なぜ、ユダヤ人は差別されたのか?
不純愛トーク 第295夜
人は、人を差別する装置として「階級」を作り出したのではないか? 前回は、そんな話をしました。しかし、「差別」は、もっと根源的なもの、生まれや育ちによっても行われます。実は、こちらのほうが大きい。そして、その最大のものが「人種差別」です。今回は、「ユダヤ人差別」を例に、文化や宗教の違いが差別を生み出す仕組みをご紹介します――。
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AKI 差別には、生まれ・育ちに関するものもある。前回は、そんな話をしたんですよね。
哲雄 ハイ、いたしました。でもね、これ、実に膨大な話なんですよね。そもそも、「差別」という言葉は、狭義的には、人を「生まれ・育ち」によって差別することを言いました。その最大のものは、「人種差別」です。
AKI アメリカでは、「黒人差別」とかありましたよね。
哲雄 ええ、世界最大の「差別」でしたね。アメリカだけじゃありませんよ。南アフリカでは「アバルト・ヘイト」がつい最近まで行われていて、バスなどの公共交通機関とか、公共施設とか、教育機関なんかも、「白人用」と「黒人用」が厳密に区分されていました。「公民権運動」以前のアメリカも、似たようなものでしたけどね。
AKI ユダヤ人も差別の対象でしたよね?
哲雄 ハイ、根深い差別が存在しました。でもね、AKIクン、ユダヤ人差別と黒人差別とは、ちょっと性質が違うんですよ。ユダヤ人差別の根っこには、文化的・宗教的問題が潜んでいます。
AKI ユダがイエス・キリストを裏切ったから――とか?
哲雄 そんなことを言う人もいますけど、全然、関係ありません。だいいち、あの「ユダ」というのは人名だしね。
AKI あ、そうなんだ。じゃ、宗教……?
哲雄 宗教をベースにした文化全体と言っていいんじゃないですか? あのね、いま、世界の主要な民族が信仰している宗教は、いわゆる「世界宗教」と呼ばれている宗教で、それは、キリスト教、イスラム教、仏教の「三大宗教」なんだよね。この三大宗教だけで、世界の人口の半分以上を占めてしまいます。
AKI 「世界宗教」じゃない宗教は?
哲雄 「民族宗教」と呼ばれます。大きいところでは、インドの「ヒンドゥー教」とか中国の「民間宗教」各種。このほか、「新興宗教」に分類される宗教もあります。ざっと、世界的な分布を示しておくとこうなります。

――「データブック オブ・ザ・ワールド 2005年度版」(二宮書店)による
世界宗教
キリスト教……… 信者数20億1905万人
イスラム教……… 信者数12億714万人
仏教………………信者数3億6198万人
民族宗教
ヒンドゥー教………信者数8億1968万人
中国民間宗教……信者数3億8716万人
シーク教………… 信者数2353万人
ユダヤ教………… 信者数1448万人
AKI あの……素朴な疑問なんですけど……ヒンドゥー教は、8億人も信者がいるのに、どうして「世界宗教」と言われないんですか?
哲雄 そうですね。数だけから言うとすごいし、その教義も宇宙的な内容を含んでいて、ネパールとかスリランカとかインドネシアのバリ島なんかにも、信者がいるんですが、なにしろこの宗教は、インド独特の社会制度である「カースト」と密接に関係していること、その分布があくまでインド中心であることから、「世界宗教」とは考えない――とするのが、一般的な考え方のようですよ。
AKI この「シーク教」っていうのは?
哲雄 ああ、「シーク教」は「シク教」とも言われて、インドに入ってきたイスラム教とヒンドゥー教が融合してできた民族宗教です。ホラ、あの大きなターバンを頭に載っけたりしているインド人がいるでしょ?
AKI ああ、なんか……よく見ますよね。あれって、シーク教徒なんですかぁ……。
哲雄 そんなふうに、キリスト教やイスラム教や仏教が伝搬していくうちに、土地の宗教と融合して、新しい宗教になった――という例は、他にもいろいろあるんですよ。でも、その話は、ややこしくなるので、ここでは割礼……じゃなくて、割愛。で、話を元に戻して、ユダヤ人差別の話ね。
AKI あ、そうでした。するってぇとあれですか? ユダヤ人差別には、「ユダヤ教」という宗教が、関係しているかもしれない――って話なんですね。
哲雄 というのもですね、AKIクン。さっき言った「三大世界宗教」のうちの2つ、キリスト教とイスラム教、それに、このユダヤ教は、元は、同じ宗教なんですよ。そのルーツは、古代ペルシャに起こったゾロアスター教。みんな、そこから発展していった宗教なんだけど、「ユダヤ教」だけは、頑なに「民族宗教」であり続けた。なにしろ、世界で救われるのは、神に選ばれた「イスラエルの民」だけである――と信じてるんですから。
AKI それ、何て言うんでしたっけ? 選民思想……?
哲雄 ホォ、よくご存じで。そうです。21世紀の現在にいたるまで、ユダヤ人たちは、この「選民意識」を捨てきれないでいる。これじゃ、他の民族とうまくやっていけるわけがない。ところがね、そのイスラエルという国が、ローマ時代に滅ぼされてしまった。国を失ったユダヤ人たちは、世界の各地、特にヨーロッパの各地に、ちりぢりに散らばっていきました。
AKI 流浪の民になっちゃったんですね?
哲雄 というか、ならざるを得なかった。そして、ここからが重要なんだけど、ヨーロッパ各地の諸侯たちは、そのユダヤ人に土地を所有することを許しませんでした。つまり、農業を営んではならない、というわけです。では、彼らは、何をやって生きていったか?
AKI あとは……頭を使うことぐらいしかないですよね?
哲雄 そうだね。で、彼らの多くは、当時のヨーロッパ人たちが蔑んでいた「金貸し業」をナリワイとするようになります。その結果、彼らの手元には、莫大な財が集まります。ご存じだと思いますが、銀行業を起こしたのも、こうして財貨を蓄積したユダヤ人たちなんですね。かの有名なロスチャイルド家を始めとして、名だたる銀行家は、ほとんどユダヤ資本と言っていい。そうなると、どうなるか?
AKI 怨嗟の対象になる?
哲雄 そのとおり。当時のヨーロッパ人が「金貸し」に手を染めるユダヤ人たちをどう思っていたかは、シェークスピアの『ヴェニスの商人』などを見れば、明らかだと思います。
AKI クソーッ、あいつら、ずる賢く金ばかり貯めやがって――みたいな感情があったんでしょうね。
哲雄 でも、そうせざるを得ない状態に追い込んだのは、ヨーロッパ人自身なんですからね。
AKI そうですよね。それが、ユダヤ人差別へとつながっていった……。
哲雄 それだけじゃないですよ。元々、自分たちは「神に選ばれた民」だと信じ込んで、世界で救われるのは自分たちだけだ――なんて言ってるわけだし、その生活態度も、頑なにユダヤの戒律を守って、周囲に溶け込もうとしない――というふうでしたから、社会の中では「アウトサイダー」になってしまいます。
AKI エリート意識が招いた「逆差別」――という見方もできるわけですね。
哲雄 少なくとも、「黒人差別」とはまったく質の異なる差別だろう――と、私は思います。
AKI 黒人差別の場合は、差別する白人の側に「エリート意識」があったんですかね?
哲雄 そんな上等なものではないでしょう。なにしろ、アメリカ社会における黒人は、人間としてさえ扱われてなかったのですからね。さて、この問題も根っこが深いので、次回、ゆっくりお話することにしましょうか。
AKI ファーイ。それまで生きていてくださいませね。いきなり、熱いお湯に浸かったりしちゃダメですよ、おじいちゃん。
哲雄 ウルサイッ!


2012年11月リリース
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