「マイホーム主義」こそ、「家ハラ」を生み出す元凶

Talk 哲雄 人間関係についての著作を手がける、エッセイスト。本ブログの管理人です。
with AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指す推定年齢アラサーの美女。
第353夜 【本日のテーマ】 「マイホーム主義」こそ、「家ハラ」を生み出す元凶
人に対して「ハラスメント」をはたらく人間は、何かの権威を「錦の御旗」として押し立てようとします。戦後、その「錦の御旗」としてかざされたのは、「豊かなマイホーム」という旗でした。そこから生まれる「家ハラ」。その中には、稼ぎのわるい亭主を「ダメ亭主」「役立たず」などと罵倒するハラスメントもありました。しかし、その旗が何であれ、「錦の御旗」が翻るところでは、その構成員は、幸せにはなれません――。
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AKI 前回まで、社会の中で行われるハラスメントについて見てきたわけですが、こういうハラスメントって、家庭の中にも潜んでいるんですよね?
哲雄 めちゃくちゃ潜んでおります。ていうか、日本の社会は、明治以降、この「家庭」を「支配の最小単位」として機能させようとしました。戦前の日本は、天皇⇒家父長⇒家人というピラミッドを作って、国民全体をがんじがらめにしようとし、戦後は、それが、会社⇒マイホーム⇒家族に変わったんですけどね。いずれにしても、この国の秩序の基本は、「家庭」にあるわけです。前回、私は、こう言いましたよね。ハラスメントを働こうとする人間は、何かの権威を盾にしようとする――って。
AKI ハイ、確かに承りました。家庭内ハラスメントの場合だと、その「権威」は何になるんですか?
哲雄 古い体質を残したままの家庭の場合は、「家」という意識でしょうね。
AKI 「家」? まだ、そんな意識が残ってるんですか?
哲雄 一部には、根強く残ってます。いまだに「結婚」を「家と家の縁組」だなどと考える人たちがいますからね。そういう人たちやそういう人たちが多く住む地域では、「家の名を汚す」とか「○○家の名に泥を塗る気か」なんてことを、平気で口にする人たちがいます。
AKI そう言えば、「○○家の嫁にふさわしくない」と、お嫁さんをこき下すような家もあるみたいですね。
哲雄 ありますねェ。そういうのも、立派にハラスメント。強いて名前をつけるなら「家ハラ(=家柄ハラスメント)」とか「嫁ハラ」というところでしょうか。「立派な跡取りを」とか「早く孫の顔を見せて」などと急かすのも、このハラスメントの一種でしょうね。
AKI そう言えば、昔は、「3年子無きは去れ」とか言われたんですよね?
哲雄 そうですね。結婚して3年も経つのに、子どもができない。「うちの嫁は、石女じゃないか?」なんぞと言われた時代もあったようですよ。
AKI エッ、石女? 何ですか、それ?
哲雄 あ、「石女」と書いて、「うまずめ」と読みます。つまり「子どもを産めない女」という意味。3年、子どもができないと、それは「女のせい」ということになって、「不妊症」扱いされたわけですよ。

AKI ヒド~イ! もしかしたら、亭主のせいかもしれないのにね。
哲雄 実際、それが原因で離婚して、他の男と再婚したら、すぐ妊娠・出産した――なんて話もあるようですからね。でも、かつての「家制度」の中では、子どもができないのは、たいてい「嫁のせい」にされてしまいました。
AKI 私も、そういう話、何人かから聞いたことがあります。でも、こういうハラスメントって、子どもの話だけじゃありませんよね。いまでも、男の中には、「おまえたち、だれのおかげでメシが食えると思ってるんだ!」なんてことを口にする人もいるみたいですよ。
哲雄 何を隠しましょう、不肖・長住の父親も、そういうことを言うタイプの人間でした。
AKI エーッ、そうなんだ! それで、哲ジイは? いつか見てろ、オレがおとなになったら、今度は、「だれのおかげで」と言ってやるゾ――とか思ったんですか?
哲雄 逆ですね。「金」のことを決して口にしないおとなになろう――と思いました。というより、金そのものに執着しないおとなになってやる、と思いました。おかげで、「下流老人」になっちゃいましたけど。
AKI ダメじゃん、それじゃ。
哲雄 あ、それそれ。その「ダメ」っていうのも、家庭内ハラスメントでは、よく使われる言葉なんですよ。
AKI そ、そうなの? 私、何気によく使ってますけど……。
哲雄 たとえばね、世の奥さんたちは、よくおっしゃるでしょ?

とか、

とか。
AKI おばちゃま同士が集まると、そういう会話になることもあるようですねェ。私たち、若い子は、あまりやりませんけど。
哲雄 ご心配なく。キミならきっと、そのうち、口グセのように言うことになるでありましょう。それで、この「ダメ亭主」呼ばわりですがね、同種のハラスメント用語に、「役立たず」とか「使えない人」なんてのもあります。どれも、戦後、特に、日本が高度成長期に入って以降に使われるようになった言い方です。さて、そのワケは?
AKI わかった! 女が強くなった!――でしょ?
哲雄 フム……。それもなくはないでしょうね。でも、もっと大きいものがある。それは、世の中の価値の転換です。もっと言うならば、振り回す「権威」の中身が変わった。
AKI エーッ……と、戦前は、「家」だったんですよね。それが何に変わったんです?
哲雄 あ、「家」は、相変わらず「権威」を維持してたと思いますよ、ある程度は。でもね、戦後、日本が高度成長期に突入すると同時に、そこにまったく新しい価値観が入り込んできました。
AKI 自由と民主主義……とか?
哲雄 ま、それも入ってきましたが、それは、家庭内で「ハラスメント」を引き起こすような盾にはなりませんねェ。あ、でも、自由のほうはちょっと関係してるかな?
AKI ウーン……何だろ? もしかして、お金?
哲雄 オッ、だいぶ近くなった。正確に言うと、「豊かになる」という価値観。それが、「家」という価値観から変化した「マイホーム」という価値観と結びついた。すると、何ができ上がるでしょう?
AKI 豊かなマイホーム……?
哲雄 それです! 戦後日本のおとなたちは、とにかくガムシャラに働いてお金を貯め、郊外にマイホームを建てるとか、マンションを購入するとかして、そこで、家族3人か4人のそこそこ豊かな生活を送る。それが何よりも守られるべきものである――という価値観を身に着けてしまいました。
AKI マイホーム主義――ですね?
哲雄 あえて言うと、「豊かなマイホーム」主義ですかね。でね、ここからが大事なんです、AKIクン。こういう価値観をガチガチに身に着けてしまうのは、どちらかと言うと、女性のほうに多く見られる傾向なんですが、この「豊かなマイホーム」という幻想は、必ずしも、順風に実現できるわけではない。
AKI ま、いろいろありますからねェ、人生には。極端な話、亭主がリストラに遭うってことだって、ないとは言えませんよね。
哲雄 リストラまではいかなくても、結婚前に期待したほどには夫が出世してくれなかったとか、意に反して地方勤務を命じられたとか、転職に失敗したとか、財テクのつもりで始めたFXが株価暴落で大損こいたとか、「豊かなマイホーム」の幻想が、設計どおりにはならない、いろんな事態に遭遇することだって、十分に考えられるでしょ?
AKI 本人たちには何の落ち度がなくても、子どもが事故や事件を起こすってことだってあるかもしれませんしね。それに……そう、そう、亭主が不倫――ってことだって、あるかもしれないし……。
哲雄 オーッ、マイホームには、危険がいっぱいですねェ。さて、そんなふうに「豊かなマイホーム計画」に何らかのほころびが生じたとき、失望した女性たちは、どうするか?
AKI 私だったら、亭主が気落ちしないように励ましますが、中には、「あんたがしっかりしないから」と、亭主を責める人もいるかもしれませんね。
哲雄 そうですね。「あなたについていけば大丈夫だと思ったのに、ガッカリだわ」と相手を責めたり、「役立たずな男」「ダメ亭主」となじったりするかもしれませんね。そういうとき、彼女たちが振りかざす権威は何か?
AKI 「豊かなマイホーム」という旗ですか?
哲雄 そうですね。そうした幻想は、妻が勝手に描いた自分勝手な幻想かもしれないのですが、人を攻撃する段になると、それは、まるで既定の「正義の基準」であるのかのように、大上段に振りかざされます。
AKI まるで「錦の御旗」ですね。
哲雄 困ったものですねェ。私は思うんですよ、AKIクン。この「錦の御旗」を掲げた組織というものは、国であれ、会社であれ、学校であれ、家庭であれ、決して、その構成員を幸せにはしない。それはなぜでしょう?
AKI ウーン、むずかしい……。
哲雄 その答えは、次回、考えてみることにしましょうか。
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