血縁の「イル語族」vs地縁の「オル語族」、どっちを選ぶ?
不純愛トーク 第233夜
家族のあり方や男女の関係にも大きく影響する「文化の基層」。前回は、青ネギを食する「オル語文化圏」と、白ネギを食する「イル語文化圏」がある、という話をしました。この文化圏の違いは、家族関係などに、具体的にどんな影響を及ぼすのでしょう? 血縁の「イル語」vs地縁の「オル語」。今回は、そんな話をしてみます――。
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哲雄 前回までの話をまとめておきましょうか。
AKI 日本には、2つの文化圏が存在する。それは、「オル語文化圏」と「イル語文化圏」である――と、そういうお話でしたね。
哲雄 「居る」を「オル」と言う地域と「イル」という地域で、日本地図上で言うと、新潟県の佐渡から愛知県の豊橋あたりを結ぶ線で、きれいに分かれています。このラインより西に位置する「西南地域」と東側に位置する「東北地域」は、植物の生態上も、ツバキやシイなどを中心とする「照葉樹林帯」とナラなどを中心とする「落葉広葉樹林帯」とに分かれているという話でした。整理すると、こうなります。

地域:佐渡‐豊橋ラインより西側の西南日本地域
植生:照葉樹林(ツバキ、シイ、カシ、クスなどが中心)
文化のルーツ:南方系(チベット~中国雲南~中国揚子江以南地域とつながるルーツ)
食べるネギ:青ネギ
社会の構造:利益や主義・信条などで結ばれる「講組結合」

地域:佐渡‐豊橋ラインより東側の東北日本地域
植生:落葉広葉樹林(ナラ、ニレ、シナノキ、カエデなどが中心)
文化のルーツ:北方系(シベリア~満州~朝鮮半島とつながるルーツ)
食べるネギ:白ネギ
社会の構造:本家を中心とした血縁でつながる惣領制の「同族結合」
哲雄 この2つの文化圏を「方言の分布」で分けてみると、こんな地図になります。

出典:中公新書『県民性』(祖父江孝男著)より転載
AKI 見事に分かれるんですね。
哲雄 前にも申し上げましたが、北は新潟県の佐渡から南は愛知県の三河湾東部を結ぶ線。この線を境に、「オル語圏」と「イル語圏」が見事に分かれます。
AKI ね、哲ジイ、こういう違いって、いつ頃、どうやって生まれたの?
哲雄 そもそものルーツをたどると、はるか旧石器時代にまで遡るらしいですよ。しかし、社会の構造などに大きな影響を与えたのは、むしろ、その後の稲作文化などの農業技術の伝播が関係しているのではないか、とも言われています。
AKI 農業技術は、南のほうから入ってきたんですよね?
哲雄 ハイ。なので、西南地域のほうが、農業技術に関しては先進地帯となりました。農業技術が低い段階では、農耕というのはたいへんな重労働です。田植え、収穫などの農繁期には、本家の号令で血族が集合して協力して行う必要がありました。なので、農業後進地域だった東北地域のほうが、「同族結合」が強くなる傾向があった。
AKI 西南地域では、その必要がなかったんですね?
哲雄 ハイ。むしろ、生産力に余裕があったので、むしろ他の形の結合が発達しました。それが、「講組結合」。
AKI その「講」とか「組」って、何なんですか?
哲雄 「講」というのは、いまでも「頼母子講」とか「無尽講」なんてのが残っている地域がありますよね。みんなでお金を出し合ってそのお金をプールしておき、抽選でみんなに配当したり、危急の折の役に立てようという仕組みなんだけど、いまで言うと、互助会とかファンドのようなものだろうね。そういう経済的な「講」もあったし、「念仏講」のようにみんなで集まって宗教的な親睦を図ろうとする「講」もありました。たいていは、みんなで集まって飲み食いしたりする親睦的な色彩が強かったようだけど、そこでは、本家も分家も関係ない。血縁は、あまり重要な結合要素ではなかったみたいです。
AKI 「組」っていうのは?
哲雄 こっちは地縁組織だね。血縁とは関係なしに、隣り合った何戸かが集まって、おたがいに助け合ったり、監視し合ったりする結合と思えばいいでしょう。いまでも、この「隣組」の制度が残っている地域もあって、どこかの家の葬式なんていうときには、組の者全員が手助けする慣習が残っていたりします。ここでも、「組」の者は全員が平等。だれかが命令したり、指図したりするという関係ではないわけです。
AKI 「同族結合」は上下関係がハッキリしているタテ型社会で、「講組結合」はヨコ型社会ってことなんですね。
哲雄 結合はどっちが強いと思う?
AKI やっぱり……タテ型のほうかな?
哲雄 そうだね。絆の強さということで言うと、タテ型である「同族結合」のほうが、断然、強い。今度の震災の後でも、東北人の絆の強さが賞賛されてましたけど、その強い絆を生み出しているのも、ひとつには、その社会の根底に「同族結合」があったからだろうと考えられます。
AKI 「絆」は、どっちかというと、「イル語族」の専売だったんですね。
哲雄 たとえばね、それが典型的に現れるのが、団体旅行。東北地方の学生などが集団で東京に旅行に来たりすると、だいたい、100人の団体に対して100人ぐらい、面会に来る人がいる。ところが、西南方面の客だと、100人の団体に対して、面会者はせいぜい10人程度。旅館側も、団体客が東北方面からか西南方面からかで、準備の仕方が違うんだそうですよ。
AKI それって、結婚式の招待客とか、新婚旅行の土産をどうするとかにも、けっこう関係してきますよね。
哲雄 関係するでしょうね。結婚とか、出産とか、家の新築とか、そういうことがあるたびに、まず本家に報告して……みたいな、ものの順番に関する縛りが、「イル語圏」では強いような気がします。
AKI 「オル語圏」では、そういう縛りはないんですか?
哲雄 希薄ですね。自慢じゃないけど、私なんぞ、そもそも本家がどこにあるのかさえ知りません。
AKI エーッ、し、知らない? それ、ビックリです!
哲雄 それくらい、同族意識が薄い、ということですね。これも、よく聞く話なんですが、都会でひとり暮らしをしている娘や息子を親や親戚が訪ねてくる頻度なんかも、まるっきり違うらしい。もちろん、「イル語」の親や親戚のほうが、足しげく訪問してくる。たとえば、そういう息子や娘が、病気やケガで入院したとするよね。
AKI わかった。入退院に親が付き添うか、付き添わないか――の違いですね。
哲雄 もちろん、「イル語」のほうが付き添う率が高い。何かあって、病院側が親に連絡をしなければならなくても、「オル語」の親は、ヘタすると、入院した事実さえ知らない場合がある。子どものほうも、いちいち連絡してなかったりするんだね。
AKI ドライなんですね、「オル語」のほうが?
哲雄 ドライっちゃあ、ドライ。でも、熱くならないわけじゃない。たとえば、甲子園とかのスポーツの応援。学校単位とか、市町村単位とかで大応援団を繰り出すのは、どっちかというと「オル語」のほうが盛ん。「イル語」のほうはというと、親戚一同で応援に出かけるというパターンが多いような気がします。
AKI ウーン。嫁としては、「オル語」のダンナのほうが、気を遣わなくていいから、ラクかもしれない。
哲雄 その代わり、自分の親や親戚とのつき合いも、遠慮せざるを得なくなります。「オル語」は、濃すぎる血の関係を敬遠する傾向がありますからね。逆に、「オル語」のダンナは、学校の仲間とか会社の仲間を大事にしますから、「オイ、みんな連れてきたぞ」と、突然、大勢の客を連れて帰ったりして、「あなた、それならそうと言っといてくれればいいのに」と、嫁を困らせるようなこともします。
AKI ウーン、それも困るわねェ。
哲雄 嫁が「オル語」でダンナが「イル語」という場合も、同じ問題が起こります。「オル語」+「イル語」という組み合わせの場合は、常に発生する食い違いと言っていいでしょうね。
AKI てことは、あれですね。「オル語」同士のカップルがいいか、「イル語」同士がいいか、「オル語」+「イル語」の組み合わせがいいかは、ふたりが、どういう家庭を築きたいかによっても違ってきますよね。
哲雄 おっしゃるとおり。ごく大雑把に言うなら、こう言えると思います。



―→「オル語」の亭主+「イル語」の女房という組み合わせ。

―→「イル語」の亭主+「オル語」の女房、という組み合わせ。
ということにはなりますね。あくまで、大雑把に言うと、ですけど。
AKI ね、哲ジイ。これで言うと、「イル語」同士の組み合わせのほうが長続きする……ってことになりませんか? 離婚する率も低い……とか?
哲雄 ところがね、必ずしも、そうはなってない。その話、次回に詳しくお話しましょう。
AKI では、「オル語」のダンナ、次回を楽しみにしておりますわ。

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