「官尊民卑」を生み出した薩摩と長州の「エリート意識」


 不純愛トーク   第244夜   
 日本の近代を作った薩摩や長州は、実は、「男尊女卑」の傾向が強く、「エリート意識」も強い土地柄でした。そんな彼らが作った「明治以降」の近代日本には、「官尊民卑」の体質が、色濃く残りました。なぜ、日本は、欧米型の「市民社会」を作れなかったのか? 今回は、その問題を、ちょっぴり社会科的に分析してみます――。

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AKI 薩摩と長州の体質が、よくもわるくも、近代日本を作った。前回は、そんなことをおっしゃいましたよね?

哲雄 はい、申し上げました。どこがよくて、どこがわるいのか? キミは、それを聞きたいわけでしょ? その前にひとつだけ、確認しておかなくてはならないことがあります。キミは「市民革命」という言葉を聞いたことがありますか?

AKI ま、そんな言葉が、社会科で出てきたような……。

哲雄 じゃ、復習しておきましょう。「市民革命」というのは、産業革命以降、力をつけてきた産業資本家などを中心とする市民階級が、それまでの支配勢力であった「貴族階級」を打ち倒して、自由と平等を旗印とした新しい「市民社会」を築き上げた革命のことを言うんだけど、私たちの「日本」という国は、自発的な「市民革命」を、実は、一度も経験していないのではないか、と言われています。自発的な……というのは、大戦終了後のGHQによる占領時代に、日本の社会は民主主義的な市民社会に作り変えられていくのですが、それは、あくまで占領軍による「上からの改革」であって、民衆の蜂起による革命ではなかったからです。

AKI 「明治維新」って、「市民革命」じゃなかったんですか?

哲雄 諸説あります。あれは「日本版・市民革命」であるとする説もあるけど、いや、あれはただの「クーデター」にすぎないとする説もある。私が知る限りでは、後者のほうが有力。維新の結果、出来上がった社会を見ても、「市民社会」が出来上がった――とは、どう見ても言えない。

AKI でも、士農工商は廃止されたでしょ?

哲雄 士農工商という封建的な身分制度は廃止されましたけど、その代わり、天皇を「現人神」とする、超・絶対主義的な体制を作り上げてしまいました。天皇を頂点とする官軍一体の支配構造を作り上げて、国民はそれに文句が言えないというシステムに仕立てていったんですね。「大正デモクラシー」なんていう民主化運動も起こるには起こりましたが、この体制をひっくり返すところまではいかなかったし、むしろ、その後の軍部の台頭で、「自由」も「平等」も影をひそめた、全体主義的な社会へと突き進んだことは、みなさんもご存じのとおりです。

AKI そういう世の中を作り上げていったのが、薩長であった――と?

哲雄 薩長を中心とする「官尊民卑」な体質を持った勢力だった、と申し上げていいかと思います。その根底には、「男尊女卑」もそこに含まれる「差別」の意識があったと、私はニラんでいます。

AKI それがわるいところ……?

哲雄 ですね。そもそも、明治維新の主役になったのは、「中央=江戸幕府」に反感を抱く勢力ではあったけれども、それはあくまで、「士族=官」の間での勢力争いであって、民衆が声を挙げた結果ではない。しかも、「反中央」の声を挙げたのが、人一倍、差別意識の強い性質を持った薩摩や長州のみなさんであった――というのは、日本の近代にとっては、悲しむべき不幸であった、と私は思っています。

AKI よかったところは?

哲雄 進取の精神ですかね? 身分意識の強い、薩長ではありましたが、どちらも「新しもの好き」ではありました。つまり、進取の精神に富む気風ではあったので、西欧の新しい文明を積極的に取り入れようとしました。ただし、形の上だけですけどね……。

AKI あの「鹿鳴館」とかもそうですよね?

哲雄 そういう表面的なところも……ですけど、むしろ、産業を興して、近代的な軍隊組織を作り上げて……といった側面では、この「進取の精神」が大いに力を発揮しました。それを、精神的に補強したのが、長州の理屈好きだったんじゃないかと思います。

AKI 長州人って、理屈好きだったんですか?

哲雄 前回も申し上げましたが、長州人というのは、融通のきかない理想主義者という一面も持っています。まさに官吏向きなのですが、その理想主義が偏った方向に発揮されると、社会全体を危険な方向に走らせてしまうこともあります。

AKI たとえば、軍国主義に突っ走らせてしまった――とか?

哲雄 それもありますが、その前提として、日本人の精神を「緩やかで柔軟性に富んだ多神教的」なものから、「性急で偏狭な一神教的」なものへと、作り変えてしまいました

AKI その話、前にもお聞きしたような気がします。

哲雄 チラと申し上げたかもしれません。なにしろ、このトーク、もう244回目ですからねェ。

AKI で、その「偏狭な一神教的なもの」というのは?

哲雄 天皇を「現人神」とする「一神教」です。そして、日本はその天皇が統治する「神国」である、とする思想です。

AKI それって、長州が生み出した思想なんですか?

哲雄 私は、長州人の理想主義とエリート意識が色濃く反映された思想だと思っています。長州人のオリジナルかというと、そうでもなくて、そのベースには、あの黄門さまの水戸で発達した「水戸学」があると思うんですけど、ま、そこらへんは深入りしないことにしましょう。とにかく、「明治」という時代を作ったエリートたちは、こう考えました。このままでは、自分たちは、西欧列強のような強い国は作れない。彼らにあって、自分たちにないものは何か?

AKI わかった! 強い神様だ!

哲雄 正解! とにかく、西欧人の「ゴッド」は、唯一絶対のものすごく強い神だ。彼らの強さの秘密は、この唯一絶対神にあるに違いない。ところが、日本はというと……。

AKI 八百万の神々を信奉する多神教の国……ですよね。

哲雄 そこに外来の神である「仏」も受け入れ、近頃では、キリスト教まで受け入れようとしている。こりゃ、いかん――と思ったわけです。

AKI だれが思ったんです?

哲雄 だから、当時の薩長のエリートたち。彼らが、明治維新とともに作り上げようとしたのは、万葉の時代のような「祭政一致」の体制だったのですが、さすがにこれはムリがあった。次に進めたのが、「神仏分離」。神社の境内に寺院があり、寺院の境内に神社が置かれるといった「神仏習合」の形を廃止させて、仏と神を分離させようとしました。

AKI 一緒だと都合がわるかったんですか?

哲雄 そもそも仏教は、政治や経済などというものは「俗界」のこととして退ける思想を持っています。これから、国民一丸となって「強い国」を作ろうとするときに、「それは俗なこと」なんて言われたんじゃたまらない。といって、仏教を弾圧したりしたのでは、民衆からどんな反発を受けるかわからない。しかし、あれはまずいんじゃないか、キミ――と思ったわけですね。

AKI それが、神仏習合?

哲雄 で、神仏を分離しなさい、という命令を出した。「神」を「仏」から切り離すことで、自分たちが「神」を自在に使えるようにしようとした。私には、そのように見えます。それだけじゃありませんよ。

AKI 他にも何かやったんですか?

哲雄 「神社合祀令」というものを出して、全国の神社を整理統合しました。日本人というのは、実にいろんな「神様」を持っている民族なんですよね。その中には、山や樹木や動物などの自然物を「神様」として崇める「アニミズム」的なものもあるし、自分たちの祖先を崇拝する「氏神」信仰もある。それを整理統合しようとしたんです。

AKI どういう方向にまとめようとしたんですか?

哲雄 神社は一町(村)に一社として、その祭神は、記紀神話の神々にしなさい
――としました。

AKI 記紀神話の神々……ということは?

哲雄 皇祖神を頂点とする、歴代の天皇ですね。おまえら、勝手にいい加減な神様を祭るんじゃねェ。由緒正しい神様を祭りなさい、というわけです。その「由緒正しい神様」というのは、歴代の天皇である。こうして、彼らは、「天皇を唯一の神」とする「一神教の世界」に、日本を作り変えようとしました。

AKI 日本人の心のふるさとが奪われてしまいますね?

哲雄 実際、奪われてしまいました。明治初年度には、全国におよそ18万社あったとされる神社が、30年頃には、およそ10万社ほどに整理されてしまいました。古くからあった鎮守の森は焼き払われ、森の神木などは切り倒され、折からの急速な工業化=都市化の波による自然集落の消滅とともに、日本人が長い時間かけて守り育ててきた村落共同体的な穏やかな精神構造が根底から作り変えられていったんです。博物学者の南方熊楠などは、これを「神狩り」と批判したために、一時期は投獄されたりもしました。

AKI それも、薩長のエリート意識のなせるワザ?

哲雄 大部分はそうであったろうと思います。当時の支配層は、さらに危険なことをやるのですが、長くなりますので、この続きは次回にしましょうか?

AKI 本日は、ちょっぴり社会科なトークでした。


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