エリートは「国」を飛び出し、非エリートは「国」にしがみつく

Talker 哲雄 人間関係についての著作を手がける、エッセイスト。本ブログの管理人です。
with AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指す推定年齢アラサーの美女。
第358夜 【本日のテーマ】 エリートは「国」を飛び出し、非エリートは「国」にしがみつく
経済はグローバル化しているのに、国の数は増え続けている。そんな中で、国民の帰属意識も二極化しています。グローバルな企業で働くエリートたちは、「国」を飛び越えて「世界企業の社員」という意識を強く持ちますが、他方、いつでも「交換可能」な非エリートたちは、「国家」を全面に押し立てて、その旗のもとで自己の価値を見出そうとします。「国家」を必要とする人たちと必要としない人たちのギャップは、近年、ますます拡大しているように見えるのですが――。
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AKI 大きな「主義」が崩れることによって、小さな「相異」が目立つようになり、各地に新しい国家が成立して、国家数は増え続けている。前回は、そんな話をしたんでしたよね。
哲雄 ハイ。ザックリ言うと、そういう話になる――と申し上げました。でもね、AKIクン、この世界には、そういう「小さな独立」が増える一方で、自分の国をより大きな国にしようと、いまだに領土拡大に血眼になっている国も存在します。
AKI エーッ……と、中国とかもそうですよね?
哲雄 そうですね。中国は、異民族の地域であるチベット、新疆ウイグル、内モンゴルなど、本来は、他民族の国家であった地域を自分たちの支配下に組み入れて、「大きな中国」を創ろうと必死こいてます。南シナ海にまで侵出して、南沙諸島を領有しようとしているのは、みなさん、すでにご存じのとおりです。チベットや新疆ウイグル自治区などでは、独立を訴える人たちもいるのですが、中国の官憲が、その動きを厳しく押さえつけていますね。
AKI ロシアとかアメリカは?
哲雄 ロシアも、一端は、自分たちの手から離れたクリミアを領有化しようとしていますよねェ。アメリカも、かつては、アラスカやハワイを自国の州として組み入れちゃったりしたけど、いまはもう、打ち止めじゃないですか。というか、これ以上、国を多民族化したくないという、内向きのバイアスがかかっているようにも見えます。
AKI じゃ、独立のほうは?
哲雄 いま、いちばん独立を叫んでるのは、スペインのカタルーニャ自治州かな。あの、バルセロナがあるところね。
日本にも、独立の声を上げてるところがあるんですよ。

AKI ウソ! どこ……? もしかして、北海道とか?
哲雄 コミックの世界じゃ、独立してたけど、実際には、そういう動きはありません。正解は、沖縄。
AKI 沖縄かぁ。何となくわかる気もする。
哲雄 実際、沖縄って、日本の国土になって、まだ50年経ってないんだよね。
AKI あ、そうか。それまで、アメリカの統治下にあったんですものね。でも、それは戦争に負けたからでしょ?
哲雄 そうなんだけど、じゃ、その前は――って言うと、日本国の沖縄県であったのは、70年ちょっと。明治になるまでは、琉球王国という別の国だったわけです。でね、いま、沖縄には、琉球として独立しようという動きが出てきてる。ムリもないと思うんです。
AKI 基地の負担とかがあるからですか?
哲雄 それもあるし、戦争中だって、沖縄だけを決戦の舞台にして、本土防衛の犠牲にした感がある。にもかかわらず、いまだに沖縄に犠牲を強いている。何だ、ヤマトの連中は――と思う人が出てきても、仕方ないと思うんだよね。
AKI ガンバれ、沖縄!
哲雄 それ、どういうガンバれ……?
AKI ウーン、いろいろ。でもさ、哲ジイ、よくわからないけど、そういう独立の動きが出てくることって、いいことなんですかね?
哲雄 そこなんだけどね、AKIクン。独立がいいかわるいか――っていう問題じゃなくて、その前に、
ほんとうに「国」という組織が必要かどうか?

問題は、そっちだと思うんだよね。
AKI そこまでいっちゃいますか?
哲雄 前回もお話したように、経済活動という点では、すでに、国境はないに等しい状態になっています。つまり、経済という現象はすでに国境を越えて「グローバル=地球規模」となっているので、そういうグローバルな企業で働いてる人間にとっては、たとえば、「自分はトヨタの社員である」という属性のほうが、「自分は日本人である」という属性よりも、強く、大きく意識されるのではないか――と思うのです。ただし、それは、ゼネラリストや一部のスペシャリストの場合ですけどね。
AKI ゼネラリスト……? 何ですか、それ?
哲雄 日本語にすると「総合職」とでも言えばいいのかな。社会の動きや業務全体を見通せる幅広い知識や洞察力、分析力などを備えて、企業などの進む方向を考えたりできる人材のことを言います。対する「スペシャリスト」というのは、特定の業務に関わる深い専門知識を備えて、エンジニアや研究者として活躍できる人材のことを言います。
AKI どっちがエラいの?
哲雄 どっちが――とか、そういう問題じゃないんだよね。企業などの組織にとっては、どちらも必要。たとえば、ロケットのエンジンを開発したり、設計したり、その細かい部品を調整したりできるのは、「スペシャリスト」の力ですが、そのロケット・エンジンを使って、どんな業務展開ができるかを考え、売り込みにあたったり、提携関係を築いたりできるのは、「ゼネラリスト」の力。どっちも、その企業にとっては欠くことのできない人材なんだよね。交換の利かない人材でもあるので、企業はそういう人材を優遇し、また、そういう人材の企業への帰属意識も高い。しかし、企業の中には、そうではない人材もいるんですよね、というか、そういう人材のほうが多い。
AKI それって、もしかしたら、一般事務員とか……?
哲雄 一般事務員もそうだし、一般の工員もそう。英語で言うと、「ワーカー(=worker)」とか「レイバラー(=laborer)」と呼ばれる人たち。日本語で言うと「労働者」ですね。
AKI エッ!? 一般事務員も「労働者」なんだ?
哲雄 当たり前じゃないですか。「オフィス・ワーカー」なんて言うと、どこかオシャレな響きを感じるかもしれませんが、立派に「労働者」です。「ゼネラリスト」や「スペシャリスト」は、基本的には、「交換の利かない人材」ですが、「ワーカー」のほうは、「いつでも交換できる人材」。この違いが、実に大きい。ここに「格差」を生み出す根本的な原因があるんですが、「格差」の問題については、またいつか、改めて詳しくお話することにしましょう。本日、問題にしたいのは、
「ゼネラリスト」や「スペシャリスト」と「ワーカー」の間には、
「組織への帰属意識」という点で、大きなギャップが存在する

――ということなんです。
AKI ひょっとしてあれですか? 「交換不可」な人材のほうは、企業への帰属意識を持てるけど、「いつでも交換可」な人材のほうは、そういう意識は持てない。
哲雄 もっとわかりやすく言っちまうとですね、エリート層は、「国家」なんて枠を飛び越えて、「自分は世界企業の社員だゾ」というところに意識を帰属させる。しかし、そうではない非エリート層は、いつ、「おまえなんてもう要らない」と言い出すかわからない会社に、帰属意識を持て――なんぞと言われても、そりゃ、ムリってもんですぜ、ダンナ。
AKI あら、ガテン口調に変わっちゃった。でもさ、ダンナ、そうなるってェと、そういう「ワーカー」たちの帰属意識は、どこへ向かうんでしょうね?
哲雄 そこだよねェ、問題は。ほんとうは、労働組合とかが、しっかり、そういう労働者の帰属意識を受け止めなくちゃならないんだろうけど、残念ながら、いまの労働組合にはそういう力がない。企業が「グローバル化」していこうとするのなら、労組も「グローバル化」を図らなくちゃいけなかったんだけどねェ。
AKI エッ、図らなかったんですか? 「万国の労働者よ、団結せよ!」とか言ってたのに?
哲雄 オーッ、よく知ってましたねェ。そうなんですよ、『共産党宣言』を世に出したマルクスは、すでに、19世紀にこう予言していました。

資本というものは、自己増殖を宿命づけられているから、どんどん集積されて、生産規模を拡大し、世界市場を手に入れようとするだろう。そういう世界戦略の中では、労働者は絶えず、世界均一の低賃金に押さえ込もうとする資本の圧力にさらされる。労働者は団結して、この圧力に抵抗するしかない。個々の闘いでは敗北することがあっても、労働者の国際的団結があれば、やがて、この闘いは、労働者の政治的団結を生み、資本の強欲な目論見を打ち砕くであろう。
ところが、労働組合はそういう発展の道を選ばなかったんですね。むしろ、自分たちの利益を守るために、排外的な姿勢をとりました。外国人労働者を排除したり、非正規雇用者と対立するような姿勢をとった。その結果、労組自体が存在意義を失っていきました。
AKI しっかりしろよ、連合!
哲雄 そうなんですよね。しっかりしろ――です。さて、そんな中、帰属先を見い出せない労働者たちは、どこに意識を帰属させようとしたか?
AKI 宗教とか……?
哲雄 ま、そういう人もいるかもしれませんねェ。でもね、いま、全世界的に起こっていることは、そうじゃない。もっと、内向きな動きです。
AKI 内向き? 小さく固まろう――っていう動きですか?
哲雄 いま、世界的に目立っている現象に、極右勢力の台頭があるのですが、これって、拠り所を失った労働者階級の一部が、「国家」という幻想的枠組みにそれを求めようとした結果ではないか――と、私はニラんでるんですよ。
AKI つまり、こういうことですかね?
「グローバル? 何よ、それ?」と思うような「非エリート」たちが、
「国家」を前面に押し立てて、自分の存在価値を見出そうとしてる。

そういうふうには考えられませんかね?
哲雄 ビックリンコ!
AKI 何ですか、それ?
哲雄 あまりにピッタリ言い当てられたので、本日の話は、ここまで。では、彼らが考える「国家」とはどういうものか? 次回は、そういう話をしてみようと思います。
AKI ファーイ。話、長いんだから、ジイさまは……。
哲雄 ハ、何か……?
AKI いや、何でもありませ~ん。
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