「神」を「発明」した、軍国日本と長州人

キング牧師の演説 若者たちへ。24の手紙    
「いま」を生きる若者たちへ、愛と連帯を込めて。

心ない政治家たちが参拝する度に、世界中から
批判の声が挙がる「靖国参拝」。実は、この神社には、
「慰霊」の機能はありません。「おまえたち、よくやった」と
武功を讃えるための施設だったのです。


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 前回は、「国家神道」というものがどういうふうにでっち上げられたか――という話をしました。 Letter-8『神を殺し、仏を殺した明治人』 参照
 その象徴的存在と言えるのが、「靖国神社」です。
 わが国の首相や閣僚が参拝するたびに、諸外国から批判の声が起こるのは、みなさん、ご承知のとおりですが、その都度、参拝した政治家たちはこう言って、「批判するほうがおかしい」と主張してきました。

一私人としての宗教的行為をとやかく言われる理由はない。わが国には信教の自由があるのだから。

先の大戦で亡くなられた尊い御霊を慰霊するために参拝し、二度と戦争の惨禍で人々が苦しむことがない時代をつくるとの誓いの決意をお伝えした。

 どちらも、真っ赤なウソです。
 戦前、「国家神道」を推進したわが国の指導者たちは、こう言って、学校教育の中に「国家神道」取り入れ、「教育勅語」を暗誦させました。

 「国家神道」は宗教に非ず。
 それを学校教育に取り入れたとしても、「宗教教育」には当たらない。


 「靖国神社」が代表する「国家神道」が、かつて彼らの先輩たちが主張したとおり、「宗教ではない」とするなら、そこへ参拝する行為も、「宗教的行為」ではない――ということになります。
 では、その行為が意味するところは、何か?
 「国家神道」という政治的イデオロギーを尊崇する行為、ということになります。

 もうひとつの大きなウソ、それは「慰霊のため」というウソです。
 実は、「靖国神社」という施設には、戦争の犠牲者を慰霊するという目的は、そもそもの最初から、設定されてはいないのです。

元々は、長州人による長州軍人のための施設だった

 「靖国神社」が創建されたのは、1879年(明治12年)のことです。実際は、「創建」ではなく、「改称」でした。
 「靖国神社」の前身は、「東京招魂社」という陸軍の施設です。戊辰戦争で亡くなった官軍側の兵士を祀るために、1869年に設立された施設でした。「官軍側の」ですから、官軍に殺された白虎隊や彰義隊などの幕府軍側の戦死者も、後の西南戦争での西郷軍側の戦死者も、祀られてはいません。
 ここがそもそも、日本の伝統的な神道の考え方とは相容れないところです。伝統的な神道の考え方では、むしろ、この世に恨みを残して死んだ人間や非業の死を遂げた人間の霊を鎮めることが、重視されてきました。しかし、「東京招魂社」の目的は、勝ち組である官軍の戦没者だけを祀る――です。
 この偏狭でおごり高ぶった精神は、もともと日本人のメンタリティにはなかったもの、と言っていいでしょう。その「おごり」をもたらしたのは、長州人の気質。そのルーツは、中国にあります。

 その当時の陸軍は、長州閥で占められていました。
 「東京招魂社」を起こした大村益次郎も長州藩士。日本陸軍の創始者とされる大村益次郎は、いまも「靖国神社」の参道中央にどでかい銅像が据えられ、この神社が陸軍の施設であり、元をたどれば長州人の施設である――ということを主張しています。
 そうなのです。「東京招魂社」は、実は、長州生まれなのです。
 いまも山口県に、「桜山招魂場」という宗教施設があります。この「桜山招魂場」というのは、1863年(文久3年)に、「奇兵隊」で知られる高杉晋作の発議で作られた施設です。あくまで中心は、奇兵隊。その奇兵隊の中核は、吉田松陰の「松下村塾」の塾生たちで占められていました。
 同招魂場の神霊碑中央を占めているのは、吉田松陰の碑。右に高杉晋作、左に久坂玄瑞。さながら「松下村塾」塾生の魂を祀る場所――という観を呈しています。
 「東京招魂社」は、この「桜山招魂場」をひな型に作られたのですが、それにしても、「招魂」とはいったい何なのでしょう?

 死者の魂に対する日本古来の神道の考え方は「鎮魂」です。「鎮魂」というのは、文字通り、「魂を鎮める」ことを言います。

 「招魂」は、この「鎮魂」とは相反する考え方です。

 衰弱した肉体から遊離してしまった魂を呼び戻す祭祀のことで、その由来は、中国の「陰陽道」だと言われています。病気で魂が抜け出しそうになった人がいると、屋根に上がって布を振ったりして、往きそうな魂に「行くなぁ~」と呼びかけるわけです。
 これを「招魂祭(しょうこんのまつり)」と言い、平安時代の中頃から、貴族社会を中心に広がったとされています。しかし、朝廷は、この祭祀を死者に対して行うことを禁止しました。「せっかく鎮めようとした魂を呼び戻すとは何事!」というわけです。
 少し話が逸れてしまいましたが、「靖国神社」の前身であった「招魂社」には、もともと「鎮魂」という考え方はなかった――ということを、まず、頭に入れておいていただきたいのです。

「靖国神社」には、実は、「慰霊」の「慰」の字もない

 1879年、「東京招魂社」を「靖国神社」と改称すると同時に、同社は「別格官幣社」の扱いとなり、その人事権は内務省が握り、管理は陸軍と海軍の共同管理ということになりましたが、運営の主導権は、陸軍が握っていました。「靖国神社」への改称と同時に、全国の「招魂場」も「護国神社」と改称されました。
 問題は、この神社がどういう性質を持った神社であったか――ということです。
 同社が「別格官幣社」となったときの「祭文」には、こう記されています。

「靖国神社」を「別格官幣社」とする際の祭文(抜粋)
明治元年と云ふ年より以降、内外の国の荒振る寇(あだ)等を刑罰め、服(まつろ)はぬ人を言知し給ふ時に、汝命等の赤き直き真心を以、家を忘れ身を擲て、名も死亡せにし其の大き高き勲功に依りてし、大皇国(おおすめらくに)をば知食す事ぞと思食すが故に、靖国神社と改め称へ、別格官弊社と定め奉りて、御幣帛(へいはく)奉り斎ひ奉らせ給ひ、今より後弥遠永に、怠る事無く祭給はむとす。

 何を言ってるかわからない――という方もいらっしゃろうかと思いますので、わかりやすく現代文に直すと、こういうことです。

「靖国神社」祭文(上)現代文訳
明治維新から今日まで、天皇が国の内外の暴虐な敵たちをとがめ懲らしめ、従わないものたちを服従させてきた際に、お前たちが私心のない忠誠心を持って、家を忘れ身を投げ捨てて、名誉の戦死を遂げた「大きく高い勲功」によってこそ、「大皇国」を統治することができるのだ、と思し召したがゆえに、「靖国神社」と改称し、「別格官幣社」と定めて、幣帛を奉りあがめ奉って、今後、お前たちを永遠に、怠る事なく祭祀することにしよう。

 「あれ?」と思った人も多いのではないでしょうか。ここには、「慰霊」の「慰」の字も出てきません。全然、お慰めなんかしてないし、鎮魂もしてないんですね。
 ただ、「おまえたち、よくやった。祀ってやるゾ」とホメているだけです。
 しかも、そのホメている内容は――と言うと、「よく敵をやっつけた」です。
 その「敵」というのは、「荒ぶる寇」つまり「乱暴な外敵」で、「服はぬ人」つまり「言うことを聞かない連中」――ということです。

 みなさん、あるいはご存じだろうと思いますが、「靖国神社」に祀られているのは、戦地で亡くなった軍人だけです。
 「戦死した勲功」を「よくやった」と顕彰(世間に知らしめて表彰すること)するための施設ですから、まず、軍人以外は対象外。たとえ軍人でも、病死した者は、その対象にはなりません。軍需工場で働いて過労死したとしても、顕彰の対象とはなりませんし、空襲で死亡しても、原爆で命を落としても、「靖国」に祀られることはありません。
 つまり、完全に「官尊民卑」。それも、「軍人」という「官」だけが、表彰されているわけです。
 ひとつだけ、例外があります。それはA級戦犯
 「戦死」してないにもかかわらず、戦後、極東裁判で処刑された戦争指導者たちが、なぜか堂々と、「靖国神社」に合祀されているのです。1978年にこの合祀が行われて以降、昭和天皇はこれに不快感を示し、以後、一度も靖国参拝を行っていません。

国家ぐるみの新興宗教=「靖国神社」

 われらが安倍総理は、この好戦的な神社に参拝して、「二度と戦争の惨禍で人々が苦しむことがない時代をつくるとの誓いの決意をお伝えした」とおっしゃるのです。
 どこが「不戦の誓い」じゃ――と、筆者は笑ってしまいました。
 仮に、こうしたことをまったくご存じなく、「御霊をお慰めするために」とおっしゃるのであれば、その宗教的無知は、大いに恥じるべきであります。
 筆者は、こう言っていいと思います。

 「靖国」は、わが国の伝統でも何でもない。
 明治になって、あわてて作られた国家ぐるみの「新興宗教」。
 この国に営々と受け継がれてきた死生観も、神々への崇敬の念も破壊して、
 ただ、軍上層部の都合のみによってデッチ上げられた宗教である!


 やがて、この「靖国神社」に「英霊」という言葉が使われるようになります。
 突然のように現れた「英霊」という言葉。これこそ、「国家神道」が国民に仕掛けた最強・最大のトラップでした。
 この話を始めると長くなってしまいますので、続きは、次回ということにしましょうか。


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