飛べない青い鳥。国際恋愛を妨げる障害について
不純愛トーク 第249夜
何回か続けてお送りしている外国人とのラブ。今回は、その恋に「結婚」というゴールはあるのか?――を、考えてみます。外国人が日本で結婚生活を送ろうとするとき、そこには、「閉鎖的な日本の社会システム」という壁が、立ちはだかる、という話です――。
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AKI 満開の桜の下で、はるかロンドンからやってきたイギリス娘と「アイ・ニード・ユー」なキスを交わした哲ジイは、その彼女と愛し合う関係になったんですね?
哲雄 ハイ、なりました。
AKI できれば、この人と生涯を共にできたら……とも思ったんですね?
哲雄 ハイ、思いました。
AKI 彼女は、何と……?
哲雄 彼女も、そう思っていたようです。自分は、日本が好きだし、日本の男も好きだ。できれば日本にとどまりたい――と、そのようにおっしゃいました。
AKI なぜ、その願いに答えてあげなかったんです、哲ジイは?
哲雄 答えてあげなかったんじゃなくて、答えが見つからなかったんですよ。
AKI 答え? 何の答えです?
哲雄 彼女が、この日本で暮らしていくには、どうすればいいか、という答えです。実はね、外国人が日本で暮らしていくってことは、日本人が外国で暮らすのよりも、数段、むずかしい。
AKI そ、そうなんですか?
哲雄 社会が、そのようにオープンには作られてない。たとえば、仕事をどうするか?
AKI 専業主婦ってわけにはいかなかったんですか?
哲雄 私が9時~5時ですむ仕事をしていれば、あるいは、そういう選択も可能だったかもしれないけど、残念ながら私の仕事は、毎日、何時に仕事が終わるかわからない――っていう仕事だった。雑誌の編集という不規則で、きわめて長時間の仕事だったからね。いつ帰ってくるかわからない夫を、周りに親戚も友人もいない家で、じっと待っている――なんていう生活は、できないでしょう。それに、彼女自身にも、「ハウスキーピング」なんていう生活を選ぶつもりはなかった。
AKI 仕事がしたかったんですね、彼女も? 日本じゃ、それはむずかしいこと?
哲雄 そりゃ、外人パブのウエートレスなんていう仕事だったらありかもしれないけど、彼女は、自分のスキルを活かせる仕事をしたい――と願ってたからね。
AKI 彼女のスキルって、何だったんですか?
哲雄 マップ・ドローイング。
AKI マップ……? 何ですか、それ?
哲雄 わかりやすく言うと、地図を描く仕事。いろんな会社を回って探したらしいんだけど、日本でのマップ・ドローイングは、その頃、ほとんど、コンピュータ化されていて、彼女のような職人を必要としてなかったんだよね。だからと言って、スキルに頼らなくてもすむ単純一般労働に従事するのは、日本語能力を習得してない彼女にはむずかしい。
AKI 生きていく術がなかったんですね、日本では?
哲雄 これ、外国人が日本に定住したいと希望する場合の、最大のネックなんだよね。愛はあっても、この国で生きていくためのライフ・スタイルが見つからない、見つけられない。日本という国は好きだけど、その社会には、そんな人たちを受け入れるシステムが整ってない。国際結婚を考える場合にも、そのことは、常に問題になるわけです。
AKI 日本は、アメリカみたいな「多民族国家」じゃないしね。
哲雄 というわけで、「あなたとこの国で暮らせたら……」という彼女の夢はかなえられず、そして、彼女は泣く泣く……。
AKI エッ!? 別れたんですか?
哲雄 というか、旅立たざるを得なかったわけです。太平洋の彼方へ……。
AKI 太平洋の彼方……というと、アメリカとか?
哲雄 オーストラリアです。同じ英語圏ですからね。そこなら、何か、彼女にふさわしい仕事が見つかるかもしれないし……。
AKI 哲ジイも、そのつぶらな目から、海がめのような涙をお流しになって……?
哲雄 確かに、目はつぶらではありますが、涙を流したりはいたしません。会うは「別れ」のはじまり。幼い頃から、そう刷り込まれておりますからね、私の脳には。
AKI そう言えば、子どもの頃から、転校、転校……の連続だったんでしたっけ?
哲雄 ハイ。なので、私の脳には、「いつまでも、不変に続く人間関係」というアイテムが、もともと存在しないんです。でも、こたえましたね、彼女との別れは。いまでも、私のデスクの引き出しの中には、彼女が去りぎわに渡してくれた一枚のカードがしまってあるんですけどね……。
AKI ど、どんなカードです?
哲雄 偏光フィルムの貼り付けられた、ホラ……光の当たる角度を変えると、絵柄が変わるっていうのがあるでしょ?
AKI ああ、知ってる。どんな絵柄だったんですか、それ?
哲雄 虹と「青い鳥」の絵柄でした。カードを傾けると、「青い鳥」が飛んでいくんです、「虹の彼方」へ。
AKI それ、歌のタイトルにありませんでしたっけ?
哲雄 ありますよ。映画『オズの魔法使い』で主題歌として使われた『Over the Rainbow(虹の彼方へ)』という曲です。私がよくその曲を歌っていたのを知っていて、彼女はそんな絵柄を選んだと思うのですが、そこには、彼女のメッセージも込められていたんですね。彼女は、それを私に渡しながら、言ったんですよ。「あなたも、この青い鳥みたいに、飛べたらいいのにね」って。
AKI 飛べなかったんですか、哲ジイは? ま、飛べないか、その体形じゃ……。
哲雄 体形の問題じゃなくて! 私は、その頃、自分の会社を持ってましたからね。それを放り出して、海の向こうに行っちまうなんてことは、できませんでした。それに、飛行機、嫌いだし……。
AKI 「飛べない青い鳥」かぁ。笑えないッす。それ、いつ頃の話ですか?
哲雄 前世紀です。
AKI それはわかってます。だから、何年ぐらい前の話か……と。
哲雄 かれこれ、20年近くは経っているでしょうかねェ? たぶん、私が真剣に結婚の可能性を考えた、最後の人でしたね、彼女は。もう、そのとき彼女が渡してくれたカードも、フィルム面がヘタってしまったのか、光に当てても、絵柄がボーッとしか浮かんでこないんですけどね。
AKI ま、本人も、相当、ボーッとなってますからね。仕方ないっちゃ、仕方ない。でもさ、哲ジイ、
外国人との恋は成立するとしても、
結婚ってなると、いろいろ問題あり
なんですねェ。
哲雄 ありますねェ。言葉の問題、家族観の問題、宗教の問題、そして仕事の問題。それらを解決しないと、結婚して家族を営むってのは、むずかしいかもしれません。
AKI 同じアジア人同士でも、むずかしいですか?
哲雄 アジア人にもいろいろあるでしょ? 中国人や韓国人、台湾人などの東アジア人なら、もともと、宗教にはいい加減だし、儒教的な倫理観なんかも共通してる部分があるから、比較的、共同生活を送りやすいんだけど、フィリピーナはカトリックだし、マレーシア人やインドネシア人はイスラムだから、宗教的な問題がネックになる場合が多い。それにね、日本人よりも、他のアジア人のほうが、家族間の絆が強い。そこは、頭に入れておかないと、「こんなはずじゃ……」ってなることも多いと思うんだ。
AKI そこらへんは、価値観の問題だから、相手の考え方や感じ方をおたがいに理解するようにすれば、解決できない問題というわけではありませんよね。
哲雄 おっしゃるとおり。日本人離れしている私なんぞは、むしろ、そのほうが心地いいと感じる場合だってあります。
AKI ロンドン娘とは、バツチリだったわけですね?
哲雄 宗教観も、世界観も、セックスも……バッチリでございましたよ。でもね、仕事の問題だけは、どうにもならない。
AKI それって、社会のシステムの問題でもありますよね。
哲雄 そう思います。私はね、少子化の問題を克服するためにも、日本の社会は、もっと外国人労働者を受け入れるべき、と考えているのですが、そのことを話し出すと長くなりますので、それは、次回ということにしましょうか?
AKI それにしても、哲ジイのクレア嬢は、いま、どこで何をしていらっしゃるのでしょうねェ。オーイ、クレアちゃ~ん!
哲雄 心あらば、いざ言問わん、青い鳥。わが思う人は、ありやなしやと。
AKI ハテ……どっかで聞いたような気がする……。

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