クリトリス迫害史〈2〉 精神病扱いされた「娘たちの性欲」

手と手 

欧米でも、20世紀初めまで、クリトリス切除
盛んに行われました。その理由は――?


 性とエッチの《雑学》file.146   R15 
このシリーズは真面目に「性」を取り上げるシリーズです。15歳未満の方はご退出ください。

【今回のキーワード】 クリトリス切除 不感症  345
【リンク・キーワード】 エロ エッチ 官能小説 オーガズム 不倫




 前回は、アフリカでの「性器切除」や「陰部封鎖」の話をしました。
 それは、女性に余計な性欲を感じなくさせるための風習であると同時に、婚礼で新郎のペニスで突き破られるまでの間、「処女」を守らせるための風習でもありました。
 そういう話を聞くと、私たちはすぐ、「なんて、残酷なことを」と眉を曇らせます。もちろん、当時、これらの地域を植民地としていたヨーロッパ人の目にも、それは「残酷な風習」と映りました。
 ケニアでは、女性宣教師たちが、「クリトリス切除」に反対を表明しないと、教育を受けることも、教職に就くこともできない、というルールを作りましたが、これに反発した現地の男たちは、女性宣教師をレイプして性器を切り取る、という事件まで起こしました。
 さらに、独立後、初代大統領となったジョモ・ケニヤッタは、「女児の性器切除と一夫多妻制は、ケニアの文化に固有のものである」と主張して、その風習を復活させてしまい、異議を唱えようとするヨーロッパの国々の干渉を「新植民地主義的な内政干渉」として、退けました。
 その後、ケニヤッタの跡を継いだアラップ・モイ政権下で、再び、性器切除を禁止する法律が公布されましたが、この風習は、「ユニセフ」などによる啓蒙活動にも関わらず、いまだに赤道以北のアフリカ諸国では、根強く生き続けています。
 各種人権団体などは、「No-Cut」の意識を高めようと、キャンペーンを続けています。そのキャンペーン動画のひとつがこれ。You Tubeで公開されている動画をご紹介します。



 問題は、当の女性たち自身の中に、性器カットが「女としての価値を高める」手段である――と信じる考えが、根深く残っている、ということです。
 出産を終えた女性が、自分の価値を高めるために、再び、「陰部封鎖」の処置を受けるというケースが、最近になって増えてもいるのだそうです。
 もっとも、日本などの先進諸国でも、出産後に「処女膜再生手術」を受ける女性がいます。男性の「処女へのこだわり」が存在する限り、女性の意識だけを変えるということは、むずかしいことなのかもしれません。

クリトリス切除。欧米では「精神疾患治療」のためだった?

 実は、クリトリス切除は、欧米でも行われていた――と言うと、驚かれる人も多いかもしれません。
 しかも、その切除は、なんと

 「精神疾患」の治療として施されていた!

 というのです。
 その「精神疾患」というのは、「ヒステリー」。クリトリスにつながる末梢神経で起こる周辺的興奮が元凶で、「ヒステリー症状」が起こり、さらにはそれが原因で「てんかん」、さらには「痴呆」などを発症する――とされたのでした。
 この手術を特に熱心に行ったイギリスのベーカー・ブラウン医師などは、手術によってクリトリスを切除した結果、多くの患者が夫との間に良好な関係を回復することができ、立派に妊娠⇒出産を果たすことができた、と言っているのですが、こういう独善的な姿勢は、やがて英国の医学界で「偽善者」と非難され、産婦人科学会から除名されることになります。
 それでも、当時の医学界では、

 女性のマスターベーションこそ、多くの疾患の原因である

 とする説が、信じられていました。
 「クリトリス切除」は、確かに乱暴な治療法だが、諸悪の根源であるマスターベーションを防止する効果はあった――と思われていたようです。
 イギリスでクリトリス切除が下火となった後も、アメリカではベーカー医師の学説はひとり歩きして、1900年代の初めまで、盛んに手術が行われた、という記録が残っています。
 そうなのです。少なくとも20世紀初頭までの欧米では、「女性のマスターベーション」は、「諸悪の根源」とみなされていました。娘が手を股間に伸ばすだけで、それは「恥ずべき行為」とされ、それを見つけた親たちは、娘の手を縛りつけたりもしていました。
 問題なのは、女性をそういう行動に導く「欲望」の存在でした。そして、そういう「欲望」は、「精神病」扱いされた。それが、欧米におけるクリトリス迫害を生んだ「医学的根拠」でした。

「クリトリス派」を「不感症」となじったフロイト派

 20世紀になっても、クリトリスへの偏見と迫害は続きました。
 その迫害に手を貸す結果になったのが、なんと、フロイトとその弟子たちによるとんでもない言いがかりでした。
 フロイトは、精神分析学の基礎を築いた偉大な学者であり、筆者・長住も、その業績には敬意を払っているもののひとりではあるのですが、ことSEXに関しては、フロイトは「男根主義者」でした。
 女の子は、幼い頃から、自分にはついてないペニスに、ひそかな羨望を抱いて育つ――と、フロイトは言うのですね。立ったままおしっこができるペニスという器官が、自分にはないということに悩み、そして、立派なペニスを持った父親に愛されたいと願うようになる――と。
 幼い女の子は、やがて、発見します。「それ」を何と呼ぶのかは知らないけれど、自分にも、触ると気持ちよくなる器官が存在することを。そして、それをいじってみるようになります。
 しかし、その行為は、親に見つかると叱られ、場合によっては、ひどい脅しを受けます。「そんなことしてると、ひどい罰を受けるぞ」と。

 こんなことしてたら、将来、赤ちゃんが産めなくなるかもしれない。

 そう思った女性たちは、この「禁じられた遊び」を封印し、いつか、自分のヴァギナが「白馬の王子さま」のペニスで埋められて、ほんとうの快楽にいざなわれることを期待するようになる。
 そうして、「性交によるオーガズム」へと自然に導かれていくのが、正常な「女性性」である――と、フロイトたちは主張したわけです。
 にもかかわらず、おとなになっても「性交によるオーガズム」が得られず、「クリトリス・オーガズム」しか得られないという女性がいると、そういう女性は、「不感症」となじられることになるわけです。
 場合によっては、そういう女性には「同性愛者」というレッテルが貼られることもありました。
 クリトリスの「冬の時代」は、やがて起こった「女性解放運動」が「クリトリス讃歌」を謳い上げる1960年代になるまで、延々と続くことになります。

クリトリスが解放されたのは、1960年代

 筆者もハッキリ覚えていますが、日本でも、「クリトリスの解放」が雑誌などで取り上げられるようになったのは、1960年代の終わりから1970年代の初めにかけてです。
 筆者も身を置いていたその頃の女性雑誌の主張は、こうでした。

 女たちよ、自らの手で快楽を手に入れよ!
 幸せになるために、男に頼らなくてもいい時代がやって来た!


 当時の雑誌には、しきりに、「C派」「V派」という言葉が登場しました。「C派」とは、「クリトリスのほうが気持ちいい」という女性たちを表す言葉。「V派」とは、「やっぱりヴァギナでないとダメ」という女性たちを表す言葉でした。
 ほんとは、Cも、Vも気持ちいい――なのでしょうが、その当時は、C派=進歩的な女性V派=保守的な女性、というニュアンスで語られていたような気がします。
 女性の社会的な地位が向上し、「男がすることは女もする」が、当たり前のこととして語られるようになって、初めて、「クリトリス性感」は、市民権を得た。筆者は、そう言って差し支えないだろうと思います。
 ちなみに、筆者・長住は、クリトリス大好きですよ。
 女性解放、万歳! です。

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