シランケンの不純愛講座

　「１億総活躍社会」と、どこかのだれかが言いました。
　これに噛みついた主婦のネットへの書き込みが、日本中で大反響を呼んだことは、まだ、私たちの記憶に新しいところです。

　 保育園落ちた。⇒私、活躍できないじゃん。⇒日本、死ね。

　ものすごく乱暴な書き込みですが、でも、これ、「１億総活躍」を高らかに宣言しているどこかのだれかの「矛盾」を、見事についてるよなぁ――と、管理人は思います。
　そうなんです。「１億総活躍」と言うなら、活躍できるような環境を整えることが先決。なのに、あのお方は、そこには何も手を打たず、調子よく「１億」とおっしゃるわけです。
　これじゃ、活躍できない。活躍しようと思ったら子どもは産めない。いや、もしかしたら、結婚だってできないかもしれない。

　 20年後の2035年には、50歳までに一度も結婚できない「生涯未婚者」の率が、
　　男性で30％、女性で20％に達するであろう。

　昨年、厚生労働省がそんな見通しを発表しました。
　結婚できない男性は、労務職やサービス職に従事する者が多く、女性は、専門職・技術職・事務職に従事する者が多い。男性の場合は「貧困」が、女性の場合は「仕事の過酷さ」が、結婚を妨げることになるだろう――と、同省の報告からは読み取れます。
　もちろん、そうなると、女性ひとりが一生の間に何人の子どもを産むかという「合計特殊出生率」も、低下します。2006年に「１・２６」を記録した後、少しずつ上昇に転じていた出生率ですが、2014年には「１・４２」と、再び減少に転じました。
　「１億総活躍社会」は、ますます、その傾向に拍車をかけるだろう。
　もはや、男女一対一の婚姻によっては、「未婚率の上昇」も「少子化」も、止められないのではないか？
　そんな懸念がささやかれ始めた2000年代の初め、２人の男と１人の女が、ある場所で出会うところから、この物語は始まります。