荒野のバラと谷間のユリ〈18〉 彼女の肌は白い磁器の輝き

バラの花束ボクが女について知っているより多くのことを
彼女は、男について知っているように見えた。


手繰り上げたセーターの下から現れたのは、
磁器のようにきめ細かく、白い、彼女の肌だった。
ボクが重なると、彼女は両手をボクの尻に回して、
ボクを自分の体の奥へ、奥へ…と招き寄せた。



 連載小説/荒野のバラと谷間のユリ ――― 第18章 
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この話は連載18回目です。最初から読みたい方は⇒こちらから、
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ここまでのあらすじ 大学を卒業して、できたばかりの出版社「済美社」に入社したボク(松原英雄)は、配属された女性雑誌『レディ友』の編集部で、同じく新卒の2人の女子編集部員、雨宮栞菜、戸村由美と出会う。感性の勝った栞菜と、理性の勝った由美は、何事につけ比較される2人だった。机を並べて仕事する由美は、気軽に昼メシを食べに行ける女だったが、栞菜は声をかけにくい相手だった。その栞菜を連れ回していたのは、年上のデスク・小野田宏だった。栞菜には、いつも行動を共にしている女がいた。右も左もわからずこの世界に飛びこんだ栞菜に、一から仕事を教え込んだ稲田敦子。そのふたりに、あるとき、「ヒマ?」と声をかけられた。ついていくと、そこは新宿の「鈴屋」。「これ、私たちから引っ越し祝い」と渡されたのは、黄色いホーローのケトルとマグカップだった。その黄色は、ボクの部屋に夢の形を作り出す。そんなある夜、小野田に飲みに誘われた栞菜が、「松原クンも行かない?」と声をかけてきた。元ヒッピーだと言うママが経営するスナックで、ボクは小野田が、かつては辺境を漂白するバガボンドだったことを知らされる。その帰り、バガボンド小野田は、「一杯飲ませろ」と、ボクの部屋にやって来た。小野田は、黄色いマグカップでバーボンを飲みながら、自分の過去を語った。漂流時代にアマゾンを探検中、後輩を水難事故で死なせてしまったというのだった。やがて、年末闘争の季節がやって来た。組合の委員長・小野田は、「スト」を主張。書記のボクと副委員長の相川は、それをセーブにかかった。しかし、会社の回答は、ボクたちの予想をはるかに下回った。その回答を拒否することが決まった翌日、栞菜は部長たちと夜の銀座へ出かけ、由美はボクを夜食に誘って、「ストはやらないんでしょ?」とささやいた。女たちは、ほんとは、「スト」なんか望んではいないのだ。そんな中で開かれた第二次団交は、何とか妥結にいたり、栞菜の発案で、彼女と由美、ボクと河合の若者4人組で、祝杯を挙げることになった。その夜、珍しく酔った栞菜の体がボクの肩の上に落ちた。飲み会がお開きになると、稲田敦子と栞菜がボクの部屋を「見たい」とやって来た。「眠くなった」と稲田が奥の部屋に消えたあと、「飼いネコになりなよ」と発したボクの言葉に、栞菜は頭をすりつけ、唇と唇が、磁石のように吸い寄せられた。その翌々週、ボクたちは忘年会シーズンに突入した。珍しく酔った由美を送っていくことになったボクに、由美は、「介抱してくれないの?」とからんできた。一瞬、心が揺らいだが、酔った由美を籠絡する気にはなれなかった。その翌日、編集部に顔を出すと、小野田がひとりで荷物をまとめていた。「もう、この会社は辞める」と言うのだった。「荷物運ぶの手伝ってくれ」と言われて、蘭子ママの店に寄ると、小野田が言い出した。「おまえ、何で由美をやっちまわなかった?」。ママによれば、小野田にもホレた女がいたらしい。しかし、小野田は「タイプじゃない」と言われてしまったと言う。その女とは、栞菜か? その小野田が消えた編集部で、栞菜がボクに声をかけてきた。「ワインとパンがあるの。ふたりでクリスマスしない?」。ボクは栞菜を部屋に誘った――




 まるで、舞台の緞帳が巻き上げられていくようだった。
 栞菜のモヘアのセーターは、ゆっくりとたぐり上げられて、彼女の磁器のような肌が露わになった。
 ウソだろう――と思った。
 それまで見たこともない、白くて、キメの細かい肌だった。
 細い腰から広い肩幅へ、レフランプのようなラインを描く白い肌。
 その中央に形よく盛り上がった搗き立てのモチのようなふくらみ。
 そのふくらみは、ミルキー・ピンクな半カップのブラの縁から、納まりきらない白い高まりをこぼれさせている。
 横目でその姿を見ながら、ボクは、上着を脱ぎ、シャツを脱ぎ、ズボンを脱いで、トランクス一枚になった。
 栞菜は、そんなボクをチラと見て、目の縁を輝かせた。
 「意外と筋肉質なのね」
 「そォ? もっとガリだと思った?」
 「ウウン。ガッチリしてるとは思ってたけど、けっこう、筋肉がついてる……」
 「筋肉は嫌い?」
 「脂肪よりは、好きよ」
 言いながら、ウエストに両手を当てた。モヘアのセーターの下に穿いていたブラウンともワイン色とも言えるベロアのパンツの留め具を外して、それをゆっくりウエストから下ろしていく。
 前屈みになってパンツを下ろす栞菜の胸元からは、2つの高まりが深い谷間をのぞかせていた。その高まりの一部が、あふれてこぼれ落ちそうになっている。
 豊かなヒップボーンの張りの下は、ブラとおそろいのミルキー・ピンクのショーツで覆われ、その生地を通して、薄っすらとヘアの形が浮かび上がって見える。
 露わになった下腹部も、その下で豊かに盛り上がった太ももも、ひざの下にかもしかのように伸びた下肢も、上半身と同じ、白くすべっとした肌で覆われていた。
 まるで、宝石のようだ――と、その姿に見とれていると、パンツを下ろし終えた栞菜と目が合った。
 「寒い……」
 そう言って、栞菜は自分の腕で両肩を抱き締め、体をブルッと震わせた。
 ボクは、その体を、そっと奥の3畳間に誘った。

        

 布団の上に横たえた栞菜の体は、そんな場所にあるはずのない精巧なガラス細工のように見えた。
 それとも、李朝の白磁の花瓶か……。
 乱暴に扱うと壊れてしまいそうに見える。
 ボクはそっと、手を彼女の肩の窪みに置いて、それを胸の高みへと這わせた。
 不思議な感触だった。
 栞菜の肌は、体の組織を守る皮膚として存在しているのではない――ように思えた。
 強くこすると傷ついてしまうのではないか……と思わせる、マシュマロのような肌。しかし、その危ういテクスチャーの奥からは、しっかりとした弾力が返ってくる。
 それまで触れたこともないような肌だった。
 未知の生物に触れるような気持ちで、ボクは慎重に胸の谷間に手を忍ばせた。ブラのカップの中へ手を侵入させると、栞菜は、「ハァ……」とかすかに息を吐いて、体をくねらせた。
 手のひらに身を硬くした彼女の果実が触れている。その果実を指でつまんで、グリグリと押し揉んでみる。
 「あっ……」
 栞菜は小さな声を挙げて、片脚を折り曲げ、その脚をボクの脚に巻きつけてきた。
 ボクの右手がブラのストラップにかかると、彼女は左肩をよじって、脱がせやすいように協力する動きを見せた。
 そうした動き方は、彼女が天性、身に着けたものかもしれない。
 しかし、もしかしたらそれは、それまでに交際した男性の影響を受けて、習い性となったのかもしれない。
 どちらにしても、栞菜は、男について何も知らないわけではない。
 たぶん、ボクが女について知っているよりも多くのことを、男について知っている。
 それを確信したのは、ボクが彼女のブラジャーを脱がせ、ショーツに手をかけたときだった。

        

 栞菜は腰を浮かせて、脱がせようとするボクの手の動きに協力した。
 それを足先から抜き取ると、今度は、彼女がボクのアンダーシャツに手をかけ、それをめくり上げて、頭から抜き取った。
 ボクが彼女の体に重なると、彼女は両手をボクの腰に回して、トランクスの縁に手をかけ、それをボクの尻の山から下ろした。
 もどかしい……。
 栞菜の動きは、そう言っているように見えた。
 いいのか……?
 ボクは、瞬きを見せている彼女の目に問いかけた。
 「来て……」
 彼女は、唇の動きだけでそう言ったように見えた。
 ボクの分身は、彼女のやわらかい唇を吸った瞬間からいきり立ち、すでに痛くなるほど、その状態を続けていた。その怒張を、開かれた栞菜の太ももと太ももの中央目がけて押し当てた。
 彼女はその硬直を手でつかんで、それを自分の体の、すでに蜜を溢れさせているスリットに導くと、クイ……と腰を持ち上げた。
 栞菜が示した入り口に向けて、ボクは、その頭をグイと押し込んだ。
 敏感な頭が彼女の窮屈な関門をくぐり抜けていく、確かな感触があった。
 彼女の肉の収縮が示す、しなやかな抵抗。
 その抵抗をジュルリ……と抜けると、ボクの分身は栞菜のやわらかい襞の中へもぐり込んでいった。
 「あ、ハッ……」
 初めて、彼女は口から声をもらした。
 ほとんど息だけの声だった。
 抑制した声を挙げながら、栞菜は両手をボクの尻に回して、それをグイと引き寄せた。
 彼女の手は、「もっと奥まで」「もっと強く」と求めているように見えた。
 腰を動かすと、栞菜は、激しく息をもらしながら、頭を右に振り、左に振り……した。
 ペニスを押し込むたびに、彼女は首を振りながら、その体が上へ、上へとずり上がっていく。ボクの尻をつかんだ手に力が加わっていく。
 3畳間の狭い寝室に敷いた布団の上で、彼女の体はズンズンずり上がって、やがて頭が部屋の壁に行き当たる。
 これ以上は進めないという壁にぶつかった彼女の頭は、それでも逃れる先を求めて、今度は、左へ、左へと回転を試みる。
 「あ、ダ、ダメ……。も、もう……」
 尻をつかんだ指先が、尻の肉に食い込みそうになっている。
 ボクは、彼女のヴァギナに送り込んだペニスを、激しく動かし、何かが尿道を駆け上がってくるのを感じる。
 「出ちゃう、出る!」
 それが迸る瞬間、彼女は、激しく首を振って、「イッ……」の声とともに体を震わせた。
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