「美談」は、だれが、何のために作るのか?
不純愛トーク 第289夜
前回は、結婚披露宴の「花嫁を泣かせよう」とする演出にかみついた哲雄ですが、今回は、そのホコ先を「美談」全体に広げてみます。なぜ、人は「美談」を好むのか? その「美談」は、いったい、だれが、何のために、作り上げるのか? そこには、どんな意図が隠されているのかを、過去の民話や童話の改訂の歴史などを見ながら、検証してみます――。
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AKI 突然ですけどね、哲ジイは、披露宴での花束贈呈のような、涙の儀式が好きじゃないんですよね?
哲雄 大事なことですから、正確に申し上げましょう。私が「好き」じゃないと言ったのは、「涙を流させよう、流させよう」とする演出なんです。別に、結婚披露宴だけの話じゃないですよ。
AKI ハァ……他にもいろいろあるわけですか?
哲雄 いろいろどころじゃない。そういうものだらけだ――と言ったほうが、いいだろうと思います。
AKI だらけ……ですか?
哲雄 たとえば、エステサロンなどでは、100人中99人の失敗例には触れもせずに、わずか1人のダイエット成功者の、涙、涙……の成功物語だけを紹介して、「サロンに通ってよかった」と言わせようとします。
AKI ま、それは、広告でございますから。
哲雄 湾岸戦争のときには、原油にまみれて飛べなくなった鳥の映像をメディアがねつ造して、世界の涙を誘い、「正義の戦争」を「美化」しようとしました。
AKI あ、それ、覚えてます。
哲雄 どこかの局がやっている『24時間TV』なんて番組では、障害者に「泳いで海峡を横断する」など、いろいろムリをさせては、涙を誘おう――という演出を、恥ずかしげもなくやって見せるし……。
AKI 私……つい、涙ぐんでしまいますけど……。
哲雄 涙ぐむのはいいのですが、それを「演出」としてやってしまうという感覚は、いかがなもの? もしかして、あれ、強要してるんじゃないか――とまで疑ってるんですよ、私は。
AKI まさか……とは思うけど、あり得ない話じゃないですね。そう言えば、あそこのキャスター、なんか、やっちゃいましたよね。
哲雄 そうそう。全盲のセーラーと太平洋横断――なんて感動話を作り上げようとして、失敗。挙句、自衛隊に救助を要請するハメになって、ヒンシュクを買ったりしました。震災以後に報じられた復興話にも、「涙を誘おう」という意図を感じるものが、けっこう多かった。
AKI 何となく、そんな感じがするものがありました。
哲雄 でしょ? 復興は、一向に進んでいるとは思えない。ほんとなら、その問題点を鋭く追及するのが、メディアの役割だと思うんだけど、「みんなガンバってるよ」「立派に卒業式も迎えたよ」「涙の中から立ち上がってるよ」「日本人ってエラい!」――そんな美談に仕立ててしまう。そんな報道が多くないですか?
AKI 確かに……。いいのかなぁ、そんな「きれいな話」にまとめてしまって――と、この私でも、そう感じることがありますもの。
哲雄 さて、なぜに、世の中では、こんなにも「美談」がもてはやされるのか?
いや、「美談」をもてはやさせようとするのか?
AKI もてはやさせようとする……? エッ、だれが……?
哲雄 そりゃ、決まってるでしょ、時の為政者たちが――ですよ!
AKI 何のために?
哲雄 国民には「美しい話」を信じさせておいたほうがいいからです。「自分たちは、こんな美しい物語の世界に住んでるんだ」と思わせておいたほうが、自分たちの為政に対する不満や疑問を封じ込めることができるでしょ?
AKI そりゃそうかもしれませんが……。
哲雄 そのために、醜い話や残酷な話は隠してしまって、場合によっては、それを「美談」に作り変えてしまったりします。そうそう。先日は、島根県松江市の教育委員会が、『はだしのゲン』を学校で閲覧できないようにしろ――という通達を出しましたよね?
AKI ああ、ありましたね。あれ、「ひど~い!」って思いました、私も。
哲雄 要するに、あの中に出てくる、原爆の残酷さなどを描いたシーンを、子どもの目に触れさせてはいけない――ってわけです。何のために? 子どもたちに「原子力って恐ろしい」と思わせちゃいけない、という意図が働いたからです。では、その意図は、だれの意図か?
AKI もしかして……原発を推進させたいと思っている人たちの……?
哲雄 それしか考えられません。原発を推進したいと思っている人たちの視野の中には、将来の「核武装」まで含まれているかもしれません。現に、いまの総理は、かつては、日本の「核武装化」を主張してた人ですからね。
AKI だから、「原爆、恐ろしい」とは思わせたくないんだ? ひどい話ですね。
哲雄 そう言えばね、AKIクン。『カチカチ山』の話だって、いまは、キミが読んだ頃の『カチカチ山』とは、まるで違う話になってるんですよ。
AKI エッ! あれって、確か……タヌキがおばあさんをだまして殺してしまうんですよね。嘆き悲しんでいるおじいさんを見て同情したウサギが、タヌキを泥の船に乗せておぼれさせ、復讐する――っていう、そんな話だったように覚えてますけど。
哲雄 ところが、タヌキはおばあさんを殺したんじゃなくて、ケガさせただけ。泥舟でおぼれそうになったタヌキも、反省したので、ウサギはこれを助け、以後、心を入れ替えたタヌキは、おじいさんを助けて、みんなで楽しく暮らしましたとさ――って話になってる。
AKI エーッ、ウソォ~! そんなふうに勝手に、物語を書き換えちゃったりしていいんですか?
哲雄 いいらしいですよ。ていうか、こういう話は、元々は、民話なわけですから。民話には著作権なんてありませんから、それを採取した人の解釈で、どうにでも書き換えられてきたわけです。『桃太郎』だって、元は、桃から生まれたって話じゃないんですよ。
AKI ウソでしょ?
哲雄 あれも、元は、川から流れてきた桃を食ったら、おじいちゃんもおばあちゃんも元気になって……というか、回春しちゃって、エッチなんかしちゃったものだから、年甲斐もなく子どもができた。喜んだふたりは、その子に「桃太郎」という名前を付けた――っていうのが、オリジナルな話らしいですよ。
AKI 私、そっちのほうが好き……かもしれない。
哲雄 でしょうなぁ。でもね、子どもに「エッチしました」とは言えないでしょ? 桃食って元気になって、子どもまで作っちゃった――なんて話、できないでしょ?
AKI ま、そう言われればそうですけど……。
哲雄 というわけなので、民話・伝承の類は、それを利用しようとする人の手によって、いかようにも作り変えられてしまいます。だけどまぁ、回春の結果として生まれた「桃太郎」を「桃から生まれた」に変える程度は、かわいいもんです。この程度は、文学的手法の範囲内と言ってもいいと思います。
AKI かわいいもの? じゃ、かわいくないものもある?
哲雄 そこに、政治的な意図とかが絡んでくると、とたんに醜くなってしまいます。
AKI 政治的な意図? 『はだしのゲン』を閲覧禁止にしたような……ですか?
哲雄 あそこまで露骨な干渉は、世界中探しても、そうは見つかりません。でもね、これは、全般に言えることなんですが、民話というのは、元々、けっこう残酷な話が多い。それは、民話や伝承の類が、元々は、「死」の世界と「生」の世界という、異次元な世界をつなげる物語として語り継がれた経緯があるからなんです。
AKI 死の世界と生の世界ですか? あの世とこの世…?
哲雄 古代以来の人間にとって、何と言っても怖かったのは、死後の世界です。人間は、わるいことをして死ぬと、恐ろしい目に遭う。多くの民話は、そのことを伝えようとするので、かなり、残酷な世界を描いてしまうんですね。たとえば、AKIクンの大好きな『シンデレラ』の話だって……。
AKI エッ、シンデレラ? あれも怖い話なんですか?
哲雄 そうなのですが、その話をすると、長くなっちゃうので、止めときましょう。
AKI ちょ、ちょっと、止めないでくださいよォ~。じゃ、その話は、次回でいいですか? いいですね?
哲雄 それまで、くたばっていなければ……。


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