第27夜☆「売春」を職業として認めたドイツの決断
AKI ドイツで、売春が職業として認められたって、ホントですか?
哲雄 ザッツ、ライト!
AKI それまでは禁止されてたの?
哲雄 いや、禁止はされてなかった。というより、ヨーロッパの主要な国で、売春そのものを禁止している国は、わがはいが知る限りでは、ない。
AKI エッ、そうなの!?
哲雄 いちばん厳しいのはイギリスだと思うけど、イギリスで禁止されているのは、街娼、ポン引き行為、売春宿を経営することなどで、個人が新聞広告やインターネットを使って売春することは合法とされてる。
AKI いちばんゆるいのは?
哲雄 ゆるいという表現はふさわしくないと思うけど、寛容であるという意味では、オーストリアかな。外国人が売春ビザで滞在することを許可してる。
AKI エーッ、売春ビザ!?
哲雄 ピザじゃないよ。
AKI それ、笑わなくちゃダメッすか?
哲雄 いやいや、どうぞ、おかまいなく。
AKI でもね、別に禁止してないんだったら、職業として認めるも何もないんじゃないですか?
哲雄 あ、それはね、売春に民法上の権利を認めたってことなんだよ。売春を正規の商取引行為として認め、その契約の法的な有効性を認める。
AKI 具体的には、どこが違ってくるのかな?
哲雄 たとえば、AKIちゃんと2万円でエッチしようと持ちかけた男がいて、ホテルに連れ込んで事に及んだけど、いざやっちまうと、「オレ、そんな約束した覚えはないぞ」と言い出したとする。そんなことになったら、AKIちゃん、どうする?
AKI だからぁ、私、事には及ばないんだって。だいいち、2万円なんて……。
哲雄 あ、2万円が不満なんだ。
AKI じゃなくてぇ……。あ、でも、そういうこともあるよね。3万円の約束でホテルに入ったけど、たとえば男が、「オレ、イカなかったから、半分にしといてよ」なんて言い出すとか。逆に、同じ料金で、2回も3回もしようとするとか、お金払ったんだから何してもいいだろうと、女に暴力をふるうとか……。
哲雄 当然、そういうトラブルは考えられるよね。そういうとき、もしAKIちゃんがその女の立場だったら、どうする? 警察に駆け込む?
AKI 日本だと駆け込まないというか、駆け込めないんじゃない? だって、自分も禁止されてることをやってるわけだから。でも、もしそれが、デリヘルとかだったら、たいていケツ持ちがついてると思うんだけど。
哲雄 ケツ持ち。つまり、怖いお兄さんたちだよね。客のほうも、そういうことをすると、あとから怖いお兄さんが「お客さん、困りますねぇ、こういうことされちゃ…」とシャシャリ出てくることを知ってるから、極端なことができない。
AKI ま、そう思わせておくだけでも、トラブルの防止効果はあるかもしれない。
哲雄 つまり、こういうことじゃないか? 非合法にしてるから、トラブルが起こってもおカミに訴えられない。したがってバックが必要になる。このバックは、たいてい暴力団で、それが彼らの資金源になってる。
AKI 売防法があるから、暴力団は食っていける……っていう構図?
哲雄 この構図は、遊郭時代から変わらないと思うんだよ。遊郭時代にも、表向き、遊郭の経営者たちは、「自分たちは座敷を貸しているだけ」という言い訳でおカミの摘発を免れてたわけで、何度も言うけど、問題は、この「表向き禁止。実際は黙認」という二重規範にあるんだよね。うがった見方をすると、こういう二重規範の存在自体が、権力と暴力団のなれあいの構図なんじゃないか、と思えたりもする。
AKI オレたちのほうじゃ「禁止」ってことにしとくから、あとは、あんたたちのほうでよろしくやってよ、みたいなこと?
哲雄 なんか、見てきたことのようにおっしゃいますね。
AKI だから、見てないですって。で、それがドイツでは変わったわけですね?
哲雄 そう。正式に商取引として認めるってことだから、たとえば、代金を払わない客がいたりしたら、裁判所を通して支払を請求することができるし、不法な行為(暴力など)を受けた場合には、刑事告発することだってできる。それにね、これが画期的だと思うんだけど……。
AKI エッ、ナニ、ナニ?
哲雄 社会保険。売春を職業として申告し、その収入を申告して、失業保険とか年金とか健康保険に加入できるようになった。
AKI すごい! それって画期的なことですよ。
哲雄 ドイツって、元々、キリスト教的倫理観の強い国で、われわれも「ドイツ人」と言うと、「謹厳実直な民族」というイメージで見てると思うんだけど、そのドイツでこういう法案が通った、ってことがすごいと思うんだよね。
AKI それ、いつのことですか?
哲雄 2001年。
AKI わりと最近のことなのね。でも、そういう法案が通るには、それなりの運動とかあったわけでしょ?
哲雄 その主体になったのが、フェミニズム運動なんだよね。
AKI ヘーッ。フェミニズムはその昔、「売春を禁止しろ」っていう運動をやったんじゃなかったっけ?
哲雄 そうそう。日本でも、戦後、「売春防止法」成立に向けて運動したのは、フェミニズムを掲げる人たちだった。ヨーロッパでも、日本でも、そういう声を挙げたフェミニズム運動の担い手は、専業主婦が中心だった。でも、70年代に入る頃から、明らかにその勢力図に変化が見られるようになった。新しいフェミニズムは、女性を専業主婦として閉じ込めてしまうような社会的な性差別をなくせ、と主張するようになり、むしろ、女性の立場から「性の解放」を訴えるようになった。そして、そんな運動の中から、「売春婦の社会的権利を認めろ」という主張も生まれたんだ。
AKI 日本の性産業も、そういうふうに変わっていくのかなぁ。
哲雄 そこだよね、問題は。その問題については、次回、考えてみることにしよう。
AKI いちばんゆるいのは?
哲雄 ゆるいという表現はふさわしくないと思うけど、寛容であるという意味では、オーストリアかな。外国人が売春ビザで滞在することを許可してる。
AKI エーッ、売春ビザ!?
哲雄 ピザじゃないよ。
AKI それ、笑わなくちゃダメッすか?
哲雄 いやいや、どうぞ、おかまいなく。
AKI でもね、別に禁止してないんだったら、職業として認めるも何もないんじゃないですか?
哲雄 あ、それはね、売春に民法上の権利を認めたってことなんだよ。売春を正規の商取引行為として認め、その契約の法的な有効性を認める。
AKI 具体的には、どこが違ってくるのかな?
哲雄 たとえば、AKIちゃんと2万円でエッチしようと持ちかけた男がいて、ホテルに連れ込んで事に及んだけど、いざやっちまうと、「オレ、そんな約束した覚えはないぞ」と言い出したとする。そんなことになったら、AKIちゃん、どうする?
AKI だからぁ、私、事には及ばないんだって。だいいち、2万円なんて……。
哲雄 あ、2万円が不満なんだ。
AKI じゃなくてぇ……。あ、でも、そういうこともあるよね。3万円の約束でホテルに入ったけど、たとえば男が、「オレ、イカなかったから、半分にしといてよ」なんて言い出すとか。逆に、同じ料金で、2回も3回もしようとするとか、お金払ったんだから何してもいいだろうと、女に暴力をふるうとか……。
哲雄 当然、そういうトラブルは考えられるよね。そういうとき、もしAKIちゃんがその女の立場だったら、どうする? 警察に駆け込む?
AKI 日本だと駆け込まないというか、駆け込めないんじゃない? だって、自分も禁止されてることをやってるわけだから。でも、もしそれが、デリヘルとかだったら、たいていケツ持ちがついてると思うんだけど。
哲雄 ケツ持ち。つまり、怖いお兄さんたちだよね。客のほうも、そういうことをすると、あとから怖いお兄さんが「お客さん、困りますねぇ、こういうことされちゃ…」とシャシャリ出てくることを知ってるから、極端なことができない。
AKI ま、そう思わせておくだけでも、トラブルの防止効果はあるかもしれない。
哲雄 つまり、こういうことじゃないか? 非合法にしてるから、トラブルが起こってもおカミに訴えられない。したがってバックが必要になる。このバックは、たいてい暴力団で、それが彼らの資金源になってる。
AKI 売防法があるから、暴力団は食っていける……っていう構図?
哲雄 この構図は、遊郭時代から変わらないと思うんだよ。遊郭時代にも、表向き、遊郭の経営者たちは、「自分たちは座敷を貸しているだけ」という言い訳でおカミの摘発を免れてたわけで、何度も言うけど、問題は、この「表向き禁止。実際は黙認」という二重規範にあるんだよね。うがった見方をすると、こういう二重規範の存在自体が、権力と暴力団のなれあいの構図なんじゃないか、と思えたりもする。
AKI オレたちのほうじゃ「禁止」ってことにしとくから、あとは、あんたたちのほうでよろしくやってよ、みたいなこと?
哲雄 なんか、見てきたことのようにおっしゃいますね。
AKI だから、見てないですって。で、それがドイツでは変わったわけですね?
哲雄 そう。正式に商取引として認めるってことだから、たとえば、代金を払わない客がいたりしたら、裁判所を通して支払を請求することができるし、不法な行為(暴力など)を受けた場合には、刑事告発することだってできる。それにね、これが画期的だと思うんだけど……。
AKI エッ、ナニ、ナニ?
哲雄 社会保険。売春を職業として申告し、その収入を申告して、失業保険とか年金とか健康保険に加入できるようになった。
AKI すごい! それって画期的なことですよ。
哲雄 ドイツって、元々、キリスト教的倫理観の強い国で、われわれも「ドイツ人」と言うと、「謹厳実直な民族」というイメージで見てると思うんだけど、そのドイツでこういう法案が通った、ってことがすごいと思うんだよね。
AKI それ、いつのことですか?
哲雄 2001年。
AKI わりと最近のことなのね。でも、そういう法案が通るには、それなりの運動とかあったわけでしょ?
哲雄 その主体になったのが、フェミニズム運動なんだよね。
AKI ヘーッ。フェミニズムはその昔、「売春を禁止しろ」っていう運動をやったんじゃなかったっけ?
哲雄 そうそう。日本でも、戦後、「売春防止法」成立に向けて運動したのは、フェミニズムを掲げる人たちだった。ヨーロッパでも、日本でも、そういう声を挙げたフェミニズム運動の担い手は、専業主婦が中心だった。でも、70年代に入る頃から、明らかにその勢力図に変化が見られるようになった。新しいフェミニズムは、女性を専業主婦として閉じ込めてしまうような社会的な性差別をなくせ、と主張するようになり、むしろ、女性の立場から「性の解放」を訴えるようになった。そして、そんな運動の中から、「売春婦の社会的権利を認めろ」という主張も生まれたんだ。
AKI 日本の性産業も、そういうふうに変わっていくのかなぁ。
哲雄 そこだよね、問題は。その問題については、次回、考えてみることにしよう。
- 関連記事
-
- 第28夜☆限りなくデリバリー化する、日本の「フーゾク」 (2009/04/18)
- 第27夜☆「売春」を職業として認めたドイツの決断 (2009/04/15)
- 第26夜☆表向き禁止。日本の「売春防止法」は問題だらけ (2009/04/12)