若者に「性」を教えた女たち

手と手 

かつて日本の「村」では、若者に「性」を仕込むのは、
年配女性たちの役目でした。その女たちとは…? 


 性とエッチの《雑学》file.101   R15 
このシリーズは真面目に「性」を取り上げるシリーズです。15歳未満の方はご退出ください。

【今回のキーワード】 夜這い おこもり  345
【リンク・キーワード】 エロ エッチ 官能小説 オーガズム 不倫




 子どもは、いつ、どのようにして「」を覚えるのか?
 学校できちんとしたことを教えればいいのかもしれませんが、それはあくまで科学的にということですから、生身の女の子や男の子を相手にどういうふうに事に及べばいいのか――までは、教えてくれません。

 男の子に関しては、昔は、と言っても、西欧の近代合理主義が社会のシステムとして浸透するまでは――という話ですが、まだ未熟な少年たちを「おとなの男」へと育て上げるための、さまざまな慣習や儀式が、各地に存在していました。
 それらの中には、いまもその名残が「祭り」などの中に残されている地域もあります。
 いまでは文献によるしかない、その時代の風習の中で代表的とも言えるのが、「おこもり」と「夜這い」でしょう。

若者に「性」を手ほどきする「おこもり」という風習

 「おこもり」は、いまでも、純粋な宗教儀式として行われているところもあります。
 当時の「おこもり」が、「宗教的な儀式」であったのかどうかについては、定かではありません。というより、地域によって違っていた――と言ったほうがいいかもしれません。中には、最初は宗教的な儀式であったものが、そのうち、性的な要素を加えていったケースもあるでしょうし、最初から、若者をおとなにするための教育的行事として企図された場合もあるかもしれません。
 ま、そこらへんは専門家におまかせすることにしましょう。

 この風習が広く見られたのは、「」の習わし(「念仏講」とか「無尽講」とかの、住民たちの横の組織です)が盛んに行われていた地域。地理的に言うなら、西日本が中心です。
 「おこもり」という言葉から想像がつくとおり、これは、村人たちがどこかにこもって夜を共に過ごす習慣なのですが、そういう集いは、たいてい、年齢階層別に行われました。
 大別すると、「子ども組」「若衆」「中老」といった区分なのですが、性教育がテーマになるのは、このうちの「若衆」組。「若衆」組に属するのは、だいたい13~15歳ぐらいから25歳くらいまでの青少年でした。
 この若衆組に新しく参加する若者たちがいると、それらを村のお堂などに集めて、お経を唱えたり、お茶を飲んだりして一夜を過ごす――という風習が、各地にありました。これが「おこもり」なのですが、その席には、「ある目的」のために、女たちがやってきました。
 その女たちの「目的」は、まだ何も知らない若者たちに性の手ほどきをすることでした。

「教育係」は、後家が中心の年配女性

 この「教育係」を務めたのは、たいていは村落の年配(と言っても、いま風に言うと「アラフォー」ぐらいが中心です)の女性たちでした。
 それも、亭主を亡くした後家さんなどが中心であった、と言われています。
 そりゃそうでしょう。いかに村の若者を育てるためとはいえ、自分の女房が活きのいい若衆のお相手を務めたんじゃ、亭主も心穏やかではいられなくなるでしょうからね。
 「おこもり」にやって来た女たち(←「たち」です。その人数は、集まる若衆の人数に対応していました)は、まずお堂で般若心経などを唱え、若者たちにそれを教え込んだのち、夜がふけると、若衆ひとりに女ひとりがついて、同衾。つまり、一緒の布団に入って、手取り足取り、エッチの方法を教え込みます。
 ただ、実技(?)を教えるだけでなく、それがすむと、お茶などを飲みながら、「女はどうされると気持ちがいいか?」とか、「どうすれば子どもを授かるか?」とか、正しい夜這いの作法とか、口説き方とか、結婚までの作法とか――男として知っておかなければならないひと通りのことを、雑談交じりで講義した後、再び、相手を決めて布団に。
 だれがだれと同衾するかは、たいていは、クジで決められていた――と、ものの本には書いてあります。
 ま、これはあくまで、平均的な「おこもり」のやり方。細部は、地域によって違っていただろうと思われます。

 ただ、特筆すべきは、こうしたしきたりが、ひっそりと個人的にではなく、村の公的な行事として堂々と行われていたということです。
 なんというおおらかさ。

 しかも、無料!

 その上、このシステムには、もうひとつのメリットがあります。教えられる若者もさることながら、教えるほうの後家さんたちにとっても、この「ミッション」は、心はずむお仕事であったろう――と推測できます。
 つまり、このシステムは、若者を育てながら、なおかつ共同体内の中で生きがいを見失った婦人たちにその活躍の場を与える――という、なんとも理にかなったシステムだったわけですね。

「性の教師」がいなくなった時代

 こうした公的なシステムが構築されなかった地域でも、年配の女性たちが若い男に性の手ほどきをする、というスタイルは、さまざまな形で見られます。
 各地の祭りには、「祭りのかか」(筆者の勝手なネーミングです)みたいな女性たちがいて、まだ性を知らないと見られる若い男がいると、森の奥とかに誘って女の体を教えてあげる……なんてことをやっていました。
 おそらく、こういう風習は、世界各地にあったのだろうと想像できます。
 中には、面白いのもあります。

 アフリカのケニアには、チャムス族という一夫多妻制をとる部族がいるのですが、ハーレムを形成するわけではなく、夫が複数の妻のもとを訪ねてくるという「通い婚」ですから、妻たちは、ふだんはヒマで仕方がありません。このヒマな妻たちは、「ランバタ」と呼ばれる「若い愛人」を持つのが習慣となっていました。
 彼女たちは、思い思いにビーズ細工を作っては、目当ての少年が「割礼」の儀式を終えるのを待ちます。「割礼」をすませてない少年を愛人にすることは、禁じられていたからです。割礼をすませて少年たちが「男」になると、女たちは、目当ての若者に用意したビーズ細工をプレゼントします。
 面白いことに、ビーズを受け取った若者は、女の申し出を拒むことができない――とされていました。そうして妻たちの「ランバタ」となった若者は、彼女たちのもとで「性」を仕込まれ、「おとな」として嫁を迎えることのできる年齢を迎えるまでの日々を過ごすことになるわけです。
 「愛人」のシステムなのですが、同時にこのシステムは、「性教育のシステム」としても機能していたのではないか――と、筆者はニラんでいます。

 教師役は、女ばかりとは限りません。
 都市部の若者たちの場合には、先輩格の男性が、「そろそろ、こいつを一人前にしてやんなくちゃ」と思うと、女郎のいる遊郭などに連れて行って筆おろしさせたりもしました。
 遊郭がなくなった後は、ソープランドなどがその代わりとして使われたりもしたのでしょうが、いまのようにフーゾク化したソープランドに「男女の機微」まで教える能力があるのかというと、いささか疑問。そして、そこまで面倒見のいい先輩も少なくなり、「裸のつき合い」なんて言葉が「死語」と化した現代では、こういう実地指導も期待薄となってしまいました。

 では、現代の若者は、いったい、どこでどうやって「男になること」を学ぶのか?
 もしかしてAVやフーゾク?
 しかし、そんなものを通して学べることは、せいぜい「抜き方」程度のもの。「男女の機微」を学ぶ機会は、どんどん希薄になっているのではないか――と、長住は危惧しています。

 さて、ここまでは「少年」についての話でしたが、では、女たちは、どうやって「性」を学んだのか?
 次回、その話をしていみたいと思います。



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