青ネギ妻(夫)と白ネギ亭主(女房)
不純愛トーク 第231夜
前回まで、何回かにわたって「人は死んだらどうなるか?」という話をしてきました。今回は、そこで登場したお墓の問題や檀家制度が、日本の結婚制度に大きく影響している、という話をお届けします。そして、話は、さらに日本列島を二分する「西」と「東」の「家」についての考え方の違いへと発展していきます――。
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AKI 前回は、檀家制度のお話でしたよね。日本人がなぜ、遺骨を大事にするか、という話もお聞きしました。それが、恋愛にも関係してる――と、確か、哲ジイはそんなことをおっしゃいましたわね。
哲雄 言ったかなぁ……。
AKI あら? もう忘れてる……。
哲雄 あ、そうそう、思い出しました。キミが、もしだれかのお嫁さんになったとしましょうか。キミは死んだら、どこのお墓に入ります?
AKI ま、それは、嫁いだ家のお墓じゃありませんか?
哲雄 だよね。日本の結婚制度が「家」という意識からなかなか離れられないのは、ひとつには、この「檀家制度」のせいなんじゃないか、と思うんだよね。
AKI つまり、お墓の問題……?
哲雄 たぶんね。「檀家制度」が社会の制度として機能していた時代には、嫁ぎ先から「おまえは家の墓には入れない」と言われることは、恐怖だったと思うんだよね。私は、死んだらどうなるんだろう? そのプレッシャーが、女を家に縛り付け、恋愛の自由も奪ってしまった。いまでも、そんな時代に植え付けられた意識が、かなりな程度、残っているんじゃないかと思うんだ。
AKI そう言えば、こんな私でも、「私が死んだら、骨はだれが拾ってくれるんだろう?」なんて思いますもの。
哲雄 こんな……ワ・タ・シ? つまり、あれですか? 男から男へと渡り歩き、一所不住な、キミの恋のありようのことを言っているのでしょうか?
AKI そうじゃなくて……家に入るなんていう意識が希薄な、こんな私でも……という意味です。
哲雄 ま、いいでしょう。とにかく、日本人にとって、「入るお墓がある」ということと「骨を拾ってくれる人がいる」ってことは、その人生を考える上でも、恋愛をする上でも、ものすごく大きなファクターになってる。そういう意識を作り上げる上で、「檀家制度」は大きかったんじゃないか――と、そういう話をしたかったわけです。
AKI でもね、哲ジイ。そういう意識って、地域によっても、少し違うんじゃないですか?
哲雄 お、いいところに目をつけましたね。
AKI 「家」の意識がものすごく強いところと、そうでもないところ、ハッキリ分かれるような気がするんですけど……。
哲雄 おっしゃるとおりです。よく、会社とか官庁とかの組織のあり方を言うときに、「タテ社会」とか「ヨコ社会」という言い方をするでしょ?
AKI 日本の社会は、どっちかと言うと、「タテ型社会」って言われますよね。
哲雄 「家」意識の強い社会も、「タテ型社会」と言っていいと思うんだけど、そういう意識の強い地域では、本家・分家の区別とかもハッキリしてる。
AKI そういうの、田舎のほうが強いですよね。
哲雄 いや、田舎かどうか……ではなくて、西と東の違いだと思うね。その境界線は、だいたい、愛知県あたり。
AKI どっちがどうなんですか?
哲雄 東のほうが、「家」意識は強いです。本家・分家の意識が強く、惣領制がいまでも色濃く残っているのは、東。中でも、北関東を中心とする関東一円だね。
AKI 「惣領制」……って?
哲雄 本家の長男を中心に一族を統制する制度。親分・子分の関係なんかも、一種の惣領制だと思うんだけど、これは、ほとんど「関東名物」と言ってもいいくらい。政治の世界でも、派閥を作りたがったりするのは、だいたい、この地域の政治家なんだよね。
AKI 中曽根とか福田なんて、そう言えば、北関東でしたよね。
哲雄 ヤクザで言えば、国定忠治の世界。
AKI じゃ、西は?
哲雄 この意識は薄いです。どっちかと言うと「来るもの拒まず」の世界だから、だれでもかれでも仲間に引き入れて、「一族郎党」を結成してしまいます。
AKI いい加減ちゃ、いい加減なんですね。
哲雄 いい加減です。いい加減なので、同じヤクザでも、広域暴力団とかが育ちやすい。
AKI それが、愛知県あたりで分れるんですか?
哲雄 正確に言うと新潟県の西側、佐渡のあたりから三河湾の東側、だいたい豊橋あたりまでを結ぶ線を境にして、なぜか、見事に分かれるんですね。これ、言葉の上でも、ハッキリ分かれるんですよ。いちばんわかりやすいのは、「居る」という言葉を「オル」という地域と「イル」という地域。
AKI 私は「イル」ですけど……。
哲雄 私は、「オル」。キミは、同じ日本人でも「イル語族」で、私は「オル語族」ということになるわけです。
AKI どうして、そんな区分ができちゃったんだろ?
哲雄 それについては、学問的にもいろんな説が飛び交っているのですが、私がもっとも納得できる説として支持しているのは、「国立民族学博物館長」を務めた佐々木高明教授らが主張した説ですね。
AKI それは、どんな……?
哲雄 同氏によると、日本文化の基層には、北方経由の「ナラ林文化」と南方経由の「照葉樹林文化」があるというのですね。「ナラ林文化」というのは、ナラ、ニレ、カエデなどの落葉広葉樹が広がる森林地帯を中心に形成された文化で、中国東北部~シベリア東南部~朝鮮半島~日本の北海道西部・東北部・北関東・中部、にかけて分布しています。一方の「照葉樹林文化」というのは、シイ、カシ、ツバキなどの常緑広葉樹が広がる森林地帯を中心に形成された文化で、ネパール・チベット~中国江南(揚子江の南側)地域~日本の西日本全域・東海・房総、にかけて分布しています。 (下図参照。NHKブックス『日本文化の基層を探る』より転載)

AKI その境界が、愛知県の豊橋あたりになるわけですね?
哲雄 ハイ。面白いことに、この境界を境に、生活習慣・言語・食生活などに、顕著な違いが見られるらしいんです。たとえば、ネギは「白いところ」を食べるか、「青いところ」を食べるか――とかね。
AKI 哲ジイは、「青ネギ派」なんですね?
哲雄 ハイ。ネギは大別すると、白い部分が長くて太い「根深ネギ(通称・長ネギ)」と青い部分が長く、細めで枝分かれの多い「葉ネギ」に分かれるんですが、西日本では、主に「葉ネギ」のほうを食していたんですね。ま、最近は、いろんな食材が全国的に流通するようになったので、東日本でも「万能ネギ」とか「九条ネギ」なんていう「葉ネギ」を食べるようになりましたし、西日本でも、「根深ネギ」をふつうに食するようになりましたけどね。
AKI で、恋愛では……と、そういう話をしたいわけですね、哲ジイとしては?
哲雄 なのですが、ちょうど時間となりました。この話は、次回に回しましょうか? ところで「イル語族」のAKIクン、ネギのおいしい店があるんだけどね。
AKI あいにくとわたくし、ネギは、青も白も好きじゃありませんの。

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