そもそもこの世に、「オス」は必要だったのか?
不純愛トーク 第276夜
Y染色体が危ない! 遠い将来、この地上からオスが消えてしまうかもしれない――という話を、前回はしました。それにしても、メスがいて、オスがいるというシステムは、いったい何のために作られたのか? もしかしたら、オスなんていうものは、もともとは必要ないものではなかったのか? 今回は、生物界で「オス」が作られた事情を、生物学的に考察してみます――。
【今回のキーワード】 Y染色体 乱婚
【SEOリンク・キーワード】 エロ 恋愛 恋愛小説 オーガズム コミュニケーション 不倫
哲雄 あ~あ、それにしても、オスとはなんとはかない存在なのでありましょうか?
AKI なんか、いきなりたそがれちゃってますけど……。
哲雄 前回、Y染色体が消滅するかもしれない――という話をしましたよね?
AKI 600万年後にはでしょ? そんな先のことを心配して、ブルーになってるんですか?
哲雄 そもそも、この生物界に「オス」なんていうものが必要だったのか?
AKI な、何もそこまで思い詰めることはないと思いますけど……。そりゃ、あれじゃないですか? 子孫を残すためには、オスとメスが合体してですね……。
哲雄 それは、長い長い生物の歴史から言うと、比較的最近のことでありまして……。
AKI そ、そうなんですか?
哲雄 最初は、単純な単細胞生物の時代で、そういう時代には、生物は、単に自分のクローンを作っていました。こういう生殖を「単為生殖」と言うのですが、これをやっておりますとですね、まったく自分と同じ遺伝子構造のコピーを作るだけですから、進歩がない。別に進歩しようという気なんかはなかったと思うんですが、そうもしてられない危機が、生物を襲うんですね。
AKI 危機……? ディープ・インパクトとか……?
哲雄 ま、そういうのもあったかもしれませんが、大きくは気候の変化とか、水中の養分の変化とかじゃありませんか。でね、そういう危機が訪れると、DNAが1セットしかない単細胞では、生き延びるのが厳しくなります。
AKI みんな、いっぺんにダメになっちゃうからですね?
哲雄 ハイ。そこで、彼らは何をしたか? 他の個体と一緒になってDNA2セットで1組というユニットを作っちゃったわけです。こうすれば、片方のDNAがダメージを受けても、もう一方のDNAでサポートできるでしょ?
AKI Y染色体よりX染色体が強い理屈と同じですね?
哲雄 よく覚えていてくれました。こうして、生物は他の個体と遺伝子情報を交換し得る仕組みを作り、より環境に適応できる遺伝子を補い合いながら進化をたどるわけですが、そのうち、子孫を保管して育てる個体とそれをサポートする個体とが、役割を分担するようになります。
AKI それがメスとオス?
哲雄 そうです。念のために申し上げておきますが、オスからメスが生まれたわけではなくて、メスからオスが分化したわけです。オスてぇものは、あなた、あくまで便宜的に登場したにすぎない。そういうはかない生命体なんですよ。
AKI ま、まぁ、そう卑下なさらなくても。
哲雄 よくたとえられるのが、航空母艦と艦載機の関係。
AKI エーと、それだと、航空母艦のほうがメスってことですかね?
哲雄 どう見てもそうですね。航空母艦は艦載機なんかいなくたって、浮かんでられますが、艦載機は、着艦する母艦がいなくなったら、海に落ちるしかありません。ああ、情けない。カマキリなんぞは、用がすんだら、メスに食われちまうんですからね。
AKI つまり、あれですね。
オスというのは、メスのお役に立つために便宜的に作られたにすぎない存在である
――と? ね、哲ジイ、その「便宜的に」の「便宜」には、どんなものがあると考えられているんですか?
哲雄 ひとつは、遺伝子結合のチャンスを増やす、ということではないですか?
AKI 結合のチャンスを増やす? それって、エッチのチャンスを増やすってことですね?
哲雄 ま、フーゾク的に言うと、そういうことになりますかねェ。
AKI べ、別に「フーゾク的」じゃなくても、そうでしょ? で、その結合のチャンスを増やすのは、何のため?
哲雄 そのほうが、いろんな遺伝子セットができますよね。さまざまな環境の変化に適応できる遺伝子セットが、偶然にも誕生する確率が、そのほうが高くなります。
AKI いろんな遺伝子セット……? てことはですね、哲ジイ。オスはいろんなメスとエッチしなくちゃなりませんよね?
哲雄 もっちろ~ん! そのために、雌雄の体を分化して、オスがいろんなメスと合体できるようにしたわけです。そうすれば、精子は、いろんな卵子と合体して、自分の遺伝子を残す確率を高めることができる。一方、メスも、さまざまなオスの遺伝子を受け取ることで、最強の遺伝子セットを組み立てる可能性が高くなります。
AKI てことは、乱婚……?
哲雄 生物の基本的な交配の仕組みは、乱婚だと思いますよ。
AKI 乱婚かぁ。いいなぁ……。
哲雄 いいなぁ……ですか。そりゃね、AKIクン、いろんな精子を受け取るのは、キミの趣味には合っているかもしれないけれど、その代わり、オスの精子もいろんなメスにばら撒かれるわけですよ。
AKI かまいませんとも。こっちも、いろんな精子をフルイにかけさせていただきますから。言っときますけどね、哲ジイの老いぼれ精子なんぞ、とてもとても、その中では生き残れませんことよ、オホホ……。
哲雄 けっこうですとも。こちらも、畑は選ばせていただきますので。
AKI フン。そんな余裕ないくせに。それで? オスとメスを分化することの「便宜的な理由」っていうのは、それだけなんですか?
哲雄 最初にお話した「役割の分担」ってこともあったんじゃないでしょうか。卵にしろ、胎児にしろ、メスがその体内で自分たちのコピーを守り育てるということになると、思うように栄養補給ができなくなったり、外的に襲われたりする可能性も出てくるでしょ。
AKI ああ、そうか。エサを確保してくるパートナーが必要になりますわねェ。その役目のために、オスを必要とした?
哲雄 中には、メスが自らエサを獲る種もあるみたいですけど、たいていは、妊娠中のメスにエサを運ぶのは、オスの役目になりました。それと、もうひとつは、防衛。
AKI わかった。セコムしてくれる存在を必要としたわけですね?
哲雄 平たく言うと、「用心棒」が必要だった。つまり、
オスは、エサの確保と防衛を専門に担う役割
としても、その存在が期待されたわけです。
AKI で、子どもが生まれてしまうと、用がなくなるから、殺して食ってしまう――。
哲雄 そういう種もいたということです。でもね、動物の場合、個体サイズが大きくなるのに比例して、子どもの養育期間も長くなります。人間なんて、その期間が20年近くにもなります。その間は、エサを補給し続けなければならないし、自分たちのコロニーは守り続けなくちゃならない。
AKI オスの雇用期間も長くなるってわけですね?
哲雄 長くなるけど、子どもが巣離れしてしまうと、やっぱり用なしになってしまう。
AKI ヘタすると、熟年離婚……かぁ。
哲雄 ね、オスって悲しい存在でしょ?
AKI かわいそうでちゅねェ。でも、よかったじゃないですか、哲ジイ。
哲雄 何が……でしょうか?
AKI 就職してないから、リストラの心配もない。
哲雄 ムッ。言わせておけば、この口先女め。


2012年11月リリース
好評! App Storeで上位ランキング中!
iPhone、iPad、アンドロイド端末でダウンロードできます。
★iPhone、iPadでご覧になりたい方は、こちら(iTuneダウンロードページ)から

2012年12月リリース
スマホ用オリジナル書き下ろし! App Storeで好評販売中!
iPhone、iPad、アンドロイド端末でダウンロードできます。
★iPhone、iPadでご覧になりたい方は、こちら(iTuneダウンロードページ)から

管理人は常に、下記3つの要素を満たせるように、脳みそに汗をかきながら、記事をしたためています。
あなたの押してくださったポイントを見ては、喜んだり、反省したりの日々です。
どうぞ、正直な、しかしちょっぴり愛情のこもった感想ポチをお送りください。よろしくお願いいたします。



→このテーマの記事一覧に戻る →トップメニューに戻る
- 関連記事
-
- なぜ、人類は「乱婚」を止めたのか? (2013/06/06)
- そもそもこの世に、「オス」は必要だったのか? (2013/05/29)
- やがて、地上からオスがいなくなる…!? (2013/05/21)