ミセス・ボディショット〈13〉 そのタッチは亭主公認…?

本大会出場権を決めた聡史と幸恵は、ふたりだけで
祝勝会をやることになった。「亭主公認だから」と幸恵。
「約束したものをあげる」と腰を浮かせた幸恵は――
マリアたちへ 第16話
ミセス・ボディショット〈13〉
前回までのあらすじ 40歳でテニスを始めた海野聡史は、レッスンのラリー練習で、有賀幸恵のボディショットに下腹部を直撃される。幸恵はクラスに4人だけいる女子の中でも、ちょっと目を引く美人だった。幸恵には夫がいて、テニスもふたりで始めたのだが、その夫は体を壊して、いまは休んでいるという。ある日のラリー練習で、聡史は幸恵とペアを組んで、見事なフォーメーション・プレーを見せ、相手ペアを下した。至福の瞬間だった。なぜか、幸恵と組むと、聡史の足は燃えた。その数週間後、「関東地区ASK杯争奪テニス大会」のエントリー受付が発表された。「オレと組まない」と誘いかけてくる大沢の誘いを断って、幸恵がパートナーに選んだのは、聡史だった。「サーブに不安がある」と言う聡史を、幸恵はプライベート・レッスンに誘い、さっさとコートを予約。それは、聡史のオフィスのすぐ近くにある都営のコートだった。練習が終わると、幸恵が「オフィスのシャワーを借りたい」と言い出した。トレーナーの下から湯上りの脚をのぞかせて立つ幸恵。ふたりの唇は、どちらからともなく近づき、ふたりは小さな罪を犯した。やがて大会の予選が始まった。1回戦の相手は、格上のUMペア。しかし、海野・有賀ペアは、絶妙のフォーメーション・プレーで、その強敵を下した。続く2回戦を快勝して、3回戦は、またもUMペアとの対戦。ゲームはデュースを繰り返して20-20の熱戦となった。疲れはピーク。ファースト・サービスをミスった聡史に幸恵が耳打ちする。「このゲーム取ったら、お尻触らせてあげる」。燃えた聡史のサーブが決まって、3回戦突破! 「ふたりだけで祝勝会しない?」と幸恵が言い出した――
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このシリーズは、筆者がこれまでに出会ってきた思い出の女性たちに捧げる「ありがとう」の短編集です。いま思えば、それぞれにマリアであった彼女たちに、心からの感謝を込めて――。

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駅前に炉端焼きの店がある。
炉端と言っても、炉の前のカウンター席に座れるのはせいぜい6、7人で、あとは、小さな座敷に仕切られている。
聡史は、たまに、遅い夕食をとるために立ち寄ることがあったが、そういうときはカウンターに座って、中ジョッキを傾けながら刺身と好みの焼き物を2、3品頬張り、茶漬けで腹を満たして、さっと席を立った。
「いつも素早いですね」とマスターにはからかわれていたが、「早メシも芸のうちだから」と笑ってかわしていた。
「おや、珍しい。どうしたんですか、こんな美人とご一緒に? 初めてじゃないですか、女性と一緒にお見えになるなんて?」
聡史が有賀幸恵を伴って暖簾をくぐると、マスターが冷やかすように声をかけてきた。
まったく口の軽いオヤジだ――と思ったが、その無駄口のおかげで、幸恵の顔がちょっとほころんだ。無駄口も、まるっきりムダというわけではないらしい。
「たまに、座敷なんかどうです?」とマスターに勧められて、店の奥のいちばん小さな個室を使うことにした。
4人用に作られた個室だが、4人で使うには、ちょっと狭い。
その部屋に聡史と幸恵は向かい合って腰を下し、中ジョッキを一杯ずつと、刺身の盛り合わせ、串焼き5種類を2本ずつ注文した。
「いつも、ひとりで来てるんですか?」
「おしゃべりなマスターがそう言ってましたねェ」
「ほんと、おしゃべりな人。じゃ、きょうは、いつもの分まで、パッ……と盛り上がります?」
「ふたりで?」
「そうね。じゃ、ほっこりと」
「できることなら、しっとり系のほっこりでお願いします」
「しっとりしてたら、私、酔っちゃいますよ」
「いいですよ。ご主人を心配させない程度だったら……」
「海野さんって、変な人」
「どうして?」
「ふつう、心配しないでしょ、そんなことまで?」
「一応、これでも、良識は持ってるつもりなんで」
「じゃ、その良識、きょうは私が預かっちゃう。いいんですよ、きょうは、海野さんと飲んで帰る――って言ってあるから」
「エッ、エーッ!? ボクのこと、知ってるんですか、ご主人?」
「私、話してるし……。1回戦も見てたのよ」
「エッ、どこで?」
「上のロビーから。ときどき見に来てるの、カレ。車椅子だから、コートまでは下りて来られないんだけど……」
「ク、車椅子? 体、壊されてるって聞いたけど、そんなに……?」
「ちょっとね、脊椎を痛めてしまったの。テニスも原因だと思うんだけど、でも、クルマの運転とかは、できるんだよ。あ、そうそう。海野さんのテニス、ホメてましたよ。いいプレーするね……って。きょうは、海野さんと祝勝会だよ――って言ったら、楽しんでおいで、だって。だから、きょうは、亭主公認」

「公認」と言われると、少し複雑な気分になる。
どこまで「公認」されているのかも気になった。
しかし、それを訊いてみるわけにもいかない。
幸恵は、聡史の逡巡にはおかまいなしに、うまそうにビールを飲み干していく。一杯目は、あっという間に空になり、二杯目も空になった。
追加の一杯を注文すると、幸恵はトイレに立った。その足がいくぶん、フラついているように見えた。
「ね、ちょっと奥に寄ってくれる?」
手洗いから戻ってきた幸恵が、トロンとした目で言う。
聡史が奥に詰めると、幸恵は、聡史の隣に腰を下した。下したと思うと、少し、その腰を浮かす。浮かしながら、いきなり、手を聡史の手に伸ばした。
「この手、ちょっと貸して」
ラケットを握るようにつかんだ聡史の手首を、幸恵はゆっくり、自分の腰に導く。そこへ、そっと腰を沈めてくる。
聡史の手のひらに、やわらかい肉の塊が触れた。
ウインド・ブレーカーのツルツルの生地を通して、そのやわらかい肉は、プリンとした弾力を返してきた。
「約束したでしょ。触らせてあげる――って」
タイブレークの20-20からの41ポイント目。ファーストをミスった聡史に、幸恵がささやきかけた言葉だった。
あれは――と、聡史は思った。
コントロールを乱したピッチャーにキャッチャーがささやきかける「あとで、きれいなネェちゃん、抱きに行こうや」的な言葉で、別に本気にしていたわけではない。しかし、聡史の手のひらの上では、幸恵の尻の少し熟れかけた桃のような肉が、リアルな感触を伝えてきていた。
重みをすべて預けてくるのではなく、幸恵は、やや浮かし気味にした尻を聡史の手のひらにこすりつけるように動かしてくる。聡史の人差し指は、2つの肉塊の間に滑り落ちて、微妙な渓谷に食い込んでいく。
幸恵のひときわ繊細な肉は、聡史の指をその弾力のうちに捕える。捕えたまま、幸恵はかすかに、腰を前後に動かす。
「ハァ……」と深い息を吐いて、幸恵が頭を聡史の肩に載せてくる。
ほんの束の間のことだった。

しばらく、禁断の遊戯に浸ったあとで、幸恵はすっと体を離して、自分の席にもどった。
「これも、承認ずみ?」
「事後承諾……かな」
「取るの?」
「海野さんが秘密にしておきたければ、黙ってる」
「それ、ボク次第なの?」
「そうだよ」
有賀夫妻の夫婦関係は、どうなっているのだろう?
聡史が首をひねっていると、幸恵が「ほんとはね……」と口を開いた。
「うちの旦那、もう、できないの」
「エッ……?」
「脊椎を壊して、あっちもできなくなっちゃったんだ。たぶん、反射が利かなくなったんじゃないか――っていうんだけど……」
「そんなこと……あるんだ?」
「頭はエロでも、体がエロになれないんだって。だからね、言うんだよ。遊んできてもいいよ――って」
複雑な気持ちだった。
「遊んできてもいいよ」と言われて、「じゃ……」と男遊びに走るような女には、幸恵は見えなかった。
仮にそうだとして、その遊びの相手が自分なのだとしたら、それは名誉なことなのか? 「じゃ、遠慮なく」と飛びついていいものなのか?
聡史の答えは「NO」だった。
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