「灰まみれ」を「シンデレラ」にした政治的理由
不純愛トーク 第292夜
実は、『シンデレラ』の物語は、その原型となった民話の中までたどると、死者との交流を描いたおどろおどろしい物語だったりする。前回は、そんな話をしました。そんな恐ろしい話を「夢はかなう」式のおとぎ話に仕立てたのは、16世紀の詩人、シャルル・ペロー。その裏には、ペローに編纂を命じた国王・ルイ14世の政治的意図があった、という話を、今回はご紹介します。その意図とは――。
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AKI エーッと、前回、哲ジイは、おっしゃいましたよね。ほんとはおどろおどろしい「シンデレラ」の話を、「めでたし。めでたし」のサクセス・ストーリーにしてしまったのは、ルイ14世の「政治的意図」に、シャルル・ペローが答えた結果である――と?
哲雄 ハイ、確かに申しました。
AKI その「政治的意図」とは、何だったのでしょう?
哲雄 オー、ニッポンのお嬢さん、あなた、よく、訊いてくれたよ。ワタシ、うれしいあるネ。
AKI ピッ、ピッ! まじめにッ!
哲雄 では、まじめに。「シンデレラ」というのは、その原型となった民話の中では、「灰かぶり姫」とか「灰かぶり少女」と呼ばれています。この「灰かぶり」とは何か?
AKI それは、あれでございましょ? いつも、カマドのそばとかにいて、火を起こしたり、煮炊きをしたりとか……そういう下女的なことをやらされてるから、灰まみれになってしまう。そういう意味なんじゃないですか?
哲雄 つまり、「身分の低い女」ってことだよね。フランス語では、「シンデレラ」は「サンドリヨン」なんだけど、これは、「灰まみれ」っていう意味。娼婦をののしったりするときにも使われる言葉なんだよね。
AKI ということは、相当、蔑んで使われる言葉なんですね?
哲雄 そのとおり。つまり、世の中の「最下層にいる人間」という蔑称なわけです。その最下層にいる女が、宮中の舞踏会に招かれて、王子様に見初められ、幸せを手中にする。ルイ14世がそんなストーリーを望んだのは、なぜか?
AKI 夢をあきらめちゃダメだよ――とか?
哲雄 ではないと思います。たぶん、ルイ14世のネライは、この王は、そんな貧しい民、最下層の下々にまで目を注いで、その幸福の実現に力を貸してくれるゾ――と、国民に広く訴えたい、ということだったのではないでしょうか。
AKI ヘェ、そんな大それたこと、考えてたんだ……?
哲雄 つか、権力者は常に、そんなこと考えてるんですよ。で、そういうときに、自分の寛容さや博愛ぶりをPRするための対象として選ぶのは、たいていの場合、最下層の民衆だったりするんだよね。
AKI ヘーッ、どうして最下層なんだろ? 中間層とかじゃダメなんですか?
哲雄 じゃさ、AKIクン、ちょっと中高生時代のこととか思い出してみようか?
AKI ハイ、思い出してますよ、鮮やかに。あの頃は、モテたなぁ……。
哲雄 そういう話じゃなくて! たとえば、3年生がよく面倒を見たのは、2年生でしたか? それとも1年生でしたか? もっと別の例でもいいですよ。おじいちゃんと息子、おじいちゃんと孫だと、どっちのほうが仲がいいでしょう?
AKI たぶん……3年生と1年生とか、おじいちゃんと孫のほうじゃないでしょうか。
哲雄 だよね。こういうのを「飛び級結合」と言います。
AKI 飛び級……? 初めて聞いた……。
哲雄 ええ、いま作りました。でも、私は確信しているんです。社会がいくつかの階層で構成されているとき、自分が属する階層とすぐその下とかすぐ上の階層とは、何かとぶつかり合うことが多い。でも、ひとつ飛ばして、下の下とか、上の上とかの階層とは、わりと結合しやすい。社会は、そういう性質を持っていると思うんです。
AKI そう言えば、1位と2位は仲わるいけど、1位と3位は仲よかったりしますよね。
哲雄 で、ルイ14世の話ね。この国王は、わりと敵の多かった人で、自分と同じ貴族や諸侯とは、政治的に対立したりしていました。その下には、勃興しつつあった市民階級がいて、貴族階級とは何かと対立しつつあった。
AKI わかった! だから、そのもっと下の貧民層を味方につけようとしたんだ?
哲雄 そのとおり! こういう政治的手法は、フランスだけじゃなくて、いろんな国のいろんな社会で使われました。「暴れん坊将軍」は、幕閣や旗本じゃなくて、「め組」と仲よくしちゃったし……。
AKI つか、それ、TVドラマだし……。
哲雄 江戸幕府は、庶民の下にさらに非民層を設けて、庶民の不満を押さえつけようとしたし、明治維新では、朝廷は、諸大名じゃなくて、下級武士と手を結びました。
AKI なるほどォ。モテない女が、オカマと仲よくなるようなものか……。
哲雄 それ、ちょっと違うと思います。とにかくね、
権力者は、こうやって、社会の最下層を取り込むことによって、
自分たちに対抗しようとする勢力を押さえ込みにかかる。
これは、どんな時代にも見られる傾向なんだよね。
AKI 「シンデレラ物語」は、そういう目的に使われたのではないか――と。哲ジイは、そうニラんでいるわけですね?
哲雄 少なくとも、シャルル・ペローが「灰かぶり」の物語を「シンデレラ・ストーリー」に仕立て直した背景には、そういう政治的理由があったのではないか――と思っているわけです。
AKI なるほどねェ。私は、そうやって仕立て直された物語を見て、「なんて美しい話なんだ」と感動してたってわけなんですね。
哲雄 古くから語り継がれてきた童話とか、神話とかは、背景にかならず、そういう物語に仕立てようとした人間の意図が潜んでいます。それを見破れっていうのは、むずかしい話だけど……。
AKI ええ、むずかしいと思います。単に、「まぁ、何て美しい話」と感動してたほうがラクだし……。
哲雄 そうなんだけど、そのラクさに浸っていると、世の中の矛盾や不正を見逃してしまうことになってしまいますからね。なので、真実を見抜く「賢人の目」が、どうしても必要。本来なら、ジャーナリズムがその役目を果たさなくてはいけないのですが……。
AKI そのジャーナリズムがダメなんですね?
哲雄 こいつら、「賢人」とは言えないなぁ――と思うことが、最近は、多くなりました。
AKI ガンバってよ、哲ジイ。
哲雄 いや、もう、私は年ですから……。
AKI オッサン、死んでれら……?
哲雄 ぶ、無礼な……。


2012年11月リリース
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