簡単に「神」を創り出す危険な性質=「偶像化」を戒めよう

キング牧師の演説 若者たちへ。24の手紙   11 
「いま」を生きる若者たちへ、愛と連帯を込めて。

簡単にモノや人を「神扱い」して、「偶像化」してしまう。
日本人に多く見られるこの精神的傾向は、とても危険だ、
と私は思います。かつて日本を「軍国一色」に導いたのも、
この「偶像化」の結果。必要なのは、冷静に批判する力です。


【SEOリンク・キーワード】 恋愛 恋愛小説 コミュニケーション エロ



 かつて、軍国・日本の支配者たちは、「戦死したら神として靖国神社に祀られる」と国民を教導して、戦地に赴かせました。
 その神が「英霊」と呼ばれたこと。その「英霊」という言葉が創られたのは、20世紀になってからであること。日露戦争で大量の戦死者を出し、国民の間に「厭戦気分」が広がることを防ぐためだった――という話を、前回の手紙ではお話したんでしたよね。
 そんな「神」まででっち上げて、国民の命を戦地に駆り立てようとした戦争指導者の罪は、とても許せるものではない――と、筆者は思いますし、その「神」を参拝することを「日本の伝統」と偽ってはばからない現政権の右派政治家たちも、同罪だと思っています。
 しかし――と、長住は思うのです。
 それは、政治家たちだけの責任だっただろうか――と。
 日本の神をインスタント化した「英霊」というトリックを思いついた、当時のこの国の指導者たちのワル知恵は、確かに巧妙で、国民がそのトリックにかかってしまうのもムリないこととは思うのですが、しかし、簡単にトリックにかかってしまった国民のほうには、瑕疵はなかったのでしょうか?
 残念ながら、あった――と言わざるを得ない。私は、そう思っています。

 日露戦争の勝利を提灯行列で祝う。
 特攻攻撃で散った若者たちを「神鷲」などと持ち上げる。←飛び立つ隊員たちは、自分たちを「拝み」に来る年配の婦人たちなどを見て、「オレたちは、神になるために飛び立つんじゃない。神様なんぞはまっぴらごめんだ」と、胸の内でつぶやいたそうです。
 大本営が発表するウソっぱちの戦果を信じて、「勝った、勝った!」と浮かれる。
 「国防婦人会」などの婦人団体が結成されて、出征兵士を励ますなどの活動を熱心に展開し、地域では、反戦的思想の持ち主を摘発するなどの自警活動を行った。

 などなどの現象を見ると、軍部が始動する戦意高揚の尻馬に乗って騒ぎ立て、それを煽り立てたのは、民衆自身ではなかったか――とも見えるのです。
 大衆というものは、いつでも、そういうふうに、支配者の誘導に操られてしまう性質を、多かれ少なかれ持っている。よい誘導にも乗っかってしまうけれど、わるい誘導にも乗ってしまう。
 このことをしっかり自覚しておかないと、私たちは簡単に権力者の意図に操られ、彼らが望むとおりの「バカな国民」を演じることになってしまいます。

「神」を創り出してしまう「偶像化」という作業

 私は、最近、少し懸念していることがあります。
 「神」を簡単に創り出してしまうように見える、最近の若者たち(若者だけではありませんが)の精神的傾向についてです。
 「神を創り出す」は、「何かを偶像化する」と同義です。

  スポーツでも、芸能でも、人並み外れた活躍した人物を「神扱い」してしまう。
  ちょっと心が浄化されそうな場所を見つけると、「パワースポット」などと呼んで、「神域化」してしまおうとする。
  ちょっと優れた技能を持った人を、「○○の神」扱いしてしまう。

 ひとつひとつは、目クジラを立てるほどのことではないように見えます。
 しかし、そのひとつひとつの些細な事柄の中に、「偶像」を創り出してしまう危険な性質が潜んでいることに、筆者は、危惧を感じてしまうのです。
 なぜ、「偶像」を創り出すことが危険なのでしょうか?
 理由は、簡単です。
 「普遍的ではないもの」を、「普遍である=絶対的真実である」と崇めてしまう傾向を生み出してしまうからです。
 考えてみましょう。「偶像」にされるのは、どういうものでしょう?
 渋谷の「忠犬ハチ公」や和歌山県の「たま駅長」のように、動物が「偶像化」される場合もありますし、富士山や樹齢数百年などという樹木が「偶像化」される場合もあります。日本には、山や川、動植物などを信仰の対象とする「アニミズム」的な霊魂観が太古から存在しますから、これはこれで、ある意味、自然な精神的習慣とも言えます。
 しかし、多くの場合、「偶像」にされるのは、「人間」です。
 実際にこの世にいる、あるいはいた、英雄的な人物という場合もあり、人気を集める魅力的な異性という場合もあり、立派な功績を挙げた学者や文人、ときには経済人が、「偶像」として祭り上げられる場合もあります。
 私が「危険だ」と感じるのは、この、「特定の人間」を「偶像」として崇拝する精神的傾向です。

「美談」を騒ぎ立て、「神」を創り出すジャーナリズムの責任

 こう考えてみましょうか?
 もし、「偶像化」される人間が、特定の政治的傾向を持ち、大衆をその特定の方向に導こうとしている人間だとしたら、それでも、その「偶像化」を「取り立てるほどのことではない」と笑って見過ごせるだろうか?
 あるいは、こういうケースもあるかもしれません。
 ある目的を持った人間または集団が、自分たちの目的を美化し、大衆の支持を集めるために、特定の人物を美談の主として祭り上げ、「偶像化」させようとするかもしれない。
 こういうとき、その美談を「美談だ、美談だ」と煽り立て、そのお先棒を担ぐ役目を果たすのが、新聞やTVといったマスコミです。本当なら、「これ、ほんとうに美談だろうか?」と検証し、そういう美談をまき散らそうとする人間たちの意図に気づいて、警鐘を鳴らすべきジャーナリズムまでが、その尻馬に乗ってしまう。そういうことが、しばしば起こります。

 たとえば、1932年、当時の新聞などで「肉弾三勇士」として、大々的に取り上げられた三人の兵士がいました。
 上海事変で国民革命軍と対峙していた陸軍は、敵の敷設した鉄条網を突破するために、「破壊筒(爆弾)」を持った工兵隊3名に鉄条網の爆破を命じます。この作戦中に、3名の工兵は、自分たちが仕かけた爆弾の爆発で命を落とします。
 実際は、技術的失敗による爆死であった――という説が有力なのですが、当時の陸軍大臣・荒木貞夫は、この3人を「爆弾三勇士」と命名。自らの肉体を犠牲にしての愛国的自爆行為という美談として発表しました。
 これを受けた新聞各紙は、この3人を「肉弾三勇士」と称して、さらなる美談に仕立てていきます。当時の『大阪朝日新聞』などは、これを、

 まさしく「軍神」―? 忠烈な肉弾三勇士

 と讃えた上で、

  肉弾三勇士の壮烈なる行動も、実にこの神ながらの民族精神の発露によるはいうまでもない。
   (大阪朝日・1932年2月27日)

 と続けました。
 「軍神」として「神」にされた3人は、1941―1945年の間、教科書にも載る英雄として、語り継がれることになるわけです。

日本人は、「偶像」を創り出しやすい

 こうして「神」を創り出す「偶像化」という精神的作業は、もしかしたら、私たち日本人は得意なのかもしれません。
 時には私たちのセンチメンタリズム(感傷主義)が、時には私たちのファナティシズム(熱狂性、狂信性)が、さらには、私たち日本人に特徴的とされる「集団主義的」な価値観や感性が、この「偶像化」を加速させる要因となっているのでは――という指摘もあります。
 しかし、「偶像化」は、先にもお話したとおり、社会の中に「危険な空気」を醸成しかねません。時には、「普遍的ではないもの」を「普遍的」「絶対的」と思わせる空気を社会全体に生み出してしまいます。
 なので、「個人主義的」な傾向が強いキリスト教文化圏やイスラム教文化圏では、「偶像崇拝」を、厳しく戒めます。しかし、私たちの国では、比較的簡単に「偶像」を生み出してしまい、比較的簡単に、集団でそれを崇めるという行動をとってしまいます。
 「たま駅長」ぐらいなら、笑ってすませられますが、これが「安倍総理」になったら、笑ってはいられません。
 心の中に「偶像」を創り出してしまう精神のありようには、ちょっと、気をつけなくてはならない。
 私は、ちょっとだけ、それを心配しています。

安倍政権の「戦前復帰」の動きに反対の声を挙げている市民団体
  「安保法案」をはじめととする安倍政権の危険な動きに、「反対」の声を挙げている団体です。みなさんの熱心な活動に敬意を表して――。

●戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会

●SEALDs~自由と民主主義のための学生緊急行動

●戦争をさせない1000人委員会

●安全保障関連法案に反対する学者の会

●安保関連法案に反対するママの会



   筆者の最新小説、キンドル(アマゾン)からリリースしました!   

 一生に一度も結婚できない「生涯未婚」の率が、男性で30%に達するであろう――と予測されている「格差社会」。その片隅で「貧困」と闘う2人の男と1人の女が出会い、シェアハウスでの共同生活を始めます。新しい仲間も加わって、築き上げていく、新しい家族の形。ハートウォーミングな愛の物語です。
 「Kindle」は、「Amazon.com」が世界中で展開している電子本の出版・販売システム。「Kindle専用端末」があればベストですが、なくても、専用のビューアーをダウンロード(無料)すれば、スマホでも、タブレットでも、PCでも読むことができます。
 よろしければ、下記タイトルまたは写真をクリックして、ダウンロードしてください。

2015年3月発売 定価:342円 発行/虹BOOKS
妻は、おふたり様にひとりずつ (小説)



   既刊本もどうぞよろしく    タイトルまたは写真をクリックしてください。

【左】『聖少女~六年二組の神隠し(マリアたちへ-2)』
2015年7月発売 定価/122円
教師のビンタが支配する教室から、突如、姿を消した美少女。卒業から40年経って、ボクはその真実を知ります。

【右】『チャボのラブレター(マリアたちへ-1)』
2014年10月発売 定価122円
中学校の美しい養護教諭と生徒だった「ボク」の、淡い恋の物語です。


13 あなたの感想をClick Please!(ただいま無制限、押し放題中!)
管理人は、常に、フルマークがつくようにと、工夫して記事を作っています。
みなさんのひと押しで、喜んだり、反省したり……の日々です。
どうぞ正直な、しかしちょっぴり愛のこもった感想ポチをお願いいたします。


→この記事の主張はナルホドと思う(FC2 恋愛)
→この記事には共感できた(にほんぶろぐ村 恋愛)
→この記事は面白かった(人気ブログランキング 恋愛)

 このカテゴリーの記事一覧に戻る      トップメニューに戻る 

関連記事
拍手する

テーマ : 愛し方・愛され方
ジャンル : アダルト

コメントの投稿

非公開コメント

ご訪問ありがとうございます
現在の閲覧者数:
Profile
プロフ画像《当ブログの管理人》
シランケン・重松シュタイン…独自の人間関係論を元に、長住哲雄のペンネームで数々の著書を刊行してきたエッセイスト&編集者。この度、思うところあって、ペンネームを変えました

    姉妹サイト    

《みなさんの投票で恋愛常識を作ります》
★投票!デート&Hの常識

《管理人の小説をこちで保管》
おとなの恋愛小説倶楽部

Since 2009.2.3


 このブログの読者になってくださる方は 

不純愛講座 by 長住哲雄 - にほんブログ村


管理人の近著
 シランケン重松としての著書 


『初夜盗り
物語』


2022年8月発売
虹BOOKS


かつて、嫁ぐ娘の
初夜権は、土地の
権力者がものにして
いた――。
定価:650円


『裏タイプ~
あなたは人の目には「こんなタイプ」に見えている



2022年8月発売
虹BOOKS

人の目に映るあなたは
期待したタイプでは
ない。その理由。
定価:1500円

『盆かか
三日間だけの交換妻


2020年9月発売
虹BOOKS

盆が来ると、新妻の妙は
三日間、あの男の
「かか」になる――。
筆者初の官能小説。
定価:200円

お読みになりたい方は、下記よりどうぞ。
★Kindle版で読む
★BOOK☆WALKER版で読む



『好きを伝える技術』

2019年発売11月発売
虹BOOKS


「好き」「愛してる」と口にするより
雄弁にあなたの恋を語ってくれる
メタメッセージ。
勇気がなくても、口ベタでも、
これならあなたの想いは
確実に伝わる!
定価:600円




 長住哲雄としての著書です 


写真をクリックすると、詳細ページへ。

長編小説

『妻は、おふたり様にひとりずつ』

2016年3月発売
虹BOOKS


3人に1人が結婚できなくなる
と言われる格差社会の片隅で、
2人の男と1人の女が出会い、
シェア生活を始めます。
愛を分かち合うその生活から
創り出される「地縁家族」とは?
定価:342円



シリーズ
マリアたちへ――Vol.2

『「聖少女」
6年2組の神隠し』

2015年7月発売
虹BOOKS

ビンタが支配する教室から
突然、姿を消した美少女。
40年後、その真実をボクは知る…。
定価:122円



シリーズ
マリアたちへ――Vol.1

『チャボの
ラブレター』

2014年10月発売
虹BOOKS

美しい養護教諭・チャボと、
中学生だった「ボク」の淡い恋物語です。
定価:122円

  全国有名書店で販売中  

写真をクリックすると、詳細ページに。

『すぐ感情的に
なる人から
傷つけられない本』

2015年9月発売
こう書房
定価 1400円+税

あなたを取り巻く
「困った感情」の毒から
自分を守る知恵を網羅!



『これであなたも
「雑談」名人』


2014年4月発売
成美堂出版
定価 530円+税

あなたの「雑談」から
「5秒の沈黙」をなくす
雑談の秘訣を満載!


30秒でつかみ、
1分でウケる
『雑談の技術』


2007年6月発売
こう書房
定価 1300円+税

「あの人と話すと面白い」
と言われる
雑談のテクを網羅。

★オーディオブック(CD)も、
好評発売中です!


――など多数。
ランキング&検索サイト
  総合ランキング・検索  

FC2ブログ~恋愛(モテ)
にほんブログ村~恋愛観
にほんブログ村~恋愛小説(愛欲)
人気ブログランキング~恋愛



 ジャンル別ランキング&検索 

《Hな体験、画像などの検索サイト》
愛と官能の美学愛と官能の美学


《当ブログの成分・評価が確認できます》


おすすめ恋愛サイトです
いつも訪問している恋愛系ブログを、
独断でカテゴリーに分けてご紹介します。

悪魔
勉強になります
「愛」と「性」を
究めたいあなたに


《性を究める》
★性生活に必要なモノ
★セックスにまつわるエトセトラ
★飽きないセックスを極める
★真面目にワイ談~エロ親父の独り言



《性の不安に》
★自宅でチェック! 性病検査



女の子「男と女」はまるで劇場
いろいろな愛の形
その悦びと不安


《不倫》
★幸せネル子の奔放自在な日々

《MとSの話》
★M顔で野生児だった私の半生

《国際結婚》
★アンビリーバブルなアメリカ人と日本人

《障害者とフーゾク》
★KAGEMUSYAの裏徒然日記

妻くすぐられます
カレと彼女の
ちょっとHな告白


★嫁の体験リポート
★レス婚~なんだか寂しい結婚生活

女王写真&Hな告白
赤裸な姿を美しく
大胆に魅せてくれます


《美しい自分を見せて、読ませてくれます》
★Scandalous Lady

音楽女
ちょいエロなサイトです
他人の愛と性を
のぞき見


《Hな投稿集》
★人妻さとみの秘密の告白
★エッチな告白体験談ブログ


上記分類にご不満のブログ運営者さまは、管理人までご連絡ください。
創作系&日記系☆おすすめリンク
読むたびに笑ったり、感動したり、
勉強になったりするサイトです。

女の子ヘッドホン

読む悦び、見る愉しみを!
小説&エッセイ&写真

《官能小説》
★~艶月~
★愛ラブYOU

《おとなのメルヘン&ラブストーリー》
Precious Things

《ミステリー》
★コーヒーにスプーン一杯のミステリーを

《書評・レヴュー・文芸批評》
★新人賞を取って作家になる
★頭おかしい認定ニャ
★読書と足跡
★緑に向かって New

《写真&詩、エッセイ、日記》
★中高年が止まらない New
★質素に生きる
★エッチなモノクローム
★JAPAN△TENT
★いろいろフォト

傘と女性ユーモアあふれるブログです
いつもクスリと
笑わせられます


スクーター
社会派なあなたへ
政治のこと、社会のこと

《政治批評&社会批評》
★真実を探すブログ
★Everyone says I love you!

  素材をお借りしました   

★写真素材・足成
★無料画像素材のプロ・フォト
★カツのGIFアニメ
★無料イラスト配布サイトマンガトップ

上記分類にご不満のブログ運営者さまは、
管理人までご連絡ください。
にほんブログ村ランキング
にほんブログ村内の各種ランキング、 新着記事などを表示します。
アクセスランキング
リンク元別の1週間のアクセス・ランキング。

検索フォーム
QRコード
QR