恋の鳥。「ナイチンゲール」と「ブルーバード」
不純愛トーク 第247夜
今回は、長住哲雄とっておきの「ロスト・ラブ」の話。はるかロンドンからやって来た美しいイギリス娘との恋について、ちょっと感傷に浸ったりしてみます。もちろん、日本人と外国人女性のラブの問題点がどこにあるのか――を探るため、なのですが、まずは、そもそものなれそめから――。
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AKI さて、本日は、哲ジイの数少ない「美しい恋物語」のひとつをご披露くださるんですよね。プリティなロンドン娘との……。
哲雄 「数少ない」と言われると、いささか抵抗を感じますが……。
AKI それ、いつ頃の話ですか?
哲雄 頃は1980年代。バブル真っ盛りのジャパン。折しも、お江戸の町には、桜の花が狂おしくも咲き乱れ……バンバン!
AKI あら、きょうは講談調。
哲雄 はるかロンドンを旅立ちて、幾千里。道々、路銀の足しにとアルバイト。インド⇒ネパール⇒チベット⇒中国……と、続く旅路に疲れ果て、やってきましたニッポンの、花の東京のど真ん中。そこは、夜に言う奥座敷。ネオン輝く赤坂のそのまた奥に構えたる、ジャズ・クラブとは名ばかりの、生バンドにホステス付きのパブでした。
AKI して、その美しきロンドン娘のお名前は?
哲雄 姓はソーントン、名はクレア。
AKI ね、哲ジイ、その話、前に書きませんでした?
哲雄 ハイ。小説にしてしまいました。『クレアと桜と青い鳥』というタイトルで、姉妹サイトに掲載していたのですが、ワケあって、現在は削除しております。
AKI エッ、そのワケとは?
哲雄 いまは、訊かないでやってください。でね、私は、ひと目見るなり……。
AKI 恋に落ちちゃったんですね?
哲雄 あ、この人、日本人じゃないな……と、ピンときました。
AKI ピンと……って、見りゃわかるでしょ、そんなの?
哲雄 そうでもないと思いますよォ、亀山クン(『相棒』の亀山刑事です)。近頃は、日本人と見分けのつかない外国人もいれば、外国人かと思うような日本人もいますからねェ……。
AKI ああ、そうですか。じゃ、その方は、ちょっと東洋っぽい感じの方だったんですね。髪も黒くて……?
哲雄 いいえ、きれいな栗毛のショート・ヘアでした。目の色は、グレーがかったブラウンでしたかね。それでね、私はピンときたわけです。きっと、この人は、海の向こうからいらしたんだ――とね。
AKI だから、それだったら、ひと目でわかるでしょ、っての。で、哲ジイは、何と言ってお近づきになったんです。
哲雄 「あなたは、ナイチンゲール(夜鳴き鶯)の鳴き声を聞いたことがあるか?」とお尋ねしました。
AKI ナイチンゲール……? 鳥なんですか、それ?
哲雄 ハイ。日本にはいない鳥です。この鳥、鳴く時間がビミョーなんですよ。陽が沈んで、しかし、まだ薄明かりが残っているほんの1時間ほどの間か、そうでなければ、東の空がうっすらと白み始めて、しかし、日の出までには少し時間があるという1時間ほどの間。つまり、この鳥は、夜の始まりを告げ、夜の終わりを告げる、そういう色っぽい鳥なんです。
AKI 日本にも欲しいです、その鳥。輸入してくださいよ。
哲雄 な、何のために?
AKI 朝帰りの時間とか、教えてくれるじゃないですか。「もう、そろそろ帰れよ、夜が明けるゾ」って。
哲雄 ヘェ、したいんだ、朝帰り? 実はね、この鳥、『ロミオとジュリエット』にも出てくるんだよ、その朝帰りのシーンで。
AKI そ、そうなんですか? 覚えてないなぁ……。
哲雄 ロミオがジュリエットの部屋に夜這いしてきて、やっちゃうんだけど、そうして愛し合ったふたりが愛の余韻に浸っていると、窓の外で鳥の声が聞こえた。「いけない、ジュリエット、もう朝だ。ボク、帰らなくちゃ」と、パンツを穿こうとするロミオに、ジュリエットが言うんだよね。「あれは、ナイチンゲールよ、ロミオさま。コケコッコじゃないわ。もう一回、しましょうよ」ってね。
AKI もう、脚色しないでくださいよ。「もう一回しましょうよ」なんて、言ってないと思います。
哲雄 言ってないけど、そんな気持ちだったかもしれないなぁ……って思ってね。
AKI 哲ジイが、クレアさんに「ナイチンゲールを聞いたことがあるか?」とお尋ねになったのは、「朝帰りしたことがあるか?」と訊きたかったわけですね?
哲雄 そんな……露骨な意図は持っておりませんでした。ただね、もしこの人が、私が期待したとおりの知的な女性であれば、きっと、気の利いた返事が返ってくるであろう――と、そんなことを期待したのかもしれない。
AKI で? 返ってきたんですか、気の利いた返事が……?
哲雄 返って来ましたねェ、驚くほどのウイット(機知)に富んだ答えが。
AKI 教えてくださいよ、その返事を。
哲雄 彼女の返事はこうでした。
ないわ。あなたが「ブルーバード」を見たことがないようにね。
やられたぁ……と思いました。
AKI 「ブルーバード」って、あの「青い鳥」?
哲雄 そう。ナイチンゲールも、ブルーバードも、ジャズの曲ではよく出てくる鳥なんだけど、「あなたと私がキスをしたとき、ナイチンゲールが鳴いてたわね」と言えば、それは、「私たち、朝まで愛し合ったのよね」と言っているのに等しい。一方の「ブルーバード」は、有名な『オーバー・ザ・レインボウ(虹の彼方に)』にも出てくるんだけど、そこでは、「幸せの青い鳥は、虹を越えて飛んでいけるのに、なぜ、私にはできないの?」って歌われてる。
AKI そっかぁ。彼女が、「青い鳥を見たことあるか?」と哲ジイに問い返したのは、「夢を求め続けているか?」と訊いたようなものなんですね?
哲雄 でしょうね。つまり、ボクたちの質問は、「キミは、朝まで愛し合うような恋に身をやつしたことがあるか?」「夢を求めて飛び続けているか?」と、おたがいに問いかけたことになるわけです。
AKI まぁ、なんてステキな!
哲雄 たぶん、彼女がロンドンっ娘でなかったら、いや、たとえロンドンっ娘であっても、ユーモアとウイットに富んだ知的な女性でなかったら、こういう会話は成立しなかったと思うんだよね。
AKI それで、ふたりの恋は、成立したの?
哲雄 その瞬間に、ふたりの恋は、始まったんだと思うよ。「キミのナイチンゲールに」「あなたのブルーバードに」とグラスを重ね、それからふたりはいろんな話をして、そして……。
AKI 赤坂のホテルで、やっちゃった……?
哲雄 どうして、そう先を急ぐかなぁ……? 少なくとも、私はね、この人とはきちんとおつき合いしなくちゃ……と思ったので、ちゃんと、紳士としての手順を踏みました。
AKI でも、やったんでしょ?
哲雄 ダンナ、カツ丼一杯、食わしてよ。そしたら、全部、しゃべるから。
AKI 取り調べじゃねェつーの。ハイ、これ、あげるから。
哲雄 ナニ、これ?
AKI マンゴー・プリン。
哲雄 す、すみません。やっちゃいました。
AKI どこで? いつ?
哲雄 満開の桜の下。千鳥が渕のホテルで。
AKI どういうふうにやったのか、詳しく話してごらん。
哲雄 これ、長くなるんですけど。
AKI じゃ、次回、こってりゲロしてもらいますからね。首を洗って待ってらっしゃい。
哲雄 カツ丼をプリーズ!

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