キング牧師と「人種差別」について、私たちが知っておくべきこと
不純愛トーク 第298夜
前々回からお届けしているアメリカにおける「人種差別」の話。南北戦争後、奴隷は解放され、黒人にも公民権を与える憲法修正条項が可決されたにも関わらず、アメリカの各州は、この条項を覆す「州法」を次々に成立させていきました。レストランでも、バスでも、黒人席と白人席が区別された「人種隔離」の時代、そこへ登場したマルチン・ルーサー・キングが始めた運動は――。
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AKI 前回は、ビリー・ホリデイの『奇妙な果実』の話をしました。歌に歌われていた「奇妙な果実」は、リンチに遭ってポプラの木に吊るされた。黒人の死体だったんですよね。そういうリンチは、1964年に「公民権法」が成立するまで、延々と続けられたという話でしたよね。
哲雄 ほんとはね、1865年に南北戦争が終結した直後、奴隷制は廃止され、有色人種に公民権を与える憲法修正条項が議会で可決されてますから、この段階で「差別」はなくなっているはずだったのですが……。
AKI でも、現実にはなくならなかった。それは、各州の州法が、この修正条項を覆していったからなんですね?
哲雄 そうです。そして、1883年には、連邦最高裁が、
「修正第14条は、私人による差別には当てはまらない」
という判決を下して、南北戦争後に制定された公民権法のほとんどを、実質的に無効化してしまったんですね。この判決を受けて、1890年には、ルイジアナ州で、黒人と白人で鉄道車両を分離するなどの「人種差別法案」が可決されました。
AKI そういうのって、どの国でもやるんですね。日本でも、憲法を骨抜きにする法案とかが、次々に出てくるじゃありまんかッ!
哲雄 お怒りは、ごもっともですが、きょうは、公民権運動の話だから。
AKI そうでした。そういう法案は、ルイジアナ以外でも出てきたんですね?
哲雄 ジョージア、アラバマ、ミシシッピなどの南部諸州はもちろんですが、それ以外の州でも次々に。それらの人種分離法は、ひとまとめに「ジム・クロウ法」と呼ばれています。
AKI ジム・クロウ……? 何ですか、それ?
哲雄 また、話が横道に逸れちゃうなぁ……。
AKI 横道、大好き!
哲雄 ま、いいでしょう。「ジム・クロウ」というのはね、白人が顔を黒塗りにして黒人に扮する「ミンストレル・ショー」というコメディ・ショーに出てくるキャラクターなんだよね。設定では、「ジム・クロウ」は田舎のみすぼらしい黒人ってことになってて、それを戯画化して見せることで笑いを取ってたらしい。そこから、「ジム・クロウ」は、「黒人隔離」を指す言葉として使われるようになったんですね。
AKI 日本にも、そういうのを芸にしてを見せてた芸人がいましたよね?
哲雄 「シャネルズ」とかもね。ああいうの、アメリカなんかに持っていったら、大問題になると思いますよ。ちょっと無神経すぎて、私なんかは、見るたびに不快感を感じてました。で、話を戻すとね、あれ!? どこまで話したっけ……?
AKI 次々に「ジム・クロウ法」が成立した――ってところ。大丈夫ですか、哲ジイ?
哲雄 キミが横道に逸らすからです。で、この「ジム・クロウ法」の中には、南アの「アバルト・ヘイト」も顔負けな分離政策が出てくるんだよね。黒人と白人の結婚を禁止するとか、水飲み場とかトイレを白人用と黒人用に分けなさいとか、レストランやバーの席も、分離しなさいとか。もちろん、バスなどの公共交通機関も、白人用の座席と黒人用の座席は分けられたし、学校が黒人の入学を拒否することも合法とされました。
AKI ひどーい!
哲雄 戦場でも、第二次世界大戦まで、黒人と白人が、一緒の部隊に配属されることはなかったんですよ。黒人は、「黒人部隊」としてしか参戦できなかったし、航空隊からは黒人は排除されていました。もちろん、昇級も制限されていました。「白豪主義」をとっていた同盟国のオーストラリアなどは、黒人兵の自国への上陸を拒否したりしていました。
AKI でも、戦場では血を流したんですよね、黒人兵も。
哲雄 さすがに、1948年には、当時のトルーマン大統領が、軍隊内での人種隔離を禁止しましたが、それでも1950年の朝鮮戦争まで、白人と黒人の混成部隊が編制されることはありませんでした。
AKI まだ、その頃までは、公民権運動は起こってなかったんですか?
哲雄 公民権運動が「運動」として登場するのは、1955年になってからですね。その年、アラバマ州のモントゴメリーで、ローザ・パークスという黒人女性が公営バスの「白人専用」の座席に座って、それを白人運転手にとがめられる――という事件が起こりました。
AKI どうしたんですか、その女性は?
哲雄 「オイ、そこは白人専用席だ。席を譲れ!」と運転手が命令するのですが、その女性は、それを拒否。結局、彼女は警察に逮捕され、州の簡易裁判所で罰金の支払いを命じられるのですが、これに怒ったマルチン・ルーサー・キング牧師らが、「バス・ボイコット」を呼びかける運動を起こしたんですね。
AKI やっと出て来ました、マルチン・ルーサー・キング!
哲雄 別に、活劇やってるわけじゃありませんからね。「1年間、バスをボイコットしよう」というキング牧師の呼びかけに、黒人だけじゃなく、その他の有色人種、白人の一部も加わって、大きな運動になった。さらに、この運動は、アメリカ各地でも反響を呼んで、翌年、連邦最高裁判所は、「バス車内における人種分離は違憲である」という判決を下します。
AKI でも、これにて一件落着――とはならなかったんですね?
哲雄 なりませんでしたねェ。1957年には、アーカンソー州で、州立リトルロック・セントラル高校への黒人学生9人の入学を州知事が拒否する、という事件が起こりました。
AKI すでに、違憲判決が出た後ですよね?
哲雄 ハイ。こちらのほうは、すでに1954年に、「公立学校における人種隔離は違憲」とする最高裁判決が出ていたにもかかわらず、州知事は州兵まで動員して学校を閉鎖し、入学を阻止する、という挙に出ました。
AKI 結局、どうなったのですか、その9人の学生は?
哲雄 全米で白人も含めた広範な抗議の声が上がり、最終的には、連邦政府が陸軍を派遣して、黒人学生たちを護衛させ、入学させました。入学してからも、白人学生たちのいじめに遭ったようですけど、9人のうち8人は、無事に卒業したそうです。

哲雄 ノーマン・ロックウェルというアメリカの画家が描いた『The Problem We All Live With(私たちみんなが抱える問題)』という絵です。この人、ほんとうは、アメリカ市民の温かな生活風景を描くことが多い画家なんですが、この絵は、ちょっと異質。黒人の少女が、連邦保安官に守られて登校する風景を描いてるんですが、少女の背後の壁には、投げつけられたトマトが生々しく砕け散ったりしています。ロックウェルは、それでも毅然と登校しようとする少女の姿を描くことで、当時のアメリカ社会に何かを訴えようとしたんですね。
AKI こんな少女にとっても、学校に通うことが、勇気を求められる行動だったんですね。
哲雄 いじめで登校拒否――なんて、言ってる場合じゃありません。差別をなくすんだ――という強い意志がないと、できないことですよね。
AKI そのほかの抗議行動は、どんなふうに行われたんですか?
哲雄 キング牧師たちが指導した抗議行動は、さまざまです。人種分離を行っている施設に対する訴訟、ボイコット運動、抗議デモ、さらには「シット・イン」……。
AKI 何ですか、その「シット・イン」というのは?
哲雄 日本語にすると「座り込み」ですかね。「白人専用席」などを設けているレストランなどで、その「白人専用席」に座り込む――という運動です。この運動は、1960年に始まって、全米に広がり、15都市で5万人が参加する大規模なものになりました。
AKI 暴動とかはなかったんですか?
哲雄 一部にはありましたよ。というのも、例えば人種差別主義らが黒人に暴力を振るったりしても、当時の、特に南部の地方警察などは、それ自体が人種差別主義者の団体のようなものでしたから、白人側を取り締まるどころか、逆に騒ぎ立てる黒人側を逮捕したり……というありさまでした。
AKI それじゃあ、黒人たちも、怒りの持っていきようがありまんよねェ。暴動を起こしたくなるのも、わかりますよね。
哲雄 でもね、マルチン・ルーサー・キングは、あくまで「非暴力」を貫いた。それでも、地方警察は「治安維持」を名目に鎮圧に乗り出す。そういう警察当局の姿勢は、メディアの手で「弾圧」として世界中に打電され、世界中の世論が、キング牧師らの行動を支持する方向に傾いた。
AKI キング牧師らの行動が、世界を動かしたんですね?
哲雄 そして、1963年のあれへとつながっていくわけですね。
AKI あれ……って何ですか?
哲雄 いまだに語り草となっている「あれ」です。ハイ、きょうはここまで。続きは、年が明けてからにしましょう。
AKI では、みなさま、今年も1年、ジイさまの世迷言におつき合い下さり、ありがとうございました。
哲雄 アホな娘の素ボケにおつき合い下さり、痛み入ります。

哲雄 AKI どうぞ、みなさま、よいお年を。


2012年11月リリース
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