しごきの源流。兵隊の命をコスパで量った旧軍隊

Talk 哲雄 人間関係についての著作を手がける、エッセイスト。本ブログの管理人です。
with AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指す推定年齢アラサーの美女。
第352夜 【本日のテーマ】 しごきの源流。兵隊の命をコスパで量った旧軍隊
日本の社会に横行する「ハラスメント」。その土壌は、学校教育の中で育てられるという話を、前回はしました。その学校教育でしばしばみられる「しごき」や「体罰」。その源流は、かつての軍隊にあった、という話を今回はしてみます。かつて、軍隊では、兵隊の命は「徴収のための切手代」とされていました。人の命を「コスパ」で量っていたのです――。
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AKI ハラスメントが横行する土壌は、学校教育の中にも潜んでいるのではないか? 前回は、そんな話をしたんですよね。
哲雄 AKIクン、言いましたよね。体育系部活でのしごきとか体罰とかも、その源流になっているのではないか――と?
AKI ハイ、言いました。下級生は、上級生に「絶対服従」とか、できない人間を「バカ」「クズ」呼ばわりするとか、そういうの、体育系の部活とかでは、ごく当たり前に行われているって。哲ジイは、そういう伝統は、旧軍隊時代から受け継がれているんじゃないか――とおっしゃいましたが……。
哲雄 確かに申し上げました。市民革命を経ていない日本の軍隊は、「自分たちで自分の郷土を守ろう」と立ち上がった義勇軍や志願兵ではなく、「お上の指令で徴集された民衆」によって構成されました。
AKI 「徴兵制」ですね?
哲雄 日本に徴兵制が敷かれたのは、1873年(明治6年)のことです。日本の男性は、満20歳になると「徴兵検査」を受けることが義務化され、そこで甲・乙・丙・丁・戌の5種に分類されました。当初は、「甲種合格者」のみを対象に、抽選で「兵役」に徴集していたのですが、その不公平感から「徴兵反対運動」が起こったり、「徴兵逃れ」が横行したため、1889年には「国民皆兵」が義務づけられ、「甲種合格」はほぼ全員召集、戦局が激化すると、それが、「乙種」や「丙種」にまで拡大されて、ついに、第二次大戦の最盛期には、徴集率9割を超えるまでになりました。
AKI エッ、9割!? ほぼ、全員じゃないですか。
哲雄 そうです。それでも足りなくなって、最後には、兵役が免除されていた学生まで徴集の対象となりました。
AKI 「学徒動員」ですね?
哲雄 ただし、文科系学生だけですけどね、対象になったのは。
AKI エーッ、そんなぁ。どうして文科系だけ?
哲雄 理科系は、お国のために必要――と判断したんじゃありませんか。そもそも、「徴兵制」の中では、「こいつは、生かしておいたほうが、国の役に立つかどうか?」が、選抜の基準として考慮されましたからね。
AKI てことは、あれですか? 「死んだほうが役に立つ」と考えられた国民もいた――ってこと?
哲雄 なにしろ、徴集された兵士の値段は「一銭五厘」と言われていましたから。
AKI 一銭五厘……? 何ですか、それ?
哲雄 召集令状の「切手代」だと言われてます。
おまえらは、一銭五厘でいくらでも補充が利く消耗品だ。

当時の上官たちは、新兵たちにそう訓示したそうです。軍隊的価値観で言うと、「兵隊の命は、馬以下」だったんですね。
AKI 「人の命」を「コスパ」で語る時代だったんですね?
哲雄 コスパ? あ、コストパフォーマンスですね? ま、あの時代の軍隊(特に陸軍)は、国民の命をそのようなものとしか考えていなかった――と言っていいかと思います。そういう価値観の中では、人は「使える」か「使えない」かで、その価値を判断されてしまいます。「使えない」と判断された人間は、「クズ」扱いされてしまうわけですね。
AKI 私、思うんですけどね、哲ジイ。人を「クズ扱い」したりする人間って、あんまり尊敬できるような人間がいないような気がするんです。尊敬……どころか、「クズはおまえのほうじゃ!」って言いたくなるような人間が多いような気がするんですが……。
哲雄 よく、お気づきで。そうなんですよ、AKIクン。実はね、人を「クズ」だの「バカ」だのと呼ぶ人間は、自分も、その「クズ」「バカ」の階層に属している人間である場合が多い。同じ階層なのに、ほんのちょっとだけ、相手より優位にある何かを身に着けている。そういう人間に限って、「まったく、おまえは使えないヤツだなぁ」と人を「クズ」扱いしたがります。
AKI その「優位にある何か」って、たとえば……?
哲雄 軍隊だと、たとえば入隊年度が1年違うとか、階級がひとつだけ違うとか、相手のほうが学歴が高いが、腕力は自分のほうが上だとか……。
AKI 部活でも、そういうの、ありますよね。学年が1個違うだけとか……。でも、たったそれだけで、そんなに威張れるかなぁ……?
哲雄 威張れるんですねェ、権威を借りてくれば。
AKI 権威を借りる? どういうこと?
哲雄 たとえば、軍隊だと、こういう言い方をしました。
上官の命令は、天皇陛下の命令である!

たとえ階級がそんなに違わなくても、そこに「天皇」という絶対的な権威を持ち出せば、相手は抵抗できなくなるでしょう?
AKI なるほど。ズルイって言えば、ズルイやり方ですよね。
哲雄 そういう手法は、たとえば、スポーツ系の部活なんかでも、しばしば使われます。さすがに「天皇」までは持ち出せませんが、「母校の名誉のために」とか、「全国制覇」とか、部員が抵抗できないようなスローガンを持ち出して、「服従」を強いるわけです。そもそも、日本のスポーツは、「軍事教練」として普及し、奨励されてきたものが多いので、指導者層の中にも、かつての「軍隊的体質」が残っているケースが多い。
AKI しごきや体罰は、その名残だ――と?
哲雄 特に、武道系などには、そういう体質が色濃く残っている――と、私は感じています。それとね、日本の場合、学校側にも、それを黙認せざるを得ない事情があるんじゃないか――とニラんでるんですよ。
AKI 学校側の事情? たとえば、生徒を確保しなくちゃならない……とか?
哲雄 正解! キミも知っているとおり、少子化で生徒数や学生数が全体的に減っている現代では、入学者が定員に達しない学校が増えて、問題になっています。私立の学園経営者にとっては、これは死活問題ですよね?
AKI 中には、閉鎖される学園も出てくるでしょうね。
哲雄 それを防ぐためには、受験で名を挙げるか、スポーツで名前を売るしかない。スポーツ有名校と呼ばれるような学校では、全国に名前を知られるような成果を挙げさせることが、学校生き残りのための至上命令ともなるわけです。そうなると、勢い、指導も厳しいものになる。指導者も、自分のクビがかかっているわけですからね。
AKI ブラック企業と同じことが、学校という教育の現場でも起こる、ということですか?
哲雄 ていうか、すでに一部では起こっています。そうはならないことを、私は願ってますけどね。
AKI エーと、ここまでは、日本の社会に残っている「前近代」的なものが、各種のハラスメントを生み出す原因になっている――という話をしてきたわけですが、これって、「家庭」の中にもあり、な話ですよね。
哲雄 ザッツ、ライト! 実はね、そこが肝心という話をしようと思ったんだ。次回からは、いよいよ本丸に突入しまっせ!
AKI オーケー、カモ~ン!
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