第53夜☆父を殺し、母と結ばれたいという潜在的願望
第53夜
「愛とは何か?」をめぐって、管理人・哲雄がパートナー・AKIを相手に展開する、オヤジ・ギャグ風+ちょっぴりアカデミックおしゃべり。これから数回にわたって、エディプス・コンプレックスのお話をする予定です――。

老馬のケツに愛のひとムチ入れてくださりませ。

管理人は息を吹き返します。

よろしければ、こちらもポチリと。
哲雄 AKIクンって、ファザコンでしょ?
AKI ドッキ~ン!! ど、どうしてわかったの?
哲雄 そんなこと、私を見つめるキミの目を見ていれば、すぐわかります。
AKI 見つめてないし……。
哲雄 というのはジョーダン……というより、単なる願望で……じゃなかった、ただの可能性のひとつで……。
AKI 要するに、私が好きってこと?
哲雄 …………(ポッ

AKI かわいいわ、このおっさん。で、ほんとのところは?
哲雄 キミは唇に指でさわるクセがあるって言ったよね。それは、口唇期への固着があるからだと話したと思うけど。
AKI そんな話でした。
哲雄 フロイトは、性の意識が整う以前の制的欲望は、体のいろいろな快感部位に、ほとんど脈絡なく、バラバラに現れる、と言ってるんだけど、その最初の部位が口唇なんだよね。そりゃそうだ。乳児というのは、何はともあれ、母親の乳房から生命を維持するためのお乳を吸わないと、生きていけないわけだからね。
AKI 哺乳ビンってのもありますけど……。
哲雄 哺乳ビンのことまでは、さすがにDNAもご存じない。でね、フロイトは、乳児が母親の乳房を吸うのは、ただおなかがすいているから吸うだけではなくて、それが気持ちいいから吸うんだと言ったわけだ。この段階の乳児は、口や舌、唇などを使って何かをおしゃぶりすることによって、性的快感を得ているのだ――とね。たとえそれが、オモチャのおしゃぶりであろうとおかまいなし。空腹を満たすためだったら、オモチャじゃダメなわけでしょ?
AKI そりゃそうですよね。ということは、口で何かを吸ったりおしゃぶりしたりということが、気持ちいいんだよ――と、どこかに書き込まれてたってことになるの?
哲雄 フロイトの時代には、まだ発見されてないんだけど、たぶん、DNAにそういう書き込みがされてて、だから赤ちゃんは、何の疑いもなく母親の乳房にしがみつくんだと思う。
AKI そうすると、オッパイを吸うという行動は、生まれて最初に経験するエッチな行動ってことになるわけですね?
哲雄 フロイトは、これこそ、あらゆる性的欲望の原型だと言ってるね。そうなると、そんな欲望を満たしてくれる母親の乳房は、この世に生を受けて最初に発見する性愛の対象ってことになるわけだよね。で、この感情の対象は、乳房そのものから、その乳房を自分に与えてくれる母親へと変わっていく。
AKI もしかして、マザコンの誕生……?
哲雄 大当たりィ~! ところが、この性愛には、大きな敵が存在する。夜になると、その乳房を自分から奪っていって、ときにはもみしだいたり、パイずりまでさせたりする「父親」という存在だ。
AKI ピッ、ピー! 話が下品になってますけど……。
哲雄 できれば、この邪魔者を取り除きたい、取り除いて、自分が母親を独占したい――と思うようになる。これが、エディプス・コンプレックス。
AKI エディプス……?
哲雄 さっき、キミが言ったマザコンも、このエディプス・コンプレックスの一種なんだよね。「エディプス」というのは、ギリシャ悲劇に出てくるオイディプス王からきてるんだけど、知らないかな、この話?
AKI オイスターとかオイル・サーディンなら知ってるけど……。
哲雄 全部、食い物やん。よろしい、ちょっと回り道して話すと、むかしむかし、ギリシャのテーバイという国に、ライオスという国王がいました。ところが、ライオス王は、あるとき、デルフォイのアポロン神から恐ろしい神託を受けるのです。
AKI なんと?
哲雄 やがて生まれてくるおまえの子どもは、おまえを殺すことになるだろう。
AKI まぁ~、なんて恐ろしい……。
哲雄 キミの反応のほうが恐ろしい。やがて、妃イオカステが男の子を産むと、神託を恐れたライオスは、その子の足をピンで刺して、山に捨てさせてしまうんだ。しかし、その子は、幸運にも牧人に拾われて、コリントの宮殿で国王の子として育てられることになり、オイディプスと名づけられる。ところが、成人となったオイディプスは、自分の生い立ちに疑問を感じるようになり、あるとき、デルフォイの神殿で神託を請うんだね。
AKI またも、デルフォイ。今度は何と?
哲雄 おまえは父を殺して、自分の母を妻とすることになるであろう。
AKI ええ加減な神さんやなぁ……。
哲雄 オイディプスは、二度とコリントに戻らない決意を固めて旅に出て、その途中、狭い道でバッタリ、テーバイ王・ライオスと遭遇するんだなぁ。「道をよけろ」と要求するライオスと争ったオイディプスは、実父とも知らずに、そのライオスを殺してしまう。
AKI あらら、神託の通りになっちまったわけですね。
哲雄 半分はね。で、そのオイディプスがテーバイの近くまでやって来ると、そこにスフィンクスという怪物が待ち構えていたんだね。この怪物は、旅人に謎をかけては、その謎が解けない旅人を断崖から蹴落として殺してた。もちろん、オイディプスにも謎をかけるんだけど……。
AKI それ、知りた~い。どんな謎?
哲雄 朝は4足で歩き、昼は2本足で歩き、夕方には3本足になる生きものは何か?
AKI 人間でしょ?
哲雄 アレ? アレェ…? なんでわかっちゃった?
AKI だって、朝は両手をついて起き上がるから4本でしょ。昼は2本だけど、夜になると、ホラ……やだぁ……。
哲雄 な、なに? どうした?
AKI 真ん中の足、立てるから、3本になるじゃないですかぁ……。
哲雄 まぐれとは恐ろしいもの。その答え、スフィンクスに聞かせてやりたかったわ。ほんとは、赤ちゃんのときは4本でハイハイし、おとなになると2本足で歩くけど、老人になると杖をつくから3本――っていうのが答えなんだけど、当たっちゃったよ、まぐれで。
AKI 私の叡智も捨てたもんじゃないわね。
哲雄 それ、叡智じゃなくて、頓知。でさ、テーバイでは、このスフィンクスを倒した者には、テーバイの王位と妃イオカステを与える、という布告が出されてたんだよね。するとどうなる?
AKI オイちゃんは、実の母と結婚してテーバイの王様になりました。めでたし、めでたし。
哲雄 オ、オイちゃん? しかも、めでたし……じゃないし。
AKI めでたくないの?
哲雄 あたりまえでしょ。知らぬこととはいえ、実の父を殺して、実の母と結ばれちゃったんだよ。途中はすっ飛ばすけど、のちにオイディプスとイオカステはその事実を知ることになって、イオカステは自殺。オイディプスは自ら目をくり抜いて町を追われ、国々を彷徨う人生を送ることになるんだ。
AKI エディプス・コンプレックスの元ネタは、そんな悲しい話だったんですかぁ。
哲雄 元ネタねぇ。ま、こんなふうにさ、ギリシャ悲劇には、人間の奥底にひそむ悲しくも恐ろしい本質を抉り出すような話が多いんだけど、これは、その代表作と言えるね。そして、このオイディプスが図らずも犯してしまった罪は、どんな人間の心の中にもひそんでいると言える。
AKI 父親殺しと母親との情交が……?
哲雄 かくいう私だって……。
AKI エッ、エッ!? いま、何かおっしゃいました?
哲雄 次回は、私の重大な告白をお聞かせすることにしましょう。
AKI ワァ~イ。
哲雄 いいねェ、キミはノーテンキで。
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AKI そんな話でした。
哲雄 フロイトは、性の意識が整う以前の制的欲望は、体のいろいろな快感部位に、ほとんど脈絡なく、バラバラに現れる、と言ってるんだけど、その最初の部位が口唇なんだよね。そりゃそうだ。乳児というのは、何はともあれ、母親の乳房から生命を維持するためのお乳を吸わないと、生きていけないわけだからね。
AKI 哺乳ビンってのもありますけど……。
哲雄 哺乳ビンのことまでは、さすがにDNAもご存じない。でね、フロイトは、乳児が母親の乳房を吸うのは、ただおなかがすいているから吸うだけではなくて、それが気持ちいいから吸うんだと言ったわけだ。この段階の乳児は、口や舌、唇などを使って何かをおしゃぶりすることによって、性的快感を得ているのだ――とね。たとえそれが、オモチャのおしゃぶりであろうとおかまいなし。空腹を満たすためだったら、オモチャじゃダメなわけでしょ?
AKI そりゃそうですよね。ということは、口で何かを吸ったりおしゃぶりしたりということが、気持ちいいんだよ――と、どこかに書き込まれてたってことになるの?
哲雄 フロイトの時代には、まだ発見されてないんだけど、たぶん、DNAにそういう書き込みがされてて、だから赤ちゃんは、何の疑いもなく母親の乳房にしがみつくんだと思う。
AKI そうすると、オッパイを吸うという行動は、生まれて最初に経験するエッチな行動ってことになるわけですね?
哲雄 フロイトは、これこそ、あらゆる性的欲望の原型だと言ってるね。そうなると、そんな欲望を満たしてくれる母親の乳房は、この世に生を受けて最初に発見する性愛の対象ってことになるわけだよね。で、この感情の対象は、乳房そのものから、その乳房を自分に与えてくれる母親へと変わっていく。
AKI もしかして、マザコンの誕生……?
哲雄 大当たりィ~! ところが、この性愛には、大きな敵が存在する。夜になると、その乳房を自分から奪っていって、ときにはもみしだいたり、パイずりまでさせたりする「父親」という存在だ。
AKI ピッ、ピー! 話が下品になってますけど……。
哲雄 できれば、この邪魔者を取り除きたい、取り除いて、自分が母親を独占したい――と思うようになる。これが、エディプス・コンプレックス。
AKI エディプス……?
哲雄 さっき、キミが言ったマザコンも、このエディプス・コンプレックスの一種なんだよね。「エディプス」というのは、ギリシャ悲劇に出てくるオイディプス王からきてるんだけど、知らないかな、この話?
AKI オイスターとかオイル・サーディンなら知ってるけど……。
哲雄 全部、食い物やん。よろしい、ちょっと回り道して話すと、むかしむかし、ギリシャのテーバイという国に、ライオスという国王がいました。ところが、ライオス王は、あるとき、デルフォイのアポロン神から恐ろしい神託を受けるのです。
AKI なんと?
哲雄 やがて生まれてくるおまえの子どもは、おまえを殺すことになるだろう。
AKI まぁ~、なんて恐ろしい……。
哲雄 キミの反応のほうが恐ろしい。やがて、妃イオカステが男の子を産むと、神託を恐れたライオスは、その子の足をピンで刺して、山に捨てさせてしまうんだ。しかし、その子は、幸運にも牧人に拾われて、コリントの宮殿で国王の子として育てられることになり、オイディプスと名づけられる。ところが、成人となったオイディプスは、自分の生い立ちに疑問を感じるようになり、あるとき、デルフォイの神殿で神託を請うんだね。
AKI またも、デルフォイ。今度は何と?
哲雄 おまえは父を殺して、自分の母を妻とすることになるであろう。
AKI ええ加減な神さんやなぁ……。
哲雄 オイディプスは、二度とコリントに戻らない決意を固めて旅に出て、その途中、狭い道でバッタリ、テーバイ王・ライオスと遭遇するんだなぁ。「道をよけろ」と要求するライオスと争ったオイディプスは、実父とも知らずに、そのライオスを殺してしまう。
AKI あらら、神託の通りになっちまったわけですね。
哲雄 半分はね。で、そのオイディプスがテーバイの近くまでやって来ると、そこにスフィンクスという怪物が待ち構えていたんだね。この怪物は、旅人に謎をかけては、その謎が解けない旅人を断崖から蹴落として殺してた。もちろん、オイディプスにも謎をかけるんだけど……。
AKI それ、知りた~い。どんな謎?
哲雄 朝は4足で歩き、昼は2本足で歩き、夕方には3本足になる生きものは何か?
AKI 人間でしょ?
哲雄 アレ? アレェ…? なんでわかっちゃった?
AKI だって、朝は両手をついて起き上がるから4本でしょ。昼は2本だけど、夜になると、ホラ……やだぁ……。
哲雄 な、なに? どうした?
AKI 真ん中の足、立てるから、3本になるじゃないですかぁ……。
哲雄 まぐれとは恐ろしいもの。その答え、スフィンクスに聞かせてやりたかったわ。ほんとは、赤ちゃんのときは4本でハイハイし、おとなになると2本足で歩くけど、老人になると杖をつくから3本――っていうのが答えなんだけど、当たっちゃったよ、まぐれで。
AKI 私の叡智も捨てたもんじゃないわね。
哲雄 それ、叡智じゃなくて、頓知。でさ、テーバイでは、このスフィンクスを倒した者には、テーバイの王位と妃イオカステを与える、という布告が出されてたんだよね。するとどうなる?
AKI オイちゃんは、実の母と結婚してテーバイの王様になりました。めでたし、めでたし。
哲雄 オ、オイちゃん? しかも、めでたし……じゃないし。
AKI めでたくないの?
哲雄 あたりまえでしょ。知らぬこととはいえ、実の父を殺して、実の母と結ばれちゃったんだよ。途中はすっ飛ばすけど、のちにオイディプスとイオカステはその事実を知ることになって、イオカステは自殺。オイディプスは自ら目をくり抜いて町を追われ、国々を彷徨う人生を送ることになるんだ。
AKI エディプス・コンプレックスの元ネタは、そんな悲しい話だったんですかぁ。
哲雄 元ネタねぇ。ま、こんなふうにさ、ギリシャ悲劇には、人間の奥底にひそむ悲しくも恐ろしい本質を抉り出すような話が多いんだけど、これは、その代表作と言えるね。そして、このオイディプスが図らずも犯してしまった罪は、どんな人間の心の中にもひそんでいると言える。
AKI 父親殺しと母親との情交が……?
哲雄 かくいう私だって……。
AKI エッ、エッ!? いま、何かおっしゃいました?
哲雄 次回は、私の重大な告白をお聞かせすることにしましょう。
AKI ワァ~イ。
哲雄 いいねェ、キミはノーテンキで。
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