なぜ、人類は「乱婚」を止めたのか?
不純愛トーク 第277夜
前回、生物界では、「オス」が存在の危機に直面している――という話をご紹介しました。人間社会の場合、その危機を加速させているのは、「一夫一妻」の制度。競争する機会を失ったY染色体は、劣化の一途をたどっています。しかし、なぜ人類は、精子を競争させる「乱婚制」を放棄してしまったのか? 今回は、人類が「乱婚」を止めざるを得なくなった本当の理由を探ってみます――。
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AKI ねェ、哲ジイ。前回、強い遺伝子を残すためには、「乱婚」のほうがいい――とおっしゃいましたよね?
哲雄 そのほうが、いろんな遺伝子の組み合わせが可能となり、その中から環境に適した強い組み合わせが生き残っていくようになるから、と申し上げました。
AKI チンパンジーは、乱婚なんですよね?
哲雄 ハイ、乱婚です。
AKI うらやましいですか?
哲雄 いいえ、ちっとも……。
AKI それはなぜ?
哲雄 私の精子は、それほど強くはない……だろう、と思うからです。
AKI 人間が「乱婚」を止めちゃったのは、哲ジイみたいな弱い精子にも、生き残るチャンスを与えるためだったんですね?
哲雄 違うと思います。それにね、確かに私の精子が人並み外れて強いとは思いませんが、「弱い精子」と決めつけるのは、いかがなものか?
AKI 自分で言ったんじゃない。
哲雄 それは、単なる謙遜ですッ! ま、加齢による劣化は、否めないところではありますが……。
AKI つか、あるかどうかもわからないし……。
哲雄 何ですと?
AKI あ、いえ、別に。それでね、哲ジイ、その「乱婚」を止めた理由なんですけど……。
哲雄 完全に止めてしまったわけじゃありませんよ。一部の未開社会には、ほとんど「乱婚」じゃないか――と思われる世界も残ってますし、「乱婚」ではないにしても、「一夫多妻」とか「一妻多夫」という制度をとっている文化地域は、「一夫一妻」をとっている地域よりも、はるかに多く存在しています。
AKI エッ、そうなの?
哲雄 なんか、目が輝き始めましたけど……。
AKI い、いや、別に……。でもね、哲ジイ、どうして人間の世界は、「乱婚」を止めちゃったんですかねェ?
哲雄 農業を始めたからでしょうね。特に、穀物の栽培。
AKI エッ、エ――ッ!? 穀物っていうと、米とか、麦とか、トウモロコシとか……?
哲雄 ハイ。この穀物の栽培こそ、人類が犯した「原罪」である――と、どこかのだれか(コリン・タッジという文化人類学者です)が言ってましたが、私もそう思います。
AKI どういうこと? 関連性がわかりませんが……。
哲雄 穀物というのはですね、自然に生えてるやつを採っちゃ食べ、採っちゃ食べ――ってやるわけじゃない。最初はそうやってたのかもしれないけど、そのうち人間は、それを栽培する、という方法を考えついた。
AKI それが、農業?
哲雄 ピンポーン! でね、この穀物栽培という農業は、年に1回か2回、収穫したやつを保管しておいて、ちょっとずつ食べていく――ということをやります。さて、ここで問題。こういうことを始めた結果、人間の社会には劇的な変化が起こるのですが、それは何でしょう?
AKI 火を使って煮炊きするようになった?
哲雄 そんなのは、ずっと前からやってました。
AKI 納屋が必要になった……?
哲雄 ほとんど正解。まずね、収穫した穀物を保管しておくための倉庫が必要になります。保管庫ができると、その保管物を略奪などから守るための「警備」が必要になります。最初は、自分ちの穀物は自分で守る程度の「警備」だったんだろうと思うんだけど、そこへもうひとつ、人間社会を変えるという意味ではこちらのほうが大きいと思うんだけど、収穫量に差が生じるようになった。その結果……。
AKI わかった。貧富の差ができた。
哲雄 正解! もちろん、動物なんだから、強者と弱者がいて、強い者がより多くエサを確保して、より多くのメスとエッチできるってことは、人間になる前からあったわけです。しかしね、AKIクン。農業が始まると、この強者と弱者の差は、蓄積されていくようになります。
AKI 蓄積……?
哲雄 ハイ、蓄積です。つまり、貧富の差がどんどん貯まっていくようになります。
AKI どうやって?
哲雄 先ほど言いましたよね。穀物を栽培するようになって、人間は、食糧という富を蓄えることができるようになったと。強者は、余剰穀物を富として蓄えることができる。富を蓄積することができるようになった強者は、弱者の農園を吸収したり奪ったりして、どんどん大きくなっていく。農園を奪われた弱者は、強者の奴隷や使用人となって支配下に置かれることになる。こうして、「権力」というものが発生します。仮に、その強者が亡くなると、その富はどうなります?
AKI ま、子孫が受け継ぐ……とか?
哲雄 そのとおり。つまり、親の代から子孫へと受け継がれていく「権力」や「財産」が生まれるわけですねェ。さて、ここでもうひとつ問題。こうして「権力」や「財産」が受け継がれていくときに、「乱婚」制をとっていたら、どうなります?
AKI エッ……と、あ、そうか。だれに受け継がせたらいいか、わからなくなっちゃう。困ったわ……。
哲雄 別に、キミが困るこたぁないでしょ。引き継ぐべき財産なんかないわけですから。
AKI それは、哲ジイだって同じでしょ。
哲雄 なので、私は「乱婚」でもいいと申し上げているではありませんか。しかし、この人たち、つまり、子々孫々に引き継ぐべき「権力」や「財産」を持っている人たちは、何としても、その分散を防がなくてはなりませんでした。
AKI そうか。それで「一夫一妻制」に移行した。
哲雄 いえ、いきなりそうはいきません。「一夫一妻制」が敷かれたのは、近世以降の話ですから。「財産」と「権力」の分散を防ぐために、人類がまず選択した方法、それは「父系制」の確立です。つまり、自分の伴侶から生まれた子孫は、父方の血縁に属するものとして、自分の「財産」や「権力」は、その直系に継承させていくという方法をとったわけです。
AKI ねェ、哲ジイ。なぜ、「母系」じゃダメだったの?
哲雄 それは簡単な理屈です。仮に「母系制」をとったとしましょうか? しかしね、そうなると、その母親が産んだ子が、自分の子種である――と、男はどうやって確信できるでしょう?
AKI もしかしたら、自分の「財産」を他の男の子孫に分捕られてしまうことになるかもしれない?
哲雄 そうです。なので、「父系制」。そして、「一夫多妻」。「多妻」にしたのは、自分の血統をできるだけ安全に残したい――と考えたからでしょうが、こちらは、「財産」云々より、遺伝子的事情と考えたほうがいいだろうと思います。あるいは、自分の血を引く忠実な身内を、できるだけ多く残そうとしたとか、当初は、働き手としての子どもをたくさん必要とした……とか。
AKI でも、哲ジイ。子どもの数が増えると、「財産」を受け継ぐ人数も増えるわけでしょ? それ、「財産」が分散することになりませんか?
哲雄 ああ、その心配はありますね。なので、
「父系制」をとる社会では、
「男系の長子」がそのすべてを引き継ぐ
という、「財産」や「権力」継承のシステムが作られました。
AKI つまり、「嫡子」の法則ですね?
哲雄 そうです。いまでこそ、相続に関しては「法定遺留分」なんてものが設定されていますが、昔は、嫡子が総取りするのが当たり前でした。イギリスの王室なんて、いまでもそうではないですか。
AKI 旗本の三男坊なんて、無一文に近いですものねェ。
哲雄 エッ、それ、何の話?
AKI あ、いえ。ただのTV時代劇の話でした。


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