「ケチ」と「ガメツイ」のビミョーな違い
不純愛トーク 第238夜
前回からお届けしている「経済感覚」の県民性。今回は、「近江商人」の活躍が「ケチ」の気風を広げるのに貢献したという話をご紹介。そして、「ケチ」と似ているようで違う「ガメツイ」についても、考察してみます。「ケチ」と「ガメツイ」、あなたはどっちが好みですか?――
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AKI 三重、岐阜も、ケチ・ランクでは上位に入ってますよね。哲ジイは、それは、滋賀の影響ではないか、とおっしゃいましたが……?
哲雄 その前に、もう一度、全国の「しまり屋」ランキングを挙げておきましょうね。

――「NHK県民意識調査」などより
1位……福井 6位……香川
2位……岐阜 7位……愛知
3位……三重 8位……山梨
4位……長野 9位……石川
5位……徳島 10位……滋賀
このうち、愛知については、前回、お話しましたよね。
AKI ハイ。名古屋のバウムクーヘンは、超薄切りである……という話をお聞きしました。
哲雄 だから、それは、もののたとえですって。さて、では、三重とか岐阜とか滋賀はどうなのよ、って話ですが、三重はかつては「伊勢」と呼ばれた土地、岐阜は「美濃」と「飛騨」、滋賀は「近江」と呼ばれました。何か、気がつきませんか?
AKI エーッと、何だろ? 美人が多い……とかじゃないし……。
哲雄 では、正解を。「屋号」です。
AKI エッ!? 屋号……?
哲雄 商店などにつけられる屋号。「伊勢屋」とか「近江屋」って、全国どこへ行ってもあるってくらい、ポピュラーになってるでしょ? この2つに比べると、それほどでもないけど、「美濃屋」も多い。
AKI そう言えば、そうですね。エッ、どうしてェ?
哲雄 商人が育った土地だからです。中でも、近江、つまり、滋賀県。ここはね、日本の商人のルーツと言ってもいいくらい、商人を輩出しました。もともと琵琶湖に面した肥沃な土地で、農産物が豊かでもあった。しかも、交通の要衝の位置にある。水路・陸路に恵まれ、京・大阪方面へも、美濃や尾張方面へも、物資を容易に運べる。昔から、市も盛んに開かれました。
AKI いま風に言うと、物流の拠点。それで、商人が育ったんだ。
哲雄 「近江商人」という言葉も、そこから生まれました。明治以降になると、「近江商人」は、「こすっからい」の代名詞として使われたりするようになりますが、それは後の時代の話で、当初の「近江商人」は、「正直で誠実」を売りにしていたらしいですよ。それに、勤勉で努力家でもあった。というのも、この地方も、一向宗(浄土真宗)の強い影響下にありましたからね。
AKI 一向宗は、質素倹約を旨としてたんですよね?
哲雄 ヨーロッパで、プロテスタンティズムの勤労・倹約精神が資本主義を生み出したように、この地では、一向宗の質素倹約精神が「近江商人」を生み出しました。で、この近江商人は、全国各地に散らばっていったんですね。その影響をいちばん強く受けたのが伊勢、つまり、いまの三重県。
AKI 三重って、何か、あったんですか? つまり、商人が活躍するような何かが……。
哲雄 まず、伊勢と言えば「伊勢神宮」ですよね。参詣のために、全国から人々が集まってくる。それにね、この地は、国内最大の水銀の産地でした。なので、古くから貨幣経済が盛んでした。そこへ、大量の近江商人が移住してきました。そうして「伊勢商人」と呼ばれるグループが形成されていきます。もともと、三重というのは、風光明媚で気候も温暖な土地ですから、人々の性格は穏やかで女性的でした。昔は、「近江は盗賊、伊勢は物乞い」と言われたくらい、消極的でのんびりした性格だったんですが、そこへ、「伊勢商人」という新しいグループが誕生して、活発に商売をするようになった。
AKI 三重県人がケチになったのは、その影響なんですね。
哲雄 たぶんね。
AKI じゃ、岐阜は? 岐阜にも近江商人が入り込んだわけですか? お隣の国ですしね。
哲雄 岐阜は、さっきも言いましたが、美濃と飛騨に分かれてて、飛騨は山また山に囲まれた閉鎖的な土地。一方の美濃は、木曽川、長良川、揖斐川などが流れる低地で、東西交通の要の位置にありました。でね、ケチの性質は、飛騨ではなく、もっぱら、この美濃のほうで醸成されたものじゃないか――と言われてます。
AKI やっぱり、商人気質が発達したから……?
哲雄 つーか、この土地はね、そんな位置にあったので、昔から東西勢力の衝突の土地になった。関が原もそうだよね。それに、支配者もコロコロ変わる。でね、ここに住む人たちは、用心深くなった。容易には周囲の人たちを信用せず、ある意味、疑い深くもある。そうするとどうなるか?
AKI お金しか信用できなくなる……?
哲雄 「しか」かどうかはわからないけど、貯蓄性向は高くなりますね。しかも、隣には、ケチで知られた尾張商人たちがいるわけですから、必然的に、お金にシビアにならざるを得ない。豆腐を半丁単位で売っていたてのは、昔は、この美濃ぐらいのものでした。余談ですけど、この美濃地方には「輪中(わじゅう)根性」という言葉があります。
AKI 輪中……? 何ですか、それ?
哲雄 ここは、木曽川、長良川、揖斐川など、大きな川がひしめき合っていて、昔から、これらの川がよく氾濫を起こしました。なので、この地域の人たちは、村ごとに周りを堤防で囲って、自分たちの村だけは水害から守ろうとしました。これを「輪中」と言うんだけど、そのせいかどうなのか、美濃の人たちの間には、この「輪中」の中の人間同士は固く結束するけど、その外部の人間は「ヨソ者」扱いして、なかなか信用しないという性質が出来上がっていった、とされています。
AKI それも、周囲からケチと見られる要素のひとつになってるのかもしれないですね。ね、哲ジイ、私、不思議に思うんですけど、ケチっていうと、私、真っ先に「大阪」とかを思い浮かべたりするんですけど、大阪人は、ケチではないんですか?
哲雄 大阪人は、「ケチ」なのではなくて、「ガメツイ」んだと思いますよ。
AKI 「ケチ」と「ガメツイ」。似てるような気がするけど、違うんですか?
哲雄 違いますねェ。「ケチ」っていうのは、消極的な金銭第一主義で、貯めるだけ貯めてそれを貯め込んだまま使わない、という精神態度を言います。目的は、「貯めること」なんですね。「ガメツイ」というのも、金銭第一主義なんだけど、こっちの目的は「貯めること」じゃなくて、「儲けること」。儲けたら、それを思いっきり使う。つまり、積極的な拝金主義とでも言ったらいいでしょうか。
AKI わかりやすく言うと、ケチだけど気前もいい――ってことですか?
哲雄 ほんとに「値打ち」のあるものには、金を惜しまないようですよ。でもね、その「値打ち」というのは、大阪人にとっては、けっしてブランドや品格などではない。たとえば、同じグルメでも、東京人の場合は、店の外装とか内装にこだわったりして、「オシャレな店」であることを評価の基準に加えたりしますが、大阪人は、「そんな格好つけんと、うまいもんたっぷり食わしてや」になる。
AKI 実質的なんだ……。
哲雄 実質的……というより、「合理的」なんだと思います。
AKI 私、前から思ってるんですけど、大阪の人って、あっちにもこっちにもいますよね?
哲雄 私も感じます。でもね、それは気のせい……ていうか、パフォーマンスの違いだと思ってます。簡単に言うと、大阪人のパフォーマンスのほうが、アクが強い。なので、どこに行っても、大阪人がいるような気がする。これを、かつて大宅壮一さんは「華僑」になぞらえて「阪僑」と呼んだりしました。
AKI すごォ~い! 「阪僑」ですかぁ。
哲雄 「イル語圏」の首都・東京と「オル語圏」の首都・大阪は、何かにつけて比較されることが多いので、ここでじっくり分析してみたいと思いますが……。
AKI 時間がないんですね。ね、哲ジイ、この際ですから、私、東京の恋 と 大阪の恋 がどう違うかも知りたいんですけど……。
哲雄 では、その点についても、たっぷりと……。どや、ねェちゃん、わいと一発やらへんか?
AKI エーッ!?
哲雄 てなことを言う大阪のおっさんをどう思うかも、次回、たっぷり、聞かせてもらいましょうか。

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