支持する人たちが抱える不満は、ほぼ同じ。サンダース氏は、その不満を「富の再分配」へ誘導しようとし、トランプ氏は「排外=外国勢力の排除」へ振り向けようとしているように見えます。「国家主義的」と言うなら、トランプ氏のほうですね。
AKI トランプさんの言うように、国が偉大になれば、国民も豊かになれるんですかね?
哲雄 企業が利益を国民に還元する気があればね。
AKI ないんですか、その気が?
哲雄 ないでしょうねェ。どこかの国の総理大臣も、「トリクルダウン」なんていうインチキな理論 を持ち出して、企業が潤えば、国民にもそのおこぼれが回ってくるはず――と主張し、企業減税を実施しました。
AKI おこぼれ……? 失礼な……。
哲雄 失礼でしょ? 国民をまるで「物乞い」扱いしてますよね。「トリクル=trickle」というのは、元々、「したたる」という意味です。「トリクルダウン」で「したたり落ちる」。よくたとえられるのが、シャンパンタワーです。タワーのいちばん上のグラスにシャンパンを注ぎ続ければ、そのシャンパンはグラスから溢れて、下のグラスにも次々にしたたり落ちるでしょ? それと同じで、企業を儲けさせれば、その利益は国内投資に向けられ、結果的には、国民全体が潤う――と、そういう理論なんですが、実際は、そうはならなかった。
AKI もしかして、シャンパンをケチっちゃった……?
哲雄 いや、そんなことじゃない。そもそも、理論が間違ってるんだね。
AKI 理論……って、「トリクルダウン」という理論がですか?
哲雄 企業が儲かれば、その利益は国内投資に回されるというその理論が、そもそも間違ってる。経済がグローバル化していることをお忘れじゃありせんか――っていうんだ。私が優秀な経営者であれば、蓄積した利益を国内投資に振り向けるなんてバカなことはしません。
AKI どうするんですか、社長?
哲雄 もっと有利な海外投資に振り向けるだろうと思いますよ。あるいは、どこかのタックス・ヘイブンにダミー会社でも作って、そこに隠すか。そうでなければ、将来に備えてじっと貯め込んでおくか……。実際、企業減税以降、日本の企業の内部留保は、爆発的に増えています。
AKI つまり、したたり落ちたりはしなかったわけですね?
哲雄 しませんでしたね。アベノミクスは、とおの昔に、その理論的根拠を失っているわけです。トランプの言う「偉大なアメリカ再建構想」も、たぶん、同様の結果を招くでしょう。しかし、それでも彼らは、「強い国家を」と言うわけです。彼らが言う「国家」とは何なのでしょうね?
AKI もしかして、民族――とか?
哲雄 それは、ないでしょうねェ。「民族」と「国家」は同一ではありません。複数の民族がまとまって、ひとつの国家を形成している場合もあるし、逆に、ひとつの民族が複数の国家に分かれている場合もありますからね。
AKI じゃ、警察と軍隊が共通……?
哲雄 オーッ、いいとこ衝いてますねェ。「国家とは何か?」については、近世以降、さまざまな説が唱えられてきてて、そのすべてを紹介することは、とてもできませんが、社会学者のマックス・ウェーバーは、次の2つを「近代国家」を成立させる要件として定義しました。

〈1〉警察や軍隊などの暴力手段を合法的に独占する組織を有していること。
〈2〉官僚や議員など、統治機構の維持を職業として生計を立てる専門家によって運営される政治的共同体であること。
AKIクン、半分、言い当てちゃいましたね。
AKI 私も、まんざら捨てたもんじゃないでしょ?
哲雄 捨ててませんよ、全然。むしろ、拾いたいくらいのもんで……。
AKI ハ……!?
哲雄 いや、何でもないです。もっともね、AKIクン、現代では、この定義が多少、揺らぎ始めてもいます。というのも、ひとつは、貧富の差が拡大する中、普通選挙が普及して、政治家が貧しい人たちの声にも耳を傾けなくてはならなくなった。すると、どうなる?
AKI そりゃ、ま……福祉政策とかが政治の課題になってきたりしますよね?
哲雄 そうです。社会の不平等とか格差とかをできるだけ解消しようと、国家が積極的に社会に介入するようになります。すると、どうなりますか?
AKI 政府の仕事、増えますわねェ……。
哲雄 仕事が増えると、当然、行政に人も金も必要になる。
つまり、政府は「大きく」なります。
そういう国を「福祉国家」というふうに呼んだりもします。
別の言い方をすると、「大きな政府」ということになります。

しかし、逆の考え方もあります。
AKI 逆……って言うと、政府は小さくていい――ということですか?
哲雄 何だか、きょうのAKIクン、冴えてますねェ。そうです、政府は、治安維持などの最低限の仕事をすればいい――という「小さな政府」の考え方です。いわゆる「夜警国家」ですね。すでに古典的となった国家観ですが、どちらかと言うと、アメリカの保守的な政治グループは、そういう国家観を持っています。
AKI 「ひとつは……」とおっしゃいましたよね。他にも、あるんですか?
哲雄 もうひとつは、前にも出てきたグローバリズムの問題です。経済はすでに「国家」の壁を越えていると申し上げましたが、経済だけじゃないんですね。国家の機能の一部を他の国と統合するという動きも、一部には出てきてます。EUなんぞも、ほんとうは、ヨーロッパの政治的統合まで目指してたんですよね。かつてのソ連邦とか、アラブ首長国連邦などは、行政機能ばかりか、軍隊まで統合してしまいました。そうして軍隊まで統合してしまうと、もはや、元の国家は、それでも「国家」と言えるか、ビミョーです。
AKI 単に、「領土」があるだけ――になっちゃう?
哲雄 その領土もねェ……。たとえば、連邦内とか、EUの内部とかでは、人とお金の移動は自由――ってことにしちゃった。TPPも、ほんとうはそうしたかったんじゃないかな。そうなると、「領土」って何だ? ということになる。
AKI そうですよねェ。何だろう? 単に地面の問題?
哲雄 グローバル経済が進行すると、そういうことになっちゃいますねェ。そのうち、地面なんてどうでもいいじゃないかってことになるかもしれない。一方、「小さな政府」を唱えるグループは、「小さな地面」にこだわって、国境に「壁を作る」とか言い出す。
AKI ね、哲ジイ。日本は、どっちなんですか?
哲雄 日本はねェ……実は、まだそれ以前の状態なんだよねェ。
AKI それ以前……って?
哲雄 近代以前の状態ってことです。ようがす。その話、長くなるので、次回ということにしましょうか?
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