シランケンの不純愛講座

イッたのに「射精」しない――というチン現象…？

　あれ……!?
　その異常に気づいたのは、昨年のことでした。
　「射精」できなくなったのです。
　神経的にも、筋肉的にも、いつ「ドピューッ！」となってもおかしくない状態なんですよ。実際、快感は頂点に達し、背中を電気が走るような、あのオーガズム特有のピクピク感もある。
　なのに……出ないんです。

　放水、よ～し！

　脳は、すでに命令を発している。
　なのに、ノズル（尿道口です！）からは、雀の涙ほどの一滴さえも出やしない。
　どういう気分かと言うと、「気持ちがわる～い！」です。
　たとえて言うと、便意はあるし、直腸のそこまでリッパなウンチが来ている感じなのに、便が出てこない――という感じ……？
　ま、ちょっと違うような気もするけど、そんな感じです。
　ほどなく、原因がわかりました。

原因は、「前立腺肥大」のクスリでした！

　実は、その３カ月ほど前、私は排尿に異常を感じて、泌尿器科の門を叩いていました。
　夜間、やたら尿意を感じて、何度かトイレに立つ。そのうち、尿が出にくいと感じるようになり、それでも、「たまたま体調がわるいんだろう」と放っておいたら、今度は、ポタポタ……と、締りのわるい蛇口から水がもれる程度しか出なくなってしまいました。
　「ヤバッ！」
　泌尿器科の診断は、「前立腺肥大」でした。
　60代に入ると、４人に１人が悩まされるという定番の病気。
　ま、しょうがない。「歳をとったもんだ」と諦めるしかない――と、医師に処方された「ユリーフ」というクスリを飲み続けることにしました。
　そのクスリが効いたのか、「排尿困難」の症状は、治まりました。
　しかし、このクスリには、実は、副作用があったんですねェ。
　それが、前述の「射精できない」でした。
　医学的には、「逆行性射精」と言うんだそうです。
　本来なら尿道に放出され、ペニスの先端から飛び出すべき精液が、膀胱のほうに逆流してしまう現象です。
　どうしてそんなことになるのか――と言うと、これがまた、生命の神秘というか、驚きの事実なんですね。

精液が「逆走」する「逆行性射精」という現象

　膀胱の出口（尿道側から見れば、入り口）には、「内尿道口」と呼ぶ、バルブのような装置がついています。射精のときには、せっかくの精液が膀胱内に逆流しないように、この「内尿道口」がふさがれるしくみになっているんですね。
　ヘェ、そうなんだ。よくできてるなぁ――と、筆者などは感心してしまうのですが、実は、この「内尿道口」、さまざまな原因で、開きっぱなしになってしまうらしいのです。
　糖尿病、脊椎の損傷、前立腺手術の影響など、その原因はいろいろ。そのひとつに、先に上げた前立腺の治療薬「ユリーフ」の副作用というのもあります。
　もともと、このクスリは、前立腺の緊張を緩めて、尿が出やすくなるようにするためのクスリなのですが、前立腺の緊張を緩めるということは、「内尿道口」の緊張も緩めてしまうわけですね。
　すると、どうなるか……？
　バルブが緩んでしまっていますから、射精はしても、精液は尿道に向かわず、膀胱内へと逆流してしまう――というわけです。

　そんな副作用があるのなら、最初に説明しろよ！

　　「とうとうダメになったか」と、黄昏ちまったじゃないか！――と、長住は少し、怒ってます。

「達成感」の得られないＳＥＸ

　誤解のないように申し上げておきますが、「射精できない」は、「ＥＤ（勃起不全）」ではありません。
　アレはちゃんとカチンカチンになりますから、ＳＥＸそのものはできるのですが、射精できないので、彼女を妊娠させることができなくなるんですね。
　いまさら、子どもを作ろうなんて気はありませんから、それはそれでかまわないんですけどね、私としては。
　というか、不埒な筆者・長住は、「避妊具使わなくてすむから、いいや」なんて思ったりもしています。
　しかし、みなさん、「射精」を伴わないＳＥＸてのは、やはり、どこか味気ないものです。尿道を精液が駆け抜けるあの感覚がないと、「達成感」が得られないんですね。
　「達成感」がないＳＥＸというのは、私の感覚で言うと、「終わりなきゲーム」。あるいは、「着地」できない「跳躍」みたいなものです。「終わった」という感覚がないから、「やった」という気もしないわけです。
　「射精」とは何か――と問われたら、やはり、尿道口をくすぐるあの感覚。「逆行」ではダメなんですね。

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シリーズ「マリアたちへ」Vol.1
『チャボのラブレター』
2014年10月リリース
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チャボのラブレター (マリアたちへ)

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