チュンリーの恋〈15〉 乳房こぼれて…

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カメラマン荒川の撮影はエスカレートしていった。ブラウスは、
そのうち水着になり、水着はやがて下着になり、そして、
下着は半分脱がされて、乳房がポロリとこぼれた――


 マリアたちへ   第19話 
チュンリーの恋〈15〉

 前回までのあらすじ  粟野隆一のオフィス開設祝いに出席した末吉彰男は、粟野から「末吉さんの後輩ですよ」と、ひとりの女性を紹介された。名前を劉春麗。彰男の母校・Y大を留学生として卒業し、いまは、マスコミで仕事する機会を探しているという。「いろいろ教えてやってください」と粟野に頼まれて、「私でよければ」と名刺を渡すと、すぐに電話がかかってきた。春麗は、日本の雑誌や新聞で、日中の架け橋になるような仕事がしたいと言う。そのためには、完全な日本語表記能力が求められる。その話をすると、「ラブレターでも書いてみましょうか?」と春麗は言った。そのラブレターは、すぐ届いた、完璧な日本語で。これならいける。彰男は春麗を、月刊経済誌の編集をしている原田に紹介することにした。原田は、春麗の顔を見ると、「恋人はいるんですか?」と、いきなりセクハラな質問を浴びせた。「日本では、仕事をするのに、ああいうことを訊くんですか?」と、怒っている様子の春麗だったが、「験しに記事を一本、書いてみて」という原田の要求に、応えるつもりらしかった。その原稿の出来栄えに、原田は「いいね、彼女」と相好を崩した。その「いいね」には、別の「いいね」も含まれていた。「彼女、男をそそるんだよね」と言うのだ。その夜、春麗に電話をかけた彰男は、春麗の様子がおかしいことに気づいた。彼女のそばには、男がいる。彰男は確信したが、その男がどんな男なのか、想像がつかない。翌日、春麗から電話が入った。「きのうはごめんなさい。きょうは私にごちそうさせてほしい」と言うのだった。春麗が案内したのは、遠い親類がやっているという北京ダックの店だった。春麗の遠縁にあたるという店のオーナー・劉学慶に、「チュンリーをよろしく」と頭を下げられて店を出た彰男に、春麗は腕を絡めてきた。その腕を引っ張って、通りを右へ左へと急ぐ春麗。その口から意外な言葉が飛び出した。「私、見張られている」。翌週、粟野がひとりの男を連れて編集部に売り込みに来た。カメラマンの荒川タケル。初めて春麗をモデルとしてデビューさせた男だと言う。その写真は、男性誌のグラビア用の水着写真だった。数日後、春麗の初記事が『東亜タイムス』に掲載された。原田と彰男は春麗を誘って祝宴を挙げた。その席で、ふたりに料理を取り分けてくれる春麗の姿が、彰男と原田には新鮮に感じられた。「とても、あんな水着写真を撮らせていた女の子には見えない」。原田のひと言に、春麗の顔が固まった。その水着写真をどこで見た? 彰男が詰め寄ると、原田は「何だ、知らなかったの?」という顔でノートPCを立ち上げた。開いたのは、カメラマン・荒川の個人サイト。その作品集の中に、スケスケの水着を着た春麗の写真があった。あわててPCのフタを閉じる春麗。「もし無断で載せてるのなら、削除を要求できるよ」と言う原田に、春麗は力なく首を振った。2週間後、突然、春麗から「時間ありますか?」と電話が入った。待ち合わせに指定してきた場所は、日暮里のスカイライナーの改札。まさか…と顔を曇らせる彰男に、春麗は「最後の晩餐でも」と言う。「あそこにしませんか?」と指差したのはホテルだった。春麗の希望で、晩餐はルームサービスになった。片手で食事しながら、もう一方の手でおたがいを求め合うふたり。その春麗の体に、彰男は幾筋も残る赤い内出血の跡を見つけた。それは、だれかに鞭打たれた跡のように見えた。「忘れさせて」と言う春麗の体をベッドに寝かせ、手をその下半身に伸ばすと、彼女の体はウサギのように震え出し、彰男のペニスを迎え入れると、今度は、ネコのようにツメを立て、体をしならせた。「自由になりたい」――歓喜に体を震わせた春麗が言う。その春麗が告白した。「部屋の鍵を持っている男がいる」と。その男は、まだ学生だった春麗に「モデルになってくれないか」と近づいてきたカメラマン・荒川だった。男性誌のグラビアで「キャンパスの美女」を紹介する写真を撮っていた荒川は、言葉巧みに春麗を誘い、無料で住んでいいからと部屋を与え、モデルの世界に誘い込んだ。それがワナとも知らず、春麗はその誘いに乗った――

【リンク・キーワード】 エッチ 官能小説 純愛 エロ
このシリーズは、筆者がこれまでに出会ってきた思い出の女性たちに捧げる「ありがとう」の短編集です。いま思えば、それぞれにマリアであった彼女たちに、心からの感謝を込めて――。



この話は、連載15回目です。この小説を最初から読みたい方は、こちらから、
   前回分から読みたい方は、こちらからどうぞ。


 荒川が持ってくるモデルの話は、ほとんどが、男性雑誌のグラビアの話だった。
 ブラウスのボタンを1つ、2つ……と開けさせたり、襟ぐりの大きなTシャツを着せて前屈みの姿勢を取らせたりして、胸の谷間をのぞかせる。
 それがエスカレートしていった。
 「キャンパス美女、ズブ濡れショット!」という企画では、春麗にホースでシャワーを浴びせ、濡れて肌に張り付いた白いブラウスの上から下着を、その下着の下にある乳首の黒い影を浮き上がらせて見せた。
 「現役女子大生。狙われたパンチラ」では、ミニスカートを穿かせて送風機を回したり、ベンチで脚を組ませてのけぞらせたりさせて、パンツを見せた。
 やがて、それが水着になった。
 最初はハイレグカットの水着を着せてポーズを取らせるだけだったが、そのうち、水着はシースルーにエスカレートし、そして、Tバックになった。
 水着が下着になるのに、そんなに時間はかからなかった。
 ただ、下着になると、撮影の場所が変わった。屋外の撮影はなくなり、スタジオを使うようになった。最初は、ホリゾント(白塗り)のスタジオを使っていたが、そのうち、シチュエーションが欲しいから――という理由で、家具付きの春麗の部屋を使うようになった。
 元々、春麗の部屋は、ハウス・スタジオとして使うという目的で、荒川が借りていた部屋だった。春麗ひとりで使うのには立派すぎるセミダブルのベッドも、ソファも、少し大きすぎると感じるキャビネットも、すべての調度は、撮影用の小道具として揃えられたものだった。
 そういう調度や部屋そのものを自由に使っていい、家賃は要らない。その代わり、ときどき撮影に使わせてもらう。
 その条件を受け入れて住んでいる春麗には、荒川の「部屋で撮影したい」を拒む理由はなかった。
 下着での撮影。それも、男性誌向け――となると、当然、「売り」は「色気」ということになる。その「色気」を演出するために、ベッドやソファといった道具立ては欠かせない、というのが、カメラマン・荒川の主張だった。
 そして、それは起こった。

       

 「きょうは、これで撮ってみようか?」
 荒川が広げて見せたのは、キャミソールだった。
 白、ワインレッド、ベージュの三色が用意されていて、どれも、肌が透けて見えるような薄い素材。それを、ブラやショーツは着けずに着てみよう――と、荒川は言うのだ。
 着てみると、乳首は透けて見え、下腹のヘアも薄っすらと透けて見える。
 これじゃ、まるでヌードじゃないか……。
 抵抗はあったが、その写真は、一般売りの男性誌のグラビアではなく、袋とじのグラビア雑誌に掲載され、モデル名も「リーチュン」というカナ表記の仮名にすると言う。
 「ダイジョーブ。キミのキャンパスの学生たちには気づかれないと思うよ。少し、髪形とかもアレンジするし……」
 すでに春麗は大学4年生になっていた。規定の単位はほとんど取り終えて、残すは卒論だけ――という状態になっていたから、学友たちと顔を合わせる機会もあまりない。バレて、学校で騒がれるという心配は、なさそうに思えた。
 キャミソール姿の春麗を、荒川は「いいね」とホメた。
 「男だったら夢中になっちゃうね。色っぽいよ」
 機関銃のようにホメ言葉を浴びせながら、シャッターを切っていく荒川。「いいね」でカシャッ。「色っぽいよォ」でカシャッ。「ああ、もうホレちゃう」でカシャッ。
 通常、モデルがそうなっていくように、そのホメ言葉とシャッター音の連射を浴び続けるうちに、春麗も、一種のモデル・ハイの状態になっていった。酔ったように荒川の言葉に乗せられていく春麗を、荒川カメラマンはベッドの上に寝かせて撮り、次には、体を起こさせた。
 「いいね、チュンリー。なんだか、いま、情事を終えたばかり……って感じ、出てるよ。ウン、ちょっと、髪も寝乱れた――という感じにしたほうがいいかな」
 言うなり手を伸ばしてきて、春麗の髪をクシャクシャと掻き乱す。
 あっ――と、春麗は思ったと言う。それまで、そんなふうに自分を扱った男はいなかった。まるで、小さな子どもを扱うように髪をグシャグシャにされて、全身を電気のような衝撃が駆け抜けた。

       

 「なんだ、チュンリー、いままで髪をグシャグシャにされたこともないの?」
 春麗が見せた反応を見て、荒川はほくそ笑んだ。
 「しょうがないなぁ。こうされると、気持ちいいんだってよ」
 言いながら、なおも髪をクシャクシャと撫で、それから荒川は、キャミソールの肩ヒモを左肩から外した。
 肩から落ちた肩ヒモは、春麗の上腕に途中で止まって、左乳が半分、はだけかかっている。
 「いいねェ。その退廃的な感じ。いま、カレに愛されたばかり。そんな感じ、出てるよ。もうちょっと下げようか」
 荒川の手がスッと伸ばされて、左腕の途中で止まっていた肩ヒモに触れると、ヒモはスルリ……と、ひじまで滑り落ちた。
 その瞬間、春麗の左胸は、乳首まで露わになった。
 「あ……それは……」
 あわてて肩ヒモを戻そうとする春麗の手を、荒川は遮った。
 「そのまま、そのまま。きれいだよ、チュンリー」
 その言葉に、春麗は抗えなかった。
 片乳をむき出しにされたままのあられもない姿に、「いいね」「いいね」と声をかけながら、横から、正面から、上から、下から……とシャッターを切り続けるカメラマン・荒川は、「ちょっといい?」と断って、手を春麗の胸に伸ばしてきた。
 「少~し、乳首を立たせてみようか」
 あっ……と思ったときには、春麗のアーモンド色の突起は、荒川の人差し指と親指でつままれていた。
 つまんだ乳首を荒川の指がグリグリ……と揉みしだく。その瞬間、鋭い感覚が春麗の脳天へと突き抜けていった。
 「いい表情になってるよ。いいよ、いいよ」
 言いながら、ひとしきりシャッターを切っては、再び乳首に手を伸ばしてくる。
 「ウン、色っぽいよ、チュンリー。仕事でなかったら、キミを押し倒してアレをブチ込んでるところだよ。ああ、チュンリーが欲しい。たまんない……」
 そんなことを口走りながら、シャッターをカシャカシャと切り、また乳首をもむ。
 そういうことを何回か繰り返した後で、カメラマン・荒川は、カメラを放棄した。空いた両手で春麗の肩をつかみ、その体をベッドの上に押し倒した。
 「あっ……ダ……」
 必死にその体を押し返そうとしたが、春麗の手からは、力が失われていった。
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