男1人に嫁1人――とした、ほんとの理由
不純愛トーク 第279夜
もともとは「乱婚」だった人類が、「父系制」の血縁制度を作り上げたのは、農業が始まって「財産の継承」が必要になったからだ――というのが、前回までの話。しかし、その婚姻形態は、多くの地域で「一夫多妻」でした。それが「一夫一妻制」へと移行したのは、いつごろ、どういう理由でなのか? 今回は、「男1人に妻1人」となったほんとうの理由を探ってみます――。
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AKI 財産を継承するために、人類は「父系制」を誕生させ、「長子相続」の仕組みを作り、その財産を他の男に横取りさせないために「姦淫」を罪としたんですよね。
哲雄 ハイ、前回までの話は、ざっとそんな流れでよろしいかと思います。
AKI 妻は複数いたんですね……?
哲雄 「妻」かどうかはともかく、力のある男が複数の女を支配する。これは、農業を始めた文化地域では、どこでも共通していたようですね。
AKI そうなると、当然、妻を持てない男も出てきますよね?
哲雄 出てきますねェ。
AKI 暴動が起こったりしなかったのかしら?
哲雄 そうなっては困るので、戦争を起こしたりしたこともあったようですよ。
AKI エッ? 戦争? 女を補充するために?
哲雄 戦争の目的は、主には、富の収奪なのですが、その中に「女」が含まれていた場合もあったようですね。侵略した側の軍隊は、たいていは、負けた国の女たちを捕虜にしたり、奴隷にしたりして、性的略奪の対象としました。
AKI それ、いつの時代の話です?
哲雄 つか、いまでもそういうことが行われている地域はあるようですよ。あのサダム・フセインの軍隊も、そして、ボスニア・ヘルツェコビナを攻撃したセルビアの軍隊も、被占領地の女性を略奪しました。アフリカでは、いまだにそれが続いている地域もあります。
AKI 哲ジイは、暴動起こしたりしないんですか?
哲雄 ええ、そろそろ……って、んなわけないでしょ。でもね、AKIクン、そうやって嫁のいない男たちが増えてしまうと、社会的には、ちょっとまずいことになる。特に、近代市民社会が成立して以降は、「これじゃまずいよね」という声が起こってきまして……。
AKI 声を起こしたのは、どちらさまでございましょう?
哲雄 ま、各方面から……なんですが、いちばん危機感を抱いたのは、近代市民社会を主導した人たち。産業資本家を中心とするブルジョワたちでしょうね。
AKI いまで言うと「勝ち組」ですよね? その「勝ち組」が、なんで危機感を抱くかなぁ?
哲雄 それを説明する前に、ひとつだけ理解しておいてほしいことがあるんですけど……。
AKI ハイ、何でしょう?
哲雄 世の中の「きれいごと」というのは、たいていの場合、だれかの都合に合わせて作られます。「だれかの都合」というのは、「だれかの利益」ということであり、その「利益」の中には、しばしば、「強欲」が含まれることもある。
AKI するってェと、何ですか、ご隠居。「一夫一妻制」という「きれいごと」も、だれかの「利益」のために作られた――と?
哲雄 あのね、AKIクン、私はまだ隠居の身ではありませんので……。
AKI ハイハイ。で、お答えは?
哲雄 「一夫一妻制」が「きれいごと」かどうかはともかくとして、キミが推測したとおり、この制度が社会的に確立されたのは、ある人たちの利益のためであり、その「ある人たち」というのは、19世紀以降、社会の主流を占めるようになったブルジョワ、特に産業資本家たちでありました。
AKI ウーン、わかんない。何で、「一夫一妻制」が産業資本家の利益になるんだろう?
哲雄 彼ら、産業資本家の出自は、マニュファクチュアです。
AKI 「マニュファクチュア」と言うと……?
哲雄 「工場制手工業」です。まだ、ロボットなんてものはいない時代ですから、当時の工場は、多くの人手を必要としました。つまり、工場労働者ですね。この労働者たちは、ある意味では消耗品ですから、たえず補わないと、工場が維持できません。
AKI あ、わかった。人手を確保するために、子どもを作ってもらわなくちゃならない。そのためには……。
哲雄 そうです。貧しい労働者たちにも、嫁をひとりずつ当てがって、子どもをじゃんじゃん作ってもらわなくちゃならない。
AKI じゃんじゃん……って、別に犬の子育てるわけじゃないんだから。
哲雄 でも、考えてみて、AKIクン。まだ乳幼児死亡率も高く、疫病も克服できてない時代ですよ。ひと組の男女に、最低でも2人以上の子どもを育て上げてもらわないと、拡大再生産が維持できないでしょ?
AKI 拡大再生産……? 何すか、それ?
哲雄 資本主義を成立させるための、絶対条件です。たとえば、ある工場が、何かの製品を1年に1000個作っていたとします。資本主義が維持されるためには、この1000個が翌年には1100個、その次の年には1200個……というふうに増えて、余剰利益を稼がないと、金利が払えなくなりますし、新たな設備投資もできなくなります。これ、資本主義の宿命なんですよね。
AKI ということは、それだけ人手も必要になる――ってことですね?
哲雄 そのとおり。そんなときに、女たちを、一部の富裕層がひとりで2人、3人と占有してたら、どうなります?
AKI 貧しい労働者階層にまで、お嫁さんがいきわたらなくなりますわね。てことは、子どもも作れなくなる。次世代の労働者が補給できなくなる。
哲雄 それじゃまずいよね――と、当時の産業資本家たちは気づいたわけです。
AKI それで、「嫁」を配給制にした?
哲雄 別に、「おまえにはこの女」とあてがったわけじゃありませんから、「配給制」てのはいかがなものか。ただ、「嫁は、おひとり様に1名ずつにしときましょう」というアグリーメントが、支配階級のほうで出来上がっていったんでしょうね。
AKI ナルホド――ッ。「一夫一妻制」は、「労働力確保」のための苦肉の策だったんだぁ?
哲雄 ま、「苦肉」だったかどうかはわかりませんが、以後、「一夫一妻」は、先進工業国のスタンダードになっていきました。それとね、AKIクン、そんな動きの中で、もうひとつ誕生した潮流があるんですよ。
AKI エッ、何だろう? 児童福祉の考え方とか……?
哲雄 オッ、いいセンいってるなぁ。その前段階です。
AKI じゃ……あれか。母体保護とか……。
哲雄 ほぼ、正解。婦人保護運動。つまり、フェミニズム運動ですね。当時の社会的指導層がいちばん心配していたことは、次世代の労働力をいかに確保するか――でしたよね。ということは、その次世代を産み育てる役目を背負う女性は、守らなくちゃならない。このことに気づいた、当時の上流階級の婦人たちなどが中心になって、「婦人を保護しよう」という運動を展開しました。
AKI 女を大事にしなさい――ですか? それ、もしかしたら、いまとは真逆の運動ですよね?
哲雄 そうなんです。いまのフェミニズムの考え方とは、正反対かもしれません。「女は弱いものだから守れ」というのが、その頃の「フェミニズム」の考え方の主流。しかし、いまや、「フェミニズム」はまったく逆の主張をしています。
AKI 「女を差別するな」ですよね。どうしてそうなっちゃったのか……?
哲雄 よーがす。そこらへんについては、次回、じっくり考えてみましょうか。それにしても、キミは……。
AKI な、何ですか?
哲雄 「守るべき」と言うには、あまりに強すぎる。しかし、「守るな。自立せしめよ」と言うには、ちょっと頼りない。ウーン……どうしたものか?
AKI それは、あなたにお考えいただく問題ではありせんことよ。オホホ……。


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