「神」を殺し、「仏」を殺した、明治の薩長人

キング牧師の演説 若者たちへ。24の手紙    
「いま」を生きる若者たちへ、愛と連帯を込めて。

「日本の伝統」を声高に主張する人たちがいます。
現自民党政権はもちろん、最近は、若い人たちにも。
しかし、彼らが主張する「伝統」は、明治になって作られた伝統。
そのために破壊された日本人古来の伝統は、どこへ……?


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 若い人たちの間で、最近、「日本の伝統」とか「和の伝統」という言葉が、よく使われます。
 民族の由来・由縁を知ろう、尊重しようという態度は、けっしてわるいことではない――と、筆者も思います。
 しかし、間違えてはいけません。
 だから、「世界から尊敬される道義国家の建設を」とか、だから、「靖国神社に参拝するのだ」などと言い出す人間がいるとしたら、そういう人たちは、伝統を尊敬しているのではなく、破壊しているのです。
 彼らが口にする「伝統」は、明治という時代を作った薩摩や長州の人間たちが、西欧のマネをしてでっち上げた「伝統」にすぎないからです。

  「明治」という時代に、日本本来の伝統は、どうやって破壊されたのか?

 私たちは、まず、そのことを知っておくべきだろう――と、私は思います。

八百万の神々の国=日本

 森総理は、日本を「神の国」と発言して物議を醸しましたが、おそらく、大部分の日本人は、ご存じないだろうと思います。
 その「神」を殺しまくったのは、明治の薩長政府であった――ということをです。

 元々、日本という国には、さまざまな神々が棲んでいました。
 山や海や川、そこに育つ樹木などという自然物を、「神」として崇める信仰=アニミズムもありました。
 村々では、それぞれの氏族の祖霊である「氏神」が祭られてその氏族を鎮守し、やがてはそれが統合された「産土神」が祭られるようになりました。
 もちろん、歴代の天皇を祭る神社もありましたが、「出雲大社」のように、その天皇一族に滅ぼされた豪族を祭る神社もあり、また、各地にある「天満宮」のように、政敵によって都から追われた人物を祭る神社もありました。
 いたるところにさまざまな「神」が棲む、「八百万の神々」の国。それが、壊される前の日本という国でした。
 そんな日本を明治の政府は、ぶっ壊していきました。
 ただひとつの神が支配する国へ――と、作り変えようとしたのです。
 「ただひとつの神」とは、「天皇」ということです。
 どうやって?

「神仏分離令」が目指した「仏殺し」

 維新政府がまず手をつけたのは、神を仏から分離することでした。いわゆる「神仏分離令」ですが、そんな名前の法令があるわけではなく、これは慶応4年(明治元年=1868年)に発令された「別当・社僧の復飾(還俗)令」を初めとする12の法令の総称です。
 「日本の伝統」と言うなら、神と仏を融合させ(神仏習合)、「本地垂迹説」という哲学を生み出し、「明神」「権現」「八幡大菩薩」などの混合アイテムを編み出した日本人の知恵こそ、「伝統」だと思うのですが、融合したままでは都合のわるい事情が、維新政府にはありました。
 薩長を中心にした維新政府が目指したのは、「祭政一致」を基本とし、「闘争的」な意識を植え付けられた国民によって支えられる、強い国家です。政治や人間同士の争いごとを「世俗の事」として相対化し、個人の魂を救うことに主眼を置く仏教は、邪魔な存在でした。
 といって滅ぼしてしまうわけにもいきません。そんなことをすれば、国民感情の反発を招くことは必至だったので、とりあえず、仏を神から切り離そうとしたわけです。
 当時の神社の多くは、「鎮守社」でした。「鎮守社」というのは、お寺を守るために設立された神社のこと。つまり、神に仏を守らせていたわけです。逆もありました。神社を守るために建立されたお寺は「神宮寺」と呼ばれていました。
 お寺の境内に神社があり、神社の境内にお寺がある――というのは、奈良・平安以降、ふつうに見られた光景で、それこそが日本の伝統的スタイルだったのですが、それを、新政府はぶっ壊しにかかったのです。
 まず、「鎮守社」であった神社から、仏教色を一掃しようとしたのですが、その動きは、民間に「廃仏毀釈」の運動を引き起こして、多くの寺院で、経巻が焼き払われたり、仏像が打ち壊されたりしました。
 「仏殺し」とも言われたこの動きを、政府は放置したままだったので、その運動は各地に広がっていきました。

殺された神々~「神社合祀令」の目指したもの

 仏教の次には、「神社」です。
 明治4年には、境内以外の寺院や神社の土地(境内を除く)を国家に収納させ、神職の世襲を禁止して、すべての神社は国家の宗祀であると宣言します。神社や寺院を監督下に置いていたのは、慶応4年(明治元年)に再興された「神祇省」でした。
 新政府の課題は、できたばかりの新しい国家について、国民を教化していくことでした。
 神祇省は、翌5年に教部省に改編され、政府は、神官・僧侶を教導職に任命して、宣教活動に当たらせます。何を宣教させたかと言うと、「天皇を戴いて朝廷の言いつけを守り、敬神愛国の精神を身に着けなさい」ということです。
 しかし、この神仏合同の布教活動は、僧侶からも神官からも反発を受けたため、明治8年には「合同布教」を廃止、同17年には、教導職そのものが廃止されて、以後、国民の教化は、学校教育の中に組み込まれていきます。

 もうひとつ、明治政府が手がけたのは、「神社の整理統合」でした。
 明治初年当時、全国の神社数は、「自然村」の数に見合った18万社ほどで、その数は、明治40年までには19万社を超えていました。
 当時の神社は、伊勢神宮を頂点とする少数の官幣社・国幣社を除くと、多くは、「自然村」をベースに、郷ごとに「氏神」を祭っている「郷社」「村社」などでした。
 「氏神」は、その地域の地縁社会を鎮守する神として、共同体の構成員によって祭祇されていました。たいてい、その神社を中心に「鎮守の森」が形成され、そうした森は、その郷村のランドマークになると同時に、その地域を構成する住民たちの精神的結合のシンボルとしても機能していました。
 しかし、明治政府は、この「自然村」を行政区分として整備した「行政村」に置き換える政策をとりました。「行政村」は「自然村」よりも大きな区分で、複数の村や町が統合されてひとつの行政区分となる場合もあります。
 それにともなって、明治政府は、神社も整理統合しようとしました。明治39年に発布された「神社合祀令」がそれ。神社は「一町一社にせよ」というわけです。
 これによって、以後14年ほどの間に、全国の神社数は11万社余に減ってしまいました。一気に7万社ほどの神社が消されてしまったわけです。
 「鎮守の森」が切り倒されて材木となり、ご神木とされた樹木も、社も、焼き払われたり……ということが、あちこちの神社で起こりました。
 ただ、数が減っただけではありません。神社の合祀を進めるにあたって、政府は、その祭神を「記紀神話の神々」にするように――という政策を進めます。
 「記紀神話の神々」とは、すなわち「歴代の天皇」ということです。
 こうして、全国の神社(教派神道を除く)は、国家管理のもと、天皇を祭る組織へと組み替えられていくのですが、これに異を唱えた人たちもいました。
 その代表が、南方熊楠でした。

「神社合祀」は「神狩り」。博学者・南方熊楠の主張

 南方熊楠というのは、粘菌を発見したことなどで知られる、稀代の博物学者です。
 南方は、こうした明治政府のやり方を「神狩り」として批判しました。
 特に、南方の居住地が、「神社合祀」がもっとも徹底的に行われた三重・和歌山県境であったこともあって、その訴えは強固で、不屈でした。一時は投獄もされながら、南方熊楠が訴え続けたのは、以下のようなことでした。

  神社は、長い間、その土地に住む人間の和合を促し、人情を養い、文化と自然を守ってきた。合祀によってその拠り所を奪うことは、人々から「愛郷」の精神を奪うことであり、「愛郷」の精神なくては、「愛国心」もまた、育たないであろう。

 南方の執拗な訴えによって、14年後、「神社合祀令」は廃止となるのですが、そのときにはすでに、7万社に及ぶ神社が姿を消し、鎮守の神々は殺されていたのでした。

 古くから、日本の家郷社会を支えてきた「氏神」たちを滅ぼしながら、明治政府が打ち立てようとしたものは、何だったのでしょう?
 それは、一神教的な天皇崇拝の社会だったのではないか――と、私は思います。
 「伝統」でも何でもない、西洋の真似事。「国家神道」が目指したのは、そんな「絶対価値」によって国を支配しようとする、「絶対主義体制」でした。
 その「国家神道」は、20世紀に入って、さらなる誤謬を重ねるのですが、それについては、次回、詳しくお話したいと思います。



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