なぜ、「姦淫」は「罪」とされたのか?
不純愛トーク 第278夜
人類は、農業を開始して「富」を蓄えることを覚えると、その財産を継承するために、「父系制」を整えた。前回は、そんな話をしました。「父系制」の「道徳」が戒めたもののひとつに、「姦淫」があります。「姦淫」が「罪」とされたのも、実は、「財産保全」のため。今回は、人類が「道徳」を必要とした理由と、「姦淫」が戒められた理由について、じっくり掘り下げてみます――。
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AKI ねェ、哲ジイ。前回、人類が「乱婚」を止めたのは、財産の継承のためだ――とおっしゃいましたよね?
哲雄 ハイ、申し上げました。
AKI 道徳的な問題とかが配慮されたりはしなかったのですか?
哲雄 ど、道徳……? キミも奇なことをおっしゃる。「乱婚制」をとっていた人類が、「それは不道徳です」なんていう理屈を、いったい、どこから持ってくると言うんです? まさか、天から降ってきた――なんておっしゃるんじゃないでしょうね?
AKI そ、そういうことは……ま、ないか。
哲雄 ないです。100%、ないです! いいですか、AKIクン。
「道徳」というのは、常に、「後付け」なんです。
AKI 後付け……。
哲雄 先に、制度やシステムが発生して、それを合理化するために、「道徳律」が形成されていきます。「道徳律」を作り出すのは、そのシステムを維持していきたい側の人間、つまり、権力者側です。もし、その権力機構が変われば、道徳律も変わります。
AKI すると、あれですか? 人間は農業を始めて、富を蓄積することを覚えた。その蓄積した富を子孫に継承させていくために、「父系制」が誕生し、その「父系制」を維持するために、「道徳」が整備された――と、ざっとそんな流れですかね?
哲雄 オーッ、だいぶ、流れが読めるようになりましたねェ。
AKI ええ、空気は読めないけど、流れは読める女なんです、私。
哲雄 ところで、AKIクンは、「父系制」を維持するためにもっとも重要な「道徳」って、何だと思います?
AKI ま、あれじゃないですか? お父さんを敬いなさい――とか?
哲雄 近いっちゃ、近い。とにかくこの制度を維持するためには、何よりも「父権」の確立が必要ですよね。そのために、そこに神話をくっつけたりしながら、「父を敬え」「父に従え」と、執拗に訴えました。神様だって「父」にしちゃいました。
AKI それって、世界共通なんですか?
哲雄 農業を始めた地域には、だいたい共通していると思います。
AKI 始めなかった地域では?
哲雄 狩猟採集生活を送っている地域では、「母系制」が敷かれているところもあり、ほとんど「乱婚」に近いシステムが残っているところもあります。キャプテン・クックが到着した当時のタヒチなどは、完全な「乱婚制」で、むしろ「特定の相手とSEXすること」が禁じられたりしていたようですよ。
AKI エ――ッ!? 禁じられてた? つまり、いろんな相手とやっちゃいなさい――って? それがルール……? でも、何で?
哲雄 ウン。特定の相手とだけSEXすると、そこに「所有」の観念が生まれてしまうからじゃないですか。その頃のタヒチには、そもそも「所有」の観念というものがなかったようです。「人のもの」と「自分のもの」を区別する、という発想がなかった。最初、クックたちは驚いて、「ここの島民たちは泥棒だらけだ」と思ったらしいんだけど、そもそも「所有」の観念がないわけだから、「盗む」も「奪う」もないわけですよ。
AKI いいなぁ、そういう世界。
哲雄 いいでしょ? 私もいいなぁ――って思ってるんですよ。ここは、AKIクン、ひとつ、「所有」のことなんぞは、きれいさっぱり忘れてですね……。
AKI シッ、シッ! 「所有」のことを忘れて、私を「所有」しようって? そうは問屋が卸しませんことよ。それで、哲ジイ。農業を始めた人間が「父系制」を維持するために作った「道徳律」のことなんですけど、それって、単に「父を敬い、従え」だけじゃないでしょ?
哲雄 おっしゃるとおり。本来のネライは「財産の保全」ですから、そこらへんを厳しく戒めました。「姦淫」を戒めたのも、そのためです。
AKI あ、浮気はダメなんだ?
哲雄 あのね、「姦淫」と「浮気」は、似ているようで、まるで違うんですよ。
AKI エッ!? ど、どこが?
哲雄 「姦淫」っていうのは、歴史上、
男性の「財産権」を犯す行為として規定されてきました。
簡単に言うと、人の妻に手を出せば、「姦淫罪」に問われて、その男も、応じた妻も、厳しく断罪されました。たいていは、死罪でしたけどね。しかし、既婚の男が未婚の女に手をつけても、何の罪にも問われない。だれの「財産権」も犯しちゃいませんからね。
AKI 不公平じゃないですかぁ~!
哲雄 つか、「父系制」の世界では、「女」は男の「財産」としか考えられていませんでしたから。「姦淫の罪」というのは、「妻という財産」を盗む罪だったわけですが、それだけじゃなくて、もし自分の妻が知らない間によその男の子を身ごもったりしたら、どうなるか?
AKI そうか。自分の財産を、よその男の血を引く子どもに継がせてしまうことになりますよね。それはまずいですよね。
哲雄 なので、姦淫を厳重に戒めたわけです。財産の保全という意味では、もうひとつ、「父系制」を支えるための大事な道徳律がありました。前回もちらとお話しましたが、それは、「長子相続」の定め。日本でも、「惣領制」というのがありましたよね。あれと同じです。
AKI 長男が総取りするというシステムですよね。
哲雄 でないと、財産や権力が分散してしまいますからね。この掟を、もっとも厳重に定めたのが、ユダヤの律法でした。キミは、自分で自分を慰めたりすること、ありますか?
AKI 何を突然? そりゃ……まぁ……ないとは申せませんけど、それが何か?
哲雄 それのことを、何と言いますか?
AKI ふつう、オナニー……とか、言いますよね。キャッ……。
哲雄 その「オナニー」が人の名前だというのは、ご存じですか?
AKI エッ、そうなんですか? もしかして、オナニーを発明した人とか……?
哲雄 発明はしないでしょ。サルだって、犬だって、やるわけだから。エーッと、この「オナニー」さんは、旧姓を「オナン」さんとおっしゃいまして……。
AKI エッ、旧姓?
哲雄 あ、ジョーダンですよ。エーと、実はこの人、『旧約聖書』に出てくる人なんですが、実は、こういうことをなさった人です。聖書のその部分を抜粋してみますね。

AKI これが、オナニーとどう関係があるって言うんです?
哲雄 ここに出てくる「オナン」は、「エル」の弟、「ユダ」はその父親、「主」とは、天地を創造した全能の唯一神、「ヤーウエ」を指します。で、オナンがやった「地に漏らした」というのは、文脈から察するに「膣外射精」ではないかと思われます。
AKI じゃ、オナニーじゃないではありませんか。でもさ、膣外射精しただけで神さまに殺されちゃったんですか? どうして?
哲雄 これが、ユダヤの律法の厳しいところ。この一節が、「オナニー=罪悪説」の根拠となって、西欧社会では長い間、「オナニーは神の意思に背く行為」として糾弾され続けることになるのですが、実は、この記述については、別の解釈があるんです。
AKI わかった。このオナンさんは、お兄さんの嫁だった女となんてやりたくなかったんだ?
哲雄 オッ、正解。じゃ、どうしてやりたくなかったか?
AKI タイプじゃなかった――なんてのじゃないですよね、当然。
哲雄 違いますね。当時のユダヤの律法によれば、父親の遺産はすべて長子が継続します。その長子が、まだ父親が存命のうちに死んだ場合には、長子の息子が継承する、という決まりがありました。もし、オナンが兄嫁とエッチして子どもができてしまうと、父親の全財産は兄嫁の子が受け継ぐことになります。しかし、兄嫁に子ができなければ、財産は自分のところに転がり込んでくる。そこで、オナンは、子どもができないように、外に洩らした。この行為が、ユダヤ社会の道徳律に背く行為とされ、オナンは処刑された。どうも、こっちの説のほうが真相っぽい、という気がします。
AKI なるほど。財産相続のルールを意図的に逃れようとしたことが、罪に問われたわけですか。人類にとっては、エッチがどうのより、財産の継承のほうが重い問題だったわけですね。
哲雄 そのとおり。少なくとも、婚姻制度というのは、人類の歴史にとっては、愛情マターであるよりも、むしろ、財産マターであった。このことは、ぜひ、覚えておいていただきたいのです。
AKI でも、そこから「一夫一妻制」へと移行していくわけですよね。それはどうして?
哲雄 ハイ。そこ、とっても興味がありますよね。よーがす。次回、そのあたりをじっくりとお話しましょう。
AKI フアーイ。では、私は、家に帰って、地に漏らします。
哲雄 ナ、ナヌ……!?


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