そんなとき、そんな場所で会うはずのない人に…

小さな愛の「いい話」〈12〉
本日はクリスマス・イヴ。世界中の愛し合う人たちが、
その愛の本質について、深く思いを馳せる日です。
私にとって、この季節は、いつも何か、
奇跡のようなことが起こる季節でもあります。
みなさんのクリスマスにも素敵な奇跡が起こりますように
と願って、ちょっと素敵だった思い出を語ってみます――。
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12月というのは、私にとっては、実に不思議な季節です。
そんなとき、そんな場所で会うはずがない――という人に会ってしまう。
そういう奇跡が起こるシーズンなんですね、私にとってこの季節は。
ま、12月は、私の誕生月でもあるし、クリスマスシーズンでもあるし……ということも、多少は関係しているのかもしれません。
私は、何度か、そういう経験をしているのですが、それがすべて、12月のできごと。そして、「会うはずのない人」というのは、全員が、女性。しかも、過去、ちょっとワケありな関係にあったけれども、理由があって会わなくなってしまった――という女性たちでありました。
宝くじには当たったことがないくせに、こういう偶然には当たってしまう。
きっと、これは、だれかが会わせてくれているんだ――と、思いたくなってしまうではありませんか。
回転ドアを押し合ったそのひとは、かつての……
まずは、K・沙織さん。
20代後半、3年ほどおつき合いさせていただいた同業者でした。私は編集者、彼女はライターという関係。恋愛についてもとてもリベラルな考え方をする女性だったので、私もフランクにおつき合いをさせていただいていたのですが、残念ながら彼女には、同棲中のカレ氏がいて、それ以上の関係には進みませんでした。
そうこうするうちに、私は会社を辞めることになり、いったん、郷里の福岡へと帰ってしまったので、それっきり、彼女と会う機会はなくなってしまいました。
その後、私は、再び東京へ戻って自分の会社を設立し、忙しい日々を過ごすことになりました。そのまま10年、15年……と月日が経ち、かつての青年もややメタボな中年のオヤジとなったある日のことです。
仕事が一段落したので、当時つき合っていた彼女へのプレゼントでも買おうか――と、青山のベルコモンズへ出かけ、入り口の回転ドアを押そうとしたそのときです。中から外へ出ようと、回転ドアを逆に押す女性がいて、私とその女性は、内と外からドアを押し合う形になってしまいました。
「あ、失礼!」と、会釈を交し合った私は、相手の女性を見て、「あれ……?」と思いました。
相手の女性も、私の顔を不思議そうに見て、首を傾げています。
「も、もしかして……Kさん?」
「エッ! うそォ! な、ながずみさん?」
なんと、20年ぶりぐらいの偶然の再会でした。
「どうしてるの? まだ、独身……?」
「そうだよ。キミは?」
「籍は……入れちゃった」
「前のカレと?」
「ウン……」
話したことはそれくらいです。
「今度、食事でもしようか?」
「そうだね」
そう言って、その場は別れたのですが、その「今度、食事でも」が実現されることは、ついにありませんでした。
それでも、師走の風が吹きすさぶ中、この再会は、私の記憶に残る財産として、胸の中にしまわれています。
そんなとき、そんな場所で会うはずがない――という人に会ってしまう。
そういう奇跡が起こるシーズンなんですね、私にとってこの季節は。
ま、12月は、私の誕生月でもあるし、クリスマスシーズンでもあるし……ということも、多少は関係しているのかもしれません。
私は、何度か、そういう経験をしているのですが、それがすべて、12月のできごと。そして、「会うはずのない人」というのは、全員が、女性。しかも、過去、ちょっとワケありな関係にあったけれども、理由があって会わなくなってしまった――という女性たちでありました。
宝くじには当たったことがないくせに、こういう偶然には当たってしまう。
きっと、これは、だれかが会わせてくれているんだ――と、思いたくなってしまうではありませんか。

まずは、K・沙織さん。
20代後半、3年ほどおつき合いさせていただいた同業者でした。私は編集者、彼女はライターという関係。恋愛についてもとてもリベラルな考え方をする女性だったので、私もフランクにおつき合いをさせていただいていたのですが、残念ながら彼女には、同棲中のカレ氏がいて、それ以上の関係には進みませんでした。
そうこうするうちに、私は会社を辞めることになり、いったん、郷里の福岡へと帰ってしまったので、それっきり、彼女と会う機会はなくなってしまいました。
その後、私は、再び東京へ戻って自分の会社を設立し、忙しい日々を過ごすことになりました。そのまま10年、15年……と月日が経ち、かつての青年もややメタボな中年のオヤジとなったある日のことです。
仕事が一段落したので、当時つき合っていた彼女へのプレゼントでも買おうか――と、青山のベルコモンズへ出かけ、入り口の回転ドアを押そうとしたそのときです。中から外へ出ようと、回転ドアを逆に押す女性がいて、私とその女性は、内と外からドアを押し合う形になってしまいました。
「あ、失礼!」と、会釈を交し合った私は、相手の女性を見て、「あれ……?」と思いました。
相手の女性も、私の顔を不思議そうに見て、首を傾げています。
「も、もしかして……Kさん?」
「エッ! うそォ! な、ながずみさん?」
なんと、20年ぶりぐらいの偶然の再会でした。
「どうしてるの? まだ、独身……?」
「そうだよ。キミは?」
「籍は……入れちゃった」
「前のカレと?」
「ウン……」
話したことはそれくらいです。
「今度、食事でもしようか?」
「そうだね」
そう言って、その場は別れたのですが、その「今度、食事でも」が実現されることは、ついにありませんでした。
それでも、師走の風が吹きすさぶ中、この再会は、私の記憶に残る財産として、胸の中にしまわれています。

それから5年ほど経ったある日のことです。
経営していた会社が倒産し、一介のフリーのライター兼エディターとして、細々と仕事を再開していた私は、ある本を作るために、京王線の下高井戸に取材に出かけました。その取材を終えて、京王線の電車に乗り、「やれやれ疲れたわい」と目を閉じようとしたその瞬間でした。
突然、ひとりの見知らぬ(と見えました)婦人が、「ワァー!」などと雄叫びを挙げて、私の席の隣に座ってきたのです。
「雄叫び」というのは、適切ではありませんね。女性だから「嬌声」とでもすべきでしょうか? いずれにしても、「叫び声」に近い声です。
状況をご想像ください。
車内はガラガラでした。他にもいっぱい座る席はある。なのに、その女性は、何やらわめきながら、いきなり私の隣に腰を下してきたのです。
ふつう、脅えますよね、こういう状況では。脅えはしないまでも、「なんじゃ、こいつ!?」と身構えるだろうと思います。
私も、身構えました。
どこかの頭のおかしいおばさんが、因縁でもつけに来たのか、それとも新手の宗教の勧誘か――と思ったからです。
しかし、そのおばさんは、「おばさん」じゃありませんでした。
「どこへ行ってきたの?」
聞き覚えのある声でした。
「ン……?」と顔を上げて見ると、それは、S美でした。
S美というのは、私が30代後半から40代前半にかけて、8年間、交際していた元カノです。16歳年下だった彼女は、8年間の交際の後に、私よりはずっと若いカメラマンと恋に落ち、私の元を去っていったのですが、それからすでに10年の歳月が経っていました。
「クリスマスを一緒に過ごす人、できた?」
無邪気にお尋ねになるので、「そういうのは、もういいんだ」と、ちょっとムリして答えると、彼女、何を思ったか、手にしたトートバッグの中をまさぐり始めました。
「これ、よかったら……」
そう言って差し出したのは、深紅の包装紙でラッピングされた小さな包みでした。
「どうしたの、これ?」
「クリスマス・プレゼント!」
「エッ……?」
「あ、それ、いくつかあるの。うちのスタジオの助手にあげようと思って買ってきたんだけど、あなたにあげる。あの子たちにはいつでもあげられるけど、あなたに会うなんて、もうないかもしれないから……」
思いもかけないクリスマス・プレゼントでした。
助手クンにはわるいと思いましたが、ありがたくちょうだいしておくことにしました。彼女が言うとおり、もう二度と、そんな偶然にはお目にかからないだろうし、人の妻となった昔の女にこっそり会うなんて趣味はありませんでしたから。

電車と言えば、新幹線でも、思いもかけない再会劇がありました。
つい、8年ほど前のことです。あ、申し訳ない。この歳になると、「8年前」なんていうのは、「つい最近のこと」に思えてしまうのです。
私は、正倉院の取材があり、新幹線で京都まで行って、近鉄で奈良へ向かう移動中でありました。
その同じ車両の通路をツカツカと、連結部へ向けて歩いてくる女性がいました。
たぶん、洗面所へでも行くんだろう――。
そう思ってその女性の顔を見た瞬間、私は、「あっ……」と声を挙げてしまいました。
彼女も、「ウソッ」と両手を口に当てて驚いた表情を見せています。
その人は、まだ私の会社がなんとか持っていた時代の最後の社員だった女性でした。
F・麗子。そのときにはもう、30歳ぐらいにはなっていただろうと思います。
彼女は私の会社を辞めた後、某出版社に就職し、その仕事で出会った韓国人男性と結婚して、韓国に移住した――と聞いていました。
そんな時期に、日本の新幹線の中にいるはずがない人だったのです。
「どうしたの? まさか、別れてきちゃった――とかじゃないよね?」
心配そうに尋ねると、「違いますよォ」と大きな声で否定して言うのです。
「里帰りです。後で。カレも来るんですよ」
それを聞いて、私は、少し安心しました。
実は、私には、彼女に対して「申し訳ない」という気持ちが、ずっと胸の底に溜まっていたのです。
経営者である私の不甲斐なさゆえに、彼女に十分な活躍の場を与えてあげることができず、その可能性も伸ばしてあげることができなかった。もしかしたら、彼女が韓国に行く決意を固めてしまったのも、私が日本での彼女の仕事に夢や希望を見せてあげることができなかったからではないか……?
ずっとそんなことを思い続けていたので、彼女が幸せでいてくれることは、私にとって、ちょっとホッとできるニュースでもありました。
「見ます?」
「エッ、何?」
「これが、カレ。その右がカレのオッパ。そして真ん中が、スコッチテリアの……」
うれしそうにスマホの写真を見せてくれる彼女の姿は、それ自体が、ちょっとしたクリスマス・プレゼントでしたが、彼女はさらに、とっておきのプレゼントを見せてくれました。
「ホラ……」と言いながら、麗子は、自分の腹部をなでて見せました。
「いま、このおなかに赤ちゃんがいるんです」
いつの間にか、彼女は、私が手にできそうもない幸せを手に入れていたのでした。
そのニュースと彼女の幸せそうな笑顔は、私にとって、この上のないプレゼントでした。

というわけで、私にとって12月というシーズンは、奇跡に近い出会いのシーズンでもある――という話をご紹介しました。
みなさまにも、どうかそんな素敵なめぐり合いがありますように――と願いつつ、この曲をお届けしたいと思います。
おなじみの『ザ・クリスマス・ソング』ですが、なんと歌っているのは、大御所両巨頭、ナットキング・コールとフランク・シナトラ。ふたりがデュオしているという信じられない録音を見つけましたのでお届けします。
歌の文句ではありませんが、
何度も何度も、いろんな方法で語り古された言い方だけど、
メリー・クリスマス・トゥ・ユー!

です。
管理人の本、Kindle で販売を開始しました。現在、既刊2冊を販売中です!
Kidle専用端末の他、専用Viewerをダウンロード(無料)すれば、スマホでもPCでも、ご覧いただけます。

シリーズ「マリアたちへ」Vol.2
『「聖少女」六年二組の神隠し』
2015年12月リリース
作品のダウンロードは、左の写真をクリックするか、下記から。
「聖少女」六年二組の神隠し マリアたちへ

シリーズ「マリアたちへ」Vol.1
『チャボのラブレター』
2014年10月リリース
作品のダウンロードは、左の写真をクリックするか、下記から。
チャボのラブレター (マリアたちへ)
Kidle専用端末の他、専用Viewerをダウンロード(無料)すれば、スマホでもPCでも、ご覧いただけます。
『「聖少女」六年二組の神隠し』
2015年12月リリース

「聖少女」六年二組の神隠し マリアたちへ
『チャボのラブレター』
2014年10月リリース

チャボのラブレター (マリアたちへ)

管理人は、常に、フルマークがつくようにと、工夫して記事を作っています。
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